【同志よ、鉄槌を下せ】~レ〇プ被害に遭い続ける生徒と同棲を始めた高校教師。発見された死体は誰が殺したの?~【完結】

みけとが夜々

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3. 拳への共感

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 今夜もまた、夢にうなされた。
 相手をぶん殴ったようで、現実でも体が動いて思い切り壁に拳をぶつけて目が覚めた。
 すぐに冷やしてみたけれど、時間が経過するにつれ筆が持てるのか怪しいほど腫れ上がっていて仕方なく包帯を巻いて仕事に向かった。

 職員室に入る時に「おはようございます」と言うのを、1年だけ続けて、やめた。
 返事が返ってくるわけでもないのに、朝から誰に向けたわけでもない挨拶をする必要はないと割り切れたからだ。

 教員たちの間で浮いている事も重々承知している。
 無関心でいてくれるのはとても有難い。
 そんな中でも、やはり意地の悪い人間はいて50代くらいの化学担当の永井先生にすれ違う度に嫌味を言われる。
 無表情でなんのダメージも無さそうな私の顔が余計に彼女を苛立たせるのだろう。

 いつの時代にも、どんな場所でも『理不尽』は溢れているもので、かつて私が味わったような出来事がこの学校でも起きている場面をいくつか見た。
 生徒側の『理不尽』、教師側の『理不尽』。
 どちらも見たが私には関係ない。
 昔の私なら……と過ぎることもあったが、そんな思いはすぐに消し去った。

 手の包帯を見て、永井先生が早速食い付いてきた。
 わざと周りに聞こえるような大袈裟な声量で

「あら!やだぁ!長澤先生、手に包帯なんか巻いてどうしたの~?!」

 と手に触れられそうになったので、すぐに避けた。
 その行動が気に食わなかったのか

「壁でも殴ったのかしら?何考えてるか分からない女ってコワイわよねぇ?!」

 とすかさず嫌味が追加されたが、向こうが話し終えるより先に職員室を出て美術室に向かった。

 自分の担当授業がない時は、授業で使うプリントを用意したり小テストに出す問題を考えたり。
 一通り終えると、いつもは絵を描くのだが、今日は手が痛くて筆を上手く動かせない。
 痛みが増してきている。
 病院に行った方がいいな……
 コンコンと扉をノックされ、返事をすると大沢先生が美術室に入ってきた。

「手、どうされたんですか?」

「あ……いや、ちょっとぶつけちゃって」

「……ちょっと、すみません」

 ふと手を取られ、包帯を外された。
 手を引こうかと思ったが、痛みで反応が遅れてしまった。

「随分腫れてますね。これ、折れてるかもしれませんよ。……痛みますか?」

 そう言って、腫れた手を少し押された。
 痛みで一瞬、顔が引きつった。

「……病院、行きますか?」

 え?今から?一緒に?
 ……永井先生に何を言われるか分からない。
 何を言われても良いのだけど、変な噂を立てられても面倒だ。

「大丈夫です、帰りに行ってみます。ありがとうございます」

 大沢先生は「絶対ですよ」と微笑みながら包帯を巻き直してくれた。
 片手ではかなり巻きにくく雑に巻かれていたものが、慣れた手つきで少し固定するように綺麗に巻いてくれた。

「巻き方、上手ですね」

「1人でも綺麗に巻けるコツがあるんです。ほら、よくボクサーとかも自分で巻いてるでしょ。こんな感じで、こうやって……」

 と、巻き方を教えてくれた。

「その腫れ方を見て、永井先生が言ってたこともあながち間違ってないんじゃないかなと思ったんですけど、どうですか?」

 そのままはぐらかしても良かったのに、私は引かれそうな話をぽつりぽつりと話し始めた。
 共感してもらえるとでも期待したのだろうか。
 そんなもの、ありえないのに。

「……時々、夢の中で暴れたり叫んだりしてるんですけど、それがたまに現実で声に出ちゃったり、体が動いたりして飛び起きるんです。これは、人を殴る夢を見て、壁を殴った衝撃で……起きたら、こんな感じに」

 ドン引きされるかと思ったのに、大沢先生は優しく頷き、共感までしてくれた。
 お愛想だろうか?

「やっぱり"こっち側"ですね、長澤先生は。実は僕もね、昔よくあったんですよ」

 スっと差し出された右拳には、何度も殴ったようなタコが出来ていた。
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