汚れちまった悲しみに、きょうも血潮が降り注ぐ

戸影絵麻

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#45 餌食

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 意識が戻ると、裸にされていた。
 奇妙なのは、目の前の男も全裸になっていることだった。
 得体の知れぬ恐怖が比奈を襲った。
「たたかないで、ください」
 両腕で頭をかばって、懇願した。
「いい子にします。だから、いたいこと、しないで」
 父に教え込まれた台詞が、すらすらと口をついて出た。
 早く謝れば謝るほど、父の怒りが和らぐことを知っていたからだ。
 が、男は父とは別の行動基準を持っているようだった。
 目的が違うというのか。
 ただ比奈を折檻して憂さを晴らす父親とは、明らかに狙う部分が異なっていた。
「動くな。動いたら殺す」
 比奈の膝に手をかけ、ゆっくり左右に押し開きながら、そう言った。
 はあはあと荒い息を吐いている。
 瞳孔が点のように小さくなり、だらしなく開いた口から透明なよだれを垂らしていた。
「きれいだな」
 芋虫のような指が、比奈の内腿を撫でる。
 男の股間からは、比奈がこれまで見たこともない異様な物体がそそり立っている。
 その大きなソーセージのような物体は、先が赤く向け、濡れ濡れと光り、嫌な匂いを発している。
「舐めろ」
 男が言い、比奈の顔すれすれにその肉の棒を突き出した。
「いい子にするなら、こいつを舐めるんだ」
「…これを?」
 比奈の小さな手が、肉の筒を握る。
 肉でできているはずなのに、それはずいぶんと硬く、そして熱かった。
 鼻に近づけると、腐った魚のような臭いがした。
 気持ち悪くて、吐きそうになる。
「早く舐めろ。言うことが聞けないのか」
 男の声にあからさまな苛立ちがこもった。
「舐めないなら、このままおまえのおまんこにぶっこんでやる。おまんこが裂けてもしらないからな」
 おまんこ、が何を指すのか、比奈にはよくわからない。
 だが、断ったらひどいことになるのは薄々予想することができた。
 目をつぶって、目のない亀の頭みたいな”それ”に唇を触れさせた。
「うう、い、いいぞ」
 男がうめき、比奈の唇に沿って、亀頭をスライドさせる。
 右に左に動かして、唇の感触を楽しんでいるのだ。
「よし、今度は口を開け」
 比奈の下あごを指でつまんで、上ずった声で言う。
 指に力が入り、痛みに顔をしかめた比奈が丸く口を開いた。
「舌を伸ばして、こいつを舐めてみろ」
 おそるおそる、言われた通りにする。
 苦い味がして、舌の先がねちゃついた。
 男の器官の先端から、汁みたいなものが滲み出していて、それが例えようもなく不味いのだ。
「ちゃんと舐めろったら! 心がこもってないぞ!」
 じれた男が比奈の後頭部をつかんだ。
「こうなったら、思う存分咥えさせてやる。妹は兄にご奉仕するもんだ。そうだろう?」
 こんなの、いやだ…・
 比奈の目尻に涙がにじんだ。
 どうしてわたしだけ、いつも、こんなめにあわなきゃならないの…?
 そう思うと、悲しくてたまらなくなったのだ。
 
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