最強への道 〜努力は俺を裏切らない

ペンギン

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3章 3つ巴ベース編

48話 ボス戦1

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7階層、8階層、9階層と俺とパールは順調に降った。
そして、次が目的の10階層だ。

ちなみに7.8.9階層と魔物は階層を降ることに強くはなっていったが、俺とパールが苦戦する魔物はいなかった。

だからこそ、次が本番だ。

“ダンジョンのボス"

通常階の魔物とは一線を画す強力な魔物。
一般的に拠点ベースに属するハンターは、ボス戦のみ10人規模の大パーティーを結成し攻略するらしい。

そのため、俺のような1人、野良のハンターは一時的に他拠点ベースに協力を仰ぐか、他の誰かによってボスが倒された24時間以内に突破するからしい。

確かに命を優先するならば、その方法は正解だろう。
だが、それで強くなれるのか?

違うよな。

「"No risk, no strength"だ」

「プゥ?」

どうしたの?とパールが俺を見る。
俺がいきなり言葉を呟いたから変に思ったんだろう

「いや、俺の愛読書の中の気に入っている単語だ。よし、行くか!」

9階層より慎重に降っていくと、そこにはただただ広い広間があった。
体育館並みの広さだ

そして、その中央に

"そいつ"はいた。

5メートルを超える巨体
顔の上半分を締める大きな一つ目
まるで鬼のような赤い肌
手には鉄棒の先端にトゲトゲした星状の球体が付いているモーニングスターと言われる武器を持っている。

一応鑑定

【サイクロプス】
一つ目の巨人。人を好んで食す。

なるほどサイクロプスというのか
それにしても人を食すってかなりキモいな

後、デカい…

俺は【隠密】状態に加え距離も離れているため、まだバレてはいない。

さて、どうやって倒そうか…

このまま【隠密】【全力III】【集中】で一気に接近し、頸動脈を切れば倒れるのじゃないだろうか?

ならばより確実に倒すために

「パール悪いが囮を頼んでいいか?」

俺は一先ず階段まで戻りパールに作戦を伝える

「プゥ」

パールが頷く。最も危険な役割だがパールならいけると信じている。

よし作戦開始だ。



先に広間に飛び込んだのはパール

部屋が広いため、壁を使った立体的機動はできない。
そのため【転がるII】を使って全速力でサイクロプスに向かう。

「ヴォォォォオォォ!!!」

サイクロプスの一つ目がパールを捉えたようだ。
部屋全体に雄叫びが轟き、振動する。

声でかいな。
頼んだぞパール

サイクロプスの目を惹きつけるため、サイクロプスの周囲を転がるパール。

俺はその隙に【隠密】状態と【全力III】を発動し、一気に解放しサイクロプスの背後へと接近を試みる。

大丈夫だ

奴の目はパールに釘付け。
更にパールの小ささでは狙いが定めづらいのだろう目で追いかけるだけで精一杯のようだ。

いえる。

後数メートル!
俺の攻撃範囲だ。

俺は一気に地面を蹴り、5メートルの高さにあるサイクロプスの首を目掛け飛びかかる。

ーーッ!!

奴の瞳孔がこっちを見た。

背筋が凍る。
だが俺は空中!もう止まらない。

だから先に首を斬る!!

だが次の瞬間に俺の視界に映ったのは丸太のような太い腕
反応が速い……このままだと喰らってしまう。

ならばとナイフの刃をサイクロプスの腕の動線上に置いた。
先に腕を切断する!!

"キンっ!!"

硬い…ナイフの刃が通らない。だと

「ーーグハッ!!」

奴の腕が俺に直撃
圧倒的な質量による衝撃が身体全体を襲い、直後、背中にも衝撃が
どうやら俺はダンジョンの壁まで吹き飛ばされたようだ。

痛い……全身に激痛がはしる。
硬すぎてナイフの刃が効かないなんて

立ち上がろうと思うが全身に力が入らない。
相当のダメージを負ってしまったようだ。

くっ……サイクロプスめ。
あの反応、俺の事が最初から見えていやがったな。
サイクロプスが倒れ伏す俺を見ている。

ーー10秒

耐えてくれ。
動けるようになるまで最低でも10秒間かかる

頼んだパール。

「プゥーーー!!!!」

俺の意思が届いたのか分からないがパールは大きな声で鳴いた。
その瞬間サイクロプスの目がパールに戻る。

「ヴォォォヴォォォ!!!」

魔物同士で伝わる言葉があるのだろうか
激昂するサイクロプス。

手に持ったモーニングスターで転がるパールを狙い、叩き下ろす。
地面が揺れ、陥没する。
あの威力、当たれば終わりだ。

しかし、パールは持ち前の機動力で8の字を描くように移動し、モーニングスターを避け続ける。

さすがの機動力だ。いける!

多少身体に感覚が戻ってきた。
その時

「ーーップゥァっ…」

パールが捕まった。
モーニングスターをパールの進行方向に投げ飛ばし、逃げ場を無くし、素手で捕またのだ。

サイクロプスに巨大な手にパールが捕まった。
そのまま握りつぶそうとサイクロプスが片手に力を加える。

「やめろぉ!!」

くっ動かない!

「……プ…ゥゥ」

パールは全身に力を入れ、必死に耐える。
しかし、徐々にパールの身体がサイクロプスの握力により押しつぶされていき、変形している。

耐えてくれ!パール 

動け!俺の身体
動けよ!!!

俺は強引に【全力Ⅲ】を発動。
なんとか立ち上がれた。
損傷した状態での発動のため、全身の筋繊維がブチブチと千切れている音がする。また骨にもヒビが入ったようだ。

痛い、とてつもなく痛い。
痛みが気を失いそうだ。

だが、どうでもいい!
パールを助けなければ

「……プゥゥ゛ゥ゛…」 

やめろ、パールが目から血が…握りつぶされる。
するとサイクロプスが俺の方へ目を向け、ニヘッと笑った。
そして、そのままパールを握った手を振りかぶり、

「やめろぉぉぉぉ!」

地面へと思い切り投げた。 
天井と地面で弾み何度も身体を打ち付けるパール

俺は身体を爆発的に加速させ、パールを横からかっさらい、9階に戻る階段近くへ移動。

「大丈夫か!!パール」

俺は腕に抱くパールを見る。

「プゥ……」

弱々しく鳴くパール
身体の握られた部分が紫に変色し、体中のあちこちに血の痣ができている。
目は虚で、相当の重症だ。

「……プゥ?」

頑張ったでしょうとでも言うように鳴くパール
こんなに傷だらけになって、

「あぁ、ほんと助かった。後は任せろ……あの一つ目野郎は俺がやるから。ゆっくり、うん?」

腕の中のパールは既に気を失っていた。
しかもやり遂げたかのような清々しい顔で

なるほどな。次は俺の番だよな

「さぁ、この借りは高くつくぜ。相棒を痛めつけてくれた礼、"10倍"にして返してやるよ!!」
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