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第二章 濡羽色の魔術師
魔女の過去(3')
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わたくしの名はエマ、この国ではそう呼ばれております。
隣国であるルバ王国の暗部に在籍しています。
ルバ王国はこの魔道王国ノルマンとは、今は特に争いなどなく中立を保っている国ではあるのですけれど、やはりここ数年で新しい魔術理論の発表など、世界に影響力を強めてきている隣国の動きというものは怖いものがあるのでしょう。
ルバ王国は何人かの暗部の人間を、この魔道王国ノルマンに送り込んできているのです。
暗部のお仕事の内容といえば、主に諜報活動や情報操作などいろいろとありますけれど、場合によっては暗殺などのお仕事も……。
わたくしは二年ほど前からこの国に侵入しているのですけれど、表向きには白魔術師として働いていますの。
この国は魔術師に関しては門戸を大きく開いておりますから、入り込むのは簡単でしたわ。
仕事柄あまり目立ってはいけなかったのですけど、わたくしについてくれておりました白魔術師のマスターが、金髪に優しい目を持つ大変にいい男で、ついつい調子に乗って力を出しすぎてしまいました。
今では白魔術のエキスパートとして、この国でも一目置かれる存在にまでなってしまいました。
隠し切れないわたくしの才能が、恨めしく思いますの。これはもう仕方ないのですわ。
おかげでインダルフにも近づくことができましたし、結果オーライということにしていただきましょう。
今回のお仕事は、インダルフの研究に関する情報収集となっておりますの。
魔術師の血の研究なんて、何が面白いのかわたくしにはまったく分かりませんわ。
今回のお仕事については、研究結果は協力者にその調査内容を提供する、となっているのですから、こんな諜報活動を行なわなくても、その提供された調査内容を盗めば簡単なのにと思いますけれど、いったい上は何を考えているのでしょうか。
まして今回のお仕事はいろいろと面倒なのです。たかが情報収集の簡単なお仕事だと思っておりましたのに。
今回の旅は、メイソンとナージャという大変に面倒な二名が同行していることもあって、いつもよりよけいに気を使わなければならないのです。
メイソンは戦士として一流ですから、わたくしの正体が万が一にばれてしまい、正面から戦いともなろうものなら大変なことです。それに加わりインダルフナージャも相手しないといけないともなると、逃げることすら難しいでしょう。
絶対にへまは許されない状況ですの。
ナージャはまだまだ子供ではあるのですけれど、その戦いの能力はメイソン以上との噂です。また最近はインダルフの教えによって、魔術も扱えるようになってきているとの話も聞いています。
まったく末恐ろしい子ですわね。
そして調査対象であるインダルフですが、当初は研究者気質でそれ以外の面はルーズな性格で、その研究成果などいとも簡単に覗き見れるものと思っていたのですが、それは誤りだったとすぐ気づかされました。
その研究成果については、すべて頭の中に記憶しているようで、何か書き物に残している形跡はまったくありませんし。
またわたくしの訓練された特殊な話術によって、会話を研究についての内容に誘導しようとしても、のらりくらりと交わされてしまいました。
まったく隙がありません、さすがは王国の筆頭魔術師。
諜報のプロとしてやりがいが感じられますの。
それになんといっても、インダルフはいい男。これだけで面倒なお仕事も楽しいお仕事に早がわりですわね。
おや、なにやら部屋にある窓のそばに何かいるかと思ったら、暗部から伝書の小鳥がやってきたようですね。
なにやらもっと楽しくなりそうな指令がやってきました。
『インダルフノ、チョウサ、ボウガイ、セヨ』
これはもっと楽しくなってきそうね……。
隣国であるルバ王国の暗部に在籍しています。
ルバ王国はこの魔道王国ノルマンとは、今は特に争いなどなく中立を保っている国ではあるのですけれど、やはりここ数年で新しい魔術理論の発表など、世界に影響力を強めてきている隣国の動きというものは怖いものがあるのでしょう。
ルバ王国は何人かの暗部の人間を、この魔道王国ノルマンに送り込んできているのです。
暗部のお仕事の内容といえば、主に諜報活動や情報操作などいろいろとありますけれど、場合によっては暗殺などのお仕事も……。
わたくしは二年ほど前からこの国に侵入しているのですけれど、表向きには白魔術師として働いていますの。
この国は魔術師に関しては門戸を大きく開いておりますから、入り込むのは簡単でしたわ。
仕事柄あまり目立ってはいけなかったのですけど、わたくしについてくれておりました白魔術師のマスターが、金髪に優しい目を持つ大変にいい男で、ついつい調子に乗って力を出しすぎてしまいました。
今では白魔術のエキスパートとして、この国でも一目置かれる存在にまでなってしまいました。
隠し切れないわたくしの才能が、恨めしく思いますの。これはもう仕方ないのですわ。
おかげでインダルフにも近づくことができましたし、結果オーライということにしていただきましょう。
今回のお仕事は、インダルフの研究に関する情報収集となっておりますの。
魔術師の血の研究なんて、何が面白いのかわたくしにはまったく分かりませんわ。
今回のお仕事については、研究結果は協力者にその調査内容を提供する、となっているのですから、こんな諜報活動を行なわなくても、その提供された調査内容を盗めば簡単なのにと思いますけれど、いったい上は何を考えているのでしょうか。
まして今回のお仕事はいろいろと面倒なのです。たかが情報収集の簡単なお仕事だと思っておりましたのに。
今回の旅は、メイソンとナージャという大変に面倒な二名が同行していることもあって、いつもよりよけいに気を使わなければならないのです。
メイソンは戦士として一流ですから、わたくしの正体が万が一にばれてしまい、正面から戦いともなろうものなら大変なことです。それに加わりインダルフナージャも相手しないといけないともなると、逃げることすら難しいでしょう。
絶対にへまは許されない状況ですの。
ナージャはまだまだ子供ではあるのですけれど、その戦いの能力はメイソン以上との噂です。また最近はインダルフの教えによって、魔術も扱えるようになってきているとの話も聞いています。
まったく末恐ろしい子ですわね。
そして調査対象であるインダルフですが、当初は研究者気質でそれ以外の面はルーズな性格で、その研究成果などいとも簡単に覗き見れるものと思っていたのですが、それは誤りだったとすぐ気づかされました。
その研究成果については、すべて頭の中に記憶しているようで、何か書き物に残している形跡はまったくありませんし。
またわたくしの訓練された特殊な話術によって、会話を研究についての内容に誘導しようとしても、のらりくらりと交わされてしまいました。
まったく隙がありません、さすがは王国の筆頭魔術師。
諜報のプロとしてやりがいが感じられますの。
それになんといっても、インダルフはいい男。これだけで面倒なお仕事も楽しいお仕事に早がわりですわね。
おや、なにやら部屋にある窓のそばに何かいるかと思ったら、暗部から伝書の小鳥がやってきたようですね。
なにやらもっと楽しくなりそうな指令がやってきました。
『インダルフノ、チョウサ、ボウガイ、セヨ』
これはもっと楽しくなってきそうね……。
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