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#67 隣家の女④
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一気に全身の皮膚が粟立つような、そんな異様な感覚に琴子はひどく狼狽した。
「私には、あなたが何を言いたいのか、さっぱりわかりません。不愉快です。もう、帰らせていただきます!」
怒ったようにテーブルを叩いて立ち上がったのは、その感覚に混じる疼くような期待感に気づいたからだった。
「嘘です。琴子さんは、もうすでにおわかりですよね。私がレズビアンで、あなたをお慕いしていることを」
仁美は一歩も引き下がる気配を見せない。
変に熱いまなざしを、琴子の顔にじっと注いでいるだけだ。
「やめてください! 私にはそんな趣味はありません!」
テーブルを離れようとした瞬間、仁美が身を乗り出して、琴子の右手首をつかんできた。
「何するの! 放して!」
パニックに陥りかけた琴子を、尚も上目遣いに見つめる仁美。
「何もそんなに拒絶しなくても・・・一度、試させてくれてもいいじゃないですか。女同士の行為って、それはそれは良いものなんですよ。男と違って、繊細で、感じるツボを・・・」
「やめてったら!」
瞬間、どす黒い怒りが爆発し、はっと我に返った時には、琴子はすがりつく仁美を両手で思いきり突き飛ばしていた。
「あ」
喉の奥で短い悲鳴を上げ、後ろに吹っ飛んだ仁美が柱に背中を打ちつけて、ぐったりとなった。
「悪い冗談はよしてください! わたしはそんなつもりで・・・」
言いかけた非難の言葉が、琴子の口の中でフェードアウトした。
頭を俯けたまま、仁美はぴくりとも動かない。
「朝比奈さん? 大丈夫ですか? 朝比奈さん?」
呼びかけてみるが、反応がない。
琴子は顔から音を立てて血の気が引くのを感じた。
打ち所が悪かったのだろうか。
もしそうなら、大変だ。
救急車を呼ばなければ。
あわてふためき、ハンドバッグからスマホを取り出した時だった。
「大丈夫です・・・興奮したから、ちょっと、心臓が・・・」
仁美が顔を上げ、両手で胸を押さえながら、弱々しく声を発した。
「ごめんなさい・・・ひどいことしちゃって・・・。そんなつもりじゃなかったの。ちょっと私、びっくりして」
仁美の傍らに跪くと、琴子は震えながら、その顔をのぞきこんだ。
仁美は貧血でも起こしたかのように、真っ白な顔色をしている。
心臓云々は、どうやら嘘ではないようだ。
「よかったら、ソファに寝かせてください・・・。お薬は、その棚の硝子戸の中にありますから、後でお水を・・・」
「わかったわ」
仁美の太腿の裏と腋の下に腕を入れると、琴子は渾身の力を振り絞って、その痩せた身体を持ち上げた。
仁美の身体は、骨がないように柔らかく、しかも風邪でも引いているかのように熱かった。
それでも、膝を使って、なんとかソファの上に横たえることに成功した。
「お水とお薬、取ってくるわ」
そう言い置いて、琴子が立ち上がりかけた、その刹那だった。
やおら仁美の両腕が動いて、軟体動物の触手のようにぬるりと琴子の首に巻きついた。
「な、なあに?」
突然のことに、琴子は激しく動揺した。
「いや・・・行かないで。もう少し、ここに居て」
もう、逃げられなかった。
琴子の耳の穴に舌を這わせながら、ねっとりとした口調で、仁美がささやいた。
「私には、あなたが何を言いたいのか、さっぱりわかりません。不愉快です。もう、帰らせていただきます!」
怒ったようにテーブルを叩いて立ち上がったのは、その感覚に混じる疼くような期待感に気づいたからだった。
「嘘です。琴子さんは、もうすでにおわかりですよね。私がレズビアンで、あなたをお慕いしていることを」
仁美は一歩も引き下がる気配を見せない。
変に熱いまなざしを、琴子の顔にじっと注いでいるだけだ。
「やめてください! 私にはそんな趣味はありません!」
テーブルを離れようとした瞬間、仁美が身を乗り出して、琴子の右手首をつかんできた。
「何するの! 放して!」
パニックに陥りかけた琴子を、尚も上目遣いに見つめる仁美。
「何もそんなに拒絶しなくても・・・一度、試させてくれてもいいじゃないですか。女同士の行為って、それはそれは良いものなんですよ。男と違って、繊細で、感じるツボを・・・」
「やめてったら!」
瞬間、どす黒い怒りが爆発し、はっと我に返った時には、琴子はすがりつく仁美を両手で思いきり突き飛ばしていた。
「あ」
喉の奥で短い悲鳴を上げ、後ろに吹っ飛んだ仁美が柱に背中を打ちつけて、ぐったりとなった。
「悪い冗談はよしてください! わたしはそんなつもりで・・・」
言いかけた非難の言葉が、琴子の口の中でフェードアウトした。
頭を俯けたまま、仁美はぴくりとも動かない。
「朝比奈さん? 大丈夫ですか? 朝比奈さん?」
呼びかけてみるが、反応がない。
琴子は顔から音を立てて血の気が引くのを感じた。
打ち所が悪かったのだろうか。
もしそうなら、大変だ。
救急車を呼ばなければ。
あわてふためき、ハンドバッグからスマホを取り出した時だった。
「大丈夫です・・・興奮したから、ちょっと、心臓が・・・」
仁美が顔を上げ、両手で胸を押さえながら、弱々しく声を発した。
「ごめんなさい・・・ひどいことしちゃって・・・。そんなつもりじゃなかったの。ちょっと私、びっくりして」
仁美の傍らに跪くと、琴子は震えながら、その顔をのぞきこんだ。
仁美は貧血でも起こしたかのように、真っ白な顔色をしている。
心臓云々は、どうやら嘘ではないようだ。
「よかったら、ソファに寝かせてください・・・。お薬は、その棚の硝子戸の中にありますから、後でお水を・・・」
「わかったわ」
仁美の太腿の裏と腋の下に腕を入れると、琴子は渾身の力を振り絞って、その痩せた身体を持ち上げた。
仁美の身体は、骨がないように柔らかく、しかも風邪でも引いているかのように熱かった。
それでも、膝を使って、なんとかソファの上に横たえることに成功した。
「お水とお薬、取ってくるわ」
そう言い置いて、琴子が立ち上がりかけた、その刹那だった。
やおら仁美の両腕が動いて、軟体動物の触手のようにぬるりと琴子の首に巻きついた。
「な、なあに?」
突然のことに、琴子は激しく動揺した。
「いや・・・行かないで。もう少し、ここに居て」
もう、逃げられなかった。
琴子の耳の穴に舌を這わせながら、ねっとりとした口調で、仁美がささやいた。
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