おっさん寮母爆誕!〜鬼の騎士団長からお茶目で可愛い寮母になります!〜

丸井まー(旧:まー)

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4:寮母のお悩み相談室

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 ルーカスが寮母になって一か月が過ぎた。仕事に慣れてきたルーカスは、更に騎士達の為になにかできないかと考えた。
 ルーカスは仕事の合間に物置部屋を整理して、即席『お悩み相談室』を作った。
 寮内の壁に『お悩み相談室開設』と張り紙をして、部屋のドアに『お悩み相談室』と書いた紙を貼り付けた。

 一日の仕事が終わり、『お悩み相談室』で誰か来ないかと待ち受けていると、レオが入ってきた。


「ルーカス様。今度は何をなさっていらっしゃるのですか?」

「見て分かれ。お悩み相談室だ。騎士達の心の健康を守るのも寮母の勤めだ」

「はぁ……左様で」

「悩み相談がないなら帰れ。悩み相談があるならそこに座れ」

「あ、じゃあ失礼します」


 レオが椅子に座って、もじもじし始めた。いい歳したおっさんが恥じらうように頬を赤く染めているのは、中々に視界の暴力感がある。
 あまり聞きたくないが、ルーカスはレオに問いかけた。


「何が悩みだ」

「えっと……これは友達の話なんですが……」

「『友達の話』とかいうのは確実に自分の話だろ。自分の悩みは堂々と胸を張って話せ!」

「あ、はい! あーー。その、好きな人がいまして……どうアプローチしたらいいのかなと」

「諦めろ。以上だ」

「いきなりひでぇ!? ちゃんと相談にのってくださいよ!」

「お前の好きな奴って俺だろ? 諦めろ」

「嫌です。デートしてください!」

「断る。今すぐに俺に告白しろ。フッてやるから」

「それは嫌だぁ! くっ……俺は諦めませんからぁ!」


 レオが半泣きでバタバタと出ていった。何がしたかったのだろうか。仕事はすこぶるできるのに、なんとも残念な男である。

 レオが出ていって少し経つと、おずおずと部屋に若い騎士がやって来た。ルーカスは椅子に座らせ、話を聴く姿勢になった。
 若い騎士がもじもじしながら、口を開いた。


「あのっ! その……す、好きな人がいまして……」

「そうか。今日にでも告白しろ」

「今日!? いきなり告白するんですか!?」

「安心しろ。骨は拾ってやる」

「玉砕前提で言わないでください! あの、ほんとに先輩が好きで……」

「相手は男か。とりあえず一発ヤッて既成事実をつくったらいいんじゃないか?」

「ハードルが高すぎますっ!!」

「じゃあ、相手の好きなものをプレゼントしてみるとか」

「先輩の好きなもの……酒と肉と女?」

「む? 相手は女好きか?」

「あ、はい。かなり」

「うむ。諦めろ」

「えぇっ!?」

「女好きの性癖を歪ませられるほどの魅力が自分にあると思うか?」

「ふぐぅっ……ないです……」

「あ、すまん。泣くな。ちょっと言い過ぎた。あーー。あれだ。とりあえず好きな酒をプレゼントして、それを口実に一緒に酒を飲んで一発ヤれ」

「一発ヤるしかないんですかぁ!? もっとこう……ゆっくり愛を育みたいなぁって……」

「まどろっこしい。とっととヤッてしまって、お前にメロメロにしてしまえ。どっちがどっちか知らんが、ヤリまくれば情が湧くかもしれんだろ」

「……それもそうかも? 団長! 俺! ヤッてみます!!」

「おぅ! あ、一つ訂正しろ。今の俺はお茶目で可愛い寮母だ!」

「はっ! ありがとうございました! 寮母様!」

「親しみを込めて『お袋様』と呼べ」

「はっ! お袋様! 酒に酔わせて先輩を手篭めにしてきます!」

「一応合意はとれよ。強姦は犯罪だ。べろんべろんに酔わせて適当に合意を得た上で襲え」

「はいっ!! ケツの仕込みしてから先輩と飲んでみます!」

「まぁ頑張れ。応援してるぞ」

「ありがとうございますっ!」


 若い騎士が敬礼して出ていった。ルーカスはふぅと息を吐いて、ちょっと遠い目をした。
 ルーカスは恋をしたことがない。とりあえずいい感じなことを言ったつもりだが、恋愛相談はあまり向いていない気がする。とはいえ、悩める若人を導くのも年長者の勤めであり、寮母の勤めだ。

 ルーカスは今日はもうお終いということにして、『お悩み相談室』から出て自室に向かった。

 翌日。また一日の仕事が終わった後に『お悩み相談室』に向かうと、既に何人かの騎士が並んでいた。悩める騎士は意外と多いらしい。恋のお悩み相談じゃなければいいなぁと思いながら、ルーカスは『お悩み相談室』に入った。


「じっ、実は好きな人がいて……」

「恋人が最近つれなくて……」

「告白したらフラれましたぁ!」

「告白されたんですけど! どうしたらいいのかなぁって!」

「恋のお悩み相談多いな!?」


 今日は四人の騎士から相談を受けたのだが、全員恋のお悩み相談だった。もっと強くなりたいとか、もっと出世したいとか、そういう話ならいくらでもアドバイスができるが、恋なんて縁遠いルーカスには、恋のお悩み相談はちょっと辛いものがある。
 どの相談にも、なんかそれっぽいいい感じのことを言ったつもりだが、本当にあれでよかったのかと若干不安になる。

 季節は春の終わり頃だ。暖かくなると同時に、恋をしちゃう季節なのかもしれない。ルーカスにはいまいちよく分からない。

 ちょっと疲れて自室に戻ると、部屋の前にレオがいた。とりあえず追い返そうかと思ったが、レオの手にルーカスが好きな酒があるのを見て、しょうがないからレオを部屋に入れた。

 棚からグラスを二つ出してきて、酒を注いで飲み始める。


「で? なんの用だ」

「ルーカス様のお悩み相談室が実はかなり話題になっているんですよ。恋の悩みの話を聞いてもらえると」

「恋のお悩み相談室じゃないんだが」

「恋に悩むのは若人の特権ですよ」

「そんなものか」

「んんっ。それで、俺達の恋なのですが」

「諦めろ」

「まだ何も言ってません」

「俺は恋人はいらない」

「まぁまぁ。そう言わずに。お試しでも俺と恋人になってみたら、恋のお悩み相談でもいいアドバイスができたりするかもしれませんよ?」

「恋人って何をするものなんだ」

「えっと、手を繋いでデートをしたりー、大きな木の下で愛を囁いたりー、一緒に食事や酒を楽しんだりー。あ、あとキスをしてセックスをします」

「ふぅん。恋をするってどんな感覚なんだ」

「えーと、相手を見つめるだけでドキドキしたり、ちょっとしたことでときめいたり、キスをして幸せー! ってなったり?」

「へぇ」

「聞いてきた割に興味なさそうですね」

「実際に興味がないからな」

「ルーカス様は一生一人のおつもりですか」

「あぁ。下手に恋人や伴侶をつくって、それが兄上に知られたら何をされるか分からん」

「……そうですか。あっ! でも! その点なら、俺でしたら大丈夫ですよ! 暗殺者がきても普通に対応できますし!」

「はぁ? まぁ、そうだろうが」

「お試しで! まずはお試しでいいので! 恋人になってください! まずはデートからで!」

「おっさん二人でお手手繋いでデートするのか? きっつ。視界の暴力だろ」

「いくつになっても恋をしたっていいでしょ」

「そんなものか。まぁ、一応考えておく。恋愛相談が本当に多いからな」

「ありがとうございます! 次の休みの朝に迎えに来ますね!」

「おい。デートに行くとは言ってない。考えとくだけだ」

「楽しみにしてます! それでは今夜はこのへんで失礼いたします」

「あぁ。おやすみ」

「おやすみなさいませ」


 レオがご機嫌で部屋を出ていった。
 レオはルーカスが王弟だと知っている。騎士団長に就任してから、たまに暗殺者が送られてくるようになった。たまたま暗殺者を始末したところにレオが居合わせ、レオに事情を話すことにした。
 レオに事情を話すと、団長用の部屋に防御魔法や障壁魔法をかけ、暗殺者が易易と侵入できないようにしてくれた。
 今いる部屋も、寮母になった次の日に魔法使いを連れてきて、部屋に魔法をかけてくれている。

 優しくて優秀な男なのに、何故か残念感が漂っている。レオはおかしな男だな、と思いながら、ルーカスは酒を飲みきり、布団に潜り込んだ。

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