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第5章 約束の地へ
action 14 死線
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「一平、みんなのバッグ集めてきて! 中にまだ水が残ってたはず! 急いで!」
光は一平を追い立てると、手際よくあずみのセーラー服を脱がしにかかった。
あずみは顔中に玉のような汗を浮かべ、苦しげにはあはあ喘いでいる。
「お兄ちゃん、どこ? あずみ、どうなるの?」
眼が見えていないのか、視線をあらぬほうにさまよわせ、うわ言みたいにそんなことを言った。
「しゃべるな。俺はここにいる。だから」
僕は力を込め、あずみの右手をぎゅっと握った。
小さい頃、よくつないでいたこの手。
でも、ぬくもりがどんどん失われていくのは、なぜなんだ?
「ひどいわね…」
セーラー服を脱がし終えると、光が痛々しそうにつぶやいた。
見ると、あずみの平らな腹には真っ赤な穴がぽっかりと口を開き、血だまりの中に弾けた白い脂肪層やピンクの内臓が見えていた。
傷口の周囲の皮膚が紫色に変色し、その範囲が見ているうちにもじわじわ拡大していく。
「これ…毒かも。ムカデの仲間には、強力な神経毒、持ってるの、いるから」
そこに4人分のバッグやリュックを抱えた一平が、よろよろと戻ってきた。
「おらよ」
どさりと通路の床にバッグ類を投げ出すと、蒼い顔で辛そうにため息をついた。
僕と一平で飲料水のペットボトルを取り出して床に並べると、全部で6本あった。
光がその水で濡らしたハンカチを使い、丁寧に傷口の周囲を拭う。
最後にセーラー服を縦に引き裂くと、包帯代わりにあずみの胴にぐるぐる巻いた。
だが、あずみの容態は悪化していくばかりだった。
くちびるが紫色になり、瞳が見る間に光を失っていく。
手足の先が小刻みにぶるぶる震え、大粒の涙が色を失った頬を伝って落ちた。
「お兄ちゃん、どこ? 行っちゃいや。あずみを置いて行かないで」
「だから、ここにいるってば」
僕はあずみの右手を両手で握りしめ、額に押し当てた。
光が一平の手を引いて、傍を離れていくのがわかった。
あずみの死期を悟り、兄妹水入らずにしてやろうという親切心なのかもしれなかった。
「あずみね、お兄ちゃんのこと、ほんとに好きだった。小さい時から、初めて会った時から…。お兄ちゃん、あずみにはずっと優しくて、かっこよくて、可愛くて…。だから、結婚するって、心の中で決めてた。誰が何といおうと、高校出たら、絶対するんだって。でも、もう、それもダメになっちゃったみたい…」
あずみの声が小さくなっていく。
風船から空気が抜けるみたいに、あずみの肉体から命が失われていく…。
「だめになんか、なってないだろ!」
僕は叫んだ。
「いいか、あずみ、よく聞け。おまえは地球人よりずっと優秀な、マルデック人とかの生まれ変わりなんだ。だからこの程度のことで、死ぬわけないんだよ!」
一生懸命叫んだのに、もうあずみは応えなかった。
瞳がガラス玉に変わり、ガクッと首が横に落ちた。
「う、うそだろ…?」
激烈な悲しみがこみ上げてきて、僕は絶叫した。
光は一平を追い立てると、手際よくあずみのセーラー服を脱がしにかかった。
あずみは顔中に玉のような汗を浮かべ、苦しげにはあはあ喘いでいる。
「お兄ちゃん、どこ? あずみ、どうなるの?」
眼が見えていないのか、視線をあらぬほうにさまよわせ、うわ言みたいにそんなことを言った。
「しゃべるな。俺はここにいる。だから」
僕は力を込め、あずみの右手をぎゅっと握った。
小さい頃、よくつないでいたこの手。
でも、ぬくもりがどんどん失われていくのは、なぜなんだ?
「ひどいわね…」
セーラー服を脱がし終えると、光が痛々しそうにつぶやいた。
見ると、あずみの平らな腹には真っ赤な穴がぽっかりと口を開き、血だまりの中に弾けた白い脂肪層やピンクの内臓が見えていた。
傷口の周囲の皮膚が紫色に変色し、その範囲が見ているうちにもじわじわ拡大していく。
「これ…毒かも。ムカデの仲間には、強力な神経毒、持ってるの、いるから」
そこに4人分のバッグやリュックを抱えた一平が、よろよろと戻ってきた。
「おらよ」
どさりと通路の床にバッグ類を投げ出すと、蒼い顔で辛そうにため息をついた。
僕と一平で飲料水のペットボトルを取り出して床に並べると、全部で6本あった。
光がその水で濡らしたハンカチを使い、丁寧に傷口の周囲を拭う。
最後にセーラー服を縦に引き裂くと、包帯代わりにあずみの胴にぐるぐる巻いた。
だが、あずみの容態は悪化していくばかりだった。
くちびるが紫色になり、瞳が見る間に光を失っていく。
手足の先が小刻みにぶるぶる震え、大粒の涙が色を失った頬を伝って落ちた。
「お兄ちゃん、どこ? 行っちゃいや。あずみを置いて行かないで」
「だから、ここにいるってば」
僕はあずみの右手を両手で握りしめ、額に押し当てた。
光が一平の手を引いて、傍を離れていくのがわかった。
あずみの死期を悟り、兄妹水入らずにしてやろうという親切心なのかもしれなかった。
「あずみね、お兄ちゃんのこと、ほんとに好きだった。小さい時から、初めて会った時から…。お兄ちゃん、あずみにはずっと優しくて、かっこよくて、可愛くて…。だから、結婚するって、心の中で決めてた。誰が何といおうと、高校出たら、絶対するんだって。でも、もう、それもダメになっちゃったみたい…」
あずみの声が小さくなっていく。
風船から空気が抜けるみたいに、あずみの肉体から命が失われていく…。
「だめになんか、なってないだろ!」
僕は叫んだ。
「いいか、あずみ、よく聞け。おまえは地球人よりずっと優秀な、マルデック人とかの生まれ変わりなんだ。だからこの程度のことで、死ぬわけないんだよ!」
一生懸命叫んだのに、もうあずみは応えなかった。
瞳がガラス玉に変わり、ガクッと首が横に落ちた。
「う、うそだろ…?」
激烈な悲しみがこみ上げてきて、僕は絶叫した。
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