雑草の背伸び

honjya

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2. 夢見る雑草

夢心地

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帰り際駅へ向かって歩いていると、Aは中城に
「時々LINEで電話していいですか?」
と聞いてきた。中城は、
「いいけど、何話すの?」
「ご迷惑なら大丈夫です。仕事の事とか、、、。」
「仕事の事か、俺が助けられるかなー、まぁ、いいよ!いつでもかけてきてよ。」
いつでもは良くないなと思いながら中城は答えた。駅のホームまで見送り、電車に乗り込むAは振り返り、中城を見つけ小さな会釈と小さくバイバイの手振りをしてみせた。
それを見送った中城は、ふと自分が笑顔だった事に驚きと恥ずかしさを覚えた。真顔に戻るとともに寂しさを覚えたが、孤独の寂しさではないコバルトブルー色の寂しさだった。
家路につく足取りは重くこれから自宅で起こる出来事に面倒くささを感じながら対応策を考え出した。


昨日から同じ日々ではなくなった。
同じ日々の繰り返しから違う日になった気がした。いつもと同じ場所、同じ土、同じ空のはずなのに、生きている事が嬉しかった。一人なのに一人じゃない気がした。
何も変わっていないのに強くなれる気がした。
心にはその時その時で、土台のようなものがあるのかもしれない。それは希望とか期待とか未来が大きく関係していると思う。
それが例え不透明でも。

中城はあの日から何かが変わった。一言では言い表せないが、あえて一言で言うならば中城は自分に自信を持ったと言う事であろう。
人に認められた気がした。
夫婦の中でも感じる孤独が無くなった。
一人の男として生きていける気がした。
失われた日々を取り戻せる気がした。
全て一人の雑草の小さな小さな気持ちの変化だった。しかし、中城にとっての世界はいつもの世界ではなかった。
あの日から特にAとの接し方に何もなく、普段と変わらない、そう、
同じ日々のはずなの違う日々だった。
今のままで満足だった。
きっとAと他の人とは一歩繋がりが深いという思いが充足感すら満たしていたのかもしれない。
あの日までは。
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