1 / 39
1
しおりを挟む
私、フリージア・マトリカリアは治癒魔法を使えません。
いきなり何を言うのかと思われるでしょうが、治癒魔法を使えることが私の家では一番大切なことなのです。
私はマトリカリア伯爵家の長女として15年前に生まれました。
マトリカリア家は神々に祝福されていて、結婚して最初に子供が出来る時は必ず『胸元に十字の聖痕を持った長女』が生まれます。私も例外ではなく胸に聖痕があります。
この聖痕を持つものは他に類を見ない優秀な治癒魔法の素質を持つため、マトリカリア家は代々王国軍の衛生兵団長を務める名家として名を残してきました。
そのため、その長女が代々家督を受け継ぎ、魔力容量の豊富な男性を婿に迎えています。
私のお母様、歴代でも有数の才能に恵まれたカトレア・マトリカリアも王国軍の衛生兵団長を務め、同じ衛生兵団で怪我人や回復薬の移送を担当していたお父様と結婚して私が生まれました。
そんなお母様から聖痕を持って生まれたにも関わらず、私は10歳になっても初級の治癒魔法ひとつ使うことができませんでした。
10歳といえば、治癒魔法等の魔法の種別に限らず、貴族の子供達が魔法学校に通い始める歳です。それなのに私は入学試験すら受けることができないのです。
落ち込んでいる私にお母様は「貴女にはとても素晴らしい治癒魔法の素質があるわ。だから今は焦らなくて良いの」と優しく言い聞かせてくれました。お父様もそれをにこにこしながら聞いていて、そんな優しいお母様とお父様に囲まれて、私は幸せな生活を送っていました。
私が12歳の時、お母様が従軍先で突然命を落とすまでは。
魔獣の討伐に従軍したお母様の衛生兵小隊は、前衛の討伐部隊が討ち漏らした魔獣の攻撃を受けてしまい、現場は惨憺たる有様だったそうで、お母様の遺体は帰って来ませんでした。
お父様は酷く悲しまれたのか、後から回収されたお母様の遺品を全て焼いてしまいましたが、私はどうしてもとお父様にお願いして、お母様が大切にいつも身に付けていた指輪だけを遺していただきました。
その後、お父様はマトリカリア伯爵家に次ぐ治癒魔法の名家ハイドランジア侯爵家から未亡人となっていたアザレア様を後妻として迎えました。
アザレア様にはガーベラという私より一つ歳下の娘がいて、私は新しいお義母様と義妹と一緒に暮らすことになりました。
いきなり何を言うのかと思われるでしょうが、治癒魔法を使えることが私の家では一番大切なことなのです。
私はマトリカリア伯爵家の長女として15年前に生まれました。
マトリカリア家は神々に祝福されていて、結婚して最初に子供が出来る時は必ず『胸元に十字の聖痕を持った長女』が生まれます。私も例外ではなく胸に聖痕があります。
この聖痕を持つものは他に類を見ない優秀な治癒魔法の素質を持つため、マトリカリア家は代々王国軍の衛生兵団長を務める名家として名を残してきました。
そのため、その長女が代々家督を受け継ぎ、魔力容量の豊富な男性を婿に迎えています。
私のお母様、歴代でも有数の才能に恵まれたカトレア・マトリカリアも王国軍の衛生兵団長を務め、同じ衛生兵団で怪我人や回復薬の移送を担当していたお父様と結婚して私が生まれました。
そんなお母様から聖痕を持って生まれたにも関わらず、私は10歳になっても初級の治癒魔法ひとつ使うことができませんでした。
10歳といえば、治癒魔法等の魔法の種別に限らず、貴族の子供達が魔法学校に通い始める歳です。それなのに私は入学試験すら受けることができないのです。
落ち込んでいる私にお母様は「貴女にはとても素晴らしい治癒魔法の素質があるわ。だから今は焦らなくて良いの」と優しく言い聞かせてくれました。お父様もそれをにこにこしながら聞いていて、そんな優しいお母様とお父様に囲まれて、私は幸せな生活を送っていました。
私が12歳の時、お母様が従軍先で突然命を落とすまでは。
魔獣の討伐に従軍したお母様の衛生兵小隊は、前衛の討伐部隊が討ち漏らした魔獣の攻撃を受けてしまい、現場は惨憺たる有様だったそうで、お母様の遺体は帰って来ませんでした。
お父様は酷く悲しまれたのか、後から回収されたお母様の遺品を全て焼いてしまいましたが、私はどうしてもとお父様にお願いして、お母様が大切にいつも身に付けていた指輪だけを遺していただきました。
その後、お父様はマトリカリア伯爵家に次ぐ治癒魔法の名家ハイドランジア侯爵家から未亡人となっていたアザレア様を後妻として迎えました。
アザレア様にはガーベラという私より一つ歳下の娘がいて、私は新しいお義母様と義妹と一緒に暮らすことになりました。
16
あなたにおすすめの小説
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~
香木陽灯
恋愛
「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」
実の父と妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。
「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」
「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」
二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。
※ふんわり設定です。
※他サイトにも掲載中です。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
「婚約破棄された聖女ですが、実は最強の『呪い解き』能力者でした〜追放された先で王太子が土下座してきました〜
鷹 綾
恋愛
公爵令嬢アリシア・ルナミアは、幼い頃から「癒しの聖女」として育てられ、オルティア王国の王太子ヴァレンティンの婚約者でした。
しかし、王太子は平民出身の才女フィオナを「真の聖女」と勘違いし、アリシアを「偽りの聖女」「無能」と罵倒して公衆の面前で婚約破棄。
王命により、彼女は辺境の荒廃したルミナス領へ追放されてしまいます。
絶望の淵で、アリシアは静かに真実を思い出す。
彼女の本当の能力は「呪い解き」——呪いを吸い取り、無効化する最強の力だったのです。
誰も信じてくれなかったその力を、追放された土地で発揮し始めます。
荒廃した領地を次々と浄化し、領民から「本物の聖女」として慕われるようになるアリシア。
一方、王都ではフィオナの「癒し」が効かず、魔物被害が急増。
王太子ヴァレンティンは、ついに自分の誤りを悟り、土下座して助けを求めにやってきます。
しかし、アリシアは冷たく拒否。
「私はもう、あなたの聖女ではありません」
そんな中、隣国レイヴン帝国の冷徹皇太子シルヴァン・レイヴンが現れ、幼馴染としてアリシアを激しく溺愛。
「俺がお前を守る。永遠に離さない」
勘違い王子の土下座、偽聖女の末路、国民の暴動……
追放された聖女が逆転し、究極の溺愛を得る、痛快スカッと恋愛ファンタジー!
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
この野菜は悪役令嬢がつくりました!
真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。
花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。
だけどレティシアの力には秘密があって……?
せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……!
レティシアの力を巡って動き出す陰謀……?
色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい!
毎日2〜3回更新予定
だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる