俺と隊長とちびっ子の呪い

丸井まー(旧:まー)

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2:ラコタ怒る

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ラコタは5歳くらいの姿になってしまったジョルジュを膝の上に乗せて椅子に座り、真剣な顔で蛙顔の医者と向き合った。
強姦魔の捕縛に行っていた筈のジョルジュが戻ってきたと思ったら、まさかの子供の姿になっていた。ビックリどころではない。意識のない幼いジョルジュの身体を抱っこして隊長室に飛び込んてきたジョルジュの部下からジョルジュをひったくり、ラコタは全速力で医務室へと駆け込んだ。
幸い、小一時間も経たずにジョルジュの意識は戻った。膝の上に乗せたまま医者にジョルジュを診察してもらったら、幼児化していることを除けば、ジョルジュは何の異常もなかった。
ラコタはぎゅっとジョルジュの身体を抱きしめてから、医務室の前で待機していたジョルジュの部下を呼び、詳しい話を聞くことにした。

顔色が悪いジョルジュの部下ナーゴとパーシバルが医務室に入ってきて、敬礼をした。ジョルジュがラコタの手を小さな手で握りしめながら、2人に声をかけた。


「お前ら。怪我は?」

「「ありませんっ!」」

「おっ。よかったー。捕まえた奴は?」

「留置場に放り込んであります。ジョルジュ班長に呪いをかけた者も捕縛してあります」

「マジか!でかした!!」

「いえ……その、申し訳ありません!自分を庇ってくださったばかりに……」


ナーゴが情けなく眉を下げて、悔しそうな顔をして俯いた。


「俺は別ルートで強姦魔を追っている最中に不審な男を発見しました。声をかけたら逃げ出したので、そのまま後を追いました。まさか、こんなことになるとは……申し訳ありません」


パーシバルが深く頭を下げた。ジョルジュがぴょこぴょこと両足を動かし、しょんぼりとしている2人に声をかけた。
こんな時にどうかと思うが、ジョルジュが可愛い。ぐぅっと喉奥で低く唸り、ラコタは眉間に皺を寄せた。完全に非常事態だが、ジョルジュが可愛い。今すぐにでも呪いを解呪しなければいけないが、正直幼いジョルジュが可愛い。ジョルジュに呪いをかけた男に対して深い怒りが沸いているが、初めて見る幼いジョルジュが可愛くて堪らない。
今すぐジョルジュに頬擦りをして、柔らかい頬にキスをしたい衝動を堪えている。ラコタは小児性愛などではない。今のジョルジュに対して、性的なものは一切、微塵も、これっぽっちも感じない。ただ、ひたすら可愛いと思うだけだ。これは完全に父性愛である。そもそもラコタは子供好きである。
ラコタがギリギリと歯軋りをしながらジョルジュをよしよし撫で撫でしたい衝動に耐えていると、ジョルジュが可愛らしい声でラコタの名前を呼び、ラコタの顔を見上げてきた。ぐぅっ。可愛い。


「隊長ー」

「んんっ。……なんだ」

「呪いをかけた奴の所に行きてぇっす。呪いをかけた本人に呪いをとかせるのが一番早いっしょ」

「……そうだな。ナーゴ。パーシバル。いい加減頭を上げろ。お前達はよくやってくれた。強姦魔も、ジョルジュに呪いをかけた男も捕まえてくれたんだ。お手柄だ」

「はいっ!」

「あ、ありがとうございます」


ラコタはジョルジュを抱っこして、椅子から立ち上がった。まずはジョルジュに呪いをかけた男に会わねばなるまい。そして、ジョルジュの呪いをとかせる。ラコタはジョルジュを抱っこしたまま、足早に留置場へと向かった。

留置場にいた男は、ラコタが抱っこしているジョルジュを見ると、ニヤニヤと楽しそうに笑った。ラコタは後ろ手に椅子に縛られている男と、ジョルジュを膝に乗せた状態で、向かい合って椅子に座った。
真っ直ぐに男を睨みつけると、ニヤニヤ笑いながら気持ちが悪い目でジョルジュを見ていた男が、ラコタの方へと視線を向けた。にたぁと男が笑った。


「可愛いお坊ちゃんだよねぇ?」

「今すぐジョルジュにかけた呪いをとけ」

「あっは!むーりー。僕、呪えるけど、とけねぇもん」

「なに?」

「はぁ!?うっそだろ!?」

「かーわいーい坊っちゃーん。僕のちんちんペロペロするー?僕のちんちんはあまーいよー?飴ちゃんみたーいにー。あはっ!坊っちゃんのお尻も甘いのかにゃー?お兄さん、ペロペロしちゃうぞー?」

「黙れ。その口縫い付けるぞ」

「うっわ。キモッ。おえっ。隊長。こいつ絶対なんかやらかしてるっすよ」

「きっちり取り調べることは確定として、本当に呪いをとけないのか?」

「あー。オッサンもちっちゃい子にしたら可愛いよねー?ちょっと縄といてくんない?3人でいいことしようぜーい」

「ぶっ飛ばすぞ。変態野郎。俺のラコタさんをきめぇ目で見てんじゃねぇよ」

「あっは!やだー。坊っちゃんったら、かーわーいーいー。そんな目で見られちゃったら勃起しちゃうわー」

「……キモ……」


ラコタはジョルジュを抱っこして無言で椅子から立ち上がり、後ろに控えていたナーゴにジョルジュを受け渡した。ジョルジュの頭をやんわりと撫でてから、隊長室で待機しておくよう指示を出す。
ナーゴがジョルジュを抱っこして、今いる留置場の一室から出ると、ラコタは無言でニヤニヤ笑っている男の顎を片手で強く掴んだ。


「あがっ!?」

「……正直に話せ。でなければお前の顎をこのまま砕く」

「ひ、ひひっ」

「本当にジョルジュの呪いの解呪はできないのか」

「……あひゃ!できねぇよ!僕ぁ、みそっかすの呪術師だもんよぉ!呪いをかけれるけど、自分じゃとけねぇの!!あひゃ!あひゃひゃ!……ひ、ぐぅっ……」

「……お前、ダーウィ族か」

「……ひ、ひひっ……」

「……俺の夫に手を出した理由は?」

「あん?あの坊っちゃん、オッサンの旦那ぁ?へぇー。ふーん」

「ジョルジュを狙ってやった訳じゃないのか」

「いやぁ?そこにいたから?僕の舎弟が間抜けやらかしやがったから、仕置にちびっ子にして犯してやろうと思ってよぉ。そしたら、なんか捕まってるしぃ。なんか可愛くなりそうな坊っちゃんが前に出てきたしぃ。みたいな?」

「そうか」

「あ、がぁぁっ!?」


ラコタは男の顎を掴んだ手に力を入れた。ゴキッと鈍い音を立てて、男の顎が外れる。ただ、顎の関節を外しただけだ。この男は叩けばいくらでも埃が出そうだ。話してもらわなくてはいけないことが山程ある。捕縛者への拷問は原則として禁じられている。とはいえ、これくらいのことは構わないだろう。ラコタは自分が怒り狂っていることを自覚している。自分が冷静ではないことが分かっているので、ラコタは大きく息を吐いてから、留置場が持ち場である部下に声をかけ、医務室の医者を呼ぶことと、男の治療をした後に取調べをすることを指示した。
ラコタは、苦痛に呻く男をキツく睨みつけてから、足早に留置場を出た。

ジョルジュにかけられた呪いは絶対にとく。
ラコタは早歩きで隊長室に向かいながら、途中ですれ違った部下に声をかけ、ある人物を隊長室に呼んでくるよう頼んだ。


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