社長、高校生になります

ハチニク

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第1章

1話〜電車通学〜

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4月初旬ごろ…

ある日の朝、高校1年の1学期、まだ入学して間もなくの頃、私は電車に揺れながら高校に向かっていた。

 私は西赤崎《にしあかざき》高等学校に通っている34歳の高校生だ。驚く方もいるかもしれないが、34歳の高校生だ。もっと驚くかもしれないが、ある会社の社長もやっており、総資産はおよそ50億越えだ。自慢ではないが、国立大学出身でもあり、一応スーパーエリートなのだ。

 ではなぜ34歳の私が高校生をやっていけているのかと思われるかもしれない。
 そうだ、紛れもなく年齢詐称だ。年齢詐称ほど便利なものはこの世にはない。別にいいだろう、年齢詐称なんてよくマッチングアプリではよくあることではないか。あいつらはひどいと20歳くらい若く年齢を書いてるみたいだ。

 それに比べると俺は全く問題なし。まあ私の場合は実年齢が34歳であっても、肌はスベスベ、髪の毛正常で見た目は全然若いのだ。
よく高校の同級生には、

「高校生の割に老けてるよね」

と稀に言われるがな。本当に極稀に言われるからセーフなのだ。

 次に疑問に思うはずなのはなぜスーパーエリートの34歳が高校生になってるのかだろう。説明が面倒くさいが、仕方ない。君たちには特別に教えてやろう。
 西赤崎高校の圧倒的マドンナである英語の教師、ミス相沢《あいざわ》とお付き合いしたいからに決まってんだろ坊主ども。
 ミス相沢は誰もが惚れる美女である。トゥルントゥルンの髪の毛、ぱっちりお目目で、鼻はスンと筋が通り、美しいを体現したようなお上品さと気質を兼ね備える方だ。
 多分だが、高校が共学なのにも関わらず、全校生徒308人のうち、304人が男子生徒であるのは相沢先生効果が大きいだろう。噂ではあるが、相沢先生が4年前に西赤崎高校に赴任後、この高校の倍率が18倍となったのは相沢先生効果の一角に過ぎない。

 なぜ社長をやっている私が英語教師の相沢先生を知ることができたのか。なんと美しい運命的な出会いだったか。君たちにも教えてあげようではないか。
 実はその相沢先生の父親は私の会社で会長をやっている相沢会長の孫であるとのことだ。相沢会長とは私が社長になる前からずっと仲が良く、表裏のない関係だと思っている。そんな相沢会長がミス相沢のことを私に隠していたのだ。
 最初の出会いは会長の待ち受け画面でした。
 会長にこの美女は誰かと聞くとなんと会長の孫であると言うのだ。つまり、会長が相沢先生を長年隠していたので、私も秘密裏に高校生の身分証明書を作り、彼女が先生をしている西赤崎高校に入学しちゃったってわけさ。

 私はもちろん高校生だったことくらいある。私が34歳のエリート野郎であっても高校生くらい簡単に演じられる。まあ見ていろ、高校生として生きる私を。

 ある凍える日の朝、雪なのか雨なのかわからないような天気の日の朝、私は電車に揺れながら高校に向かっていた。
 電車の中で小さな声が聞こえてくる。

「おーい、おーい」

 よく見ると同級生のケンゴロウだ。こいつも俺と同じく相沢先生狙いで学校に入ってきたバカだ。まあみんなだけどな。

「なんだよ、電車の中で喋りかけんな」

 満員電車なのにも関わらず、ケンゴロウは俺に話しかけようとしてくる。こっち来いと手で招かれたので次の駅で数人が降りた際に、ケンゴロウの方に向かった。

「なんだよ、うるせえんだよ」

「おはよう、のぶゆきくんー」
 ちなみに私の高校生としての仮名はのぶゆきである。

「のぶゆきくーん、見て見て今日の授業、1限目から英語だよあはは嬉しいなー」

 当たり前だろ。英語と言えば相沢先生。相沢先生のために学校行ってんだよこっちは、と内心では思ったが、口にはしなかった。
 
 相沢先生は電車通勤、必ず6時18分の電車に乗る。それを全校生徒は知っているため、通勤ラッシュ時でなくても、今乗っている電車は混むのだ。相沢先生はこの電車のどこかにいる、そう思うだけで幸せなのだ。しかし、どうも今日はその幸せがないみたいだ。

「おい!!まずいぞお前ら、相沢先生が乗ってねえぞ!」

 と一人の生徒が顔を真っ青にして叫んだ。

「他の車両は見たのか?」

勇気を持って聞く者がいた。しかし、帰ってきたのは、ノーを意味する首振り。

 それを聞き、電車内は混沌と化していた。叫ぶと同時に皆が青ざめ、気絶するものまで現れた。勿論、私は大人なので冷静な対応ではあったものの、変な汗が止まらなかった。

 乗車している全生徒の思考が共通化した。今日は相沢先生に会えない。体調不良なのかもしれない。いや、もっと重大なことなのかもしれない。相沢先生はもしかしてもう学校に来ないのかもしれない。不治の病にかかってしまったのではと叫び出すやつも現れた。

 結果、気絶者計32人、軽傷者計3名、休学者計304人の悲惨な事件となってしまった。(単なる学級崩壊)

 ちなみに相沢先生はその日、普通に風邪でした。
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