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5. 夏が来た

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同年7月20日



期末考査が終わった。




高2の夏がはじまる。









クラスレクを終えた辺りから、朝井と永田 美波と連絡を取るようになった。





彼女とは、中間からどれだけ点数を上げられるか、という賭けをしていた。



彼女は成績もいいと以前言ったが、壊滅的に現代文と日本史が出来ないらしい。




僕は化学と地理が苦手だ。





(ちなみに僕らの高校では、2年は現代文、古典、数Ⅱ、数B、英語、化学、物理、日本史、地理のテストがある。 理系クラスだ。)





お互い出来ないレベルが等しいので、苦手科目をいかに上げ、得意科目をいかに維持するか勝負することにした。




彼女が話しかけてきた。



「新垣くーん、現文やっぱりだめだったよ~…」


僕の机に彼女は突っ伏す。





「僕もやっぱり地理がだめだ。いい勝負かもね」



僕は彼女の肩にぽんと手を置いた。





「もし私が勝ったら、のご褒美、忘れないでね?」



「わかってるよ」





もし彼女がこの勝負に勝てば、彼女は僕からのご褒美を貰える。 ご褒美は彼女自身が決めるらしい。




高2の夏は、まだ受験生と言うには早いし、まだまだ遊び盛り。 


僕は夏が好きなので、今からわくわくしている。







同年7月23日


期末の全教科が返された。 

明日は終業式。



勝負の結果、














彼女が勝った。


と言えども3点差。悔しい。




「やったー! 頑張った甲斐あったぁ」

彼女はほっと胸を撫で下ろし、飛び跳ねている。



「負けた… ご褒美、あげるよ」



「んとね、新垣くん」


「なに?」


「私と、デートしない?」



「は?」



一体彼女は何を言い出すのだ。



「今、ご褒美の話だったでしょ? 急にどうしたの」



「鈍感にも程があるよ。だから、それをご褒美にしたいんだよ?」



彼女は珍しく、ふふふと口元に手を添えて笑った。




「え…?デートって…僕と?」


「うん、君と」



頭がいっぱいになった。



美人で明るい彼女が僕とデート?ありえない。


「な、なんで僕なの?」



「君がいいからだよ」



彼女の瞳はまっすぐに僕に注がれる。


「………わかった。これはご褒美、約束、だもんな」



「やった! 嬉しい! 夏休みがまた楽しみになったよ!」



彼女のいつもの眩しすぎる笑顔が弾けた。


彼女のこの笑顔を見られたら、まぁいっかと思うのが少々不思議だ。





デートは8月4日にすることになった。


デートというものが人生初めてだ。


今から色々準備をしないといけない。







今年の夏は何やら忙しそうだ。







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