キツい蒸留酒と甘い果実酒で乾杯

丸井まー(旧:まー)

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10:あーそびーましょー

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「新年おめでとー」

「……おめでとう?」


セオドールが玄関を開けると、ウーゴが嬉しそうに笑った。頭の中に疑問符を浮かべながら、セオドールはとりあえずウーゴを家の中に招き入れた。食堂兼居間に通す。
ウーゴが紙袋を差し出してきたので、セオドールは咄嗟に受け取ってしまった。


「伯父がさ、挽き肉のパイを作ってくれたんだ。すっごい美味しいから一緒に食べようかと思って。でも近くまで来てから挽き肉のパイが苦手だったらダメだよなぁ、って思ってさ。慌てて連絡したんだ」

「……そ」


そもそも挽き肉のパイが好きかと連絡するよりも、セオドールの家に来ることを連絡しろよ。なんだか呆れてしまうが、ニコニコしているウーゴを見ていると気が抜けてしまった。紙袋から中身を取り出すと、まだほんのり温かい。木の皿の上にのっているパイは大きく、いい香りがしている。


「……ありがと。皿とか持ってくるよ」

「うん。お願い」

「あ、コートはそこにハンガーあるから。酒……は、ごめん甘いのはないんだ。お茶でいい?」

「あ、大丈夫。祖父が作った木苺の酒も持ってきた」

「そ。ならグラス持ってくるよ」

「ありがと」


セオドールは台所へ行き、包丁と2人分の皿とフォーク、グラスと自分用の蒸留酒を用意した。お盆は今寝室にある。何か代用できるものはないかと戸棚を探って、大きめの木製の洒落た大皿を見つけたので、その上に用意したものをのせていく。かなーり前、3番目の恋人が料理好きで、セオドールもよく一緒に料理をしていた。デートの時に食器類を一緒に買いに行ったりもしていた。多分その時のものだろう。別れた時に捨てたと思っていたが、戸棚の奥に入ったままだった。
用意したものを居間のテーブルに置いて、早速包丁でパイを切り分けた。皿にのせてフォークを添え、グラスに各々の好みの酒を注ぐ。
コートを脱いで椅子に座っているウーゴに甘い香りのするグラスと皿を差し出して、セオドールも椅子に座った。


「乾杯する?」

「うん」

「じゃあ新しい年に乾杯」

「乾杯」


カチンと軽くグラスをぶつけて、セオドールは蒸留酒を口に含んだ。キツいのど越しが刺激的で堪らない。香りもいい。
なんというか、ウーゴが自宅にいるという状況がまるで現実味がない。突然のことで脳ミソが機能放棄している。
セオドールは皿の上のパイにフォークを差し、1口食べてみた。思わず顔が綻ぶ程美味しい。ウーゴも大きくパイにかぶりついている。


「すごい美味しい。もしかして胡桃入ってる?」

「うん。俺の好物なんだ。口に合ってよかった」

「これ、ワインでも美味しいだろうね。買っとけばよかったよ」

「あー……持ってくればよかったね」

「ははっ。ん。蒸留酒にも合うからいいよ。本当美味しい。レシピ知りたいくらい」

「伯父に聞いとくよ」

「ウーゴは作れないの?」

「あー……俺、料理苦手なんだよね。できなくはないんだけど、下手くそでさ」

「そうなんだ」

「セオは?」

「普通かな?普段は自炊してるし」

「へぇー」


挽き肉のパイは本当に素直に美味しい。辛口の蒸留酒にもよく合う。セオドールはなんだか普通にウーゴと話して、一緒にパイと酒を楽しんだ。

パイが2人の胃袋にキレイに消えたので、セオドールは酒のツマミに手製のレバーペーストと昨日焼いたパンを薄くスライスしたものを出した。パンは硬めのハード系なので、レバーペーストによく合う。
ウーゴが嬉しそうな顔でレバーペーストをのせたパンにかぶりついた。


「おーいしーい」

「口に合ってよかった」

「もしかしてセオが作ったの?」

「そ。暇だったからさ」

「すごいね」

「そうでもないよ」

「あ、突然来ちゃったけどさ。大丈夫だった?何か予定とかあったり」

「特にないよ。暇だから1人で遊ぼうかと思ってたくらいだし」

「1人で遊ぶ?カードとか?」

「ふはっ。違う違う」


不思議そうなウーゴがなんだか可笑しくて、クックッとセオドールは小さく笑った。にやーっと笑って指で卑猥なジェスチャーをした。


「オナニーだよ」

「ぶっ!」


ウーゴが小さく酒を吹き出し、噎せた。ゴホゴホと咳をするウーゴの顔は真っ赤になっている。その様子が可笑しくて、セオドールはニヤニヤ笑った。ウーゴは肌が白いから、酒精もあるのだろうが、首筋まで赤くなっているのが見えて、なんだかムラッとした。酒で濡れているウーゴの唇に自然と視線を向けてしまう。今すぐウーゴの唇を舐めたい。というか、いっそのことセックスをしたい。


「そ、そ、そうなんだ……」

「ウーゴ」

「あ、はい?」

「なんなら遊ぶ?」

「……何をして?」

「セックス」


セオドールは自分の欲求に素直に従うことにした。






ーーーーーー
真っ赤になって固まった後、ぎこちない動きで小さく頷いたウーゴの手を引いて寝室に移動した。寝室は空調の温度を上げていたから、居間よりもかなり暖かい。ベッドの上に置きっぱなしの卑猥物を見たウーゴが驚いたのか、きゅっと繋いだ手に力を入れた。


「あー……ホントに、その、するつもりだったんだ……」


ウーゴの顔を見上げれば、何故かウーゴの方が恥ずかしそうに目を泳がせている。セオドールはにまーっと笑った。


「そ。あとちょっと連絡が遅かったら真っ最中だったね」

「そ、そう……」

「使ってみる?」

「俺がっ!?ていうか俺にっ!?」

「違うよ。僕に」

「しょっ!初心者には荷が重いのでまた今度でっ!」

「ふはっ。まだ初心者なの?」

「うっ……だって……その、あの時しかしたことない……」

「へぇ……」


ウーゴが気まずそうな恥ずかしそうな顔で少し俯いた。微妙に可愛い。あと未だにウーゴがセオドールしか知らないということに、何故だか満足感というか優越感?みたいなものを覚える。あの少しぎこちなくて一生懸命で可愛い姿はセオドールしか知らない。セオドールはニヤニヤしながら、片手はウーゴと手を繋いだまま、ピタッとウーゴに抱きついた。少し背伸びをしてウーゴの頬にキスをする。


「じゃあ玩具はまた今度」

「う、うん」

「使わないなら片付けるね。邪魔だし」

「あ、うん」


セオドールは今度はウーゴの反対側の頬にキスをしてから、身体を離して、ベッドの下に置いていた紙袋にローション以外のものを無造作に放り込んで、再びベッドの下に戻した。
自分のベッドに腰かけて、所在なさげな雰囲気のウーゴを手招きすると、ウーゴは素直に寄ってきて、セオドールのすぐ隣に座った。顔はずっと真っ赤なままだ。カーテンを全開にしているので、部屋の中はすごく明るい。緊張しているのか、期待しているのか、ごくりとウーゴが唾を飲んだ。ウーゴの喉仏の動きがなんとも情欲を誘う。さて、どう可愛がってやろうか。

セオドールは身体を少し捻って隣に座るウーゴの両頬を手で包み込んだ。チュッと軽く音を立ててウーゴの唇にキスをする。


「ウーゴ」

「は、はい……」

「楽しもうか」

「……うん」


セオドールはにんまり笑った。


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