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4. 鉄の仮面からの忠告
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「あまり、感情抑え込まない方が良いですよ。今は自分を守る為と思って我慢しても、結局僕たちのような人間の根本は変わりません。いつか爆発して、もっとしんどくなります。正しくないものに対して正直に対抗できる人はなかなかいません。まぁ、この学校で素直に生きる価値はあまり……ないかもしれませんが」
苦笑いをしながら、大沢先生が放つ一言一言に心当たりがあり過ぎて、全て見透かされているような気がした。
「大沢先生は、爆発したことあるんですか?」
「んー、ありましたねぇ。長澤先生だったら分かると思うんですけど、血の気が多いとかではないんですよね。自分の事よりも、誰かの為に怒ったつもりがいつの間にか当の本人は他人事のような顔をしてて。そいつは周りから『大人の対応が出来て偉いね』なんて、事が片付いてから褒められてたりして。馬鹿馬鹿しいなと思っても『これが僕だから』って、少し誇れてたりもして。でも、我慢の限界ってあったみたいで、糸が切れたようにプツンと『あぁ、もうやめよう』って。今の長澤先生みたいに他人と距離を置くようになりました。ただ心の中はグツグツしてて、鉄の仮面の下はずっとしかめっ面で」
「鉄の仮面……」
「それで、ある時、爆発しました。確かに正当防衛ではあったんですけど、それに便乗して、故意的に、まるで事故かのように、人を殺しかけました。頭の中はどこか冷静だから、そんな小賢しい事をして。……あ、すみません、引きました?」
私が喋っているんだろうかと思うほど、あまりにも強く共感できてしまう部分が多すぎて、思わず泣きそうになった。
「……引かないです。分かります。私は……寝る前に目を瞑ると、抑え込んだ感情が脳内に流れ込んできて……願望ではないんですけど、人を殺します」
「あるある、僕もそうでした。目を瞑りながら、起きてるのに少し体が動いちゃったりね、ありましたね。でも全然すっきりなんてしないし、なんのストレス発散にもならずに未解決の『理不尽』に襲われるんですよねぇ。……もう少し早く、長澤先生に出会いたかったです」
二人して、多分恐ろしい話をしているのに私たちは共感し合えた喜びからか笑いながら話していた。
「……私も、大沢先生みたいな人ともっと早く出会えてたら少し気が楽だったと思います。変われはしないだろうし、変わりたいとも思ってないんですけど、やっぱり分かってくれる人がいるって……なんか真っ直ぐ生きていけそうですよね」
「早すぎるストップは、遅すぎるストップより遥かに良いんですよ」
「どういう……意味ですか?」
「ボクシングの試合における格言……みたいなものです。感情を殺すのを早めにストップしてください。長澤先生は、遅くないですよ。だから僕にみたいにならないでください。長澤先生は長澤先生らしく」
「……私らしく、ですか?」
「はい、出来れば。でも……やっぱりこの学校で頑張る価値は、僕には見い出せません。僕も爆発してからはこんな腑抜けた感じになってますけど、きっと根本は変わってません。僕たちは決して自分をコントロール出来ない訳じゃない。こんな所で長澤先生の正義や勇気を出すのは勿体ない。……だから、ここじゃない別の場所で、自由になってみませんか?二人で」
「えっと、それは……どういう?」
「外で会いましょうという、デートのお誘いです」
大沢先生の思いがけない提案には心底驚いたが、それよりもこれほど自分という人間を理解してくれて、何よりこんなにも自分と同じ感覚の人がいたのかと喜びを覚えたと同時に安心した。
大沢先生なら、私のことを『間違ってない』と強く味方してくれるような気がした。
私は、味方が欲しかったのだろうか。
久しぶりの笑顔はぎこちなく見えていなかったかな?
苦笑いをしながら、大沢先生が放つ一言一言に心当たりがあり過ぎて、全て見透かされているような気がした。
「大沢先生は、爆発したことあるんですか?」
「んー、ありましたねぇ。長澤先生だったら分かると思うんですけど、血の気が多いとかではないんですよね。自分の事よりも、誰かの為に怒ったつもりがいつの間にか当の本人は他人事のような顔をしてて。そいつは周りから『大人の対応が出来て偉いね』なんて、事が片付いてから褒められてたりして。馬鹿馬鹿しいなと思っても『これが僕だから』って、少し誇れてたりもして。でも、我慢の限界ってあったみたいで、糸が切れたようにプツンと『あぁ、もうやめよう』って。今の長澤先生みたいに他人と距離を置くようになりました。ただ心の中はグツグツしてて、鉄の仮面の下はずっとしかめっ面で」
「鉄の仮面……」
「それで、ある時、爆発しました。確かに正当防衛ではあったんですけど、それに便乗して、故意的に、まるで事故かのように、人を殺しかけました。頭の中はどこか冷静だから、そんな小賢しい事をして。……あ、すみません、引きました?」
私が喋っているんだろうかと思うほど、あまりにも強く共感できてしまう部分が多すぎて、思わず泣きそうになった。
「……引かないです。分かります。私は……寝る前に目を瞑ると、抑え込んだ感情が脳内に流れ込んできて……願望ではないんですけど、人を殺します」
「あるある、僕もそうでした。目を瞑りながら、起きてるのに少し体が動いちゃったりね、ありましたね。でも全然すっきりなんてしないし、なんのストレス発散にもならずに未解決の『理不尽』に襲われるんですよねぇ。……もう少し早く、長澤先生に出会いたかったです」
二人して、多分恐ろしい話をしているのに私たちは共感し合えた喜びからか笑いながら話していた。
「……私も、大沢先生みたいな人ともっと早く出会えてたら少し気が楽だったと思います。変われはしないだろうし、変わりたいとも思ってないんですけど、やっぱり分かってくれる人がいるって……なんか真っ直ぐ生きていけそうですよね」
「早すぎるストップは、遅すぎるストップより遥かに良いんですよ」
「どういう……意味ですか?」
「ボクシングの試合における格言……みたいなものです。感情を殺すのを早めにストップしてください。長澤先生は、遅くないですよ。だから僕にみたいにならないでください。長澤先生は長澤先生らしく」
「……私らしく、ですか?」
「はい、出来れば。でも……やっぱりこの学校で頑張る価値は、僕には見い出せません。僕も爆発してからはこんな腑抜けた感じになってますけど、きっと根本は変わってません。僕たちは決して自分をコントロール出来ない訳じゃない。こんな所で長澤先生の正義や勇気を出すのは勿体ない。……だから、ここじゃない別の場所で、自由になってみませんか?二人で」
「えっと、それは……どういう?」
「外で会いましょうという、デートのお誘いです」
大沢先生の思いがけない提案には心底驚いたが、それよりもこれほど自分という人間を理解してくれて、何よりこんなにも自分と同じ感覚の人がいたのかと喜びを覚えたと同時に安心した。
大沢先生なら、私のことを『間違ってない』と強く味方してくれるような気がした。
私は、味方が欲しかったのだろうか。
久しぶりの笑顔はぎこちなく見えていなかったかな?
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