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昭和十四年この日東京鄭都が死んだ。
ザーと雨が嵐のように降りまるで冬なのに台風が到来してきたのようだった。ゴオォォォ!大きな地鳴りのような音を立てて上空を飛行船団が通過していく。
その飛行船団の恐怖に怯え悲鳴を上げ逃げ出す人々。
「早く来い!モタモタしていると爆弾がおってくるぞォ!」
「固い建物中へ急げ!」
その頃飛行船団は東京都心を集中的に爆撃を行っていた。
飛行船団の腹の部分に着いた三十を超える爆弾は切り離され爆撃されていく。
東京都心から少し離れた司令室から飛行部隊へ出撃命令を発令した。
「一○一二三(ヒトマルヒトフサ)雷撃部隊へ出撃命令を発令する。敵船団の居る座標一一二四六六三二一。艮(ウシトラ)方向だ。誇り高き空の新撰組よ武運を祈る」
それを聞いた雷撃隊はすぐに服を着替え零戦へ乗り込む。
ブロロロロォ!![#「!!」は縦中横]零戦のエンジンがかかり出発許可を合図とする白の旗を上から下へ振り下ろす。零戦パイロットは航空隊の司令官や整備員らに敬礼をし零戦が動き出す。整備員や日本軍は旭日旗や帽子を振り成功を祈り見送る。雷撃隊は滑走路から離れると山の脇から零戦が飛び出す。
「…これは」
パイロットの目の前に広がっていたのは飛行船団により紅蓮の炎に包まれた東京の街並みだった。
「クッ…野蛮ノ軍船メラガァ。雷撃隊、空の新撰組の名のもとに奴らを蹴散らせェ!。」
雷撃隊隊長が全機に言うと敵船団へ集中攻撃を浴びせた。
ドドドドドッ!![#「!!」は縦中横]と、零戦の機関銃からよく弾丸が撃ち敵船団一機撃墜した。
「敵船団一機撃墜!敵船団一機撃墜!」
「残りの敵船団八機全ての撃ち落とせ!」
すると飛行船団に乗り込んでいる黒軍服の兵それは幕末終期に戊辰戦争で戦った徳川旧幕府軍の兵士だった。
「銃剣構え!」
敵船団の兵長が旧幕府軍に命令を出した。兵士は一斉に銃剣を構え零戦に狙いを定めた。
「敵船団中央に狙いを集中させ敵陣営を破壊、敵戦力を無力化へさせるッ!」
「目標鐵鳥(テッチョウ)。酉(とり)方向の殿艦を落とさせるなァ!![#「!!」は縦中横]」
旧幕府軍は零戦(鐵鳥)に向け射撃をした。
「クソッ敵攻撃。上へ上昇し転回させて上から本体を撃退させるッ!」
雷撃隊は隊長の命令に従い一気に上空へ転回した。
「あの巨体なデカブツは敵船団上方向は死角ッ。その瞬間でケリを付けてやるッ!」
ドドーン!![#「!!」は縦中横]
隊長の視界に真っ赤な爆発とガラス越しから熱風を感じた。
「な…なんだァ」
隊長が左方向後ろを振り向くと仲間の雷撃隊の零戦が勢いよく炎と黒煙を上げて今にでも落ちそうな体制で飛んでいた。
「ば、バカなここは奴らにとって死角のはず…!![#「!!」は縦中横]弾丸も大砲も到底不可。なんだ?!一体何で攻撃を?!」
すると隊長のコックピットに黒の革手袋をつけた手が飛び出してきた。
「?![#「?!」は縦中横]」
黒の革手袋の持ち主は屍の旧幕府兵だった。飛行船団から約二十メートルも離れた上空にいる飛行機に屍も届かないはず。しかし屍はその想像を超える行動をとっていた。旧幕府兵は飛行船団の上へよじ登り脅威の脚力で仲間の飛行機にしがみつき銀翼の最強セラミックを自らの手で剥がし取り大破させたのだ。
バリンッ!
屍は固い厚ガラスを難なくと片手で突き破り雷撃隊隊長の顔近くまで腕が伸びてきた。
「クソタァレェ!![#「!!」は縦中横]」
ガンガン!![#「!!」は縦中横]
屍は隊長の零戦の主要部分のセラミック板を剥がし初め機体にはすでに六体の屍がしがみついていた。隊長は、ここまでかと思った時どこからともなく重い重低音の銃声が山中の森林から鳴り響いた。
バシュン!![#「!!」は縦中横]
「なんだ…銃声?」
銃声が鳴ると戦闘機にしがみつく屍達を撃ち落としていく。
バシュン!![#「!!」は縦中横]バシュン!![#「!!」は縦中横]
(味方か?それとも何者だ?)
そして隊長が気づいた時には屍は最後の一体になっていた。
バシュン!![#「!!」は縦中横]
最後の銃声が鳴り響き戦闘機にしがみつく屍は全員撃ち落とし飛行機のバランスが平常に戻った。
ガチャッ、カキーンッ。
森林の木の木陰で空の弾倉を抜き弾薬をリロードする神父服(キャソック)の男が九十六式機関銃を構えた。
ドドンッ!![#「!!」は縦中横]
神父の男は引き金を引き弾を撃つ。弾丸は蒼に輝いていて途中になると蒼の弾は金色に変わり始め色が変色した瞬間スピードが一気に加速、弾は脊髄を貫通し頭を吹き飛ばす。すると神父の後ろから若い男の声が聞こえた。声は青年の声である。
「中村そこまでだ。それ以上バンバン撃ってると屍人(カバネビト)バレちまうぜぇ」
「河上弘、いつかそこに居た?」
「ずーっと君が百式短機関銃をしまい慌ててしまい九十六式機関銃を構えたものはいいが狙撃専用スコープを忘れガムシャラに九十六式をブッパしていた所からだ」
「最初っから居たんじゃねぇーかァ!![#「!!」は縦中横]」
「まぁな…しかしまぁ見事なもんだ。あんな距離をスコープ無しで撃ち抜くなんてなァ」
河上弘は肝心な目で九十六式を眺めながら言った。
中村新八は河上弘になぜここに来たのか聞いた。
「で、河上はなぜここへ来た?飛行船団から降りてくる旧幕府の屍を倒す目的だったろ。」
「ああそれは心配いらねェ。奴らの首を全て斬首してきた。ああ、それと面白いものを拾って来た。」
「テェ、おい待てェ!![#「!!」は縦中横]それは拾ったんじゃなくてただの誘拐だろうがァ!![#「!!」は縦中横]」
河上弘の手に持っていたのは気絶してぐたんとした黒の皮のコートに黒スーツズボンに黒の革靴、肩には白のショルダーバックを掛け口には黒マスクをつけた茶髪少年だった。
「怖ぇよォ!![#「!!」は縦中横]屍より怖ぇよ、連れてきた場所へ返してこォーい」
「まま、この子いずれ役立つかも」
「はぁ…?」
(うっ…あ、暑い…く、苦しい…)
連れ去られた青年は悪夢を見ていた、紅蓮の炎に包まれ燃え盛る東京の街並み。上空には飛行船団の雄飛号が何台も連隊を組み爆弾を落としていく。
ヒューー…ドーン。飛行船団から大量の燃夷爆弾が切り離され逃げ慌てる人混みの中へ落下それは豪雨の如くその光景は業火の炎に包まれた地獄の底へと化した混乱状態の街並み。そして空から落ちてくるのは燃夷爆弾だけではなかった。それは火縄銃やマスケット銃などを携えた西洋式軍服を着た戊辰戦争で亡くなった屍空挺部隊だった。パラシュートも身に付けずマントやコート、羽織を降下する風でなびかせながら空中で体制を保ちながら落下。屍はビルの屋上や車の屋根に降りて直ぐに銃を構え逃げる市民を一斉射撃を行った。
「逃げろ!![#「!!」は縦中横]」
「浅草方面へ逃げろ!![#「!!」は縦中横]」
人々は一斉に浅草方面へ駆け出した。
「いたぞ!![#「!!」は縦中横]撃ちまくれ!![#「!!」は縦中横]」
屍人の前に現れ二十六年式拳銃をホルスターから引き抜き撃ちまくったのは黒の警察服に黒の警察帽、黒ブーツ黒革手袋を付けた警察部隊だ。
バンッバンッバンッ!![#「!!」は縦中横]
警察部隊は弾丸を全て使い切るも屍人は撃たれて倒れるどころか一歩もひるまず普通にピンピンとしていた。
この時河上に誘拐された青年もその人ごみの中にいた。青年は足を止め後ろを振り返り警察の状況を見た。しかしすでに警察部隊は弾丸で穴だらけになった戊辰戦争の屍人に火縄銃やマスケット銃の弾丸の雨を受け血を吹き出しながら次々と倒れていく。それはまさに地獄絵図だった。
「アァァァァ!![#「!!」は縦中横]」
青年は大声で叫び心臓や呼吸を荒らげ汗ダクダクになりながら目を覚ました。
「はぁ…夢。」
青年は見知らぬ場所だと知ってから一分弱、窓から差し込む東雲の光を見て朝方だと分かった青年は西洋的ふかふかベッドから出て周囲をじっくりと見渡した。匂いはフローズンのよう優しい香りが漂い白樺の壁と西洋的な家具がポンポンと六ヶ所ぐらい置いてある。人見知りで臆病な青年は興味津々もありながら恐怖心もあって変な汗をかいていた。青年は部屋の外から出る扉に手を伸ばした。
ガチャッ。
青年は固唾を飲み込み部屋の扉を開いた。
ギギィ…。
そこに広がっていたのは赤のカーペットがひかれている長くてでかい廊下だった。壁はシンプルな作り込みで木目の付いた木の板の壁が奥の壁まで続いている。
青年は再び固唾を飲み不安げな表情をした。
「…ほんとうにここはどこなの…」
青年は小さな声で呟くと背後から女性の声が聞こえてきた。
「お目覚めになられましたか、黒き衣の貴公子様。」
「うぁぁぁ!だ、誰ですか?」
青年は黒のワンピースの上に白のドレスエプロンを着た女性にいきなり話しかけられ驚いた。
「わたくしはこの館の召使いをしている甲斐夢姫(いぶき)といいます。」
「あ、ご丁寧にどうも…芦屋晴明(はるあき)です。」
青年は頭を深く下げて挨拶を返した。すると甲斐夢姫は何かを思い出したかのような表情に変わり青年に話した。
「そうです。晴明様とお話されたいと河上弘様から聞かされていました。」
「お話ですか?」
「はい、さぁこちらへ」
芦屋晴明は甲斐夢姫を先頭について行く。芦屋晴明は明るく陽気な甲斐夢姫に対して暗くて人見知りの自分…まったくついていけない気がし小さく甲斐夢姫にバレないようため息をついた。
「こちらのお部屋です。」
「こ、この部屋ですか?」
扉は普通のデカさだが芦屋晴明から見たら巨大で開けるのに力がいりそうな頑丈な扉に見えた。芦屋晴明はこの日三度目の固唾を飲み込み手汗べちょべちょな震える手でドアノブに手をかけようとし腕を伸ばした。しかし…。
(て、手がこれ以上進まない…)
芦屋晴明は緊張のあまり扉を開けるという簡単な動作ができない状況に後ろから静かに見守る甲斐夢姫は顔の表情は無。だが心の中では、(この子面白いフフッ。)と笑っていた。
そして芦屋晴明は甲斐夢姫の顔を見て、(うわあ、めっちゃ睨まれている。どうしよ!![#「!!」は縦中横])と勘違い、さらに冷や汗が吹き出した。
その時、ドアノブに白手袋を手がとびだしてきた。
(え…)
ガチャッ…。
扉を開けたのは甲斐夢姫だった。
(あ、開けてしまったよこの人…)
芦屋晴明は心の中で泣け叫びを上げた。
「あちらの方が河上弘様です。」
「はぃ…」
グガガガガァ!![#「!!」は縦中横]
河上弘は大きないびきをかき爆睡していた。
「……」
「河上弘様。芦屋晴明様がお目覚めになられましたよ。河上様?」
「寝てる…」
「はぁ、いつもそうです。河上弘様はこうやって眠っているのです。河上弘様、芦屋様が連れて参りました。」
グガガガガァ…。
自由気ままで寝坊助なリーダーに少し緊張がほぐれたというか少しばかり、この人が頭?と思った。すると甲斐夢姫は、そうだ。と言うと河上弘の元へ行くき耳元に口を近づくと小さくふぅ~。と息をふきかけた。
「うあぁ!」
河上弘は息をふきかけられた耳を抑え椅子ごと後ろへ倒れた。
「ようやく起きられましたか河上弘様」
「甲斐か。いつも言っているけれど声をかけて起こしてくられと言っているだろ?うん?」
「ひっ!」
「よぉ、目を覚ましたか。」
「おはようございます…」
「おう、甲斐少しの間席を外してくれあの方と二人で話したい。」
「承知です。」
河上弘が甲斐に言うと頭を下げて言った。すると部屋を後にする際、緊張し気味な顔をする芦屋晴明の耳元で「頑張って」と一言笑顔で囁き部屋から出て行った。
「じゃ、二人きりになったことで話を始めようか。」
紺のスーツに白ワイシャツ、斜めの白ラインの入る紺ネクタイをはめた男が河上弘だ。髪は前髪を先端から分け髪色は白色をしていて目の色は意識全てが吸い込まれそうな薄淡い色をしていて意外と優しそうな人だった。
「君とても優しい顔をしているね。とても強いのに優しい雰囲気が溢れている。」
「ああ、どうも。しかしなぜ僕をこの洋館にいるのです?確か骸に母を喰われていた。」
芦屋晴明の母芦屋藤子(とうこ)が首の後ろを食いちぎり貪っていたと河上弘の前で頭を抱え口にしながら回想した。
「そうか。母は君の前で食い殺されていたのか?」
「はい。確かあれは六時頃僕は仕事として駅前でいつものように新聞売たその日天空から飛行船が飛んできていきなり爆弾が雨のように降ってきました。僕は母が心配になりすぐに家へ戻ったんですが、しかし母はもう…
」
芦屋晴明は大粒の涙を流した。それを見た河上弘は悲しみの涙と言うより怨みに満ちた涙と伝わってきた。
「それは黒衛軍の仕業だ。」
「黒衛…軍」
河上弘は芦屋晴明の話を聞いて黒衛軍について語り出した。
「ああ、黒衛軍は死霊魔術師の力を持つ一族。君は母親を殺されて黒衛軍をどう受け止めるいや、憎いか、憎くないかどちらか一言君の口から言え。選択肢は一つ言い換えるのは無しだ。」
河上弘は険しい顔で芦屋晴明に指を指し問いをなげつけた。芦屋晴明は顔を上げて悩むことなく一言った。
「憎いですッ!」
すると芦屋晴明は血の涙と共に怨みを超え人間とは違う人外の姿に河上弘は見えた。
河上弘は険しい顔から優しい顔へ戻り芦屋晴明に言った。
「君は今日からここで錬金術について学べ。そして君のその怨みを自らの手で打ち払いなさい。」
「はい。」
芦屋晴明はすぐに返事を返した。
ザーと雨が嵐のように降りまるで冬なのに台風が到来してきたのようだった。ゴオォォォ!大きな地鳴りのような音を立てて上空を飛行船団が通過していく。
その飛行船団の恐怖に怯え悲鳴を上げ逃げ出す人々。
「早く来い!モタモタしていると爆弾がおってくるぞォ!」
「固い建物中へ急げ!」
その頃飛行船団は東京都心を集中的に爆撃を行っていた。
飛行船団の腹の部分に着いた三十を超える爆弾は切り離され爆撃されていく。
東京都心から少し離れた司令室から飛行部隊へ出撃命令を発令した。
「一○一二三(ヒトマルヒトフサ)雷撃部隊へ出撃命令を発令する。敵船団の居る座標一一二四六六三二一。艮(ウシトラ)方向だ。誇り高き空の新撰組よ武運を祈る」
それを聞いた雷撃隊はすぐに服を着替え零戦へ乗り込む。
ブロロロロォ!![#「!!」は縦中横]零戦のエンジンがかかり出発許可を合図とする白の旗を上から下へ振り下ろす。零戦パイロットは航空隊の司令官や整備員らに敬礼をし零戦が動き出す。整備員や日本軍は旭日旗や帽子を振り成功を祈り見送る。雷撃隊は滑走路から離れると山の脇から零戦が飛び出す。
「…これは」
パイロットの目の前に広がっていたのは飛行船団により紅蓮の炎に包まれた東京の街並みだった。
「クッ…野蛮ノ軍船メラガァ。雷撃隊、空の新撰組の名のもとに奴らを蹴散らせェ!。」
雷撃隊隊長が全機に言うと敵船団へ集中攻撃を浴びせた。
ドドドドドッ!![#「!!」は縦中横]と、零戦の機関銃からよく弾丸が撃ち敵船団一機撃墜した。
「敵船団一機撃墜!敵船団一機撃墜!」
「残りの敵船団八機全ての撃ち落とせ!」
すると飛行船団に乗り込んでいる黒軍服の兵それは幕末終期に戊辰戦争で戦った徳川旧幕府軍の兵士だった。
「銃剣構え!」
敵船団の兵長が旧幕府軍に命令を出した。兵士は一斉に銃剣を構え零戦に狙いを定めた。
「敵船団中央に狙いを集中させ敵陣営を破壊、敵戦力を無力化へさせるッ!」
「目標鐵鳥(テッチョウ)。酉(とり)方向の殿艦を落とさせるなァ!![#「!!」は縦中横]」
旧幕府軍は零戦(鐵鳥)に向け射撃をした。
「クソッ敵攻撃。上へ上昇し転回させて上から本体を撃退させるッ!」
雷撃隊は隊長の命令に従い一気に上空へ転回した。
「あの巨体なデカブツは敵船団上方向は死角ッ。その瞬間でケリを付けてやるッ!」
ドドーン!![#「!!」は縦中横]
隊長の視界に真っ赤な爆発とガラス越しから熱風を感じた。
「な…なんだァ」
隊長が左方向後ろを振り向くと仲間の雷撃隊の零戦が勢いよく炎と黒煙を上げて今にでも落ちそうな体制で飛んでいた。
「ば、バカなここは奴らにとって死角のはず…!![#「!!」は縦中横]弾丸も大砲も到底不可。なんだ?!一体何で攻撃を?!」
すると隊長のコックピットに黒の革手袋をつけた手が飛び出してきた。
「?![#「?!」は縦中横]」
黒の革手袋の持ち主は屍の旧幕府兵だった。飛行船団から約二十メートルも離れた上空にいる飛行機に屍も届かないはず。しかし屍はその想像を超える行動をとっていた。旧幕府兵は飛行船団の上へよじ登り脅威の脚力で仲間の飛行機にしがみつき銀翼の最強セラミックを自らの手で剥がし取り大破させたのだ。
バリンッ!
屍は固い厚ガラスを難なくと片手で突き破り雷撃隊隊長の顔近くまで腕が伸びてきた。
「クソタァレェ!![#「!!」は縦中横]」
ガンガン!![#「!!」は縦中横]
屍は隊長の零戦の主要部分のセラミック板を剥がし初め機体にはすでに六体の屍がしがみついていた。隊長は、ここまでかと思った時どこからともなく重い重低音の銃声が山中の森林から鳴り響いた。
バシュン!![#「!!」は縦中横]
「なんだ…銃声?」
銃声が鳴ると戦闘機にしがみつく屍達を撃ち落としていく。
バシュン!![#「!!」は縦中横]バシュン!![#「!!」は縦中横]
(味方か?それとも何者だ?)
そして隊長が気づいた時には屍は最後の一体になっていた。
バシュン!![#「!!」は縦中横]
最後の銃声が鳴り響き戦闘機にしがみつく屍は全員撃ち落とし飛行機のバランスが平常に戻った。
ガチャッ、カキーンッ。
森林の木の木陰で空の弾倉を抜き弾薬をリロードする神父服(キャソック)の男が九十六式機関銃を構えた。
ドドンッ!![#「!!」は縦中横]
神父の男は引き金を引き弾を撃つ。弾丸は蒼に輝いていて途中になると蒼の弾は金色に変わり始め色が変色した瞬間スピードが一気に加速、弾は脊髄を貫通し頭を吹き飛ばす。すると神父の後ろから若い男の声が聞こえた。声は青年の声である。
「中村そこまでだ。それ以上バンバン撃ってると屍人(カバネビト)バレちまうぜぇ」
「河上弘、いつかそこに居た?」
「ずーっと君が百式短機関銃をしまい慌ててしまい九十六式機関銃を構えたものはいいが狙撃専用スコープを忘れガムシャラに九十六式をブッパしていた所からだ」
「最初っから居たんじゃねぇーかァ!![#「!!」は縦中横]」
「まぁな…しかしまぁ見事なもんだ。あんな距離をスコープ無しで撃ち抜くなんてなァ」
河上弘は肝心な目で九十六式を眺めながら言った。
中村新八は河上弘になぜここに来たのか聞いた。
「で、河上はなぜここへ来た?飛行船団から降りてくる旧幕府の屍を倒す目的だったろ。」
「ああそれは心配いらねェ。奴らの首を全て斬首してきた。ああ、それと面白いものを拾って来た。」
「テェ、おい待てェ!![#「!!」は縦中横]それは拾ったんじゃなくてただの誘拐だろうがァ!![#「!!」は縦中横]」
河上弘の手に持っていたのは気絶してぐたんとした黒の皮のコートに黒スーツズボンに黒の革靴、肩には白のショルダーバックを掛け口には黒マスクをつけた茶髪少年だった。
「怖ぇよォ!![#「!!」は縦中横]屍より怖ぇよ、連れてきた場所へ返してこォーい」
「まま、この子いずれ役立つかも」
「はぁ…?」
(うっ…あ、暑い…く、苦しい…)
連れ去られた青年は悪夢を見ていた、紅蓮の炎に包まれ燃え盛る東京の街並み。上空には飛行船団の雄飛号が何台も連隊を組み爆弾を落としていく。
ヒューー…ドーン。飛行船団から大量の燃夷爆弾が切り離され逃げ慌てる人混みの中へ落下それは豪雨の如くその光景は業火の炎に包まれた地獄の底へと化した混乱状態の街並み。そして空から落ちてくるのは燃夷爆弾だけではなかった。それは火縄銃やマスケット銃などを携えた西洋式軍服を着た戊辰戦争で亡くなった屍空挺部隊だった。パラシュートも身に付けずマントやコート、羽織を降下する風でなびかせながら空中で体制を保ちながら落下。屍はビルの屋上や車の屋根に降りて直ぐに銃を構え逃げる市民を一斉射撃を行った。
「逃げろ!![#「!!」は縦中横]」
「浅草方面へ逃げろ!![#「!!」は縦中横]」
人々は一斉に浅草方面へ駆け出した。
「いたぞ!![#「!!」は縦中横]撃ちまくれ!![#「!!」は縦中横]」
屍人の前に現れ二十六年式拳銃をホルスターから引き抜き撃ちまくったのは黒の警察服に黒の警察帽、黒ブーツ黒革手袋を付けた警察部隊だ。
バンッバンッバンッ!![#「!!」は縦中横]
警察部隊は弾丸を全て使い切るも屍人は撃たれて倒れるどころか一歩もひるまず普通にピンピンとしていた。
この時河上に誘拐された青年もその人ごみの中にいた。青年は足を止め後ろを振り返り警察の状況を見た。しかしすでに警察部隊は弾丸で穴だらけになった戊辰戦争の屍人に火縄銃やマスケット銃の弾丸の雨を受け血を吹き出しながら次々と倒れていく。それはまさに地獄絵図だった。
「アァァァァ!![#「!!」は縦中横]」
青年は大声で叫び心臓や呼吸を荒らげ汗ダクダクになりながら目を覚ました。
「はぁ…夢。」
青年は見知らぬ場所だと知ってから一分弱、窓から差し込む東雲の光を見て朝方だと分かった青年は西洋的ふかふかベッドから出て周囲をじっくりと見渡した。匂いはフローズンのよう優しい香りが漂い白樺の壁と西洋的な家具がポンポンと六ヶ所ぐらい置いてある。人見知りで臆病な青年は興味津々もありながら恐怖心もあって変な汗をかいていた。青年は部屋の外から出る扉に手を伸ばした。
ガチャッ。
青年は固唾を飲み込み部屋の扉を開いた。
ギギィ…。
そこに広がっていたのは赤のカーペットがひかれている長くてでかい廊下だった。壁はシンプルな作り込みで木目の付いた木の板の壁が奥の壁まで続いている。
青年は再び固唾を飲み不安げな表情をした。
「…ほんとうにここはどこなの…」
青年は小さな声で呟くと背後から女性の声が聞こえてきた。
「お目覚めになられましたか、黒き衣の貴公子様。」
「うぁぁぁ!だ、誰ですか?」
青年は黒のワンピースの上に白のドレスエプロンを着た女性にいきなり話しかけられ驚いた。
「わたくしはこの館の召使いをしている甲斐夢姫(いぶき)といいます。」
「あ、ご丁寧にどうも…芦屋晴明(はるあき)です。」
青年は頭を深く下げて挨拶を返した。すると甲斐夢姫は何かを思い出したかのような表情に変わり青年に話した。
「そうです。晴明様とお話されたいと河上弘様から聞かされていました。」
「お話ですか?」
「はい、さぁこちらへ」
芦屋晴明は甲斐夢姫を先頭について行く。芦屋晴明は明るく陽気な甲斐夢姫に対して暗くて人見知りの自分…まったくついていけない気がし小さく甲斐夢姫にバレないようため息をついた。
「こちらのお部屋です。」
「こ、この部屋ですか?」
扉は普通のデカさだが芦屋晴明から見たら巨大で開けるのに力がいりそうな頑丈な扉に見えた。芦屋晴明はこの日三度目の固唾を飲み込み手汗べちょべちょな震える手でドアノブに手をかけようとし腕を伸ばした。しかし…。
(て、手がこれ以上進まない…)
芦屋晴明は緊張のあまり扉を開けるという簡単な動作ができない状況に後ろから静かに見守る甲斐夢姫は顔の表情は無。だが心の中では、(この子面白いフフッ。)と笑っていた。
そして芦屋晴明は甲斐夢姫の顔を見て、(うわあ、めっちゃ睨まれている。どうしよ!![#「!!」は縦中横])と勘違い、さらに冷や汗が吹き出した。
その時、ドアノブに白手袋を手がとびだしてきた。
(え…)
ガチャッ…。
扉を開けたのは甲斐夢姫だった。
(あ、開けてしまったよこの人…)
芦屋晴明は心の中で泣け叫びを上げた。
「あちらの方が河上弘様です。」
「はぃ…」
グガガガガァ!![#「!!」は縦中横]
河上弘は大きないびきをかき爆睡していた。
「……」
「河上弘様。芦屋晴明様がお目覚めになられましたよ。河上様?」
「寝てる…」
「はぁ、いつもそうです。河上弘様はこうやって眠っているのです。河上弘様、芦屋様が連れて参りました。」
グガガガガァ…。
自由気ままで寝坊助なリーダーに少し緊張がほぐれたというか少しばかり、この人が頭?と思った。すると甲斐夢姫は、そうだ。と言うと河上弘の元へ行くき耳元に口を近づくと小さくふぅ~。と息をふきかけた。
「うあぁ!」
河上弘は息をふきかけられた耳を抑え椅子ごと後ろへ倒れた。
「ようやく起きられましたか河上弘様」
「甲斐か。いつも言っているけれど声をかけて起こしてくられと言っているだろ?うん?」
「ひっ!」
「よぉ、目を覚ましたか。」
「おはようございます…」
「おう、甲斐少しの間席を外してくれあの方と二人で話したい。」
「承知です。」
河上弘が甲斐に言うと頭を下げて言った。すると部屋を後にする際、緊張し気味な顔をする芦屋晴明の耳元で「頑張って」と一言笑顔で囁き部屋から出て行った。
「じゃ、二人きりになったことで話を始めようか。」
紺のスーツに白ワイシャツ、斜めの白ラインの入る紺ネクタイをはめた男が河上弘だ。髪は前髪を先端から分け髪色は白色をしていて目の色は意識全てが吸い込まれそうな薄淡い色をしていて意外と優しそうな人だった。
「君とても優しい顔をしているね。とても強いのに優しい雰囲気が溢れている。」
「ああ、どうも。しかしなぜ僕をこの洋館にいるのです?確か骸に母を喰われていた。」
芦屋晴明の母芦屋藤子(とうこ)が首の後ろを食いちぎり貪っていたと河上弘の前で頭を抱え口にしながら回想した。
「そうか。母は君の前で食い殺されていたのか?」
「はい。確かあれは六時頃僕は仕事として駅前でいつものように新聞売たその日天空から飛行船が飛んできていきなり爆弾が雨のように降ってきました。僕は母が心配になりすぐに家へ戻ったんですが、しかし母はもう…
」
芦屋晴明は大粒の涙を流した。それを見た河上弘は悲しみの涙と言うより怨みに満ちた涙と伝わってきた。
「それは黒衛軍の仕業だ。」
「黒衛…軍」
河上弘は芦屋晴明の話を聞いて黒衛軍について語り出した。
「ああ、黒衛軍は死霊魔術師の力を持つ一族。君は母親を殺されて黒衛軍をどう受け止めるいや、憎いか、憎くないかどちらか一言君の口から言え。選択肢は一つ言い換えるのは無しだ。」
河上弘は険しい顔で芦屋晴明に指を指し問いをなげつけた。芦屋晴明は顔を上げて悩むことなく一言った。
「憎いですッ!」
すると芦屋晴明は血の涙と共に怨みを超え人間とは違う人外の姿に河上弘は見えた。
河上弘は険しい顔から優しい顔へ戻り芦屋晴明に言った。
「君は今日からここで錬金術について学べ。そして君のその怨みを自らの手で打ち払いなさい。」
「はい。」
芦屋晴明はすぐに返事を返した。
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