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#28 覚醒

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 物干し竿がからんという音を立て、元の位置に収まった。
 その音で我に返る瞬間、巧の頭に浮かんだのは、

ー雨が降る前に、なんとかしないとなー

 という認識だった。

「お兄ちゃん」
 サッシ窓の向こう側、部屋の中から乃亜の声がした。
「お兄ちゃんったら、何やってるの?」
「煙草だよ」
 巧はうるさそうに長い前髪をかき上げた。
「煙草ぐらい、ゆっくり吸わせてくれよな」
 階下が騒がしい。
 女の叫び声が聞こえた気がした。
 部屋の中に戻ると、巧は騒音を締め出すためにサッシ窓を閉め、にクレセント錠を固く下ろした。
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