4 / 248
王都ルミエラ編
4話 これも一種のチートな気がしますね
しおりを挟む
どうやらわたしは『旅行中になにかのトラブルで同行者とはぐれてしまった異国のいいとこのお嬢さん』ということでトビくんと偉そうなおじさんの間で話がまとまったようです。
着替えさせられたのは、上等な服を汚したら困るだろうという配慮のようで。ありがとうございます、ヨンキュッパです。とりあえずなにも言わずにその流れで行くことにしました。ちゃんと正直にかくかくしかじかしたんですけどねー。
偉そうなおじさんはヤニックさんとおっしゃるそうでやっぱり偉い人でした。上から二番目の人。一番目はオーナーさんでしょうから、実質現場の最高責任者とかそんな感じじゃないでしょうか。知らんけど。
そのうちトビくんが帰ってきて、明日いっしょに警察署へ行くことになりました。え、やだ。とりあえず今日はもう休みなさいって、いつも宿直の方とかが使うらしいお部屋を貸してくださいました。ありがとうございます。
こちらに来てからけっこうな時間が経っていたからか、気が抜けてすぐに寝入ってしまいました。
おはようございます。朝です。エンタメはテンポが大事ですからね。ええ。ところでわたしたいへんなことを思い出しました。昨日公衆トイレを出てから、手を洗っていないのです……ばっちい!
起きて部屋を出るともう働いているっぽい若い男性がいます。声をかけていいかわからないので音を立てないようにそっとドアを閉めました。ら、「おはようございます」と言われました。頭を下げてわたしも返します。洗面所の場所を教えてもらって、やっと手を洗えました。よかったです。
男の人が気を遣ってクッキーみたいのをくれました。そういえばこちらに来てからわたし飲まず食わずなのでした。ありがたくいただきます。お部屋の隅にある応接セットみたいなところに座って食べていたら、他の職員さんが紅茶をマグカップでくれました。ありがとうございます。みんなやさしい。
トビくんが来ました。朝の新聞配達やこまごまとした仕事を終えたみたいです。勤労ショタえらい。ヤニックさんは外のお仕事があるので今日は午後から出社するそうです。なので二人で警察署に行こうと促されましたが、気が進みません。だって、行ったところでなにを話せばいいんでしょう。グレⅡへの愛を語ればいいんでしょうか。わたし重いですよ。
でも行かなかったらトビくんが怒られそうなので観光がてら行くことにしました。途中どこかで古着屋さんとかに寄ってほしいとお願いしました。「なんで?」と聞かれたのでワンピースを換金したいと言ったのですが、「おれが知ってる古着屋さんで、あんな上等そうなの、引き取ってくれる店はないよ」と眉毛を八の字にされました。かわいい。
じゃあ警察さんに尋ねてみることにしましょう。ワンピースを入れるのに、トビくんが配達用のバッグを貸してくれました。
警察さんすげー。なんかめっちゃすげー(語彙力)。
石造りの外観でした。めっちゃ堅牢です。入り口のところに制服警察さんが見張りで立っていたのですが、ここの前で悪いことしようとか考えないと思うので必要ないと思います。王都ルミエラの中でも一番おっきい中央警察署ですね。ラ・リバティ社がある区域はここの管轄なんだそうです。
トビくんが昨日のうちに話を通してくれていたので、すぐに中へ入れてくれました。ふつーに事務室です。窓のない小部屋とかじゃなくてよかったです。
女性警官さん(かっこいい)がいらして、事務机を挟んで両側の椅子にそれぞれで座りました。トビくんはわたしの隣。かくかくしかじかしました。それはもう正直に。折に触れてグレⅡへの愛をちらつかせたら異国のアウスリゼ王国信奉者と思われてしまったようで、とっても微妙な苦笑をいただきました。まあ間違ってはいない。まじで行きたいと思っていたからな、おお麗しのアウスリゼ‼
とりあえず、わたしっぽい人のお尋ね情報とかはないそうです(そりゃそうだ)。
滞在場所を教えてくれと言われましたが、「これから決めます」とお伝えしました。ちょっとの間だけラ・リバティ社に言付け係をお願いする感じで話がまとまりました。そしていい感じの古着屋さんがないかをお尋ねしたところ、「わたしが使っているところでよければ」と地図を描いてくださいました。それに紹介用のお名刺まで。エメリーヌ・ボワモルチエさんとおっしゃるそうです。名前までかっこいい‼
警察署を出ました。シャバの空気はうまいぜえ。古着屋さんの地図を渡して、トビくんに案内してもらいました。
そこそこ遠かったです。ちょっと高級そうなお店。入ったとき店主さんにちょっと不審そうな顔をされましたが、わたしがラ・リバティ社の制服を着ていたからか、すぐに笑顔になりました。
エメリーヌさんの名刺を見せて、紹介で来たことを強調しつつ買い取りをお願いしました。ワンピースを見せます。クリーニング出してないんですがいいんですかね。まあ出せって言われても出せませんが!
店主さんが眼鏡を上げたり下げたりしてワンピースを検分します。
これ知ってます、値がつかない商品を査定するときに店員さんの優しさで一応それっぽく振る舞ってくれるやつです。がっかり。ご高齢一歩手前くらいのやせっぽち店主さんは時間をかけて見た後、わたしの顔へと視線を移しました。
「いいお品物ですねえ。デザインはこちらのものに似ているが。素材がここいらのものとは違う。縫製もとんでもなく細密で癖がない。異国から持ってこられたものですか?」
「ええ、まあ。そんな感じです!」
「ぜひこちらで引き取らせていただきたいのですが……あいにく、先ほど売上金を銀行に運んでしまったばかりで、今店に動かせる現金がそれほどないのですよ。無理なお願いとは思いますが、現金で七千リゼ、そして当店の商品を十着程度でいかがですか。十五着でもいい」
息を呑みました。七千リゼって。それって。あれ、あれですよ。グレⅡの中で一個隊一カ月の運営費用とかですよ。まじかー、現代日本通販商品最高かー。ありがとうベル◯ゾンー。わたしは顔色に出さないように「いいでしょう」とうなずきました。トビくんが硬直しています。それはそう。たぶん一般人の年収とかに匹敵するかもしれない額かも。知らんけど。
「では、今用意をいたしましょう。商品も、お好きにご覧になってください。きっとぴったりのものがあるでしょうから」
着替えさせられたのは、上等な服を汚したら困るだろうという配慮のようで。ありがとうございます、ヨンキュッパです。とりあえずなにも言わずにその流れで行くことにしました。ちゃんと正直にかくかくしかじかしたんですけどねー。
偉そうなおじさんはヤニックさんとおっしゃるそうでやっぱり偉い人でした。上から二番目の人。一番目はオーナーさんでしょうから、実質現場の最高責任者とかそんな感じじゃないでしょうか。知らんけど。
そのうちトビくんが帰ってきて、明日いっしょに警察署へ行くことになりました。え、やだ。とりあえず今日はもう休みなさいって、いつも宿直の方とかが使うらしいお部屋を貸してくださいました。ありがとうございます。
こちらに来てからけっこうな時間が経っていたからか、気が抜けてすぐに寝入ってしまいました。
おはようございます。朝です。エンタメはテンポが大事ですからね。ええ。ところでわたしたいへんなことを思い出しました。昨日公衆トイレを出てから、手を洗っていないのです……ばっちい!
起きて部屋を出るともう働いているっぽい若い男性がいます。声をかけていいかわからないので音を立てないようにそっとドアを閉めました。ら、「おはようございます」と言われました。頭を下げてわたしも返します。洗面所の場所を教えてもらって、やっと手を洗えました。よかったです。
男の人が気を遣ってクッキーみたいのをくれました。そういえばこちらに来てからわたし飲まず食わずなのでした。ありがたくいただきます。お部屋の隅にある応接セットみたいなところに座って食べていたら、他の職員さんが紅茶をマグカップでくれました。ありがとうございます。みんなやさしい。
トビくんが来ました。朝の新聞配達やこまごまとした仕事を終えたみたいです。勤労ショタえらい。ヤニックさんは外のお仕事があるので今日は午後から出社するそうです。なので二人で警察署に行こうと促されましたが、気が進みません。だって、行ったところでなにを話せばいいんでしょう。グレⅡへの愛を語ればいいんでしょうか。わたし重いですよ。
でも行かなかったらトビくんが怒られそうなので観光がてら行くことにしました。途中どこかで古着屋さんとかに寄ってほしいとお願いしました。「なんで?」と聞かれたのでワンピースを換金したいと言ったのですが、「おれが知ってる古着屋さんで、あんな上等そうなの、引き取ってくれる店はないよ」と眉毛を八の字にされました。かわいい。
じゃあ警察さんに尋ねてみることにしましょう。ワンピースを入れるのに、トビくんが配達用のバッグを貸してくれました。
警察さんすげー。なんかめっちゃすげー(語彙力)。
石造りの外観でした。めっちゃ堅牢です。入り口のところに制服警察さんが見張りで立っていたのですが、ここの前で悪いことしようとか考えないと思うので必要ないと思います。王都ルミエラの中でも一番おっきい中央警察署ですね。ラ・リバティ社がある区域はここの管轄なんだそうです。
トビくんが昨日のうちに話を通してくれていたので、すぐに中へ入れてくれました。ふつーに事務室です。窓のない小部屋とかじゃなくてよかったです。
女性警官さん(かっこいい)がいらして、事務机を挟んで両側の椅子にそれぞれで座りました。トビくんはわたしの隣。かくかくしかじかしました。それはもう正直に。折に触れてグレⅡへの愛をちらつかせたら異国のアウスリゼ王国信奉者と思われてしまったようで、とっても微妙な苦笑をいただきました。まあ間違ってはいない。まじで行きたいと思っていたからな、おお麗しのアウスリゼ‼
とりあえず、わたしっぽい人のお尋ね情報とかはないそうです(そりゃそうだ)。
滞在場所を教えてくれと言われましたが、「これから決めます」とお伝えしました。ちょっとの間だけラ・リバティ社に言付け係をお願いする感じで話がまとまりました。そしていい感じの古着屋さんがないかをお尋ねしたところ、「わたしが使っているところでよければ」と地図を描いてくださいました。それに紹介用のお名刺まで。エメリーヌ・ボワモルチエさんとおっしゃるそうです。名前までかっこいい‼
警察署を出ました。シャバの空気はうまいぜえ。古着屋さんの地図を渡して、トビくんに案内してもらいました。
そこそこ遠かったです。ちょっと高級そうなお店。入ったとき店主さんにちょっと不審そうな顔をされましたが、わたしがラ・リバティ社の制服を着ていたからか、すぐに笑顔になりました。
エメリーヌさんの名刺を見せて、紹介で来たことを強調しつつ買い取りをお願いしました。ワンピースを見せます。クリーニング出してないんですがいいんですかね。まあ出せって言われても出せませんが!
店主さんが眼鏡を上げたり下げたりしてワンピースを検分します。
これ知ってます、値がつかない商品を査定するときに店員さんの優しさで一応それっぽく振る舞ってくれるやつです。がっかり。ご高齢一歩手前くらいのやせっぽち店主さんは時間をかけて見た後、わたしの顔へと視線を移しました。
「いいお品物ですねえ。デザインはこちらのものに似ているが。素材がここいらのものとは違う。縫製もとんでもなく細密で癖がない。異国から持ってこられたものですか?」
「ええ、まあ。そんな感じです!」
「ぜひこちらで引き取らせていただきたいのですが……あいにく、先ほど売上金を銀行に運んでしまったばかりで、今店に動かせる現金がそれほどないのですよ。無理なお願いとは思いますが、現金で七千リゼ、そして当店の商品を十着程度でいかがですか。十五着でもいい」
息を呑みました。七千リゼって。それって。あれ、あれですよ。グレⅡの中で一個隊一カ月の運営費用とかですよ。まじかー、現代日本通販商品最高かー。ありがとうベル◯ゾンー。わたしは顔色に出さないように「いいでしょう」とうなずきました。トビくんが硬直しています。それはそう。たぶん一般人の年収とかに匹敵するかもしれない額かも。知らんけど。
「では、今用意をいたしましょう。商品も、お好きにご覧になってください。きっとぴったりのものがあるでしょうから」
2
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
親友面した女の巻き添えで死に、転生先は親友?が希望した乙女ゲーム世界!?転生してまでヒロイン(お前)の親友なんかやってられるかっ!!
音無砂月
ファンタジー
親友面してくる金持ちの令嬢マヤに巻き込まれて死んだミキ
生まれ変わった世界はマヤがはまっていた乙女ゲーム『王女アイルはヤンデレ男に溺愛される』の世界
ミキはそこで親友である王女の親友ポジション、レイファ・ミラノ公爵令嬢に転生
一緒に死んだマヤは王女アイルに転生
「また一緒だねミキちゃん♡」
ふざけるなーと絶叫したいミキだけど立ちはだかる身分の差
アイルに転生したマヤに振り回せながら自分の幸せを掴む為にレイファ。極力、乙女ゲームに関わりたくないが、なぜか攻略対象者たちはヒロインであるアイルではなくレイファに好意を寄せてくる。
そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。
雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。
その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。
*相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる