君よ、涙の海を渡れ

戸影絵麻

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#7

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 どういうことなのだろう?

 その夜、あたしは机の前に座って色々思いをめぐらせた。

 明日提出の宿題も、今週いっぱいが締め切りの課題のレポートも、まるで手をつける気になれなかった。

 確かにこれは、単に「おめでとう! よかったね!」で済ませてしまえばいい話なのかもしれない。

 真帆ちゃんは昏睡状態から奇跡的に復活を遂げ、水泳の世界にカムバックした。

 五輪に出られれば、まさしく彼女の夢である、イルカみたいになること、を実現したことになるはずだ。

 そこには今や彼女なりの生活があるはずだし、怖くて途中でお見舞いにも行かなくなってしまった薄情者のあたしや、興味本位で彼女のニュースをチェックしていた風花なんかの出る幕はない。

 でも、と思うのだ。

 考えてみればおかしなことばかり。

 普通、子どもが脳死状態になったからといって、両親が離婚などするものだろうか。

 更に、家まで売却して、しかも、母親のほうは実家に帰ってしまうだなんて。

 他人の家庭のことをとやかく言う権利など、たかが高校生にすぎないあたしにはないわけだし、大人ともなれば、あたしたち子供にはわからないさまざまな事情を抱えているということもあるのだろう。

 けど、だからといって、これは…。

 責任放棄も、はなはだしい。

 半年前には、真帆ちゃんはもう退院してたってことなのだろうか。

 もしまだ治療中だったなら、その治療費はだれが払っていたというのだろう。

 おかしいおかしいおかしい。

 そんなの、絶対に納得できない。

 こうなったら、やっぱり、真帆ちゃんに直接会って、自分の口からおめでとうを言いたい。

 そしてできれば、これまでの薄情者の自分を謝りたい。

 
 では、どうしたら真帆ちゃんに会うことができるのか。

 考えられる方法は、ふたつある。

 ひとつは、真帆ちゃんの入院していた病院に行くこと。

 風花は、「もしかして、一ノ瀬、まだ病院にいるんじゃないの?」

 などと言っていた。

 両親がいなくなり、病院が彼女の面倒を見ているということだ。

 なぜって、彼女は水泳界の期待の星だから、国か何かの公的な援助を受けてー。

 そして、もう一つは、以前、真帆ちゃんから聞いたあの言葉。

 -実はね、うちのパパも、水族館で働いてるんだー

 そう、水族館。

 バンドウイルカの”おーちゃん”のいる、あの水族館に行けば、彼女のパパに会えるかもしれないのだ。 
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