4 / 58
#3 能力
しおりを挟む
コンビニの店員にねちねちと文句を言われ、解放されたのは30分以上経ってからのことだった。
ほとほと疲れ果ててしまい、気分もすぐれなかったが、それでも芙由子は心の底から安堵していた。
トラブルをを未然に防ぐことができたのだ。
そのことだけは、間違いない。
他人の”悪意”を見る。
それを、能力と呼ぶべきかどうか、芙由子にもわからない。
物心つく頃には、すでに身に備わっていた。
DVの権化のような父のもとで育った数年間が、幼い芙由子にその”力”を授けたのかもしれない。
その後両親が離婚し、祖母に預けられることになっても、その”力”は消えなかった。
人を傷つけるほどの悪意。
それが芙由子には、見える。
ちょうどさっき、コンビニで遭遇した男の場合のように。
見たくなくても、見えてしまうのだ。
そんな力、ちっともありがたいとは思わない。
むしろ、芙由子にとっては、心労の種である。
だが、あの日、その考えは大きく軌道修正せざるを得なくなった。
思い出すと、今でも胸が張り裂けるように痛む。
私に、もっと、勇気があったら。
苦渋の念とともに、そう思う。
”力”は、自分の身を守るためだけに存在するのではない。
使い方によっては、人の命をも、救うことができるのだ。
ついさっき、あのコンビニで、店員の命を救ったように。
あの時、それに気づいてさえいれば、あんなに多くの人が、死なずに済んだかもしれないのに…。
コンビニの駐車場を横切り、ガランとした国道を渡った。
黒々とした畑の向こうに、ささやかな住宅地が見える。
芙由子の家は、その一角にある。
ほとほと疲れ果ててしまい、気分もすぐれなかったが、それでも芙由子は心の底から安堵していた。
トラブルをを未然に防ぐことができたのだ。
そのことだけは、間違いない。
他人の”悪意”を見る。
それを、能力と呼ぶべきかどうか、芙由子にもわからない。
物心つく頃には、すでに身に備わっていた。
DVの権化のような父のもとで育った数年間が、幼い芙由子にその”力”を授けたのかもしれない。
その後両親が離婚し、祖母に預けられることになっても、その”力”は消えなかった。
人を傷つけるほどの悪意。
それが芙由子には、見える。
ちょうどさっき、コンビニで遭遇した男の場合のように。
見たくなくても、見えてしまうのだ。
そんな力、ちっともありがたいとは思わない。
むしろ、芙由子にとっては、心労の種である。
だが、あの日、その考えは大きく軌道修正せざるを得なくなった。
思い出すと、今でも胸が張り裂けるように痛む。
私に、もっと、勇気があったら。
苦渋の念とともに、そう思う。
”力”は、自分の身を守るためだけに存在するのではない。
使い方によっては、人の命をも、救うことができるのだ。
ついさっき、あのコンビニで、店員の命を救ったように。
あの時、それに気づいてさえいれば、あんなに多くの人が、死なずに済んだかもしれないのに…。
コンビニの駐車場を横切り、ガランとした国道を渡った。
黒々とした畑の向こうに、ささやかな住宅地が見える。
芙由子の家は、その一角にある。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
21
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる