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21. 辞職
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結局、司法解剖などは行われず警察から美奈の父親の遺体が返ってきた。
そして葬儀が執り行われた。
松井も父親も死んだ。
これで美奈の身体を傷付ける者はいなくなった。
美奈は夜な夜な泣くようになった。
「私のせいだ」と自分を責めている。
腐った父親でも、たった一人の肉親を失くしたのだ。
自分を犯していた松井を殺して自殺した父親。
嫉妬に狂ったのか、父親として怒りなのか、彼の動機は分からない。
美奈が私に聞く。
「ねぇ、先生。私、可哀想?」
「うん。そうだね、苦しかったよね」
「私、お母さんもお父さんもみんないなくなっちゃった。もう私には先生しか……」
「分かってる。私はいなくならないから。ずっと一緒だから、ね?」
「先生、私のことずっと守ってね」
本当に可哀想な子だ。
『理不尽』ばかりの美奈の人生に、私は深く同情し、それと同時に益々愛おしくなり、この子だけは必ず守ろうと思った。
美奈には私しかいないのだから。
私の腕の傷も随分と増えた。
美奈と身体を重ねる度に増えていったその傷を、満足気な表情でさすってくれる。
「お揃いが増えていくね」
「そうだね、美奈が傷付いた分も分け合って生きていこうね」
「うん……ねぇ、先生?」
「なに?」
「あの高校辞めない?他にも学校はあるんだしさ」
「どうしたの、急に」
「大沢いるじゃん。一応元彼でしょ?不安だよ。嫉妬しちゃう」
「元彼っていうのかな……付き合ってたのか微妙だよ?それにもちろん今は何もないし。私には美奈だけだよ?」
「それでも関係はあったんでしょ?恋人でもセフレでも嫌なもんは嫌。そもそも先生、今の職場嫌いでしょ?てか学校似合わないよ」
「そっか、嫌だよね。ごめんね。分かった、学校辞める。家で出来る仕事探そっか。そしたら不安じゃない?」
「うん!嬉しい……ありがとう、私のために」
美奈はとびきりの笑顔で喜んでくれた。
早速、辞表を書こう。
大沢先生のような人とはもうこの先出会えないのだろうと思うと、少しだけ惜しい気もしたが美奈を不安にさせない為だ。
美奈が私の携帯を触っている。
何もやましいことはないので、ロックもかけていない。
美奈がそれで満足するのならいつでも触っていいよと言ってある。
気付けばいつの間にか大沢先生の連絡先は削除されており、ブロックまでされていたが何も問題はない。
それを知った時、嫉妬しているのかな?と可愛く思えたくらいだ。
翌日、退職希望を伝えるとすんなりと受け入れてもらえた。
「こちらから打診しようかと思っていたところだった」と言われたので、大して興味はなかったものの一応理由を聞いてみると、松井が亡くなった事で判明した美奈との同居が理由だという。
もう退学しているとは言え、元生徒と一緒に暮らしているのを問題視したらしい。
腹を立てるのも馬鹿らしい。
美奈の苦労も知らずに。
美奈が父親にレイプされていると知っても、どうせここにいる教師どもは何もしなかっただろう。
こんな忌々しい汚れた場所など、燃えてしまえばいいのに。
そう思った瞬間、大沢先生を思い出し彼にだけは挨拶をしておこうと思った。
もう今や私の気持ちなど分からないだろうが、かつてこれほどまでに感情を共有できた人はいなかった。
恋愛感情など抜きにして考えても、彼の共感は当時くすぶっていた私にとっては大いなる救いであった。
その感謝だけは伝えよう。
そう思いながら私物を片付けている時、ちょうど美術室に大沢先生が入ってきた。
「長澤先生、どうして辞めるんですか?」
「私、もともと学校嫌いなので。教師も向いてないですし。あ、大沢先生にだけはきちんとお礼を言っておきたくて……色々とありがとうございました」
「……話があります。武井の事です。長澤先生はどこまで聞いてますか?」
「え?何がですか?」
「知り合いの刑事から情報が入って。児童相談所に通報された記録内容、なんだと思いますか」
そして葬儀が執り行われた。
松井も父親も死んだ。
これで美奈の身体を傷付ける者はいなくなった。
美奈は夜な夜な泣くようになった。
「私のせいだ」と自分を責めている。
腐った父親でも、たった一人の肉親を失くしたのだ。
自分を犯していた松井を殺して自殺した父親。
嫉妬に狂ったのか、父親として怒りなのか、彼の動機は分からない。
美奈が私に聞く。
「ねぇ、先生。私、可哀想?」
「うん。そうだね、苦しかったよね」
「私、お母さんもお父さんもみんないなくなっちゃった。もう私には先生しか……」
「分かってる。私はいなくならないから。ずっと一緒だから、ね?」
「先生、私のことずっと守ってね」
本当に可哀想な子だ。
『理不尽』ばかりの美奈の人生に、私は深く同情し、それと同時に益々愛おしくなり、この子だけは必ず守ろうと思った。
美奈には私しかいないのだから。
私の腕の傷も随分と増えた。
美奈と身体を重ねる度に増えていったその傷を、満足気な表情でさすってくれる。
「お揃いが増えていくね」
「そうだね、美奈が傷付いた分も分け合って生きていこうね」
「うん……ねぇ、先生?」
「なに?」
「あの高校辞めない?他にも学校はあるんだしさ」
「どうしたの、急に」
「大沢いるじゃん。一応元彼でしょ?不安だよ。嫉妬しちゃう」
「元彼っていうのかな……付き合ってたのか微妙だよ?それにもちろん今は何もないし。私には美奈だけだよ?」
「それでも関係はあったんでしょ?恋人でもセフレでも嫌なもんは嫌。そもそも先生、今の職場嫌いでしょ?てか学校似合わないよ」
「そっか、嫌だよね。ごめんね。分かった、学校辞める。家で出来る仕事探そっか。そしたら不安じゃない?」
「うん!嬉しい……ありがとう、私のために」
美奈はとびきりの笑顔で喜んでくれた。
早速、辞表を書こう。
大沢先生のような人とはもうこの先出会えないのだろうと思うと、少しだけ惜しい気もしたが美奈を不安にさせない為だ。
美奈が私の携帯を触っている。
何もやましいことはないので、ロックもかけていない。
美奈がそれで満足するのならいつでも触っていいよと言ってある。
気付けばいつの間にか大沢先生の連絡先は削除されており、ブロックまでされていたが何も問題はない。
それを知った時、嫉妬しているのかな?と可愛く思えたくらいだ。
翌日、退職希望を伝えるとすんなりと受け入れてもらえた。
「こちらから打診しようかと思っていたところだった」と言われたので、大して興味はなかったものの一応理由を聞いてみると、松井が亡くなった事で判明した美奈との同居が理由だという。
もう退学しているとは言え、元生徒と一緒に暮らしているのを問題視したらしい。
腹を立てるのも馬鹿らしい。
美奈の苦労も知らずに。
美奈が父親にレイプされていると知っても、どうせここにいる教師どもは何もしなかっただろう。
こんな忌々しい汚れた場所など、燃えてしまえばいいのに。
そう思った瞬間、大沢先生を思い出し彼にだけは挨拶をしておこうと思った。
もう今や私の気持ちなど分からないだろうが、かつてこれほどまでに感情を共有できた人はいなかった。
恋愛感情など抜きにして考えても、彼の共感は当時くすぶっていた私にとっては大いなる救いであった。
その感謝だけは伝えよう。
そう思いながら私物を片付けている時、ちょうど美術室に大沢先生が入ってきた。
「長澤先生、どうして辞めるんですか?」
「私、もともと学校嫌いなので。教師も向いてないですし。あ、大沢先生にだけはきちんとお礼を言っておきたくて……色々とありがとうございました」
「……話があります。武井の事です。長澤先生はどこまで聞いてますか?」
「え?何がですか?」
「知り合いの刑事から情報が入って。児童相談所に通報された記録内容、なんだと思いますか」
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