上 下
25 / 70
2章 ガーディアン襲撃編

24話 短刀使い

しおりを挟む

立ち上がれないままどれくらい避け続けただろう

敵の攻撃が肌をかすめる事が増え、敵の攻撃も避けづらい蹴りなど変化してきた。

そろそろやばいな。

その時、脳裏に"最強への道"の1文がフラッシュバックした。

『窮地を脱するには勇気を振り絞れ』

そうだ……このまま死を待つくらいなら一か八かの賭けにでる!

「【全力】!!!」

俺はスキル【全力】をフル解放した。
全身の骨が軋み、筋肉が膨張する。
理性が本能に呑み込まれそうになる。

集中しろ!

まずは、同時に俺を刺そうと迫る2本の剣の刃をそれぞれ左右の手で白刃取り、そして捻る!

「はっ!?」
「うぉっ!」

そして、その場で回転し、敵の脚を蹴り数人の賊を転ばす。

「くぅぁ!」
「痛っ!」
「おっー!」

よし、いける!
混戦に陥った隙に奪った剣をそれぞれ投げ、賊を2体始末。

その隙に何とか起き上がる事に成功し、俺は後ろに跳び距離をとる。

「よし!抜け出れた」

俺は【全力】を解く。
全身に疲労感が襲いかかるが、回復強化が徐々に癒していく。
かなりヤバかったがなんとかいけたな。

「おい……お前ら気が抜けてんじゃねぇか?ボスに報告するぞ」

刺青野郎が仲間に向けて怒気を放つ
すると先程までふざけていた賊達の目が真剣になる。
おふざけ無しの純粋な殺気
室内の空気が張り詰める。
特にボスの名が出た瞬間に奴らの表情に怯えが見えた。
ここからが本番らしいな…

「情けねぇな、お前ら。俺までボスに怒られてはたまらん。俺が殺す……いいか?」

頭に黒いバンダナを巻いた甚平姿の屈強な男が一歩前に出てきた。
奴はさっきの乱戦にはいなかった男だ。
確か部屋の片隅で立っていたような気がする。

「へへっ!タクマか。いいぞ」

刺青男が笑った。
バンダナの男は無愛想に俺の前に歩いてくる。
刺青野郎の感じからこの男が賊の中でも上位の実力者なのが読み取れる。

それにバンダナ男が手に持つ"黒い短刀"
見た感じかなりの業物っぽい
しかし、ナイフと短刀。
似た戦闘スタイルってわけか……

うん?バンダナ男が短刀を振りあげる。
まだ間合いはあるはず……

「……死ね」

バンダナの男が言葉と共に短刀を何も無い場所に向けて振るった。
俺とバンダナ男の距離は数メートル空いている。

当たるわけがない。

だが俺は反射的にナイフを身体の前に構えた。
直感による反射的行動だ。

それが功を奏した。

"キンッ!"

構えたナイフに甲高い音と衝撃がはしり、腕が痺れる。

俺は短刀を振り下ろしたバンダナ男に目を向ける。
奴は驚きの表情を浮かべていた。

なんだがムカつくな

「ほぉ……大抵の野郎はこの初撃で死ぬんだけどな。」

俺も直感が働いていなければ死んでいた。だが

「こんな所で死ぬわけにはいかないからな。それにしてもスキルとは怖いものだな」

おそらく攻撃を飛ばすスキルか何かだろうか?かまをかけてみる。

「あぁ、斬撃ってスキルだ。10メートル斬撃を飛ばせるスキルだ」

「そんな事俺に言っていいのか?」

「斬撃など無くても俺は強いからな」

そう言って短刀を構えるバンダナ男。
スキルの事を話したのは俺を実力で殺せると思ったからだろう。
圧倒的な自信か……面白い。

「タクマさんの家は短刀の古武術の名家らしいからな」
「あの兄ちゃんも可愛そうにな。武器を扱う年季が違うんだからな」 

他の賊達が口々に話し出す。

「なるほど、短刀の武術家ってわけか」

あの安定した構えも幼い頃から積み重ねてというわけだな

「そういう事だ。俺は物心ついた時から短刀術を学んできた。異変が起こってからナイフを握ったお前とは年季キャリアが違うんだよ」

自信ありげに話すバンダナ男
俺は気は長い方だがこれでも男だ。
舐められるのは腹が立つ

「はぁ……御託はいい、かかってこいよ!自慢野郎」

俺は人差し指をクイッと曲げで挑発サインをかます。

「ぶち殺してやる」

バンダナ男が額に青筋を浮かべて俺に向かって一直線に突っ込んでくる。

しっかりと構えて、相手の動きに集中する。

初撃は……突きか!

いや!突きはフェイントで俺の身体を狙った水平斬りだ

俺は何とか上体を反らし避ける。
しかし、フェイントが厄介だ。ならば

攻撃あるのみ

お返しとばかりに敵の胴体を目掛けて最速の一撃を振るう

しかし、その攻撃はバンダナ男の短刀に防がれ、更に力を上手く別方向になされた。

やばい、身体が流される。

俺の身体は流され、制御ができない。
バンダナ男の短刀が横目に見える。

このままじゃ……

【全力】

身体が流される方にロケットのように加速し突っ込んだ

部屋の壁に頭から激突する
頭がクラクラするが、何とかすぐに立ち上がり構える。

「「「へへへへへへへへッ!!」」」

賊達の笑いが湧き上がる。
腹が立つが今は無視だ。

男は変わらずクールフェイスで俺が立ち上がるのを待っている。
余裕というわけか

だが悔しいが技術的には敵の方が圧倒的に優っている。
どうすればいい
しおりを挟む

処理中です...