14 / 400
#12 反応する肉体④
しおりを挟む
ラウンジには、ひと組の家族連れがいるだけだった。
緑の丘を見下ろす窓側の席で、若い夫婦と幼女が丸テーブルを囲んで座っている。
祖父か祖母の見舞いに訪れた家族というところなのだろう。
みんな健康そうで、3人のうちの誰かが患者であるという感じではない。
「シーッ! 聞こえるでしょ!」
琴子より若そうな、まだ20代と思われる母親が子どもを叱っている。
「変な人に声かけちゃだめ! 何されるかわからないから」
横目でにらむ母親は、下着姿で現れた琴子にあからさまな嫌悪を抱いているようだった。
琴子は踵を返してこのまま病室に帰りたくなった。
変な人。
まさに今の私は、変態そのものなのだ。
精神病棟から抜け出してきた患者だと思われても、不思議ではないくらい。
と、左手に持ったスマホから和夫の声がした。
「逃げちゃだめだ。まず、このスマホを窓枠に置いて、ラウンジ全体が見えるようにするんだ。こんなチャンス、ないだろ? かあさんの魅力を、赤の他人にアピールするんだよ」
スカイプを起動させたスマホは、テレビ電話になっている。
画面からこっちを見ているのは、ミイラ男のような和夫である。
「わかった…」
苦い唾を呑み込んで、琴子はうなずいた。
和夫に逆らうことはできない。
これしきのことで彼が満足するなら、私はそれを実行するしかない…。
家族連れの横をすり抜け、窓辺に立つ。
強化ガラスの嵌まった180度展望の窓には、5センチくらいの枠が出ている。
その上にスマホを置くと、琴子はまた家族連れの横を通って、左手の流し台に近づいた。
流し台の横はちょっとしたドリンクバーになっていて、無料でジュースやコーヒーが飲めるドリンクディスペンサーが何台か置いてある。
ガラスのコップを水道でゆすぎ、アイスコーヒーの台の下に置いて、溜まっていく焦げ茶色の液体を見ていると、尻のあたりにふいに焼けつくような視線を感じ、琴子はどきりとした。
相手の予想はついていた。
家族連れの中の、若い父親である。
嫌悪感を剥き出しにする妻とは正反対に、夫のほうは琴子がラウンジに入ってきた時から、いかにも興味津々といった様子だった。
妻と子の手前、露骨に長い時間見つめてくることはなかったが、琴子がそばを通るたび、家族の隙をうかがっては、舐めるように全身を眺め回してくるのだ。
見られてる…。
私、こんな恥ずかしい恰好でいるところ、知らない男に見られてるんだ…。
緊張で喉がカラカラになり、上顎の内側に舌が貼りついてしまう。
執拗な視線の主は、真面目そうな、サラリーマン風の男だった。
カジュアルな服装をしているが、勤め先ではそれなりの地位にあるのだろう。
歳の割に落ち着いた雰囲気を醸し出していた。
その男が、今にも襲いかからんばかりに欲情をたぎらせて、私の身体を見つめている…。
太腿と太腿の間が、ぬるぬるしているのがわかった。
胸の一部だけを隠した卑猥なデザインのブラジャーの下で、両の乳首が硬くなり始めている。
グラスにコーヒーが一杯になると、琴子は胸をドキドキさせながら、家族連れのすぐ隣のテーブルに座った。
緑の丘を見下ろす窓側の席で、若い夫婦と幼女が丸テーブルを囲んで座っている。
祖父か祖母の見舞いに訪れた家族というところなのだろう。
みんな健康そうで、3人のうちの誰かが患者であるという感じではない。
「シーッ! 聞こえるでしょ!」
琴子より若そうな、まだ20代と思われる母親が子どもを叱っている。
「変な人に声かけちゃだめ! 何されるかわからないから」
横目でにらむ母親は、下着姿で現れた琴子にあからさまな嫌悪を抱いているようだった。
琴子は踵を返してこのまま病室に帰りたくなった。
変な人。
まさに今の私は、変態そのものなのだ。
精神病棟から抜け出してきた患者だと思われても、不思議ではないくらい。
と、左手に持ったスマホから和夫の声がした。
「逃げちゃだめだ。まず、このスマホを窓枠に置いて、ラウンジ全体が見えるようにするんだ。こんなチャンス、ないだろ? かあさんの魅力を、赤の他人にアピールするんだよ」
スカイプを起動させたスマホは、テレビ電話になっている。
画面からこっちを見ているのは、ミイラ男のような和夫である。
「わかった…」
苦い唾を呑み込んで、琴子はうなずいた。
和夫に逆らうことはできない。
これしきのことで彼が満足するなら、私はそれを実行するしかない…。
家族連れの横をすり抜け、窓辺に立つ。
強化ガラスの嵌まった180度展望の窓には、5センチくらいの枠が出ている。
その上にスマホを置くと、琴子はまた家族連れの横を通って、左手の流し台に近づいた。
流し台の横はちょっとしたドリンクバーになっていて、無料でジュースやコーヒーが飲めるドリンクディスペンサーが何台か置いてある。
ガラスのコップを水道でゆすぎ、アイスコーヒーの台の下に置いて、溜まっていく焦げ茶色の液体を見ていると、尻のあたりにふいに焼けつくような視線を感じ、琴子はどきりとした。
相手の予想はついていた。
家族連れの中の、若い父親である。
嫌悪感を剥き出しにする妻とは正反対に、夫のほうは琴子がラウンジに入ってきた時から、いかにも興味津々といった様子だった。
妻と子の手前、露骨に長い時間見つめてくることはなかったが、琴子がそばを通るたび、家族の隙をうかがっては、舐めるように全身を眺め回してくるのだ。
見られてる…。
私、こんな恥ずかしい恰好でいるところ、知らない男に見られてるんだ…。
緊張で喉がカラカラになり、上顎の内側に舌が貼りついてしまう。
執拗な視線の主は、真面目そうな、サラリーマン風の男だった。
カジュアルな服装をしているが、勤め先ではそれなりの地位にあるのだろう。
歳の割に落ち着いた雰囲気を醸し出していた。
その男が、今にも襲いかからんばかりに欲情をたぎらせて、私の身体を見つめている…。
太腿と太腿の間が、ぬるぬるしているのがわかった。
胸の一部だけを隠した卑猥なデザインのブラジャーの下で、両の乳首が硬くなり始めている。
グラスにコーヒーが一杯になると、琴子は胸をドキドキさせながら、家族連れのすぐ隣のテーブルに座った。
0
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる