上 下
452 / 471
第6章 ネオ・チャイナの野望

#46 アニマ奪還作戦②

しおりを挟む
 部屋に戻る前に、湯あみすることにした。

 出陣となれば、また当分の間、お風呂はおあずけだ。

「お身体、お流ししましょうか?」

 ひとり地下浴場へ赴くと、どこから姿を現したのか、サトが棕櫚の葉の陰から声をかけてきた。

 サトは全裸に薄物をまとっただけという、いわゆる準備万端のスタイルである。

「いいわね」
 
 ショートパンツと、革のジャケットを脱ぎながら、ルビイは悪戯っぽく微笑んだ。

 宮廷の大浴場は、プールほどもある広さである。

 大理石を組んだ広間に、何面もの浴槽が設えられている。

 浴槽には大きいものも小さいものも、また深いものも浅いものもあり、ありとあらゆる年齢層が楽しめるようになっている。

 汗ばんだ躰を湯で清めて、最も大きな浴槽に滑り込む。

 平泳ぎでゆっくりお湯を掻きながら一周して戻ってくると、全裸のサトがふくよかな胸でルビイを抱きしめた。

「ネオ・ホンコンへは距離の短い陸路にしますか? あるいは安全重視で海路という手もありますけど」

 二人並んで浴槽の縁に座ると、ルビイの肌をタオルで拭きながら、サトが話しかけてきた。

「二手に分かれたらどうかと思うの。隊の規模が大きくなればなるほど目立ってしまう。ならば、陸路と海路に分かれて進む」

 サトに身を任せて、ルビイは答えた。

 ルビイ自身の経験からして、アニマを長い間放置しておくのは危険すぎる。

 一刻も早く奪還しなければならない。

 ならば。最も速いのはルビイのモーターサイクルだ。
 
 ルビイひとりがハーレーを飛ばして砂漠を横断し、先にネオ・ホンコンに潜入する。

 後の者は、退路を確保するために、商船に艤装して、アニマを救い出したルビイを港で待つ。

「ならば船はマグナたちに任せましょう。サトはルビイさまのお供をいたします」

 ルビイの乳首を摘まみ、弄りながら、サトが言う。

「アニムスを連れて行こうと思ってたんだけど」

「アニムスは危険です。アニマのことで冷静さを欠いています。いざという時、何をしでかすかわかりません」

「まあ、アニマが拉致されたのは、自分のせいだと思い込んでるみたいだからね。ただ、彼のほうが、あなたよりは戦力になる。色仕掛けで切り抜けられることばかりじゃないからね」

「それなら、3人で陸路というのはどうですか? サイドカーをつければ、できないことはありませんよ」

「なるほど」

 ルビイはうなずいた。

「船にはマグナとエリス、それと近衛兵団の精鋭部隊というわけね」

「アニムスはサトが監督しましょう。暴走しないように」

「あの子の筆おろしでもするつもり?」

 ルビイがからかうと、生真面目な顔でサトが首を横に振った。

「いいえ。それならもう、済んでます」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結・短編】game

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:119

落ちこぼれ治癒聖女は幼なじみの騎士団長に秘湯で溺愛される

恋愛 / 完結 24h.ポイント:759pt お気に入り:616

転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:688pt お気に入り:358

公爵子息、何度も言いますが、私を巻き込まないで下さい

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:241pt お気に入り:281

孤独なまま異世界転生したら過保護な兄ができた話

BL / 連載中 24h.ポイント:60,109pt お気に入り:3,678

処理中です...