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#56 窃視
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猛烈な吐気と頭痛で目が覚めた。
寝室の中に漂っているのは、色濃いアルコール臭だった。
昨夜、あれから和夫を部屋に追い込むなり、つい酒に手を出してしまったのだ。
もとより琴子は飲めるほうではない。
むしろ、アルコールには弱いほうだといっていい。
が、隣の家の女に夫を取られたとなると、さすがに飲まずにはいられなかった。
だから、正一の書斎にあったブランデーを生のまま煽るように喉に流し込んでしまったのだが、それがいけなかったのである。
床を這うようにしてトイレにたどり着き、胃がひっくり返るほど吐いた。
胃液しか出てこなくなると、今度は便器に跨って膀胱と腸の中のものを出し切った。
へとへとになってトイレから出て、そのまま裸になり、浴室で熱いシャワーを浴びる。
ようやく頭痛が収まってくると、琴子は居間のソファにへたりこんだ。
箪笥の上の置時計は、朝の10時を示している。
正一は琴子が泥酔して寝ている間に一度戻ってきてまた出て行ったらしく、書斎には通勤用の鞄がなかった。
そのことに、琴子は正直、ほっとしていた。
なんにせよ、夫との正面対決を免れることができたのだ。
いつまでも先送りにするわけにはいかない。
そのくらいのことは、重々わかっている。
が、正面切って正一を糾弾する勇気は、どうしても出なかった。
決定的な証拠がないという理由もある。
PCの画像はもう残っていないし、ゆうべのことだって、ひょっとしたら和夫の出まかせかもしれないのだ。
心の底では、そうではないと薄々わかっている。
でも、認めたくなかった。
認めたら最後、琴子は決断を迫られる。
いや、気の弱い自分より、先に決断するのは正一のほうだろう。
もしここで無理に選択を促して、正一が離婚を選んでしまったとしたら・・・。
それ以上、考えたくなかった。
耳を澄ます。
幸い、和夫はまだ眠っているようだ。
ならば、今のうちに朝昼兼用の食事の用意をしておこう。
家事にせいを出して、いやなことを忘れるのだ・・・。
なにがきっかけだったのか、わからない。
着ているTシャツの裏地に乳首がこすれたのか。
あるいは、テーブルの角にスカート越しに股間が触れたからなのか。
それとも、食材の中のひとつの手触りに、肌がなにかの感触を思い出したのか・・・。
ひと通り食事の支度を終え、キッチンで手を洗っている時だった。
琴子はふいに突き上げるような性欲を覚えて、ぎくりと身を震わせた。
きのうまでの病院での出来事が、突然、堰を切ったように記憶に甦ったのだ。
ふと気がつくと、両手でTシャツの上から乳房を鷲掴みにしていた。
朝起き抜けだから、ブラジャーはしていない。
手のひらに当たる感触から、痛いほど乳首が勃起しているのがわかった。
たまらなかった。
テーブルの角に股間をすりつけ、腰を左右に振りながら、布越しに乳首をつまむ。
刺すような快感に、太腿のつけ根が急に熱を帯び始め、立っていられなくなってきた。
スカートをめくり上げ、パンティを剥き出しにする。
脚を開いて股間に右手を差し入れると、そこはすでにいやらしく湿っていた。
「ああ・・・」
ひと声喘ぐと、琴子は壁を背にずるずると床に崩れ落ちた。
脚を曲げ、限界まで膝を開いて、下着の上から陰部を撫でさする。
左手はTシャツの下に潜り込み、じかに乳房を揉んでいる。
否が応でも興奮が高まり、琴子の中でなにかが音を立ててはずれたようだった。
もどかしげにパンティを脱ぎ、左手の2本の指で潤った肉襞を押し開き、隙間に右手の人差し指を突き入れる。
「あふ・・・い、いい・・・」
思わず声に出してうめいた時だった。
だしぬけに硝子戸が開く音がしたかと思うと、和夫の声が降ってきた。
「おはよう、かあさん。あれ? こんなところで何やってるの?」
そ、そんな・・・。
全身から血の気が引く思いだった。
見られた。
よりによって、和夫に。
でも、いつから?
この子、いつから見ていたのだろう?
あられもない姿の琴子の前に、あの仮面をかぶった和夫が回り込む。
「ち、違うの、これは」
あわてて脚を閉じ、身体を縮こまらせた琴子に、不気味なほどの無表情で、和夫が言った。
「隠さなくてもいいよ。そうか、やっぱりか。かあさん、欲求不満なんだろ? 誰かに気持ちいいことしてほしくて、もう、たまんないんだろ?」
寝室の中に漂っているのは、色濃いアルコール臭だった。
昨夜、あれから和夫を部屋に追い込むなり、つい酒に手を出してしまったのだ。
もとより琴子は飲めるほうではない。
むしろ、アルコールには弱いほうだといっていい。
が、隣の家の女に夫を取られたとなると、さすがに飲まずにはいられなかった。
だから、正一の書斎にあったブランデーを生のまま煽るように喉に流し込んでしまったのだが、それがいけなかったのである。
床を這うようにしてトイレにたどり着き、胃がひっくり返るほど吐いた。
胃液しか出てこなくなると、今度は便器に跨って膀胱と腸の中のものを出し切った。
へとへとになってトイレから出て、そのまま裸になり、浴室で熱いシャワーを浴びる。
ようやく頭痛が収まってくると、琴子は居間のソファにへたりこんだ。
箪笥の上の置時計は、朝の10時を示している。
正一は琴子が泥酔して寝ている間に一度戻ってきてまた出て行ったらしく、書斎には通勤用の鞄がなかった。
そのことに、琴子は正直、ほっとしていた。
なんにせよ、夫との正面対決を免れることができたのだ。
いつまでも先送りにするわけにはいかない。
そのくらいのことは、重々わかっている。
が、正面切って正一を糾弾する勇気は、どうしても出なかった。
決定的な証拠がないという理由もある。
PCの画像はもう残っていないし、ゆうべのことだって、ひょっとしたら和夫の出まかせかもしれないのだ。
心の底では、そうではないと薄々わかっている。
でも、認めたくなかった。
認めたら最後、琴子は決断を迫られる。
いや、気の弱い自分より、先に決断するのは正一のほうだろう。
もしここで無理に選択を促して、正一が離婚を選んでしまったとしたら・・・。
それ以上、考えたくなかった。
耳を澄ます。
幸い、和夫はまだ眠っているようだ。
ならば、今のうちに朝昼兼用の食事の用意をしておこう。
家事にせいを出して、いやなことを忘れるのだ・・・。
なにがきっかけだったのか、わからない。
着ているTシャツの裏地に乳首がこすれたのか。
あるいは、テーブルの角にスカート越しに股間が触れたからなのか。
それとも、食材の中のひとつの手触りに、肌がなにかの感触を思い出したのか・・・。
ひと通り食事の支度を終え、キッチンで手を洗っている時だった。
琴子はふいに突き上げるような性欲を覚えて、ぎくりと身を震わせた。
きのうまでの病院での出来事が、突然、堰を切ったように記憶に甦ったのだ。
ふと気がつくと、両手でTシャツの上から乳房を鷲掴みにしていた。
朝起き抜けだから、ブラジャーはしていない。
手のひらに当たる感触から、痛いほど乳首が勃起しているのがわかった。
たまらなかった。
テーブルの角に股間をすりつけ、腰を左右に振りながら、布越しに乳首をつまむ。
刺すような快感に、太腿のつけ根が急に熱を帯び始め、立っていられなくなってきた。
スカートをめくり上げ、パンティを剥き出しにする。
脚を開いて股間に右手を差し入れると、そこはすでにいやらしく湿っていた。
「ああ・・・」
ひと声喘ぐと、琴子は壁を背にずるずると床に崩れ落ちた。
脚を曲げ、限界まで膝を開いて、下着の上から陰部を撫でさする。
左手はTシャツの下に潜り込み、じかに乳房を揉んでいる。
否が応でも興奮が高まり、琴子の中でなにかが音を立ててはずれたようだった。
もどかしげにパンティを脱ぎ、左手の2本の指で潤った肉襞を押し開き、隙間に右手の人差し指を突き入れる。
「あふ・・・い、いい・・・」
思わず声に出してうめいた時だった。
だしぬけに硝子戸が開く音がしたかと思うと、和夫の声が降ってきた。
「おはよう、かあさん。あれ? こんなところで何やってるの?」
そ、そんな・・・。
全身から血の気が引く思いだった。
見られた。
よりによって、和夫に。
でも、いつから?
この子、いつから見ていたのだろう?
あられもない姿の琴子の前に、あの仮面をかぶった和夫が回り込む。
「ち、違うの、これは」
あわてて脚を閉じ、身体を縮こまらせた琴子に、不気味なほどの無表情で、和夫が言った。
「隠さなくてもいいよ。そうか、やっぱりか。かあさん、欲求不満なんだろ? 誰かに気持ちいいことしてほしくて、もう、たまんないんだろ?」
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