キツい蒸留酒と甘い果実酒で乾杯

丸井まー(旧:まー)

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20:お見合い本番

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ウーゴは目覚まし時計の喧しい音で目が覚めた。腕の中には裸のセオがいる。念のため寝る前に目覚まし時計をセットしておいてよかった。うっかり寝過ごしてしまったら、とんでもないことになっていただろう。それにしても昨夜も本当に最高だった。セオはいつでも最高にエロくて可愛い。ウーゴの腕の中で目を開けて欠伸をするセオも抜群に可愛い。ウーゴは目覚めたセオの唇にちゅっと吸いついた。


「おはよ、セオ」

「おはよ。急いで朝ご飯作るよ。あ、その前にお風呂だね」

「うん」


セオにもう1度キスをして、ウーゴは起き上がった。セオと一緒にお風呂に入って、朝食を手際よく作るセオのお手伝いをして、一緒に食べて片付けをした。身支度を整えてから、セオと共に家を出る。
アイーダのお見合い相手はセオの職場の先輩らしく、すぐ近くの官舎に住んでいるそうだ。セオの案内でその官舎に行くと、官舎の建物のすぐ近くに土の民の男が立っていた。短く刈り込んだ髪と清潔感のある服装で、顔立ちは派手ではないが中々に男前で整っている。セオが男に声をかけながら歩み寄ったので、ウーゴもついていく。


「ロムルス先輩。おはようございます」

「おはよう、セオドール。そちらは?」

「今日のお見合い相手のお兄さんです」

「ウーゴ・スルトです。はじめまして」

「はじめまして。ロムルス・シュタインです」


爽やかに笑うロムルスと軽く握手を交わして、ウーゴ達は街の入り口へと向けて歩きだした。流石に3人もシルヴィには乗れないので、中央の街の入り口から魔術研究所近くまで運んでくれる馬車に乗る予定である。シルヴィは帰りに連れて帰る。馬車は1日3便、朝と昼と夕方しか出ていないので、見合いはそこそこ早い時間に始めることになった。昼食まで一緒にとる予定である。アイーダ達が話をしている間にセオドールが昼食を作ってくれることになっている。
セオを真ん中に3人並んで歩きながら話をする。


「ウーゴさんも魔術師なんですか?」

「はい。魔術研究所で働いています。アイーダ、妹とは部署は違いますけど。父も魔術師で、魔術研究所で働いているんです。あ、うちの親は男夫婦で、もう1人の父は軍人なんです。神殿警備隊に所属してて、今日は仕事でいないんです」

「あぁ。神殿警備隊ならまだ忙しい時期ですよね。しかし凄いですね。神殿警備隊って確か領軍の精鋭部隊ですよね」

「あー……そうらしいですね。あんまり仕事の話は聞かないんですけど、たまに特別訓練で何日も帰ってこない時があります」

「そうなんですか。妹さんはアイーダさん?というお名前ですか?」

「はい。セオから聞いてるかもしれないですけど、今20歳です」

「失礼かもしれませんが、ご結婚をされたことは?美しくて人気のある女性は中学校を卒業するとすぐに結婚される方が多いでしょう?」

「あ、いや。アイーダは恋人すらできたことがないんですよ。あー……その、魔術師としての修行が楽しかったのと……割と重度な魔導製品オタクなので……就職してからも仕事が楽しいらしく……」

「へぇ。お仕事熱心でいらっしゃるんですね」

「そ、そうですね!そんな感じです!」


どうしよう。めちゃくちゃズボラな事も言っておいた方がいいのだろうか。あとから知られて幻滅されて破談になるより、先に言っておいた方がいいような気もする。ぐるぐる悩んでいると、セオがロムルスに話しかけた。


「家事はちょっと苦手みたいですけど、家庭用の魔導製品の修理や改良はすごいらしいですよ。仕事も魔導製品の改良を専門にされているそうですし。気さくで話しやすい可愛らしい方ですよ」

「へぇ。僕は魔導製品の扱いはあんまり得意じゃないからなぁ。説明書を読んでも慣れるまでに毎回時間がかかってしまって。新しい便利そうな魔導製品を見つけても、いつも躊躇して買わずにいるんだよね。普段使うようなものも、毎回壊れてから渋々買い換えるんだ」

「あぁ。それならアイーダさんに使い方を教えてもらえば楽なのでは?この間、ウーゴの家にある見たことがない魔導製品の使い方を教えてもらいましたけど、解説も含めてかなり分かりやすかったですよ」

「へぇ」


ありがとう!セオ!
ロムルスの中で少しアイーダの株が上がってくれたような気がする。家事が苦手なこともさらっと伝えてくれたし、掴みはまずまずな気がする。
話していると馬車乗り場に着いたので、馬車に乗って魔術研究所の近くまで行く。魔術研究所や魔術師街に来るのは初めてなロムルスは、珍しそうに周りを見回していた。


「もっと変なものがあちこちにあるのかと思っていたが、なんだか意外と普通だな」

「分かります。なんか拍子抜けするくらい普通ですよね」

「えーと……多分、魔術研究所の中はご期待に添えるような面白いものがありますよ?」

「へぇ。1度見学してみたいですね」


ロムルスが楽しそうに笑った。
魔術研究所近くの馬車乗り場で馬車を降りて、歩いて家へと向かう。
家に着いて玄関を開けて声をかけると、すぐにフリオと着飾ったアイーダが出てきた。アイーダは今日はセオが選んだ黄緑色の華やかな刺繍が施してあるワンピースを着て、髪もキレイに結い上げてある。普段はスッピンだが、珍しく化粧もしていた。


「いらっしゃい。はじめまして。父親のフリオ・スルトだ」

「はじめまして。ロムルス・シュタインです」

「はじめまして!アイーダ・スルトです!」


緊張しているのか、アイーダは頬を赤らめて、いつもより少し高い声でロムルスに自己紹介をした。居間に移動して、皆でソファーに座った。すぐにフリオが紅茶を淹れてきた。ロムルスが手土産にと、木苺とチーズの2層タルトを渡してくれた。手作りらしい。
早速切り分けて、タルトを皆で食べる。甘さ控えめなチーズ生地の上に甘酸っぱい粒が大きな木苺のゼリーが乗っていて、めちゃくちゃ美味しい。タルト生地もサクサクでバターの香りが絶妙である。
アイーダはめちゃくちゃ幸せそうな顔で食べている。ウーゴも美味しくて思わず頬を緩めた。


「すっごい美味しい!ロムルスさん、お菓子もお上手なんですね」

「お口に合ってよかったです。こういうちょっと大きなものは滅多に作れませんから、今日は作れることができて楽しかったです。僕は甘いものが割と好きなんですけど、量は食べないものですから」

「そうなんですか。私これなら3ホールは軽く美味しく食べられます!本当にめちゃくちゃ美味しいです」

「ははっ。ありがとうございます」


ウーゴもこれなら3ホールは余裕で食べられる。それくらい美味しい。ロムルスは、目を輝かせて美味しそうにタルトを頬張るアイーダを楽しそうに見ていた。
紅茶を飲み終えると、ウーゴはセオとフリオと一緒に2人を居間に残して台所へと移動した。『あとはお若いお2人で……』というやつである。
台所に入るなり、フリオが見覚えのない箱形の魔導製品を起動させた。突然、離れた居間にいる筈のアイーダとロムルスの声が魔導製品から聞こえてくる。


「父上、なにこれ」

「魔導集音機だ。今日の為に大急ぎで作った。居間にこっそり置いておいた集音装置で声を拾って、こっちのスピーカーで聞くことができる」

「マジかぁ……」


大真面目な顔をしてスピーカーの前を陣取っているフリオを思わず呆れた顔で見てしまった。チラッとセオを見ると、今にも吹き出しそうな顔をしている。何やらツボったらしい。
セオが面白そうな顔のまま昼食の準備を始めたので、ウーゴもお手伝いをする為に自分のエプロンを着けて、手を洗った。
フリオはスピーカーの前で床に正座している。なんだこれ。

スピーカーからアイーダとロムルスの話し声が聞こえてくる。


『突っ込んだ事をお聞きしますが、アイーダさんは複数伴侶を持たれるご予定ですか?』

『いえ。そういうのは面倒くさいので1人がいいです。なんだか複数夫がいるって気を使いそうですし。それに私の両親はお互いだけなんです。未だに万年熱々新婚さんな感じで、それを見て育ったので、1人の人とずっと一緒にいたいと思っています』

『そうですか。実は僕は独占欲が強い方なんです』

『はぁ……』

『昔、1度だけ結婚したことがあるのですが、僕と結婚して、たったの半年で元妻が別の夫と結婚しましてね。複婚は一般的ですし、女性にとっては複数夫を持つことはステータスみたいなものでしょう?それは分かっているのですが、どうしても妻に他に男がいることが我慢できなくなりまして。結局1年を待たずに離婚しました。あ、子供はいないですよ』

『あ、はい』

『僕は僕だけを見てくれる女性と結婚したいんです。複数夫が欲しいのなら、今回はご縁がなかったということにして欲しくてですね』

『いえ!私も1人だけがいいので!いやもう本当に!』

『そうですか。それならよかったです』

『あー……私の方からも聞いときたいんですけど、私は魔導製品を弄るのが趣味であり、仕事であり、生き甲斐なんです。だから仕事は絶対に辞めたくないんですよ。そのー……そういうのはどう思いますか?』

『いいと思いますよ。辞めなくて。むしろ辞める必要なんてないでしょう?それに、魔導製品の改良なんて誰にでもできることではないじゃないですか。うちの領地の魔術研究所はかなりの実力主義だと聞いています。貴重な才能溢れる人材を、たかが結婚ごときで辞めさせて失うのは単純に我が領地の損失です』

『やー……そんな大袈裟な感じじゃないんですけどね。私はただ好きなことをしてるだけなんで』

『いえいえ。魔術研究所が開発・改良している魔導製品の数々でどれだけ我が領地が潤っていることか。それに大勢の人々の日々の生活もどれだけ魔導製品に助けられていることか。貴女はそれらを生み出しているんです。もっと誇ってもいいと思いますよ』

『そ、そうですか?』

『はい』

『あ、あとですね』

『はい』

『あのですね……』

『はい』

『わっ、私めちゃくちゃ家事が苦手なんですっ!』

『あ、はい。聞いています』

『えっ、嘘』

『マジです』

『うっ……だから、その、家事が得意な人と結婚したいなって思ってて……できれば料理上手で優しくて甘やかし上手で癒し系で隙あらばイチャイチャしてくれるような感じの人と結婚したいんですっ!』

『あははっ!正直ですねぇ』

『あっ!別に家政婦さん的なのが欲しいわけじゃないんです!家事だって私も当然やりますし!や、ちょっと、いや、割と?いやまぁ、あの、その、結構ヘタクソですけどっ!』

『はははっ……僕は魔導製品の扱いが苦手なんです』

『え?あ、はぁ……』

『説明書を読んでも使いこなせるまでに時間がかかってしまって。簡単らしい魔石交換すらできませんし』

『あー……たまにいるらしいですね、そういう人』

『えぇ。なので、僕が苦手な魔導製品関係を引き受けてくれる人と僕は結婚したいですね。あと絶対に浮気しないで別の夫を持たないような人がいいです』

『えーと……』

『浮気とかします?』

『しませんよっ!?』

『そうですか。僕は甘やかし上手かも癒し系かも自分では分かりませんが、家事は得意ですよ。特に料理は好きです』

『あ、はい』

『イチャイチャは……まぁ、多分するんじゃないですか?結婚したら』

『あ、はい』

『アイーダさんさえよければ、とりあえずお付き合いしてみますか?結婚を前提に』

『いいんですかっ!?『なーんちゃって!嘘ぴょん☆』はなしですよ!!』

『あははっ!言いませんよ、そんなこと』

『お、お、お、お願いしますっ!!』

『はい。こちらこそ、よろしくお願いします』


どうやら上手くいったようだ。気づけばフリオの隣で正座をしてアイーダとロムルスの会話を聞いていたウーゴはほっと息を吐いた。
ポンと両肩に手を置かれて、顔を上げるとセオが優しく微笑んでウーゴを見下ろしていた。


「よかったね。うまくいって」

「……うん」


ウーゴは肩に触れるセオの手を握って、ニッコリ笑った。


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