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#56 処刑

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 スマホからの中継を見た時から、殺害方法は決めてあった。
 何もリスクの高い果物ナイフを使うことはない。
 部屋の中にはもっといいものが転がっているのだ。
 舗道に人気がないことを確認して、車を塀沿いに移動させ、屋根に上がる。
 車の屋根を踏み台にして、一挙動で敷地内に飛び下りた。
 自慰のしすぎで足元がふらつき、つい苦笑する。
 が、スタミナはそれくらいで切れたりしない。
 そもそも、性的行為は巧にとってウォーミングアップみたいなものなのだ。
 植え込みを越え、ベランダによじ登る。 
 カーテンは閉まっているが、サッシ窓の内鍵は外されていた。
 半分ほど開けて、室内に滑り込む。
 カーテンのすき間から様子を窺うと、ハルトは仰向けに倒れた芙由子の顔の上に跨り、ペニスを口に突っ込んでいるところだった。
「いいよ、素敵だ。もうすぐ出るよ」
 ぶつぶつつぶやいて、獣のように腰を上下させ、芙由子の口に勃起した肉棒を突き立てている。
 芙由子は気でも失っているのか、硬く眼を閉じて、されるがままになっている。
 時折ぴくりと手足が痙攣するのは、まだ精神が愉悦の淵を漂っているからだろうか。
 オイルで濡れ光る芙由子の裸身は、あまりにも淫らでしどけなく、またしても巧の性欲を刺激した。
 これなら、犯行現場を芙由子に目撃されずに済む。
 どちらにしろ、巧にとっては好都合な条件がそろっているといえそうだった。
 忍び足でカーテンの裏側から抜け出し、足元に落ちていたロープを拾い上げた。
 芙由子を宙吊りにしていたもので、長さは十分にある。
 持参した果物ナイフを使い、フックの根元でロープを切断すると、両手に握ってハルトの背中に近づいた。
 後は、簡単だった。
 ハルトの首にロープを引っかけたまま、窓から外に飛び下りた。
 ロープの端をベランダに通し、全体重をかけて引き下げにかかった。
 かなりの重労働をやり遂げると、窓から首を吊ったハルトの頭部がせり上がってくるのが見えた。
 元からむくんだ顔は今はひどくうっ血し、眼窩からは眼球が、苦しげに開いた口からは紫色に変色した舌が飛び出している。
 ロープの端をベランダに固く結びつけ、車に戻る。
 車を元のコインパーキングまで移動させると、往来まで出て、予め見つけておいた電話ボックスに入った。
 110番をプッシュし、鼻をつまんで作り声を出す。
「あの、松村さんのお宅で、人が死んでいます」
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