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「そ、そんなはず、ありません」
あたしは食い下がった。
「あたしたち、真帆ちゃんがこの病院の救急車で運ばれるところ、ちゃんと見たんです」
「と言われましても…」
初老の警備員の顔に困惑の表情が浮かんだ。
「入院患者さんのリストに、一ノ瀬真帆さんですか、その名前がないんですよ」
「偽名で入院してるのかな」
あたしの隣で風花がつぶやいた。
「オリンピック候補のアスリートだから、世間の目から逃れるためにさ」
「う~ん、そうかも」
ここはいったん引き下がるしかない。
自動ドアをくぐって外に出た。
その時になって、あたしは気づいた。
病院の駐車場は丈高い並木に囲まれていて、外の道路と隔てられているのだが、その並木に黒いものがびっしりぶら下がっている。
「ここにもコウモリが…」
「やっぱり」
風花がバッグの上から例の本を撫でた。
「真帆が彼らの女王さまなんだよ」
ふいに声が聞こえたのは、その時だった。
「あの子に会いたいのか」
振り向くと、今しがたあたしたちが出て来たドアの横に、あのフードの青年が佇んでいた。
「あ、は、はい…」
つられてうなずくと、
「なら、こっちだ。ただし、後悔してもしらないぞ」
フードの奥で赤い双眸を不気味に光らせて、驚き戸惑うあたしたちに、謎の青年がそう告げた。
あたしは食い下がった。
「あたしたち、真帆ちゃんがこの病院の救急車で運ばれるところ、ちゃんと見たんです」
「と言われましても…」
初老の警備員の顔に困惑の表情が浮かんだ。
「入院患者さんのリストに、一ノ瀬真帆さんですか、その名前がないんですよ」
「偽名で入院してるのかな」
あたしの隣で風花がつぶやいた。
「オリンピック候補のアスリートだから、世間の目から逃れるためにさ」
「う~ん、そうかも」
ここはいったん引き下がるしかない。
自動ドアをくぐって外に出た。
その時になって、あたしは気づいた。
病院の駐車場は丈高い並木に囲まれていて、外の道路と隔てられているのだが、その並木に黒いものがびっしりぶら下がっている。
「ここにもコウモリが…」
「やっぱり」
風花がバッグの上から例の本を撫でた。
「真帆が彼らの女王さまなんだよ」
ふいに声が聞こえたのは、その時だった。
「あの子に会いたいのか」
振り向くと、今しがたあたしたちが出て来たドアの横に、あのフードの青年が佇んでいた。
「あ、は、はい…」
つられてうなずくと、
「なら、こっちだ。ただし、後悔してもしらないぞ」
フードの奥で赤い双眸を不気味に光らせて、驚き戸惑うあたしたちに、謎の青年がそう告げた。
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