もふもふ族長様のお嫁殿

丸井まー(旧:まー)

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7:美味しいものがいっぱい

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 ナルがハッと目覚めると、部屋の中が暗かった。怠い上に腰と女陰の孔が痛む身体でのろのろと起き上がると、暗い中でドゥルグンの銀色の毛並みが光って見えた。また狼の姿になっている。獣人は皆寝る時は狼の姿なのだろうか。

 ドゥルグンの顔を見れば、ふすーっと穏やかな寝息を立てている。これはもふもふするしかない。ナルはにひっと笑うと、ぽふんとドゥルグンの背に抱きつき、わしゃわしゃーっとドゥルグンの美しい毛並みを撫で回した。すごく楽しい。
 撫で回しながら尻尾の方を見れば、機嫌良さげにふぁさ、ふぁさ、と動いている。

 ナルは満足するまでドゥルグンの身体を撫で回すと、ぐぎゅるるる……と腹の虫が鳴る腹を擦った。
 今日は起きて食べてから、寝落ちるまでずっと交わっていた。ものすごく腹が減っている。とりあえず湯浴みをしようと、ナルはよろよろと立ち上がり、腰を押さえて老爺のようなよたよたとした歩みで風呂場へと向かった。

 髪と身体を丁寧に洗い、温泉なる温かいお湯に浸かると、一気に疲れた身体が解れていく。かなり痛かった腰や女陰の孔もじわじわと痛みがマシになっていく。
 ナルがほわーと気の抜けた声を上げていると、風呂場へドゥルグンがやって来た。
 狼の姿ならば喜んで洗うのに、今は人間に近い姿をしている。耳と尻尾だけでも洗ってみたいのだが、多分駄目だと言われるだろう。そのうち洗わせてくれることを祈りつつ、ナルは身体を洗うドゥルグンに声をかけた。


「ドゥルグン殿。お腹空きました」

「俺もだ。もう夕餉の時間をとっくに過ぎている。少し寝過ぎた」

「夕餉はなんでしょうね。栗鼠の汁物があったら嬉しいです。あ、骨付き肉も美味しかったなぁ。挽肉を皮で包んであるのも美味しかったです」

「……湯浴みが終わったら、すぐに飯を取りに行く」

「お願いいたします。お腹が空いて腹の虫が煩いです」

「お前は腹の虫まで元気だな」

「素直な身体をしてるもので」

「妙に納得してしまう」

「ははっ。この温泉っていいですねぇ。すごく気持ちがいいです。毎日お湯に浸かれるだなんて贅沢ですねぇ」

「人間の里では毎日お湯に浸からないのか」

「んー。大体三日に一回くらいです。井戸から水を汲んできて浴槽に溜めて、薪を使って沸かすので、それなりに手間と時間がかかりますから」

「ふぅん」


 ドゥルグンがお湯に入ってきた。濡れた耳や尻尾を触ってみたくて、どうにもうずうずする。
 ナルは手をわきわきさせながら、期待を込めてドゥルグンを見た。


「耳と尻尾を触りたいです」

「まだ駄目だ」

「むぅ。いつになったら触ってもいいですか?」

「そのうちな」

「一日でも早く触らせてくださいね」 

「……お前は変わっているな。獣人が恐ろしくないのか」

「いえ。全く。すごいなぁとは思いますけど、ドゥルグン殿は優しいので恐ろしくはないです」

「……そうか。お前の腹の虫がいい加減煩い。飯を取ってくる。お前はゆっくり浸かっていろ」

「ありがとうございます。にひっ。やっぱりドゥルグン殿は優しいです」

「……別にそうでもない。お前の気のせいだ」


 ドゥルグンがざばぁっとお湯の中で立ち上がり、さっさと浴槽から出て、風呂場から出て行った。
 ナルはゆったりとお湯に浸かったまま、にひっと笑った。
 ナルの婿殿は本当に優しい人柄のようで、安心すると共に嬉しくなる。もっと仲良くなって、一緒に狩りに行ってみたい。ドゥルグンの服を作るのもありだ。裁縫も刺繍もそれなりに自信がある。こちらの服や服に施されている刺繍は人間の里のものと違うので、かか様に教えてもらわねば。こちらの料理も是非とも覚えたい。母が『殿方の心を掴むには、まずは胃袋を掴むのです』と言っていた。
 ナルはドゥルグンと仲良くなる気満々である。そのうちおしどり夫婦と呼ばれてしまうかもしれない。

 ナルはにひっと笑ってから、お湯の中で立ち上がり、浴槽から出た。
 温泉効果すごい。腰や女陰の孔の痛みが本当に軽くなっている。疲れて怠かった身体も少し楽になった。あとは空腹を訴える腹を満たしてやれば、またドゥルグンと交われる。
 ナルは身体を拭くと軽やかな足取りで部屋に戻り、服を着た。

 濡れた髪を拭いていると、ものすごく大きなお盆を持ったドゥルグンが部屋に戻ってきた。ドゥルグンに言われて、ドゥルグンの腕にかけられていた布を取り、床に敷く。ドゥルグンがお盆を床に置き、美味しそうな匂いがする料理が山盛りの皿を布の上に置いていった。

 ナルがそわそわしていると、いくつもある皿を並べ終えたドゥルグンが汁物の器を手に取ったので、ナルもいそいそと汁物の器を持った。
 ドゥルグンが食べ始めてから、器に口をつけて汁を飲んでみる。今度は魚の汁みたいだ。香草か何か入れてあるのか、魚の臭みがなくてすごく美味しい。木匙で掬って魚の団子を口に含めば、ふわふわの食感でものすごく美味しい。

 はふはふと汁物を食べきると、焼いてある骨付き肉を手に取り、大口を開けて思いっきり齧りついた。ちょっと硬めの肉は、噛めば噛むほど肉の旨味が口の中に広がり、最高である。
 鳥の丸焼きも二羽分あったので、一つ手に取り、思い切って齧りつく。パリッとした皮を歯で噛み千切れば、肉汁溢れる肉が出てくる。素直に美味しい。塩だけの味付けなのが逆にいい。なんの鳥かは分からないが、すっごく美味しい。

 鳥の丸焼きを食べきると、次は薄いパンに肉と野菜がのっているものを手に取った。大口を開けて齧りつけば、シャキシャキの野菜と少しだけ濃いめの味付けの肉が絶妙に美味しい。
 視線を感じて咀嚼しながらドゥルグンを見れば、ドゥルグンが呆れたような顔をしていた。

 ナルは気にしないことにして、持っていたものを食べきると、焼き菓子らしきものに手を伸ばした。一つ取って齧ってみれば、香ばしい香りが鼻に抜け、ほんのり甘くて美味しい。こんなに美味しいものばかり食べさせてもらっていいのだろうか。本当に幸せ過ぎる。
 ナルは満腹になるまで、がっつりと美味しい料理の数々を食べた。

 きれいに空になった皿を重ねてお盆にのせると、ドゥルグンがどこか楽しそうな顔で話しかけてきた。


「お前、よく食うな」

「里では影で『爆食のナル』って呼ばれていました」

「なるほど。言い得て妙だな」

「美味しいものがいっぱい食べられて幸せです」

「そうか。よかったな」

「はい!」

「皿を持っていってくる。寝るなよ」

「頑張って起きておきます」

「あぁ」


 ドゥルグンがお盆を持って部屋から出ていくと、ナルは大きな欠伸をして、眠い目を擦った。
 何かしていないと寝てしまいそうだ。少しだけ考えてから、嫁入り道具の箱を漁り、布と針と糸を取り出した。
 暇だと寝そうだし、ドゥルグンに何か作って渡したい。
 何を作ろうかと暫し考えてから、ナルは手拭いを作ることにした。こちらの衣服の作り方は習わないと分からないし、どんなものが生活に必要なのかも現段階では分からない。手拭いならば必ず使うだろうから無難である。

 裁ち鋏を発掘して、ナルが布を切り始めていると、ドゥルグンが戻ってきた。


「何をしている」

「寝ないように手拭いでも作ろうかと」

「後にしろ。する」

「はい」


 どうやらまた交わるらしい。とても気持ちがいいので、ナルトしては大歓迎だ。終わった後は疲れるし、腰も女陰の孔も痛くなるが、温泉に浸かればそれもすぐに癒える。

 ナルはいそいそと服を脱ぎ捨て、ころんと寝床に寝転がり、ワクワクしながらドゥルグンが服を脱ぐのを眺めた。
 尻尾がズボンから出ているのだが、下着とズボンに尻尾を出す穴が開いているのだろうか。ちょっと下着とズボンを見てみたい。終わって一眠りした後で、ドゥルグンよりも先に起きられたら、しれっと見てみよう。

 ナルは覆いかぶさってきたドゥルグンに頬を舐められて、擽ったくて小さく笑った。

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