23 / 58
#22 標語
しおりを挟む
不思議な現象だった。
バツ印に傷をつけられた芙由子の乳房。
それが…。
比奈の小さな指先が触れた所から、表皮の傷が塞がり、嘘のように血のにじみが止まっていく。
それと並行して、初めからなかったかのように痛みが引いていき、呼吸が急速に楽になった。
痺れたような頭で、芙由子は反芻していた。
比奈の目の周りのあのあざ…。
ひょっとすると、あれもこの子が自分で…治した…?
芙由子は、驚きに見開いた眼を、おそるおそる比奈に向けた。
「し、信じられない。ほ、ほんとに、治っちゃった…。でも、これ、どういうこと?」
比奈が悲しげに首を横に振った。
できるけど、なぜできるのか、自分でもわからない。
そんな表情をしている。
「パパとママは、嫌いなの」
やがて、ぽつんと比奈が言った。
そして、押し入れに戻っていくと、表紙の破れかけた大学ノートを持ってきた。
「なあに?」
比奈が開いて見せたのは、大きなひらがなで書いた標語みたいなものだった。
ちびた鉛筆で、よほど一生懸命書いたのだろう。
中身を読む前から、その姿が想像できるようで、芙由子はまたしても泣けてきた。
いち いたいときはいたいといえ。
に いたいときは、なけ。
さん きずを、なおすな
よん まい日、ひらがなとかんじのれんしゅうをしろ
ご まいあさ、四じにおきて、くるしくなるまでたいそうをしろ
ろく ごはんは一日、いっかいだけ
なな かってにそとにでるな
はち パパとママにさからうな
く まい日、おふろとといれのそうじをしろ
とお へんじのときいがいは、くちをきくな
「ひどいね…」
読み終えるなり、芙由子はノートを裸の胸に抱きしめた。
この子は、いったいどんな思いで、これを書いたのだろう。
そう考えるだけで、胸が張り裂けそうに痛んだ。
「あのね。比奈ちゃん」
少女の眼の高さに視点を合わせると、芙由子は噛んで含めるように、やさしい口調で話しかけた。
「もしも、もしもだよ。お姉ちゃんが、一緒に逃げようって言ったら、比奈ちゃんはどうする?」
バツ印に傷をつけられた芙由子の乳房。
それが…。
比奈の小さな指先が触れた所から、表皮の傷が塞がり、嘘のように血のにじみが止まっていく。
それと並行して、初めからなかったかのように痛みが引いていき、呼吸が急速に楽になった。
痺れたような頭で、芙由子は反芻していた。
比奈の目の周りのあのあざ…。
ひょっとすると、あれもこの子が自分で…治した…?
芙由子は、驚きに見開いた眼を、おそるおそる比奈に向けた。
「し、信じられない。ほ、ほんとに、治っちゃった…。でも、これ、どういうこと?」
比奈が悲しげに首を横に振った。
できるけど、なぜできるのか、自分でもわからない。
そんな表情をしている。
「パパとママは、嫌いなの」
やがて、ぽつんと比奈が言った。
そして、押し入れに戻っていくと、表紙の破れかけた大学ノートを持ってきた。
「なあに?」
比奈が開いて見せたのは、大きなひらがなで書いた標語みたいなものだった。
ちびた鉛筆で、よほど一生懸命書いたのだろう。
中身を読む前から、その姿が想像できるようで、芙由子はまたしても泣けてきた。
いち いたいときはいたいといえ。
に いたいときは、なけ。
さん きずを、なおすな
よん まい日、ひらがなとかんじのれんしゅうをしろ
ご まいあさ、四じにおきて、くるしくなるまでたいそうをしろ
ろく ごはんは一日、いっかいだけ
なな かってにそとにでるな
はち パパとママにさからうな
く まい日、おふろとといれのそうじをしろ
とお へんじのときいがいは、くちをきくな
「ひどいね…」
読み終えるなり、芙由子はノートを裸の胸に抱きしめた。
この子は、いったいどんな思いで、これを書いたのだろう。
そう考えるだけで、胸が張り裂けそうに痛んだ。
「あのね。比奈ちゃん」
少女の眼の高さに視点を合わせると、芙由子は噛んで含めるように、やさしい口調で話しかけた。
「もしも、もしもだよ。お姉ちゃんが、一緒に逃げようって言ったら、比奈ちゃんはどうする?」
0
あなたにおすすめの小説
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる