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妖達の素敵な家族計画
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獄卒としての一日の仕事を終え、一度棲家である長屋に帰ると、緋厳は私服の錆色の着流し姿で煙管と携帯灰皿、財布だけを懐に入れ、ふらりと外へ出た。緋厳は赤鬼である。八大地獄の一つである等活地獄が緋厳の職場である。仕事中は亡者をひたすら切り刻んだり、大きな金棒で粉砕したりしている。仕事は楽しいが、癒しがないと疲れるし、日々の潤いが無くなってしまう。緋厳は癒しを求めて、三日と開けずに通っている馴染みの居酒屋へと向かって歩き始めた。
ぼんやり灯る赤提灯と鬼火に誘われるがままに路地裏を進めば、目当ての居酒屋へと到着する。緋厳がいつものように居酒屋『天海の鬼火亭』の暖簾を潜れば、元気のよい声に出迎えられた。すっかり顔馴染みになっている化け猫の少年に軽く右手を上げ、定位置となっているカウンターの隅の席へと移動する。近くの席から聞こえる河童と狸の笑い声を耳にしながら、緋厳はどっこらしょっと椅子に座った。すかさず明るい笑みと共に、兎の耳をつけた露出狂のような格好をした可愛らしい少年が、お冷とおしぼりを運んできた。緋厳は軽く礼を言うと、温かいおしぼりでごしごしと顔を拭き、ふぅと小さく息を吐いた。穏やかな賑やかさがある温かい店内の空気に、じわぁっと少しだけ疲れが解れていく感じがする。
此処は異界と現世が交わる不思議な空間にある。居酒屋『天海の鬼火亭』に訪れる客は様々で、妖もいれば、人間もいる。一口に妖や人間と言っても、その出処は様々な異界で、居酒屋の店員達も、日の本の妖だけではない。酒も飯も美味い不思議な居酒屋に通い始めて、もうどれくらい経つのか分からない程、緋厳は長く此処に通っている。
カウンターの奥の方から、店主であるアマビエ・海老原多幸がやって来た。おっとりとした笑みを浮かべた美しい顔立ち、下半身が魚のようになっており、遠目から見るとキラキラと鱗が輝き、どこまでも美しい妖である。大きな蛤に乗って移動し、いつでも蛸を二匹くっつけて、自分の手伝いをさせている。
多幸がいつものおっとりとした笑みを浮かべ、カウンター越しに緋厳に話しかけてきた。
「いらっしゃいませ。何になさいますか?」
「おめぇの愛を一つ」
「ハイボールでよろしいですね」
「おう。肴は任せる」
「今日のオススメはおでんですよ。トマト入りの。新作なんです」
「おでんにトマトだぁ? 美味いのかよ」
「えぇ。とっても。試してごらんくださいな」
「そうかい。じゃあ、おでんを頼まぁ」
「ありがとうございます。少々お待ちくださいね。その間にこちらをどうぞ」
「おっ。いいな。ここの蛸わさはうめぇんだよ」
「ふふっ。新鮮な蛸を使っておりますから」
「そいつらの脚じゃねぇよな」
「うふふふっ」
「おい?」
「冗談です。ちゃんと普通に仕入れた蛸を使っておりますよ。この子達のものではありません」
「そりゃ、よかったよ」
緋厳は差し出された小鉢の蛸わさを無造作に箸で摘み、ひょいと口に放り込んだ。わさびの辛みと香りが蛸の味わいをいい感じに引き立てている。ちょうどいいタイミングで、多幸がハイボールを差し出してきた。多幸から受け取ったハイボールで蛸わさを流し込めば、スッキリと爽快な味わいが口の中に広がる。ハイボールなんて、つい最近のものだが、これがなんとも美味い。
ごっごっと勢いよくジョッキのハイボールを飲み干すと、何を言わずとも、多幸が熱燗を差し出してきた。緋厳は、おでんの時は熱燗派だ。それを知っている多幸は、いつも何も言わずとも用意してくれる。元気な猫又が運んできたおでんの皿には、確かにトマトが入っていた。本当に美味いのかと半信半疑で食べてみれば、これが美味い。出汁の味とトマトの酸味が程よく絡み合い、口の中で絶妙なハーモニーを奏でる。緋厳が咀嚼しながら無言で、ぐっと親指を立てると、多幸が上品に笑った。
緋厳は満足するまで大いに食べ、がっつり酒を飲んで、楽しんだ。
ーーーーーー
緋厳が暖簾を下げた店の入り口のすぐ側の壁に寄りかかり、煙管を吹かしていると、店の入り口が開いた。多幸がひょいと顔を出し、おっとりとした優しい笑みを浮かべた。多幸がちょいちょいと手招きをしながら、口を開いた。
「緋厳さん。お待たせしました。皆帰りましたよ」
「おう」
緋厳は懐から携帯灰皿を取り出し、煙管から火のついた煙草を携帯灰皿の中にトッと放り込んだ。照明も消した閉店後の店内に入り、ずりずりと動く巨大蛤に乗った多幸と共に、奥にある従業員用のドアへと移動して、更に奥へと向かう。多幸の後ろをついて緩やかな傾斜の坂を下りれば、潮が香る多幸の棲家に到着する。
多幸は居酒屋の地下に住んでいる。海辺の洞窟のような造りで、不思議なことに実際の海と繋がっており、静かな波音が辺りに響いている。
多幸がずりずりと波打ち際に移動して、そのまま海に入り、鱗が美しい下半身を海水につけて、ゆっくりと横になった。ふぃーっと気の抜けた声を出す多幸をチラッと見てから、緋厳は洞窟の奥にある大きな棚の所へ行き、青い切子のぐい呑と多幸が好きな焼酎の瓶を手に取った。居酒屋では当然店主の多幸が酒を用意して、場合によっては酌もしてくれるが、此処では緋厳が酒の準備をする。肴は塩で十分だ。使い慣れた木の盆に、小皿に入れた塩、焼酎の瓶、揃いのぐい呑を二つ乗せ、緋厳は波打ち際の多幸の側に向かい、リラックスした様子の多幸のすぐ隣に腰を下ろした。
多幸がゆっくりと上体を起こし、胡座をかいて座った緋厳の膝に寄りかかった。多幸と関係を持つようになり、結構な年数が経っている。お互いに気を使うことなく、店主として働いている時は優しい笑みを浮かべて隙がない多幸も、緋厳と二人だけの時は随分と甘える様な仕草を見せるようになっている。多幸と深い仲になった切っ掛けは、今となっては昔過ぎて覚えていない。恋人や夫婦という関係ではない。緋厳は多幸に惚れているが、多幸はどうだか分からない。美しい顔に優し気な笑みを浮かべている妖は、その心の内を中々見せない。三日と開けずに身体を繋げているし、顔を合わせる度に戯れるように睦言を囁いているが、それだけだ。緋厳はそれはそれでいいと思っている。アマビエである多幸も、赤鬼である緋厳も、人間と違って寿命など無い。もしかしたら、いつか存在が消え去る日が来るのかもしれないが、それはそれで構わない。日々を満足に過ごせたら、それで十分だ。
多幸がしどけなく緋厳の膝に寄りかかったまま、木の盆のぐい呑みを手に取り、品よく焼酎を飲み干して、満足そうに小さく息を吐いた。緋厳も揃いのぐい呑みに口をつけ、一息で焼酎を飲み干す。独特の少し癖のある香りが鼻を抜け、酒精が心地よく喉を焼く。慣れきった潮の香りと耳を優しく擽る波の音、触れている多幸の温もりに、心が穏やかに凪いでいく。
緋厳は焼酎の瓶を手に取り、多幸のぐい呑みに焼酎を注ぎながら、たおやかな指先で塩を掬ってぺろりと自分の指ごと塩を舐めている多幸を見下ろし、小さく口角を上げた。多幸に常時くっついている蛸がうねうねと脚を揺らして、寄せては返す波で遊び始めるのを穏やかな顔で眺めていた多幸が、緋厳の顔を見上げた。
「緋厳さん」
「なんだ」
「私、そろそろ貴方の子を産みたいのですけど」
「……あ?」
「いえね。私もね、そのうち貴方のやや子ができるだろうと思っていたのですよ。それなのに貴方ときたら、いつも私の中に出さないじゃあありませんか。私の愛が欲しいと言って抱いておいて、私の中に出さないとは如何いう了見かと、常々思っていたのです」
多幸が口元だけいつものおっとりとした笑みを浮かべて、緋厳の固い筋肉質な内腿を指で摘み、ギリギリと力一杯捻った。地味に痛い。緋厳は痛みと突然の多幸の言葉に、驚き戸惑った。
「なんでぇ。いきなり」
「ふふっ。少し前にね、うちの若い子達から言われたのですよ。『店長はいつ緋厳さんと所帯を持つんですか?』って。私はとうの昔に貴方と所帯を持っていたと思っていたんですけどね、ふと思ったのですよ。やや子ができぬようにしている貴方と、本当に夫婦なのかと」
「……正直に言ってもいいか」
「えぇ。どうぞ」
「……おめぇに惚れてるのは本当だが、ぶっちゃけ身体だけの仲だと思ってた」
「ふふふっ。人ばぞうくっといかんばい(他人を馬鹿にしてはいけませんよ)」
多幸が笑みを深めて、より強くギリギリと緋厳の内腿を抓り上げた。かなり痛い。普段は柔らかい標準的な丁寧語を話す多幸がお国言葉を口にする時は、本気で怒っている時だ。付き合いが長い故に、緋厳は多幸の怒りっぷりを察し、慌てて言い訳を始めた。
「いやだってよぉ! おめぇはどんだけ俺が惚れてるっつっても、『おや。そうですか』の一言じゃねぇか!」
「そいは察するもんたい」
「無茶言うな。俺ぁ、自分で言うのもなんだが、鈍いぞ」
「……知っとる」
緋厳が困って太い眉を下げると、多幸が拗ねたように小さく唇を尖らせた。現在進行形で抓られている内腿がかなり痛い。多幸の怒りを察してか、さっきからぺしぺしと脚で緋厳の身体を叩いてくる蛸達が鬱陶しい。だが、そんなこと気にならないくらい、多幸が愛らしい。いつも余裕綽々な様子で、穏やかな笑みを浮かべているおっとりとした多幸でも拗ねるのかと、緋厳は初めて見る多幸の一面に我慢できずに、だらしなく頬をゆるめた。
多幸が緋厳の内腿を抓っていた指を離し、ぺしっと緋厳の太腿を叩いた。
「多幸」
「なんね」
「俺が好きなら好きって言えよ。俺ぁ、鈍いからよ。口にしてくれなきゃ分かんねぇ」
「……あーたんこつが好きばい」
「おぅ。俺も心底惚れてらぁ。俺のやや子を産んでくれるか」
「……よかよ」
多幸が緋厳を見上げて、嬉しそうに目を細めて笑った。無意識なのか、尾鰭を振ってぱしゃぱしゃと水面を揺らしている多幸につられてか、緋厳の身体を吸盤付きの脚で叩いていた蛸達も、機嫌よさげにうねうねと身体を揺らし始めた。
緋厳は早速子作りをしようと、自分のぐい呑みを木の盆に置き、多幸のほっそりとした手から揃いのぐい呑みを取り上げ、木の盆の上に並べて置いた。多幸のほっそりとした腰を両手で掴み、海の中から出して、多幸の身体を自分の膝の上に乗せた。何も言わずとも多幸の腕が緋厳の太い首に絡み、多幸が至近距離で微笑んだ。
「今宵は孕むまで楽しみましょう」
「おう」
緋厳はクックッと低く笑うと、多幸の形よい唇に優しく噛みついた。唇を吸い合い、伸ばした舌をぬるりぬるりと絡めて、互いの口内をじっくりと舐め合う。ほのかに酒精の香りがする唾液をくちゅくちゅと混ぜ合って、お互いに唾液を啜り合う。多幸が緋厳の鋭い牙を舐めれば、緋厳は多幸の喉奥目掛けて長い舌を伸ばす。喉ちんこの手前の少しざらついた所を集中的に舌で刺激してやれば、そのうちビクッビクッと多幸が身体を不規則に震わせ始めた。喉奥を舌で刺激しながら、緋厳ならば股間にあたる辺りの鱗を撫で回し、パッと見た時には分からない、そこだけが僅かに柔らかいスリットをすりすりと指先で優しく撫でる。長年かけて開発したので、多幸は喉奥の刺激だけでイケる。所謂イラマチオでも普通にイケるようになるまで、根気よく開発した。同じくらいか、下手したらそれ以上に、緋厳も多幸に開発されまくっている。
多幸の喉奥をざりざりと舐め回しながら、柔らかいスリットの中へと人差し指と中指を揃えて入れ、くばぁっとスリットを広げれば、どゅるんっと大きな二本のペニスが顔を出した。多幸はペニスが二本もあり、普段はスリットの中に入っている。ほんのり体液で濡れたスリットの中を掻き回すように指を動かし、小刻みに舌を動かして喉奥を更に刺激してやれば、多幸がくぐもった声を上げ、ビクンビクンッと身体を震わせながら、二本のペニスから白い精液を飛ばした。
ずるりと多幸の口から長い舌を抜き、蕩けた顔をしている多幸のだらしなく顎まで垂れた涎を舐め取れば、荒い息を吐く多幸が、うっとりと口角を上げ、自分のスリットの中の熱い穴を緋厳の指に擦りつけるように、身体をくねらせた。緋厳の首に絡んでいた多幸の手が離れ、緋厳のうなじや喉仏を触れるか触れないかの力加減で撫でてくる。ぞわぞわとした微かな快感と興奮に、ペニスが痛い程ガチガチに勃起してしまう。多幸が緋厳の着流しの合わせ目に手を差し込み、緋厳の筋肉で盛り上がった胸へと手を滑らせながら、着流しを寛げ、ねっとりと緋厳の首筋に舌を這わせた。多幸は基本的に緋厳よりも体温が低い。しかし、今は舌も手もペニスもスリットの中の穴も、堪らなく熱くなっている。多幸が緋厳の胸板を撫で回し、乳首の先端をすりすりと優しく指の腹で擦りながら、ちゅうっと強く緋厳の首筋の太い血管の上を吸い、かしかしと優しく緋厳の肌を噛んだ。
「背の君。私の中に、たんと出しましょうね」
「おう。おめぇの腹が膨れるまで一滴残らず出してやらぁ」
緋厳は多幸のスリットから指を引き抜くと、多幸のほっそりとした身体を砂地に押し倒し、食らいつくように滑らかな多幸の肌を舐め始めた。ちょこんと勃った乳首を舌で転がし、柔らかな肌を何度も吸って、柔らかな肌と鱗の境に舌を這わせる。気持ちよさそうな声を上げ、尾鰭をビチビチと振り、身体をくねらせる多幸のにょっきりと飛び出たままの二本のペニスを交互に舐め回す。多幸のようにペニスを口に咥えられたらいいのだが、赤鬼の緋厳には鋭く長い牙が生えている。敏感なペニスを傷つけてしまいそうで、流石に多幸のペニスは咥えられない。その代わりにと、ねっとりと二本のペニス全体を舐め回せば、多幸が緋厳の癖の強い短い髪を両手で掻き回し、腰をくねらせ喘いだ。ペニスが飛び出ているスリットを舌先でなぞり、スリットの中へ舌を潜り込ませる。スリットの中を探れば、すぐに熱いひくつく穴が緋厳の舌先に触れた。女のように極端に濡れる訳ではない。しかし、男のように全く濡れない訳でもない。唾液を流し込み、根気よく舌で解して刺激してやれば、多幸のそこは緋厳の太くて長いペニスをきっちり根元まで飲み込むことができる。多幸のほっそりとしたくねる腰やキラキラと微かに輝く鱗を撫で回しながら、緋厳は多幸が蕩けた声を上げてイクまで、多幸の腹の中を舌で味わった。
緋厳はまんぐり返しならぬちんぐり返しの体勢になり、多幸にアナルを舐め回されていた。不自由な体勢が苦しいが、多幸の美しい唇や舌が自分のアナルに触れ、皺の一枚一枚を丁寧に舐められている感覚と光景に、酷く興奮する。緋厳のアナルに多幸が舌を突っ込み、上下左右に舌を動かして緋厳の直腸内を舐めながら、勃起して今にも暴発寸前な緋厳のペニスを手で扱いている。溢れて出て止まる気配などない先走りをペニス全体に広げるように多幸の手が動き、ぐるぐるとアナルを拡げるように舌を回して緋厳の腹の中を舐め回してくる。多幸が緋厳のアナルに二本のペニスを突っ込む為に、緋厳のアナルを舐めているのではない。先程から緋厳のぷっくりと勃った両方の乳首を吸盤で吸っている蛸が、その脚を挿れる為である。二匹の蛸が、だらしなく喘ぐ緋厳の乳首にも、熱心に緋厳のアナルを舐め回している多幸の乳首にも、其々吸盤を吸いつかせ、敏感になっている乳首は勿論、二人の肌に絡みつき、うねうねと動いて刺激してくる。
緋厳は自分の膝裏を両手で掴んだ状態で、だらしなく低く喘ぎながら、熱の篭った多幸の赤い瞳を真っ直ぐに見つめた。多幸が目を細め、緋厳のアナルから舌を引き抜いた。くぽくぽとひくつく緋厳のアナルに、すかさず蛸の脚が潜り込んでくる。緋厳は低く唸りながら、自分の膝裏から手を離し、高く上げていた腰を下ろして、覆いかぶさってくる多幸の腰を両手で掴んだ。多幸の二本のペニスと自分のペニスを擦り合わせ、ガチガチに勃起しているペニスを多幸の柔らかいスリットの中へと潜り込ませる。熱く柔らかい穴へとゆっくりとペニスを押し込んでいけば、多幸の腹の中の肉が緋厳のペニスに絡みつき、キツく締めつけ、奥へ奥へと誘ってくる。多幸が気持ちよさそうに目を細めて口角を上げ、熱い息をもらした。とん、と肉の壁にペニスの先っぽが突き当たる。瞬間、多幸が身体をビクッと震わせ、大きな声を上げた。熱い肉がペニスをより締めつけ、まるで吸いつくようにペニスに絡みつく。同時に緋厳のアナルに入っている蛸の脚が緋厳の腹の中でうねうねと動き、恐ろしく気持ちがいいところを吸盤で吸うようにして刺激し始めた。重なる緋厳と多幸の身体に挟まれている蛸が二人の身体に脚を這わせ、緋厳と多幸二人の乳首を、同時に吸盤で吸ってくる。脳みそが蕩けて零れ落ちそうな程強烈な快感が襲ってくる。緋厳は多幸の腰をがっしりと強く掴み、多幸の身体を小さく揺さぶるように腰を小刻みに動かして、多幸の腹の奥深くを突き上げ始めた。多幸が顔を歪ませ、大きく喘いだ。
「あっ! あっ! はぁぁっ! いいっ!」
「あぁっ! くそっ! 堪んねぇ!」
「突いてっ! 突いてっ! あぁっ、ひぃっ!」
気持ちよ過ぎて、目の裏がチカチカする。多幸の腹の中の肉に熱く締めつけられているペニスも、蛸に吸いつかれている乳首や腹の中の痼も、気持ちよ過ぎて堪らない。緋厳は大きく吠えながら、めちゃくちゃに腰を動かし、激しく多幸の奥深くを突き上げ始めた。
緋厳の顔のすぐ間近にある多幸の顔から汗が滴り落ち、唇へ多幸の涎が垂れ落ちてくる。緋厳は多幸の開けっ放しの唇に噛みつき、思いっきり舌を伸ばして、多幸の喉奥をざりざりと舐め始めた。多幸が目を見開き、ビクンッビクンッと大きく身体を震わせた。
「んんんんーーっ!!」
殆ど白目を剥きながら、多幸が悲鳴のようなくぐもった声を上げ、ガクガクと全身を震わせた。腹に熱い液体がかかる。腹の中の肉の締めつけに堪えきれずに、緋厳も唸りながら多幸の腹の奥深くの肉の壁にぐりぐりとペニスの先っぽを押しつけ、思いっきり精液をぶち撒けた。イッている緋厳の身体と多幸の身体を、蛸達が容赦なく更に刺激してくる。吸盤で強く乳首を吸われ、ぐりぐりと腹の中の一番気持ちがいいところを吸盤つきの脚で擦られる。強過ぎる快感に、堪らず緋厳は多幸の口内から舌を引き抜き、大きく叫んだ。多幸の悲鳴じみた喘ぎ声と緋厳の吠えるような声が、洞窟内に反響して響き渡る。痙攣するように震える多幸の身体を抱き締めれば、二人の腹に挟まれている蛸がうねうねと動いた。多幸が泣き濡れた声を上げ、射精したばかりで敏感になり過ぎている緋厳のペニスを更に締めつけてくる。多分、蛸が多幸のペニスに絡みつき、多幸のペニスを刺激しているのだろう。ひっきりなしに声を上げている二人の乳首を蛸が弄り、緋厳の腹の中も多幸の二本のペニスもまとめて強く刺激してくる。緋厳はすぐにまた勃起したペニスで多幸の腹の奥深くをぐりぐりと強く押し、無我夢中で激しく腰を振り始めた。
ーーーーーー
緋厳は、過ぎた快感で自然と出てきた涙と鼻水と涎を垂れ流しながら、ぜぇぜぇと掠れた息を吐いた。緋厳の身体の上で、多幸がぐったりと脱力している。盛り上がるを通り越して、何かの限界を突破してしまったような気がしてくる。散々緋厳と多幸の身体を弄りまくっていた蛸達は、二人の身体から離れ、海の中へと消えていった。緋厳はイキ過ぎた余韻で力が入らない手で多幸の背中を撫で、ボソッと呟いた。
「死ぬかと思った」
「えぇ」
「蛸の本気やべぇな」
「あの子達、今宵は気合を入れ過ぎでしょう。誰があそこまでしろと……」
「俺ぁ、もうなんも出ねぇ。搾り取られた」
「私もですよ……」
「多幸」
「なんですか?」
「好きだ」
「ふふっ。あーたが好きばい」
「おう。此処によ、俺も住みてぇ」
「えぇ。是非とも」
「やや子の名前は何にする」
「ふふっ。気の早いこと。まだできたか分かりませんよ」
「こんだけ出してりゃ、できてるだろ」
「うっふふ。頑張って卵を産みますよ」
「おぅ。俺も手伝う。何を手伝るか分かんねぇが」
「あはっ。毎日此処に帰ってきて、一緒にいてくれたら、それだけでいいです」
「欲がねぇな。なんかもっとねだってくれや」
「では、毎朝欠かさず接吻をしてください」
「頼まれる前にやるやつだな」
「毎日寝る時は抱きしめてください」
「むしろ抱いてねぇと落ち着かねぇよ」
「ふ、ふふっ。私が海に還りたくなったら、一緒に来てください」
「おぅ。ちゃんと連れて行け」
のろのろとした動きで多幸が身体を少し起こし、緋厳を見下ろして、その名が示すように、幸多き満面の笑みを浮かべた。緋厳はあまりにも幸せそうな多幸につられて頬をゆるめ、多幸の身体を強く抱きしめ、多幸の唇を優しく吸った。
ーーーーーー
時はそれなりに遡る。多幸は少々疲れていた。終わりなき生の戯れに居酒屋を始め、従業員達もよい子が揃い、それなりに繁盛している。しかし、どこか疲れを感じていた。そんな時に、一人の赤鬼がやって来た。赤鬼は多幸の顔を見るなり、赤い顔を更に赤くして、カウンターから身を乗り出すようにして口を開いた。
「おめぇに惚れた」
多幸は美しいが故に、そう言ってくる手合は多い。多幸はいつも通り、笑みを浮かべて、さらりと流した。
赤鬼・緋厳は、三日と開けずに居酒屋へやって来た。来る度に、多幸を口説いている。緋厳は鬼らしい厳つい顔立ちをしており、笑えば大きな牙がよく見える。癖の強い黒い髪から生えた二本の角は硬そうで、身体も大きく逞しい。
多幸は疲れていた。故に、気まぐれを起こした。緋厳を自宅へと招くことにした。誰かとまぐわうのは随分と久方ぶりだ。いつもは自分の指と可愛い蛸達で慰めている身体が、自然と疼いた。緋厳は意外な程優しくて、予想以上に可愛かった。
多幸は緋厳に夢中になった。緋厳にそうと気づかれるのは、少々癪に触るので、それと気づかれないような態度をとっていたが、緋厳とのまぐわいも、緋厳との他愛のないお喋りも、楽しくて仕方がなかった。
緋厳は多幸の中に子種を出さない。いつも多幸の外に出す。それだけがずっと不満だった。
多幸はもう夫婦のような気分でいるのに、緋厳は違うのだろうか。逢瀬を重ねるごとに、不安は大きくなっていった。多幸の一方通行なのではないのかと。緋厳が言う『好いている』というのは、方便なのではないのかと。
結局それは杞憂に終わったのだが、あれから数日経って、多幸は若干イラッとし始めた。あれから毎日、緋厳は多幸の棲家に帰ってくるようになった。それはいい。だが、鈍い緋厳のせいで結構な年数、密かにやきもきしていたのだ。ちょっとくらい仕返ししてもバチは当たらないだろう。多幸はおっとりとした笑みを浮かべて接客しながら、どう仕返しするか考えた。
ーーーーーー
店仕舞いの間は外で待っている緋厳を呼びに行き、多幸は大きな蛤に乗って、緋厳と共に地下の棲家へと戻った。
緋厳がすぐに酒の用意をしてくれる。多幸は海に下半身を浸けた状態で、それを眺めた。焼酎の瓶と肴の塩、揃いのぐい呑みを乗せた木の盆を片手に多幸の側にやって来た緋厳に、多幸は笑みを浮かべて口を開いた。
「背の君」
「あ?」
「今宵は少々趣向を変えましょう」
「ん?」
多幸はパチンと指を鳴らした。すかさず可愛い蛸達が胡座をかいて座っている緋厳の腕を後ろ手に拘束した。緋厳が驚いたような、戸惑ったような顔をした。
「おい? なんでぇ。こりゃあ」
「ちょっとした仕返しですよ。精々可愛く喘いでくださいな」
「……何をする気だ?」
「子作りですよ」
多幸はにっこりと笑って、緋厳の着流しの裾を乱し、褌に包まれた緋厳の萎えたペニスに鼻先を擦りつけた。緋厳のペニスは萎えていても大きい。褌の布越しに舌を這わせれば、すぐにむくむくと大きく硬くなる。
褌をずらし、ペニスだけを取り出してやれば、ぶるんっと大きく赤黒いペニスが現れる。亀頭が大きく、皮がズル剥けで、竿に微かに血管が浮いている。ねろーっとペニスの根元から先っぽへ向けて舌を這わせれば、緋厳がビクッと身体を震わせた。
先走りが滲み始めた亀頭をチロチロと舌先で擽りながら、目だけで上を見上げれば、着流しをはだけるように蛸達がうねうねと脚を伸ばして、緋厳の両方の乳首を弄り始めていた。緋厳が気持ちよさそうな熱い息を吐きながら、じっと多幸を見下ろしていた。緋厳の瞳の火傷しそうな熱が堪らなく興奮を煽る。
「はっ、あ……多幸っ……腕、解けよ」
「まだだーめ」
「はぁ!?」
「潮、吹いてみましょうね」
「ちょっ、何をする気だ!?」
「ふふっ。いいこと」
多幸は緋厳のペニス全体に唾液を馴染ませるように舐め回すと、熱く大きな亀頭をパクンと口に含み、口内を溢れる唾液をしっかりと舐めませた。ぷはぁと緋厳のペニスから口を離し、緋厳のペニスの亀頭を掌でゴシゴシと強めに擦り始める。
「うっ、おぅっ! ちょっ、つぇっ!」
「気持ちいいでしょう? どんどんぬるぬるしてきますよ?」
「ひぐっ! うっ、おぉっ!」
「ほらほらほらほら」
緋厳の身体がビクンビクンッと震えだし、低い喘ぎ声をもらし始めた。耳に心地よい慣れた嬌声に、どんどん楽しくなってくる。
緋厳の声がどんどん切羽詰まったものになっていき、悲鳴のように多幸の名前を叫んだ。
「多幸っ! やめっ! おぉぅっ!」
「ほら。いい子だから出しましょうね」
「いいいいくいくいくいくっ!」
「あっは!」
ぷしゃぁぁぁぁっと勢いよく緋厳のペニスから透明な液体が吹き出した。尿ではない。潮である。初めてやってみたが、上手く出来て何よりである。
多幸は潮を吹く緋厳のペニスの亀頭をパクンと咥え、潮を飲み干しながら、飲み込めるだけ深く緋厳のペニスを飲み込んだ。熱く脈打つ緋厳のペニスが愛おしい。
多幸は涎を垂らして喘ぐ緋厳をじっと見上げながら、自分の鱗に包まれた下半身にあるスリットに手を伸ばした。スリットからは、自然と二本のペニスがにょっきりと飛び出している。ペニスも弄りたいが、それ以上に疼いている穴がある。緋厳のペニスにすっかり馴染んで、緋厳専用になって久しい穴だ。多幸は頬を窄めるようにして緋厳のペニスを吸いながら、頭を上下に動かし、緋厳のペニスを唇で扱き始めた。同時に、自分の早くも蕩けている穴に指を突っ込んで、くちくちと疼く穴を慰める。自分の指なんかじゃ足りない。
仕返しとして、緋厳をとことん責めまくってやろうかと思っていたが、自分がもう我慢できない。多幸は緋厳の逞しい身体を押し倒し、緋厳の雄々しいペニスを片手で掴んで、自分のスリットの中の蕩けた穴にペニスの先っぽをくっつけ、腰をくねらせて一気に深く飲み込んだ。
「あぁっ!」
「う、あぁ……多幸っ、腕っ!」
「まだっ、だめっ、あっあっ、あぁぁっ」
「はっ、くっ、あぁっ」
多幸は緋厳の逞しい胸板に両手をついて、無我夢中で腰を振った。一番奥深くにまで緋厳のペニスが届いている。そこを強く刺激されると、脳みそが蕩け出そうな快感に襲われる。多幸はうっとりとした笑みを浮かべながら、快感に顔を歪めている緋厳を見下ろした。なんて可愛いのだろう。仕事では、厳しい顔で亡者を屠る赤鬼が、多幸の下ではこんなに可愛く喘いでいる。興奮と快感がどんどん高まっていく。
「出してっ! 出してっ! 孕ませてっ!」
「~~~~っ、あぁっ! 出るっ! イクッ!」
「あ、あぁぁぁぁっ!」
腹の中で緋厳のペニスが僅かに震えている。多幸の中に子種を吐き出している。多幸はその幸せに身体をぶるりと震わせて、自身も二本のペニスから精液を吐き出した。気持ちがいい。でもまだ足りない。腹の奥が、孕みたくて孕みたくて、酷く疼いている。
多幸は緋厳の唇に噛みつくように強く吸いつきながら、また激しく腰を振り始めた。
可愛い蛸達も大活躍してくれた結果、緋厳は何回も多幸の中で射精して、殆ど気絶するように寝落ちた。腹の中が緋厳の精液でたぷたぷで、多幸としては大満足である。
豪快な鼾をかく緋厳に寄り添って、多幸は穏やかな笑みを浮かべて、静かに目を閉じた。
ーーーーーー
緋厳が多幸と共に暮らし始めて、すぐに多幸が孕み、数カ月後に無事に卵を一つ産み落とした。緋厳は仕事を休み、産後で弱っている多幸の世話を朝から晩までせっせとしている。卵からやや子が出てくるのは、結構な年数がかかるらしい。おそらく、多幸と同じアマビエが生まれてくるのではないだろうか。根拠はない。単なる勘である。
居酒屋の方は、多幸の身体が完全に回復するまでは、鵺ら従業員達に任せている。毎日のように誰かしら訪ねてきて、多幸に仕事の報告をしつつ、美味しい料理を運んでくる。
緋厳は、卵を抱えて愛おしそうに撫でている多幸を、胡座をかいた膝に横抱きに乗せ、卵を撫でる多幸のほっそりとした手に、己のゴツい手を重ねた。
二人の愛の結晶は、いつ顔を見せてくれるのだろうか。とても楽しみだし、できたら早く抱きしめたいのだが、少しくらいはゆっくりしてもらっていても構わない。多幸と二人で新たな家族の誕生を待つのも楽しい。
静かだった居酒屋の地下が賑やかになり、緋厳や従業員達、訪れる客達が、居酒屋の店主の穏やかな笑みと看板娘のおっとりとした笑顔を毎日眺めるようになるまで、あともう少し。
ー閉店ー
ぼんやり灯る赤提灯と鬼火に誘われるがままに路地裏を進めば、目当ての居酒屋へと到着する。緋厳がいつものように居酒屋『天海の鬼火亭』の暖簾を潜れば、元気のよい声に出迎えられた。すっかり顔馴染みになっている化け猫の少年に軽く右手を上げ、定位置となっているカウンターの隅の席へと移動する。近くの席から聞こえる河童と狸の笑い声を耳にしながら、緋厳はどっこらしょっと椅子に座った。すかさず明るい笑みと共に、兎の耳をつけた露出狂のような格好をした可愛らしい少年が、お冷とおしぼりを運んできた。緋厳は軽く礼を言うと、温かいおしぼりでごしごしと顔を拭き、ふぅと小さく息を吐いた。穏やかな賑やかさがある温かい店内の空気に、じわぁっと少しだけ疲れが解れていく感じがする。
此処は異界と現世が交わる不思議な空間にある。居酒屋『天海の鬼火亭』に訪れる客は様々で、妖もいれば、人間もいる。一口に妖や人間と言っても、その出処は様々な異界で、居酒屋の店員達も、日の本の妖だけではない。酒も飯も美味い不思議な居酒屋に通い始めて、もうどれくらい経つのか分からない程、緋厳は長く此処に通っている。
カウンターの奥の方から、店主であるアマビエ・海老原多幸がやって来た。おっとりとした笑みを浮かべた美しい顔立ち、下半身が魚のようになっており、遠目から見るとキラキラと鱗が輝き、どこまでも美しい妖である。大きな蛤に乗って移動し、いつでも蛸を二匹くっつけて、自分の手伝いをさせている。
多幸がいつものおっとりとした笑みを浮かべ、カウンター越しに緋厳に話しかけてきた。
「いらっしゃいませ。何になさいますか?」
「おめぇの愛を一つ」
「ハイボールでよろしいですね」
「おう。肴は任せる」
「今日のオススメはおでんですよ。トマト入りの。新作なんです」
「おでんにトマトだぁ? 美味いのかよ」
「えぇ。とっても。試してごらんくださいな」
「そうかい。じゃあ、おでんを頼まぁ」
「ありがとうございます。少々お待ちくださいね。その間にこちらをどうぞ」
「おっ。いいな。ここの蛸わさはうめぇんだよ」
「ふふっ。新鮮な蛸を使っておりますから」
「そいつらの脚じゃねぇよな」
「うふふふっ」
「おい?」
「冗談です。ちゃんと普通に仕入れた蛸を使っておりますよ。この子達のものではありません」
「そりゃ、よかったよ」
緋厳は差し出された小鉢の蛸わさを無造作に箸で摘み、ひょいと口に放り込んだ。わさびの辛みと香りが蛸の味わいをいい感じに引き立てている。ちょうどいいタイミングで、多幸がハイボールを差し出してきた。多幸から受け取ったハイボールで蛸わさを流し込めば、スッキリと爽快な味わいが口の中に広がる。ハイボールなんて、つい最近のものだが、これがなんとも美味い。
ごっごっと勢いよくジョッキのハイボールを飲み干すと、何を言わずとも、多幸が熱燗を差し出してきた。緋厳は、おでんの時は熱燗派だ。それを知っている多幸は、いつも何も言わずとも用意してくれる。元気な猫又が運んできたおでんの皿には、確かにトマトが入っていた。本当に美味いのかと半信半疑で食べてみれば、これが美味い。出汁の味とトマトの酸味が程よく絡み合い、口の中で絶妙なハーモニーを奏でる。緋厳が咀嚼しながら無言で、ぐっと親指を立てると、多幸が上品に笑った。
緋厳は満足するまで大いに食べ、がっつり酒を飲んで、楽しんだ。
ーーーーーー
緋厳が暖簾を下げた店の入り口のすぐ側の壁に寄りかかり、煙管を吹かしていると、店の入り口が開いた。多幸がひょいと顔を出し、おっとりとした優しい笑みを浮かべた。多幸がちょいちょいと手招きをしながら、口を開いた。
「緋厳さん。お待たせしました。皆帰りましたよ」
「おう」
緋厳は懐から携帯灰皿を取り出し、煙管から火のついた煙草を携帯灰皿の中にトッと放り込んだ。照明も消した閉店後の店内に入り、ずりずりと動く巨大蛤に乗った多幸と共に、奥にある従業員用のドアへと移動して、更に奥へと向かう。多幸の後ろをついて緩やかな傾斜の坂を下りれば、潮が香る多幸の棲家に到着する。
多幸は居酒屋の地下に住んでいる。海辺の洞窟のような造りで、不思議なことに実際の海と繋がっており、静かな波音が辺りに響いている。
多幸がずりずりと波打ち際に移動して、そのまま海に入り、鱗が美しい下半身を海水につけて、ゆっくりと横になった。ふぃーっと気の抜けた声を出す多幸をチラッと見てから、緋厳は洞窟の奥にある大きな棚の所へ行き、青い切子のぐい呑と多幸が好きな焼酎の瓶を手に取った。居酒屋では当然店主の多幸が酒を用意して、場合によっては酌もしてくれるが、此処では緋厳が酒の準備をする。肴は塩で十分だ。使い慣れた木の盆に、小皿に入れた塩、焼酎の瓶、揃いのぐい呑を二つ乗せ、緋厳は波打ち際の多幸の側に向かい、リラックスした様子の多幸のすぐ隣に腰を下ろした。
多幸がゆっくりと上体を起こし、胡座をかいて座った緋厳の膝に寄りかかった。多幸と関係を持つようになり、結構な年数が経っている。お互いに気を使うことなく、店主として働いている時は優しい笑みを浮かべて隙がない多幸も、緋厳と二人だけの時は随分と甘える様な仕草を見せるようになっている。多幸と深い仲になった切っ掛けは、今となっては昔過ぎて覚えていない。恋人や夫婦という関係ではない。緋厳は多幸に惚れているが、多幸はどうだか分からない。美しい顔に優し気な笑みを浮かべている妖は、その心の内を中々見せない。三日と開けずに身体を繋げているし、顔を合わせる度に戯れるように睦言を囁いているが、それだけだ。緋厳はそれはそれでいいと思っている。アマビエである多幸も、赤鬼である緋厳も、人間と違って寿命など無い。もしかしたら、いつか存在が消え去る日が来るのかもしれないが、それはそれで構わない。日々を満足に過ごせたら、それで十分だ。
多幸がしどけなく緋厳の膝に寄りかかったまま、木の盆のぐい呑みを手に取り、品よく焼酎を飲み干して、満足そうに小さく息を吐いた。緋厳も揃いのぐい呑みに口をつけ、一息で焼酎を飲み干す。独特の少し癖のある香りが鼻を抜け、酒精が心地よく喉を焼く。慣れきった潮の香りと耳を優しく擽る波の音、触れている多幸の温もりに、心が穏やかに凪いでいく。
緋厳は焼酎の瓶を手に取り、多幸のぐい呑みに焼酎を注ぎながら、たおやかな指先で塩を掬ってぺろりと自分の指ごと塩を舐めている多幸を見下ろし、小さく口角を上げた。多幸に常時くっついている蛸がうねうねと脚を揺らして、寄せては返す波で遊び始めるのを穏やかな顔で眺めていた多幸が、緋厳の顔を見上げた。
「緋厳さん」
「なんだ」
「私、そろそろ貴方の子を産みたいのですけど」
「……あ?」
「いえね。私もね、そのうち貴方のやや子ができるだろうと思っていたのですよ。それなのに貴方ときたら、いつも私の中に出さないじゃあありませんか。私の愛が欲しいと言って抱いておいて、私の中に出さないとは如何いう了見かと、常々思っていたのです」
多幸が口元だけいつものおっとりとした笑みを浮かべて、緋厳の固い筋肉質な内腿を指で摘み、ギリギリと力一杯捻った。地味に痛い。緋厳は痛みと突然の多幸の言葉に、驚き戸惑った。
「なんでぇ。いきなり」
「ふふっ。少し前にね、うちの若い子達から言われたのですよ。『店長はいつ緋厳さんと所帯を持つんですか?』って。私はとうの昔に貴方と所帯を持っていたと思っていたんですけどね、ふと思ったのですよ。やや子ができぬようにしている貴方と、本当に夫婦なのかと」
「……正直に言ってもいいか」
「えぇ。どうぞ」
「……おめぇに惚れてるのは本当だが、ぶっちゃけ身体だけの仲だと思ってた」
「ふふふっ。人ばぞうくっといかんばい(他人を馬鹿にしてはいけませんよ)」
多幸が笑みを深めて、より強くギリギリと緋厳の内腿を抓り上げた。かなり痛い。普段は柔らかい標準的な丁寧語を話す多幸がお国言葉を口にする時は、本気で怒っている時だ。付き合いが長い故に、緋厳は多幸の怒りっぷりを察し、慌てて言い訳を始めた。
「いやだってよぉ! おめぇはどんだけ俺が惚れてるっつっても、『おや。そうですか』の一言じゃねぇか!」
「そいは察するもんたい」
「無茶言うな。俺ぁ、自分で言うのもなんだが、鈍いぞ」
「……知っとる」
緋厳が困って太い眉を下げると、多幸が拗ねたように小さく唇を尖らせた。現在進行形で抓られている内腿がかなり痛い。多幸の怒りを察してか、さっきからぺしぺしと脚で緋厳の身体を叩いてくる蛸達が鬱陶しい。だが、そんなこと気にならないくらい、多幸が愛らしい。いつも余裕綽々な様子で、穏やかな笑みを浮かべているおっとりとした多幸でも拗ねるのかと、緋厳は初めて見る多幸の一面に我慢できずに、だらしなく頬をゆるめた。
多幸が緋厳の内腿を抓っていた指を離し、ぺしっと緋厳の太腿を叩いた。
「多幸」
「なんね」
「俺が好きなら好きって言えよ。俺ぁ、鈍いからよ。口にしてくれなきゃ分かんねぇ」
「……あーたんこつが好きばい」
「おぅ。俺も心底惚れてらぁ。俺のやや子を産んでくれるか」
「……よかよ」
多幸が緋厳を見上げて、嬉しそうに目を細めて笑った。無意識なのか、尾鰭を振ってぱしゃぱしゃと水面を揺らしている多幸につられてか、緋厳の身体を吸盤付きの脚で叩いていた蛸達も、機嫌よさげにうねうねと身体を揺らし始めた。
緋厳は早速子作りをしようと、自分のぐい呑みを木の盆に置き、多幸のほっそりとした手から揃いのぐい呑みを取り上げ、木の盆の上に並べて置いた。多幸のほっそりとした腰を両手で掴み、海の中から出して、多幸の身体を自分の膝の上に乗せた。何も言わずとも多幸の腕が緋厳の太い首に絡み、多幸が至近距離で微笑んだ。
「今宵は孕むまで楽しみましょう」
「おう」
緋厳はクックッと低く笑うと、多幸の形よい唇に優しく噛みついた。唇を吸い合い、伸ばした舌をぬるりぬるりと絡めて、互いの口内をじっくりと舐め合う。ほのかに酒精の香りがする唾液をくちゅくちゅと混ぜ合って、お互いに唾液を啜り合う。多幸が緋厳の鋭い牙を舐めれば、緋厳は多幸の喉奥目掛けて長い舌を伸ばす。喉ちんこの手前の少しざらついた所を集中的に舌で刺激してやれば、そのうちビクッビクッと多幸が身体を不規則に震わせ始めた。喉奥を舌で刺激しながら、緋厳ならば股間にあたる辺りの鱗を撫で回し、パッと見た時には分からない、そこだけが僅かに柔らかいスリットをすりすりと指先で優しく撫でる。長年かけて開発したので、多幸は喉奥の刺激だけでイケる。所謂イラマチオでも普通にイケるようになるまで、根気よく開発した。同じくらいか、下手したらそれ以上に、緋厳も多幸に開発されまくっている。
多幸の喉奥をざりざりと舐め回しながら、柔らかいスリットの中へと人差し指と中指を揃えて入れ、くばぁっとスリットを広げれば、どゅるんっと大きな二本のペニスが顔を出した。多幸はペニスが二本もあり、普段はスリットの中に入っている。ほんのり体液で濡れたスリットの中を掻き回すように指を動かし、小刻みに舌を動かして喉奥を更に刺激してやれば、多幸がくぐもった声を上げ、ビクンビクンッと身体を震わせながら、二本のペニスから白い精液を飛ばした。
ずるりと多幸の口から長い舌を抜き、蕩けた顔をしている多幸のだらしなく顎まで垂れた涎を舐め取れば、荒い息を吐く多幸が、うっとりと口角を上げ、自分のスリットの中の熱い穴を緋厳の指に擦りつけるように、身体をくねらせた。緋厳の首に絡んでいた多幸の手が離れ、緋厳のうなじや喉仏を触れるか触れないかの力加減で撫でてくる。ぞわぞわとした微かな快感と興奮に、ペニスが痛い程ガチガチに勃起してしまう。多幸が緋厳の着流しの合わせ目に手を差し込み、緋厳の筋肉で盛り上がった胸へと手を滑らせながら、着流しを寛げ、ねっとりと緋厳の首筋に舌を這わせた。多幸は基本的に緋厳よりも体温が低い。しかし、今は舌も手もペニスもスリットの中の穴も、堪らなく熱くなっている。多幸が緋厳の胸板を撫で回し、乳首の先端をすりすりと優しく指の腹で擦りながら、ちゅうっと強く緋厳の首筋の太い血管の上を吸い、かしかしと優しく緋厳の肌を噛んだ。
「背の君。私の中に、たんと出しましょうね」
「おう。おめぇの腹が膨れるまで一滴残らず出してやらぁ」
緋厳は多幸のスリットから指を引き抜くと、多幸のほっそりとした身体を砂地に押し倒し、食らいつくように滑らかな多幸の肌を舐め始めた。ちょこんと勃った乳首を舌で転がし、柔らかな肌を何度も吸って、柔らかな肌と鱗の境に舌を這わせる。気持ちよさそうな声を上げ、尾鰭をビチビチと振り、身体をくねらせる多幸のにょっきりと飛び出たままの二本のペニスを交互に舐め回す。多幸のようにペニスを口に咥えられたらいいのだが、赤鬼の緋厳には鋭く長い牙が生えている。敏感なペニスを傷つけてしまいそうで、流石に多幸のペニスは咥えられない。その代わりにと、ねっとりと二本のペニス全体を舐め回せば、多幸が緋厳の癖の強い短い髪を両手で掻き回し、腰をくねらせ喘いだ。ペニスが飛び出ているスリットを舌先でなぞり、スリットの中へ舌を潜り込ませる。スリットの中を探れば、すぐに熱いひくつく穴が緋厳の舌先に触れた。女のように極端に濡れる訳ではない。しかし、男のように全く濡れない訳でもない。唾液を流し込み、根気よく舌で解して刺激してやれば、多幸のそこは緋厳の太くて長いペニスをきっちり根元まで飲み込むことができる。多幸のほっそりとしたくねる腰やキラキラと微かに輝く鱗を撫で回しながら、緋厳は多幸が蕩けた声を上げてイクまで、多幸の腹の中を舌で味わった。
緋厳はまんぐり返しならぬちんぐり返しの体勢になり、多幸にアナルを舐め回されていた。不自由な体勢が苦しいが、多幸の美しい唇や舌が自分のアナルに触れ、皺の一枚一枚を丁寧に舐められている感覚と光景に、酷く興奮する。緋厳のアナルに多幸が舌を突っ込み、上下左右に舌を動かして緋厳の直腸内を舐めながら、勃起して今にも暴発寸前な緋厳のペニスを手で扱いている。溢れて出て止まる気配などない先走りをペニス全体に広げるように多幸の手が動き、ぐるぐるとアナルを拡げるように舌を回して緋厳の腹の中を舐め回してくる。多幸が緋厳のアナルに二本のペニスを突っ込む為に、緋厳のアナルを舐めているのではない。先程から緋厳のぷっくりと勃った両方の乳首を吸盤で吸っている蛸が、その脚を挿れる為である。二匹の蛸が、だらしなく喘ぐ緋厳の乳首にも、熱心に緋厳のアナルを舐め回している多幸の乳首にも、其々吸盤を吸いつかせ、敏感になっている乳首は勿論、二人の肌に絡みつき、うねうねと動いて刺激してくる。
緋厳は自分の膝裏を両手で掴んだ状態で、だらしなく低く喘ぎながら、熱の篭った多幸の赤い瞳を真っ直ぐに見つめた。多幸が目を細め、緋厳のアナルから舌を引き抜いた。くぽくぽとひくつく緋厳のアナルに、すかさず蛸の脚が潜り込んでくる。緋厳は低く唸りながら、自分の膝裏から手を離し、高く上げていた腰を下ろして、覆いかぶさってくる多幸の腰を両手で掴んだ。多幸の二本のペニスと自分のペニスを擦り合わせ、ガチガチに勃起しているペニスを多幸の柔らかいスリットの中へと潜り込ませる。熱く柔らかい穴へとゆっくりとペニスを押し込んでいけば、多幸の腹の中の肉が緋厳のペニスに絡みつき、キツく締めつけ、奥へ奥へと誘ってくる。多幸が気持ちよさそうに目を細めて口角を上げ、熱い息をもらした。とん、と肉の壁にペニスの先っぽが突き当たる。瞬間、多幸が身体をビクッと震わせ、大きな声を上げた。熱い肉がペニスをより締めつけ、まるで吸いつくようにペニスに絡みつく。同時に緋厳のアナルに入っている蛸の脚が緋厳の腹の中でうねうねと動き、恐ろしく気持ちがいいところを吸盤で吸うようにして刺激し始めた。重なる緋厳と多幸の身体に挟まれている蛸が二人の身体に脚を這わせ、緋厳と多幸二人の乳首を、同時に吸盤で吸ってくる。脳みそが蕩けて零れ落ちそうな程強烈な快感が襲ってくる。緋厳は多幸の腰をがっしりと強く掴み、多幸の身体を小さく揺さぶるように腰を小刻みに動かして、多幸の腹の奥深くを突き上げ始めた。多幸が顔を歪ませ、大きく喘いだ。
「あっ! あっ! はぁぁっ! いいっ!」
「あぁっ! くそっ! 堪んねぇ!」
「突いてっ! 突いてっ! あぁっ、ひぃっ!」
気持ちよ過ぎて、目の裏がチカチカする。多幸の腹の中の肉に熱く締めつけられているペニスも、蛸に吸いつかれている乳首や腹の中の痼も、気持ちよ過ぎて堪らない。緋厳は大きく吠えながら、めちゃくちゃに腰を動かし、激しく多幸の奥深くを突き上げ始めた。
緋厳の顔のすぐ間近にある多幸の顔から汗が滴り落ち、唇へ多幸の涎が垂れ落ちてくる。緋厳は多幸の開けっ放しの唇に噛みつき、思いっきり舌を伸ばして、多幸の喉奥をざりざりと舐め始めた。多幸が目を見開き、ビクンッビクンッと大きく身体を震わせた。
「んんんんーーっ!!」
殆ど白目を剥きながら、多幸が悲鳴のようなくぐもった声を上げ、ガクガクと全身を震わせた。腹に熱い液体がかかる。腹の中の肉の締めつけに堪えきれずに、緋厳も唸りながら多幸の腹の奥深くの肉の壁にぐりぐりとペニスの先っぽを押しつけ、思いっきり精液をぶち撒けた。イッている緋厳の身体と多幸の身体を、蛸達が容赦なく更に刺激してくる。吸盤で強く乳首を吸われ、ぐりぐりと腹の中の一番気持ちがいいところを吸盤つきの脚で擦られる。強過ぎる快感に、堪らず緋厳は多幸の口内から舌を引き抜き、大きく叫んだ。多幸の悲鳴じみた喘ぎ声と緋厳の吠えるような声が、洞窟内に反響して響き渡る。痙攣するように震える多幸の身体を抱き締めれば、二人の腹に挟まれている蛸がうねうねと動いた。多幸が泣き濡れた声を上げ、射精したばかりで敏感になり過ぎている緋厳のペニスを更に締めつけてくる。多分、蛸が多幸のペニスに絡みつき、多幸のペニスを刺激しているのだろう。ひっきりなしに声を上げている二人の乳首を蛸が弄り、緋厳の腹の中も多幸の二本のペニスもまとめて強く刺激してくる。緋厳はすぐにまた勃起したペニスで多幸の腹の奥深くをぐりぐりと強く押し、無我夢中で激しく腰を振り始めた。
ーーーーーー
緋厳は、過ぎた快感で自然と出てきた涙と鼻水と涎を垂れ流しながら、ぜぇぜぇと掠れた息を吐いた。緋厳の身体の上で、多幸がぐったりと脱力している。盛り上がるを通り越して、何かの限界を突破してしまったような気がしてくる。散々緋厳と多幸の身体を弄りまくっていた蛸達は、二人の身体から離れ、海の中へと消えていった。緋厳はイキ過ぎた余韻で力が入らない手で多幸の背中を撫で、ボソッと呟いた。
「死ぬかと思った」
「えぇ」
「蛸の本気やべぇな」
「あの子達、今宵は気合を入れ過ぎでしょう。誰があそこまでしろと……」
「俺ぁ、もうなんも出ねぇ。搾り取られた」
「私もですよ……」
「多幸」
「なんですか?」
「好きだ」
「ふふっ。あーたが好きばい」
「おう。此処によ、俺も住みてぇ」
「えぇ。是非とも」
「やや子の名前は何にする」
「ふふっ。気の早いこと。まだできたか分かりませんよ」
「こんだけ出してりゃ、できてるだろ」
「うっふふ。頑張って卵を産みますよ」
「おぅ。俺も手伝う。何を手伝るか分かんねぇが」
「あはっ。毎日此処に帰ってきて、一緒にいてくれたら、それだけでいいです」
「欲がねぇな。なんかもっとねだってくれや」
「では、毎朝欠かさず接吻をしてください」
「頼まれる前にやるやつだな」
「毎日寝る時は抱きしめてください」
「むしろ抱いてねぇと落ち着かねぇよ」
「ふ、ふふっ。私が海に還りたくなったら、一緒に来てください」
「おぅ。ちゃんと連れて行け」
のろのろとした動きで多幸が身体を少し起こし、緋厳を見下ろして、その名が示すように、幸多き満面の笑みを浮かべた。緋厳はあまりにも幸せそうな多幸につられて頬をゆるめ、多幸の身体を強く抱きしめ、多幸の唇を優しく吸った。
ーーーーーー
時はそれなりに遡る。多幸は少々疲れていた。終わりなき生の戯れに居酒屋を始め、従業員達もよい子が揃い、それなりに繁盛している。しかし、どこか疲れを感じていた。そんな時に、一人の赤鬼がやって来た。赤鬼は多幸の顔を見るなり、赤い顔を更に赤くして、カウンターから身を乗り出すようにして口を開いた。
「おめぇに惚れた」
多幸は美しいが故に、そう言ってくる手合は多い。多幸はいつも通り、笑みを浮かべて、さらりと流した。
赤鬼・緋厳は、三日と開けずに居酒屋へやって来た。来る度に、多幸を口説いている。緋厳は鬼らしい厳つい顔立ちをしており、笑えば大きな牙がよく見える。癖の強い黒い髪から生えた二本の角は硬そうで、身体も大きく逞しい。
多幸は疲れていた。故に、気まぐれを起こした。緋厳を自宅へと招くことにした。誰かとまぐわうのは随分と久方ぶりだ。いつもは自分の指と可愛い蛸達で慰めている身体が、自然と疼いた。緋厳は意外な程優しくて、予想以上に可愛かった。
多幸は緋厳に夢中になった。緋厳にそうと気づかれるのは、少々癪に触るので、それと気づかれないような態度をとっていたが、緋厳とのまぐわいも、緋厳との他愛のないお喋りも、楽しくて仕方がなかった。
緋厳は多幸の中に子種を出さない。いつも多幸の外に出す。それだけがずっと不満だった。
多幸はもう夫婦のような気分でいるのに、緋厳は違うのだろうか。逢瀬を重ねるごとに、不安は大きくなっていった。多幸の一方通行なのではないのかと。緋厳が言う『好いている』というのは、方便なのではないのかと。
結局それは杞憂に終わったのだが、あれから数日経って、多幸は若干イラッとし始めた。あれから毎日、緋厳は多幸の棲家に帰ってくるようになった。それはいい。だが、鈍い緋厳のせいで結構な年数、密かにやきもきしていたのだ。ちょっとくらい仕返ししてもバチは当たらないだろう。多幸はおっとりとした笑みを浮かべて接客しながら、どう仕返しするか考えた。
ーーーーーー
店仕舞いの間は外で待っている緋厳を呼びに行き、多幸は大きな蛤に乗って、緋厳と共に地下の棲家へと戻った。
緋厳がすぐに酒の用意をしてくれる。多幸は海に下半身を浸けた状態で、それを眺めた。焼酎の瓶と肴の塩、揃いのぐい呑みを乗せた木の盆を片手に多幸の側にやって来た緋厳に、多幸は笑みを浮かべて口を開いた。
「背の君」
「あ?」
「今宵は少々趣向を変えましょう」
「ん?」
多幸はパチンと指を鳴らした。すかさず可愛い蛸達が胡座をかいて座っている緋厳の腕を後ろ手に拘束した。緋厳が驚いたような、戸惑ったような顔をした。
「おい? なんでぇ。こりゃあ」
「ちょっとした仕返しですよ。精々可愛く喘いでくださいな」
「……何をする気だ?」
「子作りですよ」
多幸はにっこりと笑って、緋厳の着流しの裾を乱し、褌に包まれた緋厳の萎えたペニスに鼻先を擦りつけた。緋厳のペニスは萎えていても大きい。褌の布越しに舌を這わせれば、すぐにむくむくと大きく硬くなる。
褌をずらし、ペニスだけを取り出してやれば、ぶるんっと大きく赤黒いペニスが現れる。亀頭が大きく、皮がズル剥けで、竿に微かに血管が浮いている。ねろーっとペニスの根元から先っぽへ向けて舌を這わせれば、緋厳がビクッと身体を震わせた。
先走りが滲み始めた亀頭をチロチロと舌先で擽りながら、目だけで上を見上げれば、着流しをはだけるように蛸達がうねうねと脚を伸ばして、緋厳の両方の乳首を弄り始めていた。緋厳が気持ちよさそうな熱い息を吐きながら、じっと多幸を見下ろしていた。緋厳の瞳の火傷しそうな熱が堪らなく興奮を煽る。
「はっ、あ……多幸っ……腕、解けよ」
「まだだーめ」
「はぁ!?」
「潮、吹いてみましょうね」
「ちょっ、何をする気だ!?」
「ふふっ。いいこと」
多幸は緋厳のペニス全体に唾液を馴染ませるように舐め回すと、熱く大きな亀頭をパクンと口に含み、口内を溢れる唾液をしっかりと舐めませた。ぷはぁと緋厳のペニスから口を離し、緋厳のペニスの亀頭を掌でゴシゴシと強めに擦り始める。
「うっ、おぅっ! ちょっ、つぇっ!」
「気持ちいいでしょう? どんどんぬるぬるしてきますよ?」
「ひぐっ! うっ、おぉっ!」
「ほらほらほらほら」
緋厳の身体がビクンビクンッと震えだし、低い喘ぎ声をもらし始めた。耳に心地よい慣れた嬌声に、どんどん楽しくなってくる。
緋厳の声がどんどん切羽詰まったものになっていき、悲鳴のように多幸の名前を叫んだ。
「多幸っ! やめっ! おぉぅっ!」
「ほら。いい子だから出しましょうね」
「いいいいくいくいくいくっ!」
「あっは!」
ぷしゃぁぁぁぁっと勢いよく緋厳のペニスから透明な液体が吹き出した。尿ではない。潮である。初めてやってみたが、上手く出来て何よりである。
多幸は潮を吹く緋厳のペニスの亀頭をパクンと咥え、潮を飲み干しながら、飲み込めるだけ深く緋厳のペニスを飲み込んだ。熱く脈打つ緋厳のペニスが愛おしい。
多幸は涎を垂らして喘ぐ緋厳をじっと見上げながら、自分の鱗に包まれた下半身にあるスリットに手を伸ばした。スリットからは、自然と二本のペニスがにょっきりと飛び出している。ペニスも弄りたいが、それ以上に疼いている穴がある。緋厳のペニスにすっかり馴染んで、緋厳専用になって久しい穴だ。多幸は頬を窄めるようにして緋厳のペニスを吸いながら、頭を上下に動かし、緋厳のペニスを唇で扱き始めた。同時に、自分の早くも蕩けている穴に指を突っ込んで、くちくちと疼く穴を慰める。自分の指なんかじゃ足りない。
仕返しとして、緋厳をとことん責めまくってやろうかと思っていたが、自分がもう我慢できない。多幸は緋厳の逞しい身体を押し倒し、緋厳の雄々しいペニスを片手で掴んで、自分のスリットの中の蕩けた穴にペニスの先っぽをくっつけ、腰をくねらせて一気に深く飲み込んだ。
「あぁっ!」
「う、あぁ……多幸っ、腕っ!」
「まだっ、だめっ、あっあっ、あぁぁっ」
「はっ、くっ、あぁっ」
多幸は緋厳の逞しい胸板に両手をついて、無我夢中で腰を振った。一番奥深くにまで緋厳のペニスが届いている。そこを強く刺激されると、脳みそが蕩け出そうな快感に襲われる。多幸はうっとりとした笑みを浮かべながら、快感に顔を歪めている緋厳を見下ろした。なんて可愛いのだろう。仕事では、厳しい顔で亡者を屠る赤鬼が、多幸の下ではこんなに可愛く喘いでいる。興奮と快感がどんどん高まっていく。
「出してっ! 出してっ! 孕ませてっ!」
「~~~~っ、あぁっ! 出るっ! イクッ!」
「あ、あぁぁぁぁっ!」
腹の中で緋厳のペニスが僅かに震えている。多幸の中に子種を吐き出している。多幸はその幸せに身体をぶるりと震わせて、自身も二本のペニスから精液を吐き出した。気持ちがいい。でもまだ足りない。腹の奥が、孕みたくて孕みたくて、酷く疼いている。
多幸は緋厳の唇に噛みつくように強く吸いつきながら、また激しく腰を振り始めた。
可愛い蛸達も大活躍してくれた結果、緋厳は何回も多幸の中で射精して、殆ど気絶するように寝落ちた。腹の中が緋厳の精液でたぷたぷで、多幸としては大満足である。
豪快な鼾をかく緋厳に寄り添って、多幸は穏やかな笑みを浮かべて、静かに目を閉じた。
ーーーーーー
緋厳が多幸と共に暮らし始めて、すぐに多幸が孕み、数カ月後に無事に卵を一つ産み落とした。緋厳は仕事を休み、産後で弱っている多幸の世話を朝から晩までせっせとしている。卵からやや子が出てくるのは、結構な年数がかかるらしい。おそらく、多幸と同じアマビエが生まれてくるのではないだろうか。根拠はない。単なる勘である。
居酒屋の方は、多幸の身体が完全に回復するまでは、鵺ら従業員達に任せている。毎日のように誰かしら訪ねてきて、多幸に仕事の報告をしつつ、美味しい料理を運んでくる。
緋厳は、卵を抱えて愛おしそうに撫でている多幸を、胡座をかいた膝に横抱きに乗せ、卵を撫でる多幸のほっそりとした手に、己のゴツい手を重ねた。
二人の愛の結晶は、いつ顔を見せてくれるのだろうか。とても楽しみだし、できたら早く抱きしめたいのだが、少しくらいはゆっくりしてもらっていても構わない。多幸と二人で新たな家族の誕生を待つのも楽しい。
静かだった居酒屋の地下が賑やかになり、緋厳や従業員達、訪れる客達が、居酒屋の店主の穏やかな笑みと看板娘のおっとりとした笑顔を毎日眺めるようになるまで、あともう少し。
ー閉店ー
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【リクエスト】冴えないおじさんリーマンの雌オチ。
楽しいリクエストをありがとうございました!
※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。
俺の彼ピッピは目が死んでる
丸井まー(旧:まー)
BL
真夏の一人短編祭り第四弾!
スケベのリハビリです!
人相の悪さには自信がある騎士のディエゴは、ある日突然、男前だが目が死んでる魔法使いエラディオから告白されて、流されるように恋人になった。
何を考えているのかよく分からないマイペースなエラディオと流されがちなディエゴのちょっとしたお話。
マイペースな目が死んでる男前おっさん魔法使いと人相悪いガチムチおっさん騎士のリバ!
※リバです!
※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。
壁乳
リリーブルー
BL
ご来店ありがとうございます。ここは、壁越しに、触れ合える店。
最初は乳首から。指名を繰り返すと、徐々に、エリアが拡大していきます。
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。
じれじれラブコメディー。
4年ぶりに続きを書きました!更新していくのでよろしくお願いします。
(挿絵byリリーブルー)
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
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