6 / 71
報告書6「職場挨拶、転職先は社員2人の弱小企業だった件について」
しおりを挟む
あれから俺は直ぐに退院できた。あれだけの傷を受けたのに、こんなにも早く回復できたのは医者が言うには、機動鎧甲を装着していたと言うのもあるが、何よりも病院に運び込まれたのが早かったからというのもあったらしい。つまりはシャチョーこと、チトセのお陰と言うことか。礼を言う気にはさらさらならないが。
「あ~あ……」
にしても憧れだった大企業BH社に裏切られ、左腕を失い、社会的には殉職者になり、そして借金まで背負わされてる事を考えながら、窓の外に流れる隔離地域周辺地帯、通称エキチカの寂れた街並みを眺めていると、全くため息が止まらない。
「とうちゃーく!」
そんな事を病院まで迎えに来たチトセの車、自衛軍払い下げの高機動車の助手席で考えていると、隣の運転席からは俺に借金を背負わせた張本人のテンション高い声が聞こえてきた。それにしても、こんな車両を普段使いにしているとは、やはりエキチカはよっぽど危険なんだな。
「ほらさっさと降りて荷物運んで」
車から降りた途端、荷台から引っ張り出した食糧やらなんに使うのか分からないガラクタの詰まった箱を幾つも持たされる。生身には中々応える重量だ。
「いきなり人使いが荒いな。それで、本社はどこにあるんだ?」
「どこって、目の前にあるじゃない。ここが我がMM社の本社よ」
そう言われて何度見渡しても、そこにはどう見ても薄汚い雑居ビルしかなかった。
「まさか、エキチカに建つこのオンボロビルが本社なのか!?弱小零細企業じゃないか」
「失礼ね。新興企業よ、シ・ン・コ・ウ!もたもたしないでさっさと運ぶ!一階が格納庫、二階が事務所、そして三階が住居スペースよ」
ケツをゲシゲシ蹴られながら仕方なく荷物を運ぶが、地上50階地下3階構造で、屋上にはトランスポーター発着場まで備えたBH社本社とはいくらなんでも違いすぎる。俺は騙されてとんでもない所に来てしまったようだ……
「たっだいまー!」
荷物を一階の格納庫と称するガレージまで運び、大声ではしゃぐチトセに続いて二階の事務所に入る。室内は壁に大型の液晶ホワイトボードが掛かり、事務机には端末が置かれたりなど事務所っぽくはなっているが、電磁記録装置やらその配線やら本やら栄養ドリンクやらなんやらがあちこちに散らばっており、雑然としている。何というかこの女の性格が現れているようだ。
「ふぁ~あ、おっ、チトセ戻ったか」
声の方を見るとツナギの作業服に頭にはゴーグルを着けた、これまた可愛らしい短髪の女性がソファーから起き出してきたところだった。それにしてもツナギの上側を肌けて腰に巻きつけ、薄着一枚の上半身を恥ずかしげも無く晒すその姿、目のやり場に困る。
「イクノ!こいつが我が社念願のアタッカーよ!」
「おぉ、はじめましてイクノじゃ。チトセから話には聞いていたが、大した奴を捕まえてきたものじゃのう」
「はっ、はじめまして。サドシマです」
見たところ歳はチトセと大して変わらないが、まるで年寄りのような話し方をする人だ。もしかしてドワーフみたいに歳を取っても見た目が変わらないとかなのだろうか。
「ちょっと、サドシマはもう死んだ事になってるんだから、その名前とはもうお別れするのよ。今日からあんたは……そうね……イワミよ!いっぱい稼げそうな、いい名前でしょ?」
俺の名前が、一瞬の思い付きにより決まってしまった。しかもあまりカッコよくない名前に。
「イクノは装備品の開発整備を担当しているわ。このコとはおなちゅうだったんだけど、飛び級で工科大学に入学した天才なのよ!あんたのその義手を作ったのも、新しいIDを持ってきたのもイクノなんだから感謝しときなさい」
「本当ですか?すごい技術ですね」
「うむ、それは腕によりをかけて作ったからの。リソーサーから回収された、機械部品と生体部品を結合させる技術を応用してるんじゃが、自前の腕と全く同じ一体感じゃろ。しかもアクチュエータもただの人工筋肉では無く、出力可変式筋繊維を使用しておる。これも流す電気量によって強度が変わる新素材がリソーサーから回収された事により可能になったのじゃが、お陰で日常の細かな動作から戦闘時の大出力まで、あらゆる用途をこの一つの義手によって行うことができるのじゃ!」
「へ、へぇ~……そうなんですか」
「さらにさらに」
「はいそこまで~本当にイクノは機械の事となると、止まらなくなるんだから」
本当にすごいマシンガントークだ。話の内容は全然頭に入ってこなかったが、どうやらこの義手は凄いものらしい。
「さてと、あんたの部屋は3階の真ん中よ。布団は部屋にあるのを勝手に使っていいわ。ちなみに奥が私、手前がイクノの部屋なんだけど勝手に入ったりしたら殺すから」
せっかく拾った命だ、無駄にはしたくないからここは言うことを聞いておいた方が賢明だろう。
「それと今日の夜はあんたの歓迎会をしてやるから、7時に事務所に来る事!そしたら明日からいよいよ業務開始よ!それじゃ解散!」
怒涛のように始まった転職先での俺の新生活。それにしても今思えば、BH社にいた頃は歓迎会どころか、仕事で用がある時以外に職場の人間と喋った事すらなかったな。
「あ~あ……」
にしても憧れだった大企業BH社に裏切られ、左腕を失い、社会的には殉職者になり、そして借金まで背負わされてる事を考えながら、窓の外に流れる隔離地域周辺地帯、通称エキチカの寂れた街並みを眺めていると、全くため息が止まらない。
「とうちゃーく!」
そんな事を病院まで迎えに来たチトセの車、自衛軍払い下げの高機動車の助手席で考えていると、隣の運転席からは俺に借金を背負わせた張本人のテンション高い声が聞こえてきた。それにしても、こんな車両を普段使いにしているとは、やはりエキチカはよっぽど危険なんだな。
「ほらさっさと降りて荷物運んで」
車から降りた途端、荷台から引っ張り出した食糧やらなんに使うのか分からないガラクタの詰まった箱を幾つも持たされる。生身には中々応える重量だ。
「いきなり人使いが荒いな。それで、本社はどこにあるんだ?」
「どこって、目の前にあるじゃない。ここが我がMM社の本社よ」
そう言われて何度見渡しても、そこにはどう見ても薄汚い雑居ビルしかなかった。
「まさか、エキチカに建つこのオンボロビルが本社なのか!?弱小零細企業じゃないか」
「失礼ね。新興企業よ、シ・ン・コ・ウ!もたもたしないでさっさと運ぶ!一階が格納庫、二階が事務所、そして三階が住居スペースよ」
ケツをゲシゲシ蹴られながら仕方なく荷物を運ぶが、地上50階地下3階構造で、屋上にはトランスポーター発着場まで備えたBH社本社とはいくらなんでも違いすぎる。俺は騙されてとんでもない所に来てしまったようだ……
「たっだいまー!」
荷物を一階の格納庫と称するガレージまで運び、大声ではしゃぐチトセに続いて二階の事務所に入る。室内は壁に大型の液晶ホワイトボードが掛かり、事務机には端末が置かれたりなど事務所っぽくはなっているが、電磁記録装置やらその配線やら本やら栄養ドリンクやらなんやらがあちこちに散らばっており、雑然としている。何というかこの女の性格が現れているようだ。
「ふぁ~あ、おっ、チトセ戻ったか」
声の方を見るとツナギの作業服に頭にはゴーグルを着けた、これまた可愛らしい短髪の女性がソファーから起き出してきたところだった。それにしてもツナギの上側を肌けて腰に巻きつけ、薄着一枚の上半身を恥ずかしげも無く晒すその姿、目のやり場に困る。
「イクノ!こいつが我が社念願のアタッカーよ!」
「おぉ、はじめましてイクノじゃ。チトセから話には聞いていたが、大した奴を捕まえてきたものじゃのう」
「はっ、はじめまして。サドシマです」
見たところ歳はチトセと大して変わらないが、まるで年寄りのような話し方をする人だ。もしかしてドワーフみたいに歳を取っても見た目が変わらないとかなのだろうか。
「ちょっと、サドシマはもう死んだ事になってるんだから、その名前とはもうお別れするのよ。今日からあんたは……そうね……イワミよ!いっぱい稼げそうな、いい名前でしょ?」
俺の名前が、一瞬の思い付きにより決まってしまった。しかもあまりカッコよくない名前に。
「イクノは装備品の開発整備を担当しているわ。このコとはおなちゅうだったんだけど、飛び級で工科大学に入学した天才なのよ!あんたのその義手を作ったのも、新しいIDを持ってきたのもイクノなんだから感謝しときなさい」
「本当ですか?すごい技術ですね」
「うむ、それは腕によりをかけて作ったからの。リソーサーから回収された、機械部品と生体部品を結合させる技術を応用してるんじゃが、自前の腕と全く同じ一体感じゃろ。しかもアクチュエータもただの人工筋肉では無く、出力可変式筋繊維を使用しておる。これも流す電気量によって強度が変わる新素材がリソーサーから回収された事により可能になったのじゃが、お陰で日常の細かな動作から戦闘時の大出力まで、あらゆる用途をこの一つの義手によって行うことができるのじゃ!」
「へ、へぇ~……そうなんですか」
「さらにさらに」
「はいそこまで~本当にイクノは機械の事となると、止まらなくなるんだから」
本当にすごいマシンガントークだ。話の内容は全然頭に入ってこなかったが、どうやらこの義手は凄いものらしい。
「さてと、あんたの部屋は3階の真ん中よ。布団は部屋にあるのを勝手に使っていいわ。ちなみに奥が私、手前がイクノの部屋なんだけど勝手に入ったりしたら殺すから」
せっかく拾った命だ、無駄にはしたくないからここは言うことを聞いておいた方が賢明だろう。
「それと今日の夜はあんたの歓迎会をしてやるから、7時に事務所に来る事!そしたら明日からいよいよ業務開始よ!それじゃ解散!」
怒涛のように始まった転職先での俺の新生活。それにしても今思えば、BH社にいた頃は歓迎会どころか、仕事で用がある時以外に職場の人間と喋った事すらなかったな。
0
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
思いを込めてあなたに贈る
あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる