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第二章 濡羽色の魔術師
魔女の過去(1')
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私はミーナ、こう見えても魔道王国ノルマンで女ながら騎士なんてやってる。
まあ、人からどう見られようと知ったこっちゃないけど。
両親とも騎士の家系で、私も必然とその背中を見て育ち騎士になったってわけ、何のひねりもない人生ね。
今日は、ほんと久しぶりの休日。
つい先日まで騎士団長アレンの提案で、三十日間の山岳訓練なんてやらされてた。
奴、ほんとなに考えてるの。脳みそ筋肉でできてんじゃない。
十日やそこらだったらわかるわよ。何がうれしくて三十日もの間、猛獣や魔獣、挙句の果てに飛竜まで上から襲ってくるような山で、むさい男どもと戦いに明け暮れないといけないのよ。
私の仕事は王妃様の護衛なのよ、護衛の訓練やりなさいよ……、って、思ってもいえるわけないんだけど。
さて久しぶりの休日に幼馴染で、恋人の……、恋人みたいな感じはまったくないわね、昔っから知りすぎててなんか弟みたいになってるていうのか……、まあ、そのインダルフと買い物に行く約束なの。
インダルフは私の育った家のお隣さんで生まれた。
彼も両親が魔術師、おじいさんもおばあさんも、そのまたひいおじいさんもひいおばあさんも……もういいわね。まあインダルフもまたひねりがない人生ってわけ。
私たち、なにか似たもの同士ってことで気が合ったのよね、昔から仲よくしてきたわ。
ただ、私と違うのは……、彼は天才だった。
若干九歳で、魔道王国ノルマンの宮廷魔術師のメンバーとなり、十四歳のとき、自然魔術について、月・火・水・木・金・土・日という七曜の分類を全世界の魔術師ギルドに発表、それまで魔術っていろいろごっちゃになっていたものを、整理整頓してまとめたってことみたい。
その後も数々の新しい魔術理論を提案して、魔道王国を支える魔術師の筆頭としてかんばってる。
今は十八歳、今もなんか難しいことをいろいろやっているらしいわ。
要するに、たまでも私が外に連れ出してでもやらないと、延々と研究とかやってる魔術馬鹿なのよ。
「……だからミーナ、白魔術と黒魔術って分類を分けるなんていうのはナンセンスなんだ。もともと同じ人体のマナに作用する魔術なんだから同じ体系とすべきだったんだよ、それにね……」
ああ、私が悪かったわよ。山岳訓練で白魔術師が倒れて、黒魔術師がかわりに回復担当してたって話したもんだから、ああ大変。話脱線しまくって訳のわからない魔術論議になっちゃった。
インダルフっていい奴なんだけど、魔術の話になるともうね。ああ面倒くさい、話かえよう。
「ねぇねぇ、あそこの商店の新製品のパンおいしいんだって、いってみようよ」
よし。面倒くさいの回避だ。
店に入ると、そのコーナーの一角がいろいろなパンで埋め尽くされているじゃない。
おお、これはおいしそう。
その幸せな匂いに、昨日までの厳しい山岳訓練のことなんてすっかり忘れちゃって、明日のパンはどれがいいかなぁ、なんていろいろ見ていたの。
そんなとき突然の叫び声が聞こえてきた。
「泥棒だ! だれかつかまえてくれ!」
少し私より離れたところで、小さい子供がいくつかのパンを抱えて、店を飛び出そうとしていたのが見えたのよね。
ほうっておいてもよかったんだけど、しつけのなっていない子供は嫌いなの。私を見てるみたいで。
軽くかけていって捕まえようとしたけど、この子供とんでもなくスピードが速いのよね。
思わず捕まえるのに肉体強化の魔術をつかっちゃった。
捕まえてみたら、少しよごれているけど黒い髪におっきなお目目のお嬢ちゃんじゃない、かわいい。
いやいや、いけないいけない、甘い顔したらガキはつけあがるわよね。
「私、子供と泥棒は嫌いなの。孤児院の子? ちゃんと教育してよね」
よし、厳しい口調で言えた。
店員がその孤児院の子供と思われる犯人を縛り上げて、街の衛兵に突き出そうとしていたんだけど、その様子を後ろから見ていたインダルフが、とんでもないことを言い出したの。
「ちょっとまって。彼女の盗んだもの、俺が全部買うよ」
はぁ? いまなんていった。代わりにお金払うっていった?
そのなら、さっき私が買った洋服代とかも払いなさいよ。
でも、きっとそういうと思ってた。昔から人が良すぎるよねインダルフ君。
そういうとこがまあ好きなんだけど……。
で、なに、インダルフ。その子孤児院からひきとるっていっている? あのスピードはいい騎士なれるんじゃないって?
騎士の養成所にいれてあげてって?
いや確かに養成所に幼年の部はあるけど、誰が面倒見るのよ。
ミーナがみてあげてって? おまえが見るんじゃないのか?
僕は弟子はとらない? 訳わからないこといってるんじゃねーよ。
そのあともいろいろあったんだけど結局、私が保護者として引き取ることになったようです。
なんでそうなるのよっ!!
まあ、人からどう見られようと知ったこっちゃないけど。
両親とも騎士の家系で、私も必然とその背中を見て育ち騎士になったってわけ、何のひねりもない人生ね。
今日は、ほんと久しぶりの休日。
つい先日まで騎士団長アレンの提案で、三十日間の山岳訓練なんてやらされてた。
奴、ほんとなに考えてるの。脳みそ筋肉でできてんじゃない。
十日やそこらだったらわかるわよ。何がうれしくて三十日もの間、猛獣や魔獣、挙句の果てに飛竜まで上から襲ってくるような山で、むさい男どもと戦いに明け暮れないといけないのよ。
私の仕事は王妃様の護衛なのよ、護衛の訓練やりなさいよ……、って、思ってもいえるわけないんだけど。
さて久しぶりの休日に幼馴染で、恋人の……、恋人みたいな感じはまったくないわね、昔っから知りすぎててなんか弟みたいになってるていうのか……、まあ、そのインダルフと買い物に行く約束なの。
インダルフは私の育った家のお隣さんで生まれた。
彼も両親が魔術師、おじいさんもおばあさんも、そのまたひいおじいさんもひいおばあさんも……もういいわね。まあインダルフもまたひねりがない人生ってわけ。
私たち、なにか似たもの同士ってことで気が合ったのよね、昔から仲よくしてきたわ。
ただ、私と違うのは……、彼は天才だった。
若干九歳で、魔道王国ノルマンの宮廷魔術師のメンバーとなり、十四歳のとき、自然魔術について、月・火・水・木・金・土・日という七曜の分類を全世界の魔術師ギルドに発表、それまで魔術っていろいろごっちゃになっていたものを、整理整頓してまとめたってことみたい。
その後も数々の新しい魔術理論を提案して、魔道王国を支える魔術師の筆頭としてかんばってる。
今は十八歳、今もなんか難しいことをいろいろやっているらしいわ。
要するに、たまでも私が外に連れ出してでもやらないと、延々と研究とかやってる魔術馬鹿なのよ。
「……だからミーナ、白魔術と黒魔術って分類を分けるなんていうのはナンセンスなんだ。もともと同じ人体のマナに作用する魔術なんだから同じ体系とすべきだったんだよ、それにね……」
ああ、私が悪かったわよ。山岳訓練で白魔術師が倒れて、黒魔術師がかわりに回復担当してたって話したもんだから、ああ大変。話脱線しまくって訳のわからない魔術論議になっちゃった。
インダルフっていい奴なんだけど、魔術の話になるともうね。ああ面倒くさい、話かえよう。
「ねぇねぇ、あそこの商店の新製品のパンおいしいんだって、いってみようよ」
よし。面倒くさいの回避だ。
店に入ると、そのコーナーの一角がいろいろなパンで埋め尽くされているじゃない。
おお、これはおいしそう。
その幸せな匂いに、昨日までの厳しい山岳訓練のことなんてすっかり忘れちゃって、明日のパンはどれがいいかなぁ、なんていろいろ見ていたの。
そんなとき突然の叫び声が聞こえてきた。
「泥棒だ! だれかつかまえてくれ!」
少し私より離れたところで、小さい子供がいくつかのパンを抱えて、店を飛び出そうとしていたのが見えたのよね。
ほうっておいてもよかったんだけど、しつけのなっていない子供は嫌いなの。私を見てるみたいで。
軽くかけていって捕まえようとしたけど、この子供とんでもなくスピードが速いのよね。
思わず捕まえるのに肉体強化の魔術をつかっちゃった。
捕まえてみたら、少しよごれているけど黒い髪におっきなお目目のお嬢ちゃんじゃない、かわいい。
いやいや、いけないいけない、甘い顔したらガキはつけあがるわよね。
「私、子供と泥棒は嫌いなの。孤児院の子? ちゃんと教育してよね」
よし、厳しい口調で言えた。
店員がその孤児院の子供と思われる犯人を縛り上げて、街の衛兵に突き出そうとしていたんだけど、その様子を後ろから見ていたインダルフが、とんでもないことを言い出したの。
「ちょっとまって。彼女の盗んだもの、俺が全部買うよ」
はぁ? いまなんていった。代わりにお金払うっていった?
そのなら、さっき私が買った洋服代とかも払いなさいよ。
でも、きっとそういうと思ってた。昔から人が良すぎるよねインダルフ君。
そういうとこがまあ好きなんだけど……。
で、なに、インダルフ。その子孤児院からひきとるっていっている? あのスピードはいい騎士なれるんじゃないって?
騎士の養成所にいれてあげてって?
いや確かに養成所に幼年の部はあるけど、誰が面倒見るのよ。
ミーナがみてあげてって? おまえが見るんじゃないのか?
僕は弟子はとらない? 訳わからないこといってるんじゃねーよ。
そのあともいろいろあったんだけど結局、私が保護者として引き取ることになったようです。
なんでそうなるのよっ!!
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