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28. 運命ってことで
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私は何も話せなくなって黙ってたけど、聞きたいことは山ほどあった。
知ってて私の会社に入ったのか。
どうして私にプロポーズしたのか。
私たちは…異母姉弟になるのか。
渡瀬は何をどこまで、いつから知っていたのか。
ずっと憎しみを持って生きてきたのかな。
誰にだろう。
自分を殴った母親、母親を残して殺された父親、あるいはその父親の娘である私。
考えれば考えるほど、渡瀬からしたら恨むはずの人は沢山いるはずで。
「今日は急なお願いに付き合ってもらって、すみませんでした」
「こういうのさ、何から聞けばいいんだろうね」
「……その様子じゃ、本当に何も知らなかったんですね」
「うん、びっくりしてる」
「上場企業の社長につける秘書のことくらい、普通調べたりしませんかね」
「うーん、しなかったね」
「もしかしたら知ってて知らないふりをして下さっているのかと思ったほどですよ」
「言ってくれれば良かったのに」
「言ったら、あなたの傍にはいられなくなるかもしれないでしょう?危ない人物認定されて、会社にいられなくなるのは避けたかったので。だから黙ってました。私がはるさんを愛さなければ、知ってもらう必要もなかったんですけどね」
「私はこの事実を知って、渡瀬に何をしてあげられるんだろうね。一人で抱えるのしんどかったでしょ」
「そういうのは求めてませんよ。初めて知った時は驚きましたけど嬉しかったんですよ。血の繋がりがある人間同士が偶然こんなに近くにいるって、運命っぽいじゃないですか」
「渡瀬がそんなこと言うの意外だし、運命っぽいのかなそれ。因縁っぽいけどね、どちらかというと。いつ知ったの?」
「会社に入ったのは本当に偶然で。ね?運命っぽくないですか?」
なるべくこの話が暗くならないようにと、渡瀬が気を遣ってくれてるのがわかる。
「調べ始めたのは、2年前に母が亡くなったという報せが来た時です。自分のルーツというか。父親がどんな人だったのか知れるだけで良かったんですけど」
「繋がらないよね、普通」
「そうですね、普通は。だから運命っぽいなと」
「いや、それはわかんないけど」
「いいじゃないですか、運命ってことで」
「ごめんね……許せないとかないの?私に復讐とか」
「まさか。考えたこともありません。私もはるさんも被害者ですよ。同じです。あえて言うなら、この事実を知ってもらうことが復讐になってるかもしれませんね」
「復讐にしては足りなくない?なんかもっとこう、お前のせいで俺は!……みたいなのないの?」
「冗談なんですけど……」
「じゃあ笑って言ってよ、分かりにくいわ」
「でも実際に知らなくてもいい話ではあるじゃないですか」
「んー、どうかな。私は言ってくれて良かったよ。なんで……血の繋がりがあるって分かってて結婚してくれなんて言い出したんだろうなとは思うけど」
「だからそれは、愛してるからですよ。それに私もはるさんと一緒にいられるなら子供も望みません。社長と秘書ではなく、きちんとそういう関係になりたいからこの話もちゃんとしておくべきだと思って」
「そういう関係にはなったじゃん」
「一度きりは嫌です」
「セックスしたら好きになっちゃう感じ?」
「違います」
「そもそも結婚とかできんの?私たち」
「私は認知されていないので、戸籍の父親欄は空白です。ですので出来るには出来ます。誰かがこの事実を知って、反対する場合は婚姻自体が無効になるとは思いますが」
「じゃあ、二人だけの秘密か。まぁ言う必要もないしね。明希は私が幸せならそれでいいと思うだろうし。渡瀬のことやたら推してくるし」
「あの……それって、結婚して下さるんですか?」
「あ、そんな流れになってるね」
「めちゃくちゃなってますよ。いいんですか?」
「逆にいいんですか、だよ。私の病気だってややこしいし、私たちの境遇も複雑だし、前も言った通り色々不安はあるよ。渡瀬にはちゃんと幸せになってもらいたい気持ちは変わらないし」
「そう思ってくださるのが愛ってことでいいじゃないですか」
「健気だねぇ。ポジティブともプラス思考とも違う感じ。健気って感じ」
「はるさんの全ては、私が守ります。はるさんがもし誰かに傷付けられて、それが許せなくなって、……その人を殺してほしいって言われたら殺せます」
「急に怖いこと言うね」
「その位の覚悟を持ってプロポーズしてます」
「そっかそっか。渡瀬がそれが幸せだっていうなら結婚しよう」
案外軽い感じでプロポーズを引き受けたような流れになってしまってるけど、私なりに考えて、私なりに覚悟を決めた。
私は渡瀬に惚れられただけで、十分に幸せ者だと思う。
渡瀬は図々しいとか言ってたけど、やっぱりいつか『私に一番に愛されたい』って思ってくれたらもっと幸せかもなぁ。
私はなんて狡くて、欲深い生き物なんだろ。
渡瀬は、半分は同じ血で生まれ落ちた人間とは思えないくらいにキレイな心だなぁと思う。
こんなに歪みまくってる私を全て受け入れる渡瀬って、ほんとは何か企んでんじゃないかと疑ってもいいくらいには真剣にその愛は伝わってる。
知ってて私の会社に入ったのか。
どうして私にプロポーズしたのか。
私たちは…異母姉弟になるのか。
渡瀬は何をどこまで、いつから知っていたのか。
ずっと憎しみを持って生きてきたのかな。
誰にだろう。
自分を殴った母親、母親を残して殺された父親、あるいはその父親の娘である私。
考えれば考えるほど、渡瀬からしたら恨むはずの人は沢山いるはずで。
「今日は急なお願いに付き合ってもらって、すみませんでした」
「こういうのさ、何から聞けばいいんだろうね」
「……その様子じゃ、本当に何も知らなかったんですね」
「うん、びっくりしてる」
「上場企業の社長につける秘書のことくらい、普通調べたりしませんかね」
「うーん、しなかったね」
「もしかしたら知ってて知らないふりをして下さっているのかと思ったほどですよ」
「言ってくれれば良かったのに」
「言ったら、あなたの傍にはいられなくなるかもしれないでしょう?危ない人物認定されて、会社にいられなくなるのは避けたかったので。だから黙ってました。私がはるさんを愛さなければ、知ってもらう必要もなかったんですけどね」
「私はこの事実を知って、渡瀬に何をしてあげられるんだろうね。一人で抱えるのしんどかったでしょ」
「そういうのは求めてませんよ。初めて知った時は驚きましたけど嬉しかったんですよ。血の繋がりがある人間同士が偶然こんなに近くにいるって、運命っぽいじゃないですか」
「渡瀬がそんなこと言うの意外だし、運命っぽいのかなそれ。因縁っぽいけどね、どちらかというと。いつ知ったの?」
「会社に入ったのは本当に偶然で。ね?運命っぽくないですか?」
なるべくこの話が暗くならないようにと、渡瀬が気を遣ってくれてるのがわかる。
「調べ始めたのは、2年前に母が亡くなったという報せが来た時です。自分のルーツというか。父親がどんな人だったのか知れるだけで良かったんですけど」
「繋がらないよね、普通」
「そうですね、普通は。だから運命っぽいなと」
「いや、それはわかんないけど」
「いいじゃないですか、運命ってことで」
「ごめんね……許せないとかないの?私に復讐とか」
「まさか。考えたこともありません。私もはるさんも被害者ですよ。同じです。あえて言うなら、この事実を知ってもらうことが復讐になってるかもしれませんね」
「復讐にしては足りなくない?なんかもっとこう、お前のせいで俺は!……みたいなのないの?」
「冗談なんですけど……」
「じゃあ笑って言ってよ、分かりにくいわ」
「でも実際に知らなくてもいい話ではあるじゃないですか」
「んー、どうかな。私は言ってくれて良かったよ。なんで……血の繋がりがあるって分かってて結婚してくれなんて言い出したんだろうなとは思うけど」
「だからそれは、愛してるからですよ。それに私もはるさんと一緒にいられるなら子供も望みません。社長と秘書ではなく、きちんとそういう関係になりたいからこの話もちゃんとしておくべきだと思って」
「そういう関係にはなったじゃん」
「一度きりは嫌です」
「セックスしたら好きになっちゃう感じ?」
「違います」
「そもそも結婚とかできんの?私たち」
「私は認知されていないので、戸籍の父親欄は空白です。ですので出来るには出来ます。誰かがこの事実を知って、反対する場合は婚姻自体が無効になるとは思いますが」
「じゃあ、二人だけの秘密か。まぁ言う必要もないしね。明希は私が幸せならそれでいいと思うだろうし。渡瀬のことやたら推してくるし」
「あの……それって、結婚して下さるんですか?」
「あ、そんな流れになってるね」
「めちゃくちゃなってますよ。いいんですか?」
「逆にいいんですか、だよ。私の病気だってややこしいし、私たちの境遇も複雑だし、前も言った通り色々不安はあるよ。渡瀬にはちゃんと幸せになってもらいたい気持ちは変わらないし」
「そう思ってくださるのが愛ってことでいいじゃないですか」
「健気だねぇ。ポジティブともプラス思考とも違う感じ。健気って感じ」
「はるさんの全ては、私が守ります。はるさんがもし誰かに傷付けられて、それが許せなくなって、……その人を殺してほしいって言われたら殺せます」
「急に怖いこと言うね」
「その位の覚悟を持ってプロポーズしてます」
「そっかそっか。渡瀬がそれが幸せだっていうなら結婚しよう」
案外軽い感じでプロポーズを引き受けたような流れになってしまってるけど、私なりに考えて、私なりに覚悟を決めた。
私は渡瀬に惚れられただけで、十分に幸せ者だと思う。
渡瀬は図々しいとか言ってたけど、やっぱりいつか『私に一番に愛されたい』って思ってくれたらもっと幸せかもなぁ。
私はなんて狡くて、欲深い生き物なんだろ。
渡瀬は、半分は同じ血で生まれ落ちた人間とは思えないくらいにキレイな心だなぁと思う。
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