【同志よ、鉄槌を下せ】~レ〇プ被害に遭い続ける生徒と同棲を始めた高校教師。発見された死体は誰が殺したの?~【完結】

みけとが夜々

文字の大きさ
8 / 27

8. 目覚める本能

しおりを挟む
「いつもここで何してんの?考え事?」

「まぁ……プリント作ったり、考え事したり?」

「その手、いつ治りそうなの?」

「1ヶ月ちょっとでギプスは取れるみたいだけど……どうして?」

「んー、手治ったら私の絵描いてって頼んだでしょ?それまでは死ねないなぁと思って」

 背伸びをしながら腕を上げた武井さんのブラウスの裾から、ちらっと傷のようなものが見えた。
 気付けば私は武井さんに近寄って腕を掴んでいた。

「……どうしたの?」

 驚いたようにというより、少し怯えた感じで武井さんの目が泳いでいる。
 怖がらせるつもりはなかったのだけれど。
 掴んだ腕のブラウスをゆっくりと捲った。
 武井さんは抵抗しなかった。
 痛々しいリストカットの痕が無数にあり、彼女の白い肌をより一層際立たせていた。
 私は彼女の腕を撫でた。

「色、白いね」

 彼女は下を向きながら、声を押し殺すようにして涙を流し始めた。
 そんな彼女を抱きしめて頭を撫でてあげたら、彼女は私に抱きつくようにして号泣した。
 その時、普段抑え込んでいる『本来の私』が少し目覚めたのを自覚した。
 人間、生きていれば誰にだって悩みや辛いことなんて山ほどある。
 今まで通り、見て見ぬふりをして放っておくべきなのに。

「ごめん……もう大丈夫」

 一通り泣いた後、武井さんは謝った。
 全然大丈夫じゃないようなか細い声だった。
 普段の大人びた澄ました顔も、私に向ける笑顔も自分を守るための強がりなのかもしれない。

「大丈夫じゃなくなったら、いつでも連絡して」

 放っておけばいいものを。
 また私の悪い癖が出てしまっている。
 武井さんは何も言わずに頷いて、また抱きついてきた。
 しばらく頭を撫でてあげながら、昔の自分を思い出していた。
 あの時こうして抱き締めてくれる誰かがいたら、何か違ったかもしれない。
 ……そうでもないか、とすぐに思い直した。
 私は良くも悪くも頑固だから、誰かに心配されようと結局我が道を突き進んでいただろうな。

 授業を終えるチャイムが鳴った。
 そんなにも長い時間、彼女を抱き締めていたのかと一瞬時間の感覚が分からなくなった。

「先生、ありがと」

 武井さんはいつもの笑顔だった。
 その日以降、しばらく武井さんを見かけなくなった。
 それとなく大沢先生に聞くと、学校自体には登校しているらしかった。
 私の心配が取り越し苦労だったのであれば、それはそれで問題ない。
 生徒に深入りするべきでもない。
 これで良かったのだと自分に言い聞かせる。
 そんなタイミングに限って、深夜に差し掛かる頃に武井さんからメールが入った。
 たった一言。

『たすけて』

 と。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

処理中です...