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報告書5「召喚、強制転職する事になった件について」
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俺は駅ダンジョンの中を、ただひたすら走っていた。後ろから追いかけてくるのは、俺が最も信頼している男のヒシカリ、いや、ヒシカリだったもの。そいつは飢えた獣で、目を真っ赤に光らせ、口からは涎を垂らし、牙を剥き出しにして追いかけてくる。俺は必死に逃げたが、左腕を食いちぎられ、崖へと追い詰められた。俺は、俺は……
「んはぁっ!」
飛び上がりそうな勢いで起き上がる。荒々しく吐き出される息、爆発しそうな勢いで脈打つ心臓、そして全身から吹き出す冷や汗。
「くそっ……夢か……」
両手で顔の汗を拭う……が、何かおかしい。何というか、顔に触れた感触が妙に金属的だ。手に何かついているのか?そう思い手の平を見てみたが、その時目に入った物に思わず息を飲んだ。
「なっ、何だこれは!」
見ると左腕には、一目で義手と分かる、金属に覆われた物々しい腕が装着されていた。おまけにそれを見て驚いた時に、咄嗟に力が入ったのだが、その動きが、感覚が、何の違和感もなく反映された。こんな物が世の中に存在するのか。
「夢じゃなかったのか……」
その義手を開いたり閉じたりしてみる。ともかく理由は知らないが義手が付いてるという事は、左腕を失ったのは紛れも無い現実ということのようだ。周囲を見渡すと、ベッドの上で寝ている状態で、目に入るのは白い壁に白い天井。どうやらここは、天国では無く病院の一室らしい。つまり俺は命だけは助かったようだが、一体誰が俺を運んでくれたのだろうか。
そんな事を考えていると、扉から1人の女性が入って来た。起きている俺を見るなり少し驚いたような感じだったが、すぐ笑顔になった。
「ようやく目覚めたようね。気分はどう?」
その女性、背は160㎝くらい、年齢は二十代初めくらいだろうか。整った顔立ちに、長い髪もキレイに後ろにまとめられ、そして魅力的なボディ、第一印象は美人としか言いようが無い。しかし、デニムのショートパンツにTシャツ、その上にロゴの入った社用らしいジャンパーを羽織り、頭にはキャップという服装からもどことなくワイルドさが感じられる。
「あなたは?看護師さんでは無いようだけど、ここはどこで、どうして俺がここにいるのか、後この腕はどうなっているのか教えてくれないか?」
「ちょっと、質問は一つづつにして欲しいわね。まあいいわ、ここは東京駅ダンジョン隔離地域近くの病院よ。あんたがここにいるのは、駅ダンジョン内の空洞の途中で引っかかっていたのを、私がここまで運んだから。その左腕は、うちとの契約範囲ね」
「契約?契約って一体何の事だ!?」
状況も何も分からないので、質問は次から次へと出てくる。今の今まで気を失っていた俺に、一体何の契約が結べると言うんだ。
「そんな事よりも、いきなり質問攻めにするから、自己紹介がまだだったわね。私はチトセ、軍事資源回収企業マーシナリー・マイニング社、略してMM社のシャチョーをしてるわ。よろしくね、サドシマくん」
「なぜ俺の名前を……」
「そりゃ我が社の新入社員だもの、名前と経歴くらい知ってるわよ。関東のド田舎出身のサドシマくん、16才でスペキュレイター養成学校、通称・山師学校に進学。近接対応部に進み剣術科を専攻、そして22才で卒業。そのままあの悪名高きBH社に4級スペキュレイターとして入社、そして裏切られて今に至る、と」
驚くというか、むしろ怖くなってきた。なんだ?ストーカーか?
「なんでそんなに詳しく俺のことを知っているんだよ!それに新入社員ってどういう事だ!?」
「経歴を知っているのはBH社の業務上災害ファイルにあった殉職者データを覗き見させてもらったから。それと、瀕死だったあんたの治療費とその義手の費用、我が社で立て替えたから働いて返す契約になったのよ。うちの社員として」
「なっ、何だよそれ!」
「礼は要らないわ。ゴリアテに襲われてる私を助けてくれたお返しだから。あっ、でも私も礼は言わないわよ。私の閃光手榴弾が無かったら、あんたも今頃やられてたんだから」
言われて顔にピンときた。そうか、あの時の同業者だったのか。それにしてもおかしい、何が新入社員だ。俺はまだ採用面接どころか、説明会すら受けてないぞ。その事をチトセに抗議したところ、何やらポケットから一枚の紙を取り出して見せてきた。
「はい、これ」
「これって……」
見てみるとそれは雇用契約書らしく、俺が入社することや、給料のほとんど全てが借金返済のために差し引かれる事が記載されており、さらには一番下の段には、俺のサイン!?
「何だこれは!俺はこんなサインしてないぞ!」
「そりゃそうよ、あんたの筆跡を学習させた自動筆記機がサインしたんだから」
悪びれる素振りも一切なく、シレッと答えるチトセ。なんて女だ。
「なっ……!こんなの完全にインチキ、詐欺じゃないか!この書類も契約も無効だ!」
「まぁ見方によってはそうかもね。でもあんたにとっても悪い話じゃないんじゃない?世間的にはあんたは業務上災害によって死んだ事になっているけど、もしまだ生きている事が分かったらBH社の実行部隊がすぐに飛んでくるわよ」
ぐっ、それはありえる。俺はBH社の不正を目の当たりしたどころか、経験者だ。奴らにとっては俺の存在自体目障りなはずだ。
「だからうちに入社したら、IDも新しいのを用意してあげる。天才ハッカーを擁する我が社に掛れば天涯孤独のしがないサラリーマンの1人や2人、生まれ変わらせるなんて、訳ないわよ」
「くっ、しかし……」
いきなり重大な決断を突きつけられ、頭が回らない。この女の奴隷になるか、BH社の獣共に追われて暮らすか……
「一体どこに悩む要素があるのよ。うちに就職すれば良いこと尽くめよ。三食住む場所付きで、借金も返せれば即自由。返せれたらね」
俺は……どんな事をしても復讐したい相手が山ほどいる。俺から家族を奪ったリソーサー、俺を殺せと命じた会社、そして俺に夢を次いで絶望を与えた奴。だから今は追われて死ぬよりも、鎖に繋がれてでも生きるべきか。
「ぐぬぬ……!分かりました、これから御社でお世話になり……ます……」
なんとか言葉を絞り出す。
「そうこなくっちゃ!ようこそ我がMM社へ!我々はあなたを歓迎するわ!」
嬉しそうにはしゃぐ今日から俺のシャチョーとは対照的に、俺の心は未だ絶望の淵だ。
「んはぁっ!」
飛び上がりそうな勢いで起き上がる。荒々しく吐き出される息、爆発しそうな勢いで脈打つ心臓、そして全身から吹き出す冷や汗。
「くそっ……夢か……」
両手で顔の汗を拭う……が、何かおかしい。何というか、顔に触れた感触が妙に金属的だ。手に何かついているのか?そう思い手の平を見てみたが、その時目に入った物に思わず息を飲んだ。
「なっ、何だこれは!」
見ると左腕には、一目で義手と分かる、金属に覆われた物々しい腕が装着されていた。おまけにそれを見て驚いた時に、咄嗟に力が入ったのだが、その動きが、感覚が、何の違和感もなく反映された。こんな物が世の中に存在するのか。
「夢じゃなかったのか……」
その義手を開いたり閉じたりしてみる。ともかく理由は知らないが義手が付いてるという事は、左腕を失ったのは紛れも無い現実ということのようだ。周囲を見渡すと、ベッドの上で寝ている状態で、目に入るのは白い壁に白い天井。どうやらここは、天国では無く病院の一室らしい。つまり俺は命だけは助かったようだが、一体誰が俺を運んでくれたのだろうか。
そんな事を考えていると、扉から1人の女性が入って来た。起きている俺を見るなり少し驚いたような感じだったが、すぐ笑顔になった。
「ようやく目覚めたようね。気分はどう?」
その女性、背は160㎝くらい、年齢は二十代初めくらいだろうか。整った顔立ちに、長い髪もキレイに後ろにまとめられ、そして魅力的なボディ、第一印象は美人としか言いようが無い。しかし、デニムのショートパンツにTシャツ、その上にロゴの入った社用らしいジャンパーを羽織り、頭にはキャップという服装からもどことなくワイルドさが感じられる。
「あなたは?看護師さんでは無いようだけど、ここはどこで、どうして俺がここにいるのか、後この腕はどうなっているのか教えてくれないか?」
「ちょっと、質問は一つづつにして欲しいわね。まあいいわ、ここは東京駅ダンジョン隔離地域近くの病院よ。あんたがここにいるのは、駅ダンジョン内の空洞の途中で引っかかっていたのを、私がここまで運んだから。その左腕は、うちとの契約範囲ね」
「契約?契約って一体何の事だ!?」
状況も何も分からないので、質問は次から次へと出てくる。今の今まで気を失っていた俺に、一体何の契約が結べると言うんだ。
「そんな事よりも、いきなり質問攻めにするから、自己紹介がまだだったわね。私はチトセ、軍事資源回収企業マーシナリー・マイニング社、略してMM社のシャチョーをしてるわ。よろしくね、サドシマくん」
「なぜ俺の名前を……」
「そりゃ我が社の新入社員だもの、名前と経歴くらい知ってるわよ。関東のド田舎出身のサドシマくん、16才でスペキュレイター養成学校、通称・山師学校に進学。近接対応部に進み剣術科を専攻、そして22才で卒業。そのままあの悪名高きBH社に4級スペキュレイターとして入社、そして裏切られて今に至る、と」
驚くというか、むしろ怖くなってきた。なんだ?ストーカーか?
「なんでそんなに詳しく俺のことを知っているんだよ!それに新入社員ってどういう事だ!?」
「経歴を知っているのはBH社の業務上災害ファイルにあった殉職者データを覗き見させてもらったから。それと、瀕死だったあんたの治療費とその義手の費用、我が社で立て替えたから働いて返す契約になったのよ。うちの社員として」
「なっ、何だよそれ!」
「礼は要らないわ。ゴリアテに襲われてる私を助けてくれたお返しだから。あっ、でも私も礼は言わないわよ。私の閃光手榴弾が無かったら、あんたも今頃やられてたんだから」
言われて顔にピンときた。そうか、あの時の同業者だったのか。それにしてもおかしい、何が新入社員だ。俺はまだ採用面接どころか、説明会すら受けてないぞ。その事をチトセに抗議したところ、何やらポケットから一枚の紙を取り出して見せてきた。
「はい、これ」
「これって……」
見てみるとそれは雇用契約書らしく、俺が入社することや、給料のほとんど全てが借金返済のために差し引かれる事が記載されており、さらには一番下の段には、俺のサイン!?
「何だこれは!俺はこんなサインしてないぞ!」
「そりゃそうよ、あんたの筆跡を学習させた自動筆記機がサインしたんだから」
悪びれる素振りも一切なく、シレッと答えるチトセ。なんて女だ。
「なっ……!こんなの完全にインチキ、詐欺じゃないか!この書類も契約も無効だ!」
「まぁ見方によってはそうかもね。でもあんたにとっても悪い話じゃないんじゃない?世間的にはあんたは業務上災害によって死んだ事になっているけど、もしまだ生きている事が分かったらBH社の実行部隊がすぐに飛んでくるわよ」
ぐっ、それはありえる。俺はBH社の不正を目の当たりしたどころか、経験者だ。奴らにとっては俺の存在自体目障りなはずだ。
「だからうちに入社したら、IDも新しいのを用意してあげる。天才ハッカーを擁する我が社に掛れば天涯孤独のしがないサラリーマンの1人や2人、生まれ変わらせるなんて、訳ないわよ」
「くっ、しかし……」
いきなり重大な決断を突きつけられ、頭が回らない。この女の奴隷になるか、BH社の獣共に追われて暮らすか……
「一体どこに悩む要素があるのよ。うちに就職すれば良いこと尽くめよ。三食住む場所付きで、借金も返せれば即自由。返せれたらね」
俺は……どんな事をしても復讐したい相手が山ほどいる。俺から家族を奪ったリソーサー、俺を殺せと命じた会社、そして俺に夢を次いで絶望を与えた奴。だから今は追われて死ぬよりも、鎖に繋がれてでも生きるべきか。
「ぐぬぬ……!分かりました、これから御社でお世話になり……ます……」
なんとか言葉を絞り出す。
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