真冬の逃げ水 Mirage d'hiver

つこさん。

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最終章 真冬の逃げ水

第33話 訣別 dire au revoir

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 朝起きて、部屋の洗面台で顔を洗った。鏡に映った僕の姿は、生気にあふれていて、棺の中のブリアック兄さんみたいではなかった。兄さんとともに埋葬された緑のクラヴァット。たしかに、僕だと赤い髪色に映えて似合うね、きっと。でもまだ身に着ける勇気はなくて、キレイな箱から出すこともできない。
 ふさわしい時があるんだと思う。笑って話せる時が来るんだと思う。僕にだって、きっと。レヴィ氏みたいに。きっと。
 早朝の走り込みは、最初の内レオンは周回遅れで着いてきていたけれど、冬休み中も律儀にひとりで続けていたみたいで、かなり僕に食らいついて来るようになった。その分終わったときの息の切れ方がすごいけど。無理しなくていいのに。

「――ああ……ほんと、君は体力があるな、テオ」

 前屈みにぜーぜーと息をついて言う。僕だって最初からこうだったわけじゃない。レテソルに滞在していたときから、なんとなく体は動かすようにしていたから。たぶん以前より持久力は着いたかな。
 毎朝汗だくになるから、寮の玄関にある事務室へ、洗濯物袋に入れた制服や着替えの下着を預けておくんだ。そしたらそのまま風呂場へ直行できるからね。レオンもそれを真似している。
 風呂場に来たらお互いまず水分補給して、各々声もなく個室へ。だいたい僕の方が早く出てくる。でも僕の方が髪を乾かすのに時間がかかる。そんな感じ。
 鏡の前で身なりを整えるとき、レオンがちょっと身構えるのに気づいている。僕が以前、ここでクラヴァット・リボンを結ぼうとしてやらかしたから。今は持ち歩いていないから、だいじょうぶなんだけれど。
 そのまま、食堂へ向かって朝食を摂る。だいたい僕らが一番乗り。静かだから、その方がいい。
 レオンが、僕の向かい側でフォークをさまよわせてから、意を決したみたいに聞いてきた。

「……昨日の。クラヴァット。着ける機会があるの?」

 彼は、僕が首に物を巻けないことに気づいている。その理由はわかっていないだろうけれど。僕は、その問いになんて答えようかって思って、飾れずに「いつかね」って言った。
 ――いつか。いつかって、いつだろう。三十歳なんて気が遠くなってしまうから、なるべく早くであってほしい。
 その後は会話もなくて、食器が触れる音と、食堂のマダムたちが本日の朝食戦争へ臨む体制を整えている作業音が、たんたんと聞こえるだけだった。レオンはなにかを考え込んでいて、僕はそれがなにかを聞かなかった。
 食べ終わって部屋に戻るころには、ちょっとずつ他の生徒がやって来る。レオンは気さくにそういうやつらとも朝のあいさつを交わしているけれど、僕はめったに声をかけられるなんてことはないから、流している。残りの学校生活、ぜんぶこうするのかって言われたら、まあ、ちょっとそれはって思うけれど。
 レオンはずっとなにかを言いたそうにしていた。でも、じつはそれってけっこう前からだった。言いたきゃ言うだろうと思って、僕は自室へ入った。
 文机の上には、緑のクラヴァットが入った箱。それに、黒いクラヴァット・リボン。
 僕は、クラヴァット・リボンを手に持って、朝と同じように洗面台へ向かった。壁に張り付いた鏡を見る。
 ……ここなら、吐いても服を汚さないですむと思うから。怯えていては、前進なんてできない、から。
 深呼吸をしてから、制服シャツの上のボタンを留めた。問題なかった。ここまではだいじょうぶ。知ってる。
 また深呼吸。それから、一度もまともに着用したことがない制服のクラヴァット・リボンを襟元に巻く。少し指が震える。怖い気持ちがある。それでも鏡の中の僕は冷静な顔をしていた。ちょっとだけ滑稽に思えた。
 ……結び合わせる。少しづつ息を吐いた。そして吸った。一歩、洗面台から離れた。もう一歩。さらに、もう一歩。
 だいじょうぶだった。遠ざかった僕が鏡の中で強張った顔をしている。ずっと後退して反対側の壁に背をつける。だいじょうぶ。歩いてみる。だいじょうぶ。座ってみる。……だいじょうぶ。
 ――では、部屋から出たら? 授業へ、教室へ向かったら? 朝の鐘が鳴った。ベッドに背中を倒して、両手で口元を覆った。目を閉じた。……だいじょうぶ。
 移動を始めた生徒たちのにぎやかな声が廊下から聞こえる。何気ない顔で僕はそこに交じることができるだろうか。深呼吸。起き上がって、文机の上を見る。
 そこには、ブリアック兄さんの埋葬着と同じ緑のクラヴァットがある。じっと見て、見つめて、青ざめた生気のない顔を思い出す。
 泣きそうな気持ちがある。でも泣けなかった。立って歩み寄り、クラヴァットを撫でた。吐き気はやってこない。けれど、これまでとは別種の胸苦しさがある。
 もう一度深呼吸。だいじょうぶだ。僕は通学鞄を手に取った。そして、クラヴァットの隣りに置いてあった小箱を中に入れる。何気ない表情作ることに成功して、通学用の外套を着る。部屋を出る。鍵を掛ける。通学の波に乗る。なにもかもだいじょうぶだった。
 うれしさはもちろんある。けれど少しだけ混乱したような気持ちもある。僕は平気になってしまった。なっちゃダメなの? いいんだよ。これは、兄さんをわすれることじゃない。
 踏み固められた雪の上を歩きながら、冬の匂いを胸いっぱいに吸った。歩き慣れた寮から校舎への路はあっと言う間で、なんだ、こんなものだったのかと思う。玄関先で靴の雪を落として、外套を脱いで手に持つ。硝子戸に映った僕は、想定以上に穏やかな表情をしていた。

「――テオ?」

 困惑したような声が僕を呼んで、隣りに並んだ。レオンは僕の様子をじっと見て、なにか言いたそうな顔をした。毎朝最初に会うんだから今さらだけど「おはよう」って言った。彼は生まれて初めて僕と会うみたいに「おはよう」って言った。

「……だいじょうぶなの?」

 なんのことかはわかっていたけど、僕は歩きながら「なにがさ」って言った。レオンはなにかを飲み込むみたいに「なんでもない」って言った。
 ちょっとだけ僕に遅れながらレオンは着いてきた。そのまま階段を三階まで上がって、僕は僕の教室へ入った。まだ半分くらいの人数しかいなかったけれど、僕が入ったら雑談は止んでしんと静まり返った。適当な席に座ろうかと教室を見回したときに、すごく悲しくなって、でもやり遂げた気持ちもあって、レヴィ氏に会いたいってすごく思った。だから僕は踵を返してもう一度階段へと向かった。あわてたようにレオンが着いて来る。
 通学の流れに逆らって二階へと向かう。踊り場に出たところでレオンが「テオ!」って呼んだから、僕は振り返った。彼は何段か降りたところで僕を見て、なにか思い詰めたような顔をしている。なんで君がそんな顔をするの。僕はふしぎな気持ちになって「なに?」って聞いた。

「あのさ。あのー」

 用件はあるけど言葉がみつからないって感じで、レオンは言った。階段の流れを止める僕たちをうざったそうに他の生徒たちが避けて行く。人波が落ち着いたところで、レオンは意を決したみたいに言った。

「――僕と、友だちになってくれないかな。テオ」

 がやがやとした中でもその声はしっかりと僕へ届いた。なんで今このときにそのセリフなんだか、まったく僕にはわからなかった。僕は緊張した顔の彼を見上げたまま、これまでのことを思い出して言った。

「君は、最初から友だちだった、レオン」

 そのまま二階へと降りたら「えっ」って声が聞こえた。外套を着たままの生徒の団体が来てすれ違う。背後の方で「えっとテオ、それってさあ!」って言ってるのが聞こえたけど、僕はそのままレヴィ氏の部屋へと向かった。
 ノックにいつもの声が答える。扉を開けると、着けたばかりの暖房と、いつもの茶の香りがする。レヴィ氏は「おはよお」って言いながら僕の方を見て、ちょっとだけ目を丸くして、そして笑った。

「似合うわよお、リボン」

 ちょっとだけ泣きそうな気持ちになった。でも泣けなくて、心底ほっとしてソファに座る。だいじょうぶだった。僕は、クラヴァット・リボンを結べた。
 なにか言いたいけどなにが言いたいのかわからない。ちょっとだけノエルさんの気持ちがわかった。こんなときどうしたらいいんだろう。僕はなんて言えばいいんだろう。
 いつも通り茶を受け取って、その苦味を感じたら、すっと言葉が出た。

「ありがとう」

 レヴィ氏はまたちょっと驚いたような顔をしたけど、笑って「こちらこそよ」って言った。僕は、なにもしていないけれど。
 どうしたらいいのかわからなくて、ノエルさんの気持ちがわかって、僕は通学鞄から小箱を取り出した。無言でレヴィ氏へ差し出したら、疑問満点な顔をされて、それでも受け取ってくれた。

「……また、どなたかから預かったの?」
「買ってきた。レヴィ先生に」
「ええー⁉」

 意外だったみたいですごくびっくりされた。なんだよ。僕だってだれかに贈り物くらいするよ。レヴィ氏は「……開けていい?」っておっかなびっくり聞いて来る。僕はうなずいた。

「ええー⁉」

 またびっくりされた。しばらく何度もええーって言ってた。そして僕を見て「こんな高価な物! テオくん、これ!」って言った。僕は「高い方は買えなかったけど。でも、これは大人でも着けていいって」って言い訳みたいに言った。

「……ありがとう。うれしい」

 しばらくレヴィ氏はじっと腕時計を見ていた。それから「着けてみていい?」って聞いてきた。僕は知ったかぶりで「利き手じゃない方に着けるんだ」って言った。
 腕時計を見るのは初めてだって言ってたけど、レヴィ氏はちょっと手間取ったくらいですぐに左手に装着できた。思っていた通り金色の方が似合うと思う。指輪の色とおそろいになったなって思った。
 レヴィ氏はしばらく腕時計がはまった手首をじっと見ていた。そしてもう一度「ありがとう。うれしい」って言った。僕はちょっとこそばゆい気持ちで「なんでもないよ」って言った。ノエルさんっぽくはできなかった。

「……うれしいわあ。ちょっと歌っていい?」

 レヴィ氏がそう言ったから、くすぐられてるような気持ちで僕は「うん」って言った。レヴィ氏はオルガンを開いて座って、僕がこの部屋に通い始めてからずっと聞いている小唄シャソネットを歌った。

 遠くにいる
 あなたを想い
 夜風がせつない
 旋律を運ぶ

 窓辺に座り
 見つめる星空
 あなたの笑顔が
 浮かぶたびに

 あなたの姿が視界に入るとき
 あなたがわたしのすべてになる
 それでも瞳を閉じてしまうの
 あなたがあまりに
 すてきだから

 僕ももう、空で歌えてしまう。冬休み中に実家で何気なく口ずさんだら、母さんから「懐かしい曲ねえ!」って言われた。世界的に流行った曲なんだって。ラキルソンセン国出身の母さんが知ってるんだから、きっとそう。

 あなたに会えるその日まで
 季節が巡り夢を見る
 あでやかなバラのように咲き誇る
 あなたへの愛を胸に抱いて

 あなたの姿が視界に入るとき
 あなたがわたしのすべてになる
 それでも瞳を閉じてしまうの
 あなたがあまりに素敵だから

 あなたがわたしの手に触れるとき
 わたしの時は止まり
 その温もりに癒やされて
 そして心乱されて

 オルガンの音はこの部屋によく似合っていて、レヴィ氏が存在するための部屋だって思った。だからレヴィ氏が歌い終わってオルガンを閉めて、僕を振り返ったときに言った言葉が信じられなかったんだ。

「……ありがとう。本当にうれしい。これで、思い残すことなく僕も去れるわ」

 なにを言っているんだろうって思った。今日はもう仕事をせずに帰るってことだろうか。レヴィ氏はちょっとだけ困ったような顔で、言葉を選ぶように続けた。

「――僕ね、任期が半年なの。特筆することがなければ、契約更新しないことになってる」
「……なにそれ」
「あと、一カ月ちょっとね。これまでよくしてくれてありがとう。あともう少し、よろしくね」
「なんだよ、それ!」

 思わず僕は立ち上がって声を上げた。レヴィ氏は穏やかな表情をしていた。なんだよそれって思った。だって、この部屋はレヴィ氏のために作ってもらったって言ってたじゃないか。オルガン弾きたいから防音にしてもらったって。
 白くて、本棚と書類だらけの机と、オルガン。お茶の香り。それだけで満たされた部屋。レヴィ氏がいる。僕にとって、ここはそういう場所。なんだよそれ。

「お別れのつもりで贈ったんじゃない!」
「お別れなんかじゃないわ。またいつだって会える。ここじゃないってだけ」
「なんだよそれ!」

 泣きたかった。泣けなかった。部屋を出ようかと思ったけど、出たら最後で、もうこの部屋が消えてしまう気がして、どうしたらいいのかわからない。泣きたかった。泣けなかった。でもきっと、レヴィ氏の方が泣きそうな顔をしていた。そして「ねえ、ありがとう」ってレヴィ氏は言った。

「……ねえ、テオくん。もう一度釣りに行かない?」

 腕時計を見ながらレヴィ氏が言った。それは時間を確認しているとか、今から行ったら何時間かかるとか、そういうことを考えているわけじゃないっていうのはわかった。僕は、ちょっとだけはぐらかされてるのかなって思ったけど、レヴィ氏の穏やかな表情を見て、そうじゃないなっていうことはわかった。冬に釣りなんかできるのかもわからない。だから、なんて答えたらいいのかわかんなくて「べつに。いいけど」って答えた。
 週末に行こうって約束した。その日は、もう会話とかなくて、ずっと二人で黙って、僕はときどきオルガンを弾いて過ごした。お手洗いに行くのだってちょっとがまんするくらい、この部屋から出たくなかった。行ったけど。
 週末まで、僕はなんとなくレヴィ氏のところへ行けなかった。もしかしたら僕が寝ている間にでも、レヴィ氏はいなくなっちゃっているかもしれないって思ったから。そしたら、カフェの裏側にある、あの椅子がない部屋まで行って、引っ張って来ようって思った。だけど、本当にいなくなっているかもって思って、確認しに行けなかったんだ。
 僕は問題なくクラヴァット・リボンを結べている。レオンはたのしそうにしている。特筆すべきことがない授業風景。とても空しかった。

 ソノコには、レヴィ氏と釣りに行くからアシモフの散歩に行けないって週中に伝えた。ちょっと目をきらきらさせて「いいですねえ!」って言ったけど、なんでかついてくるって言わなかった。行きたそうだったけど。
 僕も、なんとなく今回はレヴィ氏と二人がいいって思ったから、誘わなかった。きっとカミーユがそのうちみんなを自動車に乗せて連れて行ってくれる。
 学校の職員駐車場で待ち合わせた。いつも通りポンコツな自動車の助手席に、クッションがなくて、それでも僕は乗り込んだ。安全帯も、問題なく着用できた。
 あんまり言葉はなくて、レヴィ氏は僕があげた腕時計をしてくれていた。うれしかった。もしかしたら、ずっとしていてくれたのかなって思ったら、あの部屋に行かなかったことをちょっと後悔した。いつも通りレヴィ氏が鼻歌を歌って、僕はそれを聞いた。

「……釣り堀って、冬季もやってるの」
「やってるわよお。ここの堀は、冬季も氷を割ってあるの。そもそも、温泉が近いから地温が高いらしいのよね。そんなに凍らないみたい。夏季みたいではないけどね」

 着いてから疑問を口にした。来る前に聞くことだよな、って自分でも思った。僕は厚手の外套を着ていて、マフラーもしていた。できた。レヴィ氏も、もこもこしている。釣具一式を借りる。そういえば、以前撮った写真ってどうなったのかなって思った。レヴィ氏が持ってるのかな。
 前と同じくだれもいなかった。経営だいじょうぶなのかなって思った。前と同じあたりに椅子を置いて座って、前みたいに釣り糸を垂らす。
 レヴィ氏は、手袋をしていなかった。だから、僕は彼の左隣に座ったから、腕時計がよく見えた。レヴィ氏は無言で、僕も無言で、今日は釣れないかもなって思った。

「ねえ、テオくん。お願いがあるんだけど」

 しばらくしてからレヴィ氏が言った。僕が「なに」って聞いたら「……やっぱお手洗い行ってから言うわ」って言った。僕もいっしょに行った。
 手を洗うとき、腕時計ってじゃまにならないのかな。まだ魚を釣っていないから、匂いとかついてないはずなのに、レヴィ氏はしっかりと手を洗っていた。そして鏡の中の自分を見て「よし」って言った。なにそれ。
 釣り堀席に戻って、座って。レヴィ氏は釣り竿を脇に置いたまま、じっと大きい池のあっち側を見ていた。僕もなんとなくそれに倣った。そして。

「……テオくん。お願いがあるんだけど」
「なに」

 僕は即答したけど、レヴィ氏からはその次の言葉がなくて、代わりに、彼は腕時計を見た。時間を気にしてるんじゃなくて。
 そして、レヴィ氏はおもむろに右手を左手に重ねた。なにをしているんだと思ったけど、次に見た彼の左手からは、指輪がなくなっていた。僕は「え」って言った。

「これをね。ひと思いにね。ぽーんって、池の真ん中あたりに、投げ込んでほしいの」
「なんだよそれ」

 右手を出してきて。その手には、外された金の指輪があって。
 僕は「なんだよそれ、重大責任じゃん」って言った。レヴィ氏は真剣な表情で「そうね。そうだけど、まあ、気楽に」って言った。なんだよそれ。
 ちょっとの押し問答して、僕は指輪を受け取った。ブリアック兄さんの物より、ちょっと小さくて、かなり古ぼけていて。僕は立ち上がって、ソノコが好きだって言っていた球技投手の下手投げの型で、池の真ん中あたりを目指した。凍ってなさそうだったから。ほんとひと思いに。狙ったわけじゃないけど投石みたいになって、一回跳ねて、指輪は沈んだ。
 レヴィ氏は、じっとその場所を見ていた。僕は、その場所を見ているレヴィ氏を見ていた。やがて彼は、指輪がなくなった自分の左手を見て、ちょっとだけ泣きそうに笑って、跡の残る人差し指の付け根に口づけた。

「……ありがとうね」
「べつに」
「うん。これだけじゃなくて。これまで、いっぱいありがとう」
「それ、僕のセリフだし」

 結局、魚は釣れなかった。でもそれでいいかなって思った。レヴィ氏も思ってそうだった。釣れてないのに記念写真を撮った。店員さん、すごく暇そうだから二つ返事で撮影してくれた。

「……この前の写真といっしょに、今度渡すわね」
「それでお別れとか言わないでくださいよ」
「まさか。これからも増やして行きましょうよ。僕たちの写真」

 ちょっと泣きそうになった。でも、レヴィ氏のがもっと、泣きそうだった。



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あでやかなバラのように

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