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男やもめ達は枯れたくない!
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ベニグノは、釣りの道具を片手に、鼻歌を歌いながら、いつもの川辺りに向かった。ベニグノの唯一の趣味は、釣りだ。子供の頃から、暇さえあれば釣りをしている。
いつもの川辺りに到着すれば、先客がいた。釣り友達のヘロニモである。
ヘロニモは、派手な赤毛をしているが、年々前髪が後退しつつあり、今では前髪と頭頂部の毛が無い。若い頃は、男前だと街の若い女にキャーキャー言われていた容姿だったが、四十も半ばになった今では、普通のおっさんになった。
ベニグノも他人のことは言えない。薄い茶色の髪はふさふさだが、中年太りで、年々下っ腹が出てきている。顔立ちはいたって普通である。
ベニグノは、18で結婚して、25の時に嫁に先立たれた。娘が1人いて、嫁に先立たれてからは、大工の仕事をしながら娘を育てるのに必死だった。その娘も24歳になり、6年前に結婚をして、今では二児の母である。娘の嫁ぎ先は三軒向こうの家なので、頻繁に孫達を連れて、顔を見せてくれる。
娘を育てている間は、余裕が無くて釣りなんかできなかったが、娘が嫁にいって肩の荷が下りた今は、暇さえあれば、釣りをするようになった。
ベニグノは、『おぉい』とヘロニモに声をかけた。振り返ったヘロニモが、日焼けした顔で、ニッと笑った。
「よぉ。ベニグノ」
「よぉ。釣れてるか?」
「今日はまだ。一匹もかかりゃしねぇ」
「おやま。そんな日もあるわな」
「まぁな」
「はぁー、どっこらしょっと。晩飯が釣れるといいわ」
「二匹以上釣れたら、飯作ってくれよ。酒持ってくから」
「おー。いいぞー」
「お孫ちゃん達は最近どうよ」
「元気元気。下の子も、つい数日前に掴まり立ちしてよ。上の子も毎日元気いっぱいに走り回ってるわ」
「そいつぁ、なによりだな。子供は元気が一番だ」
「おぅよ。そっちは最近どうよ。面倒くせぇ教え子がいるって言ってただろ」
「あー。相変わらずだわ。成績は無駄にいいんだが、なにせ愉快犯でよ。教えた魔術を応用して、片っ端から悪戯に使ってやがる」
「ある意味、将来有望だな」
「ある意味な。無駄に応用力があるから質が悪い。悪戯に使わなければ問題ねぇが、悪戯に全力出してるからなぁ」
「まぁ、まだ14だろ? 人生で一番馬鹿な時期だろ」
「まぁな。思春期って本当に面倒くせぇわー。生徒間での色恋沙汰でごちゃごちゃ揉めたりするのが、こっちにまで火種が飛んでくるし」
「あーあー。学校の先生も大変だな」
「まぁな。釣りやってる時だけだぜ。心穏やかにいられるのは」
「まぁ、心穏やかにいられる時間があるだけ、ありがてぇってことにしておこうぜ」
「そうだな」
ヘロニモは、街の中等学校で教鞭をとっている。主に魔術を教えている。ヘロニモも嫁に先立たれている。もう10年前の話だ。ヘロニモには、結局、子供はできなかった。
ヘロニモとは、子供の頃からの付き合いである。釣り友達になって、もう30年以上になる。なんとなく気が合って、いつもの川辺りで一緒になると、喋りながら釣りを楽しんでいる。お互い、一人暮らしになると、たまに、どちらかの家で食事をしたり、酒を飲んだりするようになった。2人とも、それなりに料理は出来る。普段は1人で食事をしているから、ヘロニモと一緒に食事をすると、家族と共に暮らしていた頃を思い出して、胸の奥がじんわりと温かくなる。娘は義実家で暮らしており、頻繁に顔を見せてはくれるが、食事は滅多に一緒にしない。ヘロニモと一緒に食事をすることの方が多いくらいである。
その日の成果は、2人合わせて五匹だった。それなりにデカい魚が釣れたので、夕食が豪勢になりそうだ。
ベニグノは、ヘロニモと夕食に何を作るか喋りながら、夕焼けに染まる道を歩いて、自宅へと帰った。
ベニグノが手早く夕食を作っていると、一度自分の家に帰ったヘロニモがやって来た。魚によく合うワインを持ってきてくれた。今夜の夕食は、魚の香草ワイン蒸しに、小さめの魚を揚げて野菜と一緒に甘酢に漬けたものだ。それに買い置きのパンと、デザートには今が旬の杏がある。
居間のテーブルに出来上がった料理を並べると、ヘロニモが歓声を上げて、ぱぁっと笑った。
「美味そうだな」
「それなりに自信作だぜ」
「最高。冷めないうちに食おう」
「おぅ」
ベニグノは、ヘロニモと向かい合って椅子に座ると、食前の祈りを捧げてから、ナイフとフォークを手に取った。香草ワイン蒸しも、甘酢漬けも、上手く出来ている。ヘロニモが持参したワインとも、よく合っていて、素直に美味しい。我ながら上出来である。
美味しそうに食べながら、ヘロニモが口を開いた。
「今日は蒸留酒も持ってきた。お前も明日は休みだろ? 一緒に酒盛りしようぜ。酒の肴に、美味い干し肉とチーズも持ってきた」
「最高じゃねぇか。俺もとっておきのやつ出すかな」
「おー。出してくれよ。飲みてぇ」
「いいぞー。今夜はとことん飲むか」
「そうこなくっちゃ。朝まで飲むぞー」
「おー」
ベニグノはヘロニモと顔を見合わせて、悪戯っ子のように、ニッと笑った。
キレイに夕食を食べ終えると、2人で後片付けをして、次は酒盛りの準備である。ヘロニモが持ってきた干し肉とチーズを食べやすい大きさに切って皿に盛り、ベニグノは、とっておきの蒸留酒を戸棚から出した。グラス等と一緒にお盆にのせ、テーブルに運んだら、酒盛りの始まりである。
先に、ヘロニモが持ってきた蒸留酒を開けた。グラスに注いで、乾杯をしてから一口飲むと、ふわっと鼻に芳醇な香りが抜け、キツい酒精が心地よく喉を焼いた。素直に美味しい。干し肉やチーズともよく合う。
2人で他愛のない話をしながら、夜が更けるまで酒を飲み続けた。
日付が変わる頃には、ベニグノはかなり酔っ払っていた。楽しい酒は、ついつい飲むペースが速くなってしまう。自分でも酔ってるなーと思う程だが、ヘロニモと一緒に酒を飲むのが楽しいので、まだまだ飲む気満々である。
お互いが出してきた上物の蒸留酒は飲み終わったので、今は安物の蒸留酒を飲んでいる。安物の蒸留酒でも、楽しければ不思議と美味く感じる。ベニグノは、自分の空になったグラスに酒を注ぎ、ついでにヘロニモのグラスにも酒を注いだ。
酒精で顔が真っ赤になっているヘロニモが、へらへら笑いながら、口を開けた。
「最近、どうよ」
「どれがだ?」
「シモの方」
「嫁さん死んでから、ずっと右手が恋人だっつーの」
「はははっ! 一緒一緒。最近はよー、面倒でシコりもしなくなってきたぜ」
「おいおい。流石に枯れるには早いだろ」
「だよなー。でも、エロ本読んでもいまいちなぁ」
「娼館にでも行けばいいじゃねぇか」
「いやぁ、今更若い女抱くのもなぁ」
「まぁなぁ。娘より年下の女とか抱けねぇわ。俺」
「俺もキツいかなぁ。特に10代後半だと、教え子に歳が近くて、抵抗があるわ」
「セックスかぁ……何十年してねぇんだろ。俺」
「俺ら、今年で43だろ? 嫁さんが亡くなって、もう20年か?」
「あー。そうだわ。20年セックスしてねぇわ」
「お互い、このまま枯れるのかねぇ」
「それはそれで、ちょっと嫌だわー」
ベニグノは、酔いで濁った頭で考えた。今更、若い女は抱けない。なんとなく、抵抗がある。かといって、このまま枯れるには少々早過ぎる。セックスがしたい。随分と久方ぶりに、ベニグノはそう思った。
「セックスしてぇな」
「俺もしてぇかも」
「なぁ。ヘロニモ」
「あー?」
「いっそセックスするか」
「誰と」
「俺とお前」
「マジか」
「女が抱けねぇなら、男とセックスしたらいいんじゃね?」
「マジか」
「俺、嫁さんにケツの穴舐められたことはある。じわっと気持ちよかったから、多分、ケツの才能があるんじゃねぇかなぁ」
「マジか」
「ヘロニモさー。俺でちんこ勃つか?」
「勃たないと思います」
「なんで敬語?」
「勃たないと思います!」
「何でニ回言った」
「ベニグノー。お前相手にちんこ勃つ訳ねぇじゃん」
「まぁ、それもそうか。俺もヘロニモ相手じゃ勃起しねぇわ。禿げたおっさんは流石にちょっと……」
「おぉん? 誰が禿げだコラァ。だらしねぇ腹してるおっさん相手に勃つ訳ねぇだろうが」
「誰がデブだ。この野郎。おん? いっそ賭けるか? 俺にお前が勃起したら俺の勝ち。勃起しなかったらお前の勝ち」
「勝った」
「ふんっ。こちとら、分が悪い賭けは嫌いじゃねぇんだよ。お前のちんこをおっ勃っちんさせてやらぁ!」
「ぶっは! おっ勃っちん!」
「おい。変なところでツボるな」
ベニグノは、ゲラゲラ笑い転げているヘロニモを、なんとか勃起させるべく、酔って濁った頭をフル回転させた。
「嫁さんのパンツを穿く……いや、ちんこと金玉がぽろりするだけだな」
「面白過ぎてヤバいな」
「なんだっけ……あれだ。あれ」
「どれだ」
「なんか女が服を脱いでいくショーがあるじゃねぇか」
「ストリップショーのことか?」
「それそれ。それやるわ」
「おっさんのストリップショー。笑っちまう自信しかねぇな」
「ちゃらららーん」
「お前が歌うのかよ!」
「音楽ねぇと盛り上がらんだろうが!」
「ヤバい。笑い過ぎて腹筋割れそう」
「ちゃらっ、ちゃらららーん」
「だはははははっ!」
ベニグノは椅子の上に立ち、なんかそれっぽいメロディーを口にしながら、ゆっくりと服を脱いでいった。
シャツの下の肌着を脱ぎ捨てると、弛んだ胸肉とぼよんっと出ている下っ腹が露わになる。はー、どっこらしょっと、ズボンを脱ぎ捨て、靴下も脱ぐ。
「おらー! 色っぺぇだろうがー!」
「縞柄トランクスじゃねぇか! おっさんパンツ! おっさんパンツ! 色気が皆無!」
「ほーら。ぽよんぽよんのおっぱいですよー」
「だるんだるんの間違いだろ。つーか、腹ヤバくないか?」
「え? マジで?」
「マジで。ちっとは痩せろよ」
「細けぇこたぁ気にするな。いざ! 御開帳!!」
「ちーんこがぽろりー」
「歌うなよ。無駄に美声だな。おい」
パンツも脱ぎ捨てたベニグノは、ヘロニモと一緒にゲラゲラ笑った。
ひとしきり馬鹿笑いをした後。ヘロニモが酒を飲みながら、両腕を上げたなんか色っぽい感じのポーズをとっているベニグノを、ビシッと指差した。
「服を着ろ」
「うぃっす」
ベニグノは椅子から下りて、服を着た。普通に椅子に座って、酒が入ったグラスを手に取る。
「ベニグノ。お前相手じゃ面白過ぎて勃たねぇわ」
「だよな。俺も思った。まぁ、俺の我満豊満な肉体美は、お前には理解できまいて」
「ぶっは! やめろ。笑かすな」
ベニグノは、ヘロニモと一緒にゲラゲラ笑い転げながら、朝方近くまで酒を飲み続けた。
ーーーーーー
翌週の休日。ベニグノが、朝からいつもの川辺りで釣りをしていると、ヘロニモがやって来た。ヘロニモがゆるく笑って、よっと片手を上げた。ベニグノも、よっと片手を軽く上げた。
「どうだ? 釣れてるか?」
「今日はいい感じだぜ。もう二匹釣った」
「おー。いいじゃねぇか。今日は俺ん家で酒盛りしようぜ」
「いいぜ。あ、娘がよー。孫とクッキー作ったって持ってきたんだわ。食うか?」
「食う」
「ほらよ」
「ありがたく。……おっ。美味いな。『めちゃめちゃ美味かったです』って伝えておいてくれよ」
「おー。喜ぶわ」
ベニグノは、ヘロニモとクッキーを摘みつつ、他愛のないお喋りをしながら、夕方まで釣りを楽しんだ。
一度、自宅に帰って、ヘロニモの家に持っていく酒を鞄に詰めると、ベニグノは重い鞄を持って家を出た。今日は2人で八匹も釣れた。ヘロニモに魚を全部持たせてある。ヘロニモが、ベニグノの娘の家にお裾分けに行ってくれている。ベニグノが娘の嫁ぎ先の家を覗くと、まだヘロニモがいて、娘と立ち話をしていた。娘がベニグノに気づき、亡くなった嫁によく似た穏やかな笑みを浮かべた。
「お父さん、魚ありがとう。ヘロニモおじさんから貰ったわ。今夜の晩ご飯が豪華になるわ!」
「おぅ。いっぱい食ってくれよ」
「お父さん達は、また酒盛り? 飲むのはいいけど、程々にしておいてよね」
「おーう」
今は夕方で、娘も忙しい時間帯だ。ベニグノは娘に別れを告げ、ヘロニモと共に、ヘロニモの家に向かった。
ヘロニモの家は、街中にある一軒家だ。年季が入っているが、いつ来ても、ちゃんと庭の手入れも家の中の掃除もしてある。ベニグノは、一人暮らしになってからは、家の掃除をサボったりしているので、素直にヘロニモは偉いなと思う。
ヘロニモと一緒に台所に立ち、お喋りをしながら、手早く夕食兼酒の肴を作っていく。今日は、魚の塩焼きに野菜たっぷりのあんをかけたものと、香草と野菜を入れた汁物にした。パンは、ヘロニモの家への途中にあるパン屋で胡桃のパンを買い、追加の酒の肴で、干し肉やチーズも買った。
居間のテーブルに料理と酒とグラスを並べたら、楽しい時間の始まりである。
ヘロニモとは、頻繁に会って、釣りをしながらお喋りしたり、酒を飲みながらお喋りをしているのに、意外と話題が尽きないものだ。お互いの仕事の話や、日々のちょっとした愚痴、亡くなった嫁の思い出話、孫達の話や評判のいい病院の話等、次から次へと話題が出てくる。ふと、沈黙が下りる時があるが、特に気まずさは感じない。唯、穏やかな空気が流れるだけである。
夜もすっかり更けた頃。
酒精で顔を真っ赤に染めたヘロニモが、グラスの酒を舐めるように飲みながら、へらっと笑った。
「ベニグノ。セックスしてみねぇか?」
「あー? こないだは、お前、勃たなかったじゃねぇか」
「あんな面白いことされて勃起するかよ」
「色っぽかっただろうがー」
「だらしねぇ身体のおっさんのストリップなんぞ面白いだけだろうがー」
「まぁ、否定はせん」
「しねぇのかよ。いやさ、あれからちょこっと男同士のセックスの仕方を調べてみたのよ」
「マジか」
「今更、女は抱けねぇし、かといって枯れるのも嫌だからよ。まぁ、ベニグノならいっかなって思って」
「ふーん。どっちのケツに突っ込むんだ?」
「俺、自分でケツ弄ってみたけど、てんで駄目だったわ。気持ちわりぃだけ。つーことで、ケツの才能がありそうなお前に突っ込もうと思う」
「マジか。痔になったらどうしよう」
「そん時は責任持って痔の薬を塗ってやるよ」
「マジかー」
「マジだー」
「セックス……いやまぁ、確かにしてぇし、多分、ケツの才能はある気はするけどよ」
「まぁ、やってみりゃ、なんとかなんだろ」
「んー。じゃあ、やるか。セックス」
「おぅ。やるぞ。セックス」
ベニグノは、特に深く考えずに、ヘロニモとセックスをすることにした。
とりあえず残っていた酒を全て2人で飲み切ると、酔いで軽くふらつく足取りで、二階にあるヘロニモの寝室に移動した。酔ってるなーと思う程度には、酔っている。
ヘロニモが無造作に服を脱ぎ始めたので、ベニグノは特に意味もなく、なんかそれっぽいメロディーを口ずさんだ。
「ちゃら、ちゃらららーん」
「歌うのやめろ。笑って萎えるだろうが」
「俺も脱ぐか。ちゃっちゃらーん」
「歌いながら脱ぐな」
ヘロニモがゲラゲラ笑いながら、全裸になった。ヘロニモの身体は、貧相に痩せていて、うっすら肋が浮いていた。ベニグノのたっぷりある脂肪を、分けてやりたいくらいである。
ベニグノも歌いながら全裸になると、二人でベッドに上がった。お互いに向き合って胡座をかいて座ると、ヘロニモが枕の下から、細長い箱とそこそこ大きな瓶を取り出した。
「なんだそりゃ」
「浄化棒とローション」
「あー。噂には聞いたことがある浄化棒。あれだ。あれ。ケツの中、キレイにしてくれるってやつ」
「そうそう。で、ケツはまんこみてぇに濡れねぇから、ローションは必須らしい」
「ふーん。じゃあ、早速、俺のプリケツを披露してやろう」
「お前のケツのどこがプリケツだ。だらしねぇ尻しやがって」
「そのだらしねぇ尻に勃起しやがったら俺の勝ちだからな。なんかすげぇ酒奢れよ」
「なんかすげぇ酒ってどんな酒だよ。普通にいつも飲んでる酒を奢ってやらぁ」
「まぁ、それでもよし」
「いいのかよ」
「ほれ。プリケツー」
「だはははっ! ケツを振るんじゃねぇよ! 笑うわ!」
ベニグノは体勢を変えて、ヘロニモに尻を向けて四つん這いになり、ふりふりと左右に尻を振った。ベニグノのプリケツにヘロニモが勃起したら、ベニグノの勝ちである。
「色っぺぇだろうがー。おらおらー」
「や・め・ろ。笑い過ぎて勃たねぇわ!」
「マジか」
「マジだ」
ベニグノは、仕方がなく尻を振るのをやめた。ベニグノが首を捻って顔だけで振り返り、背後のヘロニモを見ると、ヘロニモがゆるく笑って、細長い箱から細長い棒を取り出した。噂の浄化棒だろう。
ベニグノはサービスのつもりで、上体を伏せて、両手で自分のむきんむにんの尻肉を掴み、むにぃっと大きく尻肉を広げた。多分、周りに短い縮れたケツ毛が生えたアナルが、ヘロニモに丸見えになっている筈である。アナルに外気が直接触れる感じが、なんだかちょっぴり興奮する。亡くなった嫁にアナルを軽く舐められた事はあるというか、アナルを舐めながら手こきをされた事はあるのだが、アナルの中に何かを入れるのは、記憶にある限り、二回目だ。子供の頃に、一度だけ解熱剤の座薬を入れたことがある。
ヘロニモのかさついた温かい手が、ベニグノの尻に触れたかと思えば、アナルに硬いものが触れ、ゆっくりと硬くて細いものがアナルの中に入ってきた。多少の異物感はあるが、痛みは無い。特に不快でもない。入ってくるなー、とは思うが、それだけだ。
細くて長いものが腹の奥まで入り、頭の中でなんとなく数を数えていると、ちょうど30数えた頃に、ずるーっと浄化棒が抜け出ていった。これで、直腸内はキレイになった筈である。
ヘロニモの手が、ベニグノのむにんむにんの柔らかいデカ尻を、ふにふにと揉んだ。
「ケツでけぇな」
「色っぺぇだろ」
「いや、普通にだらしねぇわ。だるんだるんじゃねぇかー」
「わはははっ! ケツの肉を揺らすな!」
ヘロニモの手が、尻の下の方から、ぼよんぼよんとベニグノの尻肉を揺らした。ベニグノは、ヘロニモと笑いながら、ふりふりと尻を左右に振った。
「おらー。かかってこいやー」
「なんの勝負だ」
「お前が勃起したら、俺の勝ち!」
「勃起する気配がねぇんだよなー。これが」
「マジかよ」
「マジだ。とりあえず、ケツ弄ってみるか」
「優しくな。生娘のまんこを弄るよりも優しくしろよ。痔になったら、かんちょーかまして、お前も痔にしてやっからな」
「それはやめろ。よし。とりあえず指を突っ込む!」
「よっしゃー。どんとこいやー」
ベニグノは、ふりふりと振っていた尻を動かすのをやめ、ちょっぴり緊張しながら、ヘロニモが触れてくるのを待った。
周りにケツ毛が生えたアナルに、たらーっと冷たい液体が垂らされた。ローションとかいうやつだろう。ヘロニモの細い指先が、ベニグノのアナルの表面に触れ、ローションを馴染ませるように、くるくるとベニグノのアナルの表面を撫で回した。腰のあたりがぞわっとする感覚に、ベニグノは小さく笑った。ほんのり気持ちがいい。やはり、ベニグノにはアナルの才能があったようである。
ヘロニモの指が、ゆっくりとアナルの中に入ってきた。やんわりと優しく腸壁を擦られると、背筋がぞわぞわする。ベニグノは、反射的にきゅっとアナルでヘロニモの指を締めつけながら、クックッと笑った。
「やべー。じんわり気持ちいい」
「マジか。お前の中、熱いなー」
「ちんこ挿れたら昇天間違い無しだぜー」
「その前に、俺のちんこが勃てばな」
「勃たせろよ。がんばれがんばれ。応援歌でも歌うか?」
「やめろ。笑い過ぎて萎える自信しかねぇわ」
ヘロニモがクックッと楽しそうに笑いながら、ベニグノのアナルの中を、なにやら探るように指を動かしている。ヘロニモの指がある一点に触れた瞬間、ベニグノは驚いて、思わず声を上げた。そこに触れられると、脳天へと今まで感じたことがない強烈な刺激が突き抜ける。
「あぁっ!?」
「おっ。ここか? 噂の前立腺」
「ちょっ、そこっ、やべぇ! やべぇって! うぉっ! はぁっ! んーーーーっ!」
「へぇー。本当に気持ちいいんだな。前立腺。俺、自分で弄ってみたけど、いまいちだったんだよなー。ベニグノって、マジでケツの才能あるっぽいな」
「やべぇやべぇやべぇ! あーーーーっ! ちんこ! 勃った!」
「お。俺ってば、テクニシャン?」
「ちんこっ! ちんこ擦ってくれっ!」
「ちんこ擦ったら、お前、出すだろ。とりあえず、指が3本入るまでは我慢だ」
「うっそだろおい! あっあっ! ばかっ! そこばっか、いじんなぁ! あーーっ! くっそ! やべぇってば!」
「ここ弄るとめちゃくちゃ締まるな。うりゃうりゃうりゃー」
「ひぃぃぃぃん! あぁぁぁぁ!!」
「ヤバいな。ちょっと楽しくなってきた」
ヘロニモの指が、前立腺とやらを、指の腹でくるくると円を描くように撫で回したり、トントンと優しくノックしたりして、容赦なく刺激してくる。初めての目の裏がチカチカするような強烈な快感に、ベニグノは自分の尻肉から手を離し、縋りつくように強くシーツを握りしめた。
指を増やされても、ベニグノのアナルは切れること無く、柔軟にヘロニモの指を飲み込んだ。アナルの中に入っているヘロニモの指が3本になる頃には、ベニグノはふにゃふにゃに蕩けていた。くっそ気持ちがいい。ヘロニモは、本当にテクニシャンか。アナルを拡げるように指を回されるのも、腸壁を指の腹で擦られながら抜き差しされるのも、くっそ気持ちがいい。己の才能が怖くなるレベルで気持ちがいい。
野太い声であんあん喘ぎまくっていたベニグノのアナルから、ずるぅっとヘロニモの指が抜け出ていった。
顔だけでヘロニモの方を振り返れば、ヘロニモが、自分のゆるい角度で勃起したペニスに、ローションを垂らしていた。ベニグノは、へらっと笑った。
「俺の勝ちだぜ」
「悔しいが負けたわ。なんか、いやらしいなー。お前のケツ」
「はっはっは! 勝った!」
「ちんこ挿れるぞー」
「どんとこいやー!」
ベニグノは、両手でだるんだるんの尻肉を掴み、ぐにぃっと大きく尻肉を開いた。ローションで濡れたアナルが、勝手にひくひくしているのが、なんとなく分かる。
ひくつく自分のアナルに、熱くて硬いものが触れた。ゆっくりと、解して尚狭いベニグノのアナルを抉じ開けるようにして、ヘロニモのペニスが入ってくる。じわっと痛いが、それ以上に、敏感な粘膜同士が擦れ合う快感の方が強い。アナルの才能があり過ぎるだろう。自分。
ベニグノは、ゆっくりとペニスで腹の中を満たされていく感覚に、腰をくねらせて喘いだ。
「おっ、おっ、あ、あーーっ、は、ははっ、すげぇっ、やべぇっ」
「は、あ……うーわ。すげぇ締まる。やべぇな。めちゃくちゃ気持ちいい」
「俺のケツで昇天しやがれー」
「おうともよー。うりゃ」
「ひぃん!? おぅっ! あぁっ! やべぇやべぇやべぇ! あ、あ、あーーっ! くっそ! いいっ!」
弛んだベニグノの尻に、ぺちん、ぺちん、とヘロニモの下腹部が当たる音が響く。前立腺をペニスで擦られながら、アナルの奥の方へとペニスで突き上げられると、脳みそが痺れるような快感に襲われる。気持ちよくて、気持ちよくて、なんだか笑えてきた。ベニグノは、笑いながら喘ぎ、もっと、もっと、と、ヘロニモにねだった。
ベニグノのアナルの感触を味わうように、ゆっくりと動いていたヘロニモが、徐々に速く激しく腰を振り出した。パァン、パァン、と派手に肌同士がぶつかり合う音が響く。
ベニグノは、大きく喘ぎながら、自分の勃起したペニスを掴み、めちゃくちゃに激しく擦り始めた。自分のアナルが、きゅっとヘロニモのペニスを締めつけるのが、なんとなく分かる。身体の中を暴れ回る激しい快感が弾け飛ぶ瞬間が、もうすぐそこまで来ている。
「あっあっあっ! いぐぅっ! いぐいぐいぐいぐぅぅぅぅ!!」
「う、わぁ……そんなっ、締めんなっ! くっそ、出るっ! おっ、お、おぅっ……」
パァンと一際強く、ベニグノの尻にヘロニモが下腹部を叩きつけた。ベニグノは、びゅるびゅると精液をペニスから吐き出しながら、腹の中で、ヘロニモのペニスがほんの微かに震えているのを感じた。ヘロニモが、ベニグノの中で射精した。
ベニグノは、楽しくて、勝負に勝ったことが嬉しくて、思わず、にんまりと口角を上げた。
はぁー、はぁー、とお互い荒い息を吐いている。ヘロニモのふにゃっと柔らかくなったペニスが、ゆっくりとベニグノのアナルから抜け出ていった。こぽぉっと、自分のアナルから、ベニグノの精液が溢れ出る感覚がする。
ベニグノは、荒い息を吐きながら、のろのろと身体を起こし、シーツの上に、胡座をかいて座った。同じように胡座をかいて座っているヘロニモが、汗まみれの顔で、はぁーっと大きく息を吐いた。
「くっそ気持ちよかった」
「俺の勝ちだぜ。俺もくっそ気持ちよかった」
「お前のケツ、やべぇな」
「はっはっは! 自分の才能が怖いぜ」
「ベニグノー」
「んー?」
「とりあえずよ、セフレになろうぜ。セフレ。セックスもする友達」
「いいぜー。ケツ、めちゃくちゃ気持ちよかったし。またヤリてぇ」
ベニグノは、ニッと笑って、へらっと笑うヘロニモと、パァンと手を打ち合わせた。
ーーーーーーー
ヘロニモとセックスをするようになって、半年が経つ。ヘロニモとは、釣りで一緒になった時は、必ず、どちらかの家でセックスをするようになった。
ヘロニモとのセックスは、楽しくて、気持ちよくて、なんだか、心が若返っていくような気がする。
冬の足音が聞こえ始めた頃。
ヘロニモとセックスをして、ベッドの上で、二人でゴロゴロしていると、ヘロニモがゆるく笑いながら、口を開いた。
「なぁ。ベニグノ」
「あー?」
「いっそのことよ、一緒に暮らさねぇか? 俺の家、街中にあるから税金高めだし、1人で住むには、ちと広過ぎる。家の管理も大変だしよ。お前の家で、一緒に暮らしてぇ」
「別に構わねぇよ。……やっぱよ、1人は寂しいしな」
「だよなー。ベニグノ。どっちかが死ぬまで、一緒に生きようぜ」
「おぅともよ。老後の面倒は、お互い一緒に頑張るか」
「おぅ。……ふはっ。そのうちよ、『愛してる』とか言い出したら、どうする?」
「くっそ笑うな。面白過ぎて」
「だよなぁ。ベニグノ。そのうちよ、めちゃくちゃ笑わせてやるぜ」
「ははっ! 楽しみにしとくわ」
ベニグノは、ヘロニモと顔を見合わせて、へらっと笑った。
それから1ヶ月後。ヘロニモが街中の家を処分して、ベニグノの家に引っ越してきた。
2人で毎日わちゃわちゃしながら、穏やかで楽しい日々を過ごしている。
月日は穏やかに流れ、ベニグノ達は60歳になり、仕事を引退して、隠居生活を始めた。毎日、いつもの川辺りに行き、のんびり釣りをしたりして、過ごしている。
隣に座るヘロニモが、釣り竿を握ったまま、ベニグノの方を向いて、へらっと笑って口を開いた。
「今からお前を笑かしてやろう」
「おっ。なんだなんだ? かかってこいや」
「愛してる」
「ぶっは! だはははっ! やべぇな! 俺も愛してんぜ」
「ははははっ! やべぇ! 俺ら相思相愛じゃねぇか」
「やべぇな」
「やべぇわ」
ベニグノは、ヘロニモと一緒に笑い転げた後、ヘロニモの唇に触れるだけのキスをした。
「老い先短い者同士、楽しく生きていこうぜ」
「おぅよ。ベニグノ。死ぬまでよろしくな」
「おぅ。あの世でよ、嫁さん達に2人で説教されようぜ」
ベニグノは、ニッと笑って、ヘロニモにずりずりと近寄り、ヘロニモの肩に頭を預けた。
寄り添う2人を祝福するかのように、柔らかい春の風で花弁がひらひらと舞った。
(おしまい)
いつもの川辺りに到着すれば、先客がいた。釣り友達のヘロニモである。
ヘロニモは、派手な赤毛をしているが、年々前髪が後退しつつあり、今では前髪と頭頂部の毛が無い。若い頃は、男前だと街の若い女にキャーキャー言われていた容姿だったが、四十も半ばになった今では、普通のおっさんになった。
ベニグノも他人のことは言えない。薄い茶色の髪はふさふさだが、中年太りで、年々下っ腹が出てきている。顔立ちはいたって普通である。
ベニグノは、18で結婚して、25の時に嫁に先立たれた。娘が1人いて、嫁に先立たれてからは、大工の仕事をしながら娘を育てるのに必死だった。その娘も24歳になり、6年前に結婚をして、今では二児の母である。娘の嫁ぎ先は三軒向こうの家なので、頻繁に孫達を連れて、顔を見せてくれる。
娘を育てている間は、余裕が無くて釣りなんかできなかったが、娘が嫁にいって肩の荷が下りた今は、暇さえあれば、釣りをするようになった。
ベニグノは、『おぉい』とヘロニモに声をかけた。振り返ったヘロニモが、日焼けした顔で、ニッと笑った。
「よぉ。ベニグノ」
「よぉ。釣れてるか?」
「今日はまだ。一匹もかかりゃしねぇ」
「おやま。そんな日もあるわな」
「まぁな」
「はぁー、どっこらしょっと。晩飯が釣れるといいわ」
「二匹以上釣れたら、飯作ってくれよ。酒持ってくから」
「おー。いいぞー」
「お孫ちゃん達は最近どうよ」
「元気元気。下の子も、つい数日前に掴まり立ちしてよ。上の子も毎日元気いっぱいに走り回ってるわ」
「そいつぁ、なによりだな。子供は元気が一番だ」
「おぅよ。そっちは最近どうよ。面倒くせぇ教え子がいるって言ってただろ」
「あー。相変わらずだわ。成績は無駄にいいんだが、なにせ愉快犯でよ。教えた魔術を応用して、片っ端から悪戯に使ってやがる」
「ある意味、将来有望だな」
「ある意味な。無駄に応用力があるから質が悪い。悪戯に使わなければ問題ねぇが、悪戯に全力出してるからなぁ」
「まぁ、まだ14だろ? 人生で一番馬鹿な時期だろ」
「まぁな。思春期って本当に面倒くせぇわー。生徒間での色恋沙汰でごちゃごちゃ揉めたりするのが、こっちにまで火種が飛んでくるし」
「あーあー。学校の先生も大変だな」
「まぁな。釣りやってる時だけだぜ。心穏やかにいられるのは」
「まぁ、心穏やかにいられる時間があるだけ、ありがてぇってことにしておこうぜ」
「そうだな」
ヘロニモは、街の中等学校で教鞭をとっている。主に魔術を教えている。ヘロニモも嫁に先立たれている。もう10年前の話だ。ヘロニモには、結局、子供はできなかった。
ヘロニモとは、子供の頃からの付き合いである。釣り友達になって、もう30年以上になる。なんとなく気が合って、いつもの川辺りで一緒になると、喋りながら釣りを楽しんでいる。お互い、一人暮らしになると、たまに、どちらかの家で食事をしたり、酒を飲んだりするようになった。2人とも、それなりに料理は出来る。普段は1人で食事をしているから、ヘロニモと一緒に食事をすると、家族と共に暮らしていた頃を思い出して、胸の奥がじんわりと温かくなる。娘は義実家で暮らしており、頻繁に顔を見せてはくれるが、食事は滅多に一緒にしない。ヘロニモと一緒に食事をすることの方が多いくらいである。
その日の成果は、2人合わせて五匹だった。それなりにデカい魚が釣れたので、夕食が豪勢になりそうだ。
ベニグノは、ヘロニモと夕食に何を作るか喋りながら、夕焼けに染まる道を歩いて、自宅へと帰った。
ベニグノが手早く夕食を作っていると、一度自分の家に帰ったヘロニモがやって来た。魚によく合うワインを持ってきてくれた。今夜の夕食は、魚の香草ワイン蒸しに、小さめの魚を揚げて野菜と一緒に甘酢に漬けたものだ。それに買い置きのパンと、デザートには今が旬の杏がある。
居間のテーブルに出来上がった料理を並べると、ヘロニモが歓声を上げて、ぱぁっと笑った。
「美味そうだな」
「それなりに自信作だぜ」
「最高。冷めないうちに食おう」
「おぅ」
ベニグノは、ヘロニモと向かい合って椅子に座ると、食前の祈りを捧げてから、ナイフとフォークを手に取った。香草ワイン蒸しも、甘酢漬けも、上手く出来ている。ヘロニモが持参したワインとも、よく合っていて、素直に美味しい。我ながら上出来である。
美味しそうに食べながら、ヘロニモが口を開いた。
「今日は蒸留酒も持ってきた。お前も明日は休みだろ? 一緒に酒盛りしようぜ。酒の肴に、美味い干し肉とチーズも持ってきた」
「最高じゃねぇか。俺もとっておきのやつ出すかな」
「おー。出してくれよ。飲みてぇ」
「いいぞー。今夜はとことん飲むか」
「そうこなくっちゃ。朝まで飲むぞー」
「おー」
ベニグノはヘロニモと顔を見合わせて、悪戯っ子のように、ニッと笑った。
キレイに夕食を食べ終えると、2人で後片付けをして、次は酒盛りの準備である。ヘロニモが持ってきた干し肉とチーズを食べやすい大きさに切って皿に盛り、ベニグノは、とっておきの蒸留酒を戸棚から出した。グラス等と一緒にお盆にのせ、テーブルに運んだら、酒盛りの始まりである。
先に、ヘロニモが持ってきた蒸留酒を開けた。グラスに注いで、乾杯をしてから一口飲むと、ふわっと鼻に芳醇な香りが抜け、キツい酒精が心地よく喉を焼いた。素直に美味しい。干し肉やチーズともよく合う。
2人で他愛のない話をしながら、夜が更けるまで酒を飲み続けた。
日付が変わる頃には、ベニグノはかなり酔っ払っていた。楽しい酒は、ついつい飲むペースが速くなってしまう。自分でも酔ってるなーと思う程だが、ヘロニモと一緒に酒を飲むのが楽しいので、まだまだ飲む気満々である。
お互いが出してきた上物の蒸留酒は飲み終わったので、今は安物の蒸留酒を飲んでいる。安物の蒸留酒でも、楽しければ不思議と美味く感じる。ベニグノは、自分の空になったグラスに酒を注ぎ、ついでにヘロニモのグラスにも酒を注いだ。
酒精で顔が真っ赤になっているヘロニモが、へらへら笑いながら、口を開けた。
「最近、どうよ」
「どれがだ?」
「シモの方」
「嫁さん死んでから、ずっと右手が恋人だっつーの」
「はははっ! 一緒一緒。最近はよー、面倒でシコりもしなくなってきたぜ」
「おいおい。流石に枯れるには早いだろ」
「だよなー。でも、エロ本読んでもいまいちなぁ」
「娼館にでも行けばいいじゃねぇか」
「いやぁ、今更若い女抱くのもなぁ」
「まぁなぁ。娘より年下の女とか抱けねぇわ。俺」
「俺もキツいかなぁ。特に10代後半だと、教え子に歳が近くて、抵抗があるわ」
「セックスかぁ……何十年してねぇんだろ。俺」
「俺ら、今年で43だろ? 嫁さんが亡くなって、もう20年か?」
「あー。そうだわ。20年セックスしてねぇわ」
「お互い、このまま枯れるのかねぇ」
「それはそれで、ちょっと嫌だわー」
ベニグノは、酔いで濁った頭で考えた。今更、若い女は抱けない。なんとなく、抵抗がある。かといって、このまま枯れるには少々早過ぎる。セックスがしたい。随分と久方ぶりに、ベニグノはそう思った。
「セックスしてぇな」
「俺もしてぇかも」
「なぁ。ヘロニモ」
「あー?」
「いっそセックスするか」
「誰と」
「俺とお前」
「マジか」
「女が抱けねぇなら、男とセックスしたらいいんじゃね?」
「マジか」
「俺、嫁さんにケツの穴舐められたことはある。じわっと気持ちよかったから、多分、ケツの才能があるんじゃねぇかなぁ」
「マジか」
「ヘロニモさー。俺でちんこ勃つか?」
「勃たないと思います」
「なんで敬語?」
「勃たないと思います!」
「何でニ回言った」
「ベニグノー。お前相手にちんこ勃つ訳ねぇじゃん」
「まぁ、それもそうか。俺もヘロニモ相手じゃ勃起しねぇわ。禿げたおっさんは流石にちょっと……」
「おぉん? 誰が禿げだコラァ。だらしねぇ腹してるおっさん相手に勃つ訳ねぇだろうが」
「誰がデブだ。この野郎。おん? いっそ賭けるか? 俺にお前が勃起したら俺の勝ち。勃起しなかったらお前の勝ち」
「勝った」
「ふんっ。こちとら、分が悪い賭けは嫌いじゃねぇんだよ。お前のちんこをおっ勃っちんさせてやらぁ!」
「ぶっは! おっ勃っちん!」
「おい。変なところでツボるな」
ベニグノは、ゲラゲラ笑い転げているヘロニモを、なんとか勃起させるべく、酔って濁った頭をフル回転させた。
「嫁さんのパンツを穿く……いや、ちんこと金玉がぽろりするだけだな」
「面白過ぎてヤバいな」
「なんだっけ……あれだ。あれ」
「どれだ」
「なんか女が服を脱いでいくショーがあるじゃねぇか」
「ストリップショーのことか?」
「それそれ。それやるわ」
「おっさんのストリップショー。笑っちまう自信しかねぇな」
「ちゃらららーん」
「お前が歌うのかよ!」
「音楽ねぇと盛り上がらんだろうが!」
「ヤバい。笑い過ぎて腹筋割れそう」
「ちゃらっ、ちゃらららーん」
「だはははははっ!」
ベニグノは椅子の上に立ち、なんかそれっぽいメロディーを口にしながら、ゆっくりと服を脱いでいった。
シャツの下の肌着を脱ぎ捨てると、弛んだ胸肉とぼよんっと出ている下っ腹が露わになる。はー、どっこらしょっと、ズボンを脱ぎ捨て、靴下も脱ぐ。
「おらー! 色っぺぇだろうがー!」
「縞柄トランクスじゃねぇか! おっさんパンツ! おっさんパンツ! 色気が皆無!」
「ほーら。ぽよんぽよんのおっぱいですよー」
「だるんだるんの間違いだろ。つーか、腹ヤバくないか?」
「え? マジで?」
「マジで。ちっとは痩せろよ」
「細けぇこたぁ気にするな。いざ! 御開帳!!」
「ちーんこがぽろりー」
「歌うなよ。無駄に美声だな。おい」
パンツも脱ぎ捨てたベニグノは、ヘロニモと一緒にゲラゲラ笑った。
ひとしきり馬鹿笑いをした後。ヘロニモが酒を飲みながら、両腕を上げたなんか色っぽい感じのポーズをとっているベニグノを、ビシッと指差した。
「服を着ろ」
「うぃっす」
ベニグノは椅子から下りて、服を着た。普通に椅子に座って、酒が入ったグラスを手に取る。
「ベニグノ。お前相手じゃ面白過ぎて勃たねぇわ」
「だよな。俺も思った。まぁ、俺の我満豊満な肉体美は、お前には理解できまいて」
「ぶっは! やめろ。笑かすな」
ベニグノは、ヘロニモと一緒にゲラゲラ笑い転げながら、朝方近くまで酒を飲み続けた。
ーーーーーー
翌週の休日。ベニグノが、朝からいつもの川辺りで釣りをしていると、ヘロニモがやって来た。ヘロニモがゆるく笑って、よっと片手を上げた。ベニグノも、よっと片手を軽く上げた。
「どうだ? 釣れてるか?」
「今日はいい感じだぜ。もう二匹釣った」
「おー。いいじゃねぇか。今日は俺ん家で酒盛りしようぜ」
「いいぜ。あ、娘がよー。孫とクッキー作ったって持ってきたんだわ。食うか?」
「食う」
「ほらよ」
「ありがたく。……おっ。美味いな。『めちゃめちゃ美味かったです』って伝えておいてくれよ」
「おー。喜ぶわ」
ベニグノは、ヘロニモとクッキーを摘みつつ、他愛のないお喋りをしながら、夕方まで釣りを楽しんだ。
一度、自宅に帰って、ヘロニモの家に持っていく酒を鞄に詰めると、ベニグノは重い鞄を持って家を出た。今日は2人で八匹も釣れた。ヘロニモに魚を全部持たせてある。ヘロニモが、ベニグノの娘の家にお裾分けに行ってくれている。ベニグノが娘の嫁ぎ先の家を覗くと、まだヘロニモがいて、娘と立ち話をしていた。娘がベニグノに気づき、亡くなった嫁によく似た穏やかな笑みを浮かべた。
「お父さん、魚ありがとう。ヘロニモおじさんから貰ったわ。今夜の晩ご飯が豪華になるわ!」
「おぅ。いっぱい食ってくれよ」
「お父さん達は、また酒盛り? 飲むのはいいけど、程々にしておいてよね」
「おーう」
今は夕方で、娘も忙しい時間帯だ。ベニグノは娘に別れを告げ、ヘロニモと共に、ヘロニモの家に向かった。
ヘロニモの家は、街中にある一軒家だ。年季が入っているが、いつ来ても、ちゃんと庭の手入れも家の中の掃除もしてある。ベニグノは、一人暮らしになってからは、家の掃除をサボったりしているので、素直にヘロニモは偉いなと思う。
ヘロニモと一緒に台所に立ち、お喋りをしながら、手早く夕食兼酒の肴を作っていく。今日は、魚の塩焼きに野菜たっぷりのあんをかけたものと、香草と野菜を入れた汁物にした。パンは、ヘロニモの家への途中にあるパン屋で胡桃のパンを買い、追加の酒の肴で、干し肉やチーズも買った。
居間のテーブルに料理と酒とグラスを並べたら、楽しい時間の始まりである。
ヘロニモとは、頻繁に会って、釣りをしながらお喋りしたり、酒を飲みながらお喋りをしているのに、意外と話題が尽きないものだ。お互いの仕事の話や、日々のちょっとした愚痴、亡くなった嫁の思い出話、孫達の話や評判のいい病院の話等、次から次へと話題が出てくる。ふと、沈黙が下りる時があるが、特に気まずさは感じない。唯、穏やかな空気が流れるだけである。
夜もすっかり更けた頃。
酒精で顔を真っ赤に染めたヘロニモが、グラスの酒を舐めるように飲みながら、へらっと笑った。
「ベニグノ。セックスしてみねぇか?」
「あー? こないだは、お前、勃たなかったじゃねぇか」
「あんな面白いことされて勃起するかよ」
「色っぽかっただろうがー」
「だらしねぇ身体のおっさんのストリップなんぞ面白いだけだろうがー」
「まぁ、否定はせん」
「しねぇのかよ。いやさ、あれからちょこっと男同士のセックスの仕方を調べてみたのよ」
「マジか」
「今更、女は抱けねぇし、かといって枯れるのも嫌だからよ。まぁ、ベニグノならいっかなって思って」
「ふーん。どっちのケツに突っ込むんだ?」
「俺、自分でケツ弄ってみたけど、てんで駄目だったわ。気持ちわりぃだけ。つーことで、ケツの才能がありそうなお前に突っ込もうと思う」
「マジか。痔になったらどうしよう」
「そん時は責任持って痔の薬を塗ってやるよ」
「マジかー」
「マジだー」
「セックス……いやまぁ、確かにしてぇし、多分、ケツの才能はある気はするけどよ」
「まぁ、やってみりゃ、なんとかなんだろ」
「んー。じゃあ、やるか。セックス」
「おぅ。やるぞ。セックス」
ベニグノは、特に深く考えずに、ヘロニモとセックスをすることにした。
とりあえず残っていた酒を全て2人で飲み切ると、酔いで軽くふらつく足取りで、二階にあるヘロニモの寝室に移動した。酔ってるなーと思う程度には、酔っている。
ヘロニモが無造作に服を脱ぎ始めたので、ベニグノは特に意味もなく、なんかそれっぽいメロディーを口ずさんだ。
「ちゃら、ちゃらららーん」
「歌うのやめろ。笑って萎えるだろうが」
「俺も脱ぐか。ちゃっちゃらーん」
「歌いながら脱ぐな」
ヘロニモがゲラゲラ笑いながら、全裸になった。ヘロニモの身体は、貧相に痩せていて、うっすら肋が浮いていた。ベニグノのたっぷりある脂肪を、分けてやりたいくらいである。
ベニグノも歌いながら全裸になると、二人でベッドに上がった。お互いに向き合って胡座をかいて座ると、ヘロニモが枕の下から、細長い箱とそこそこ大きな瓶を取り出した。
「なんだそりゃ」
「浄化棒とローション」
「あー。噂には聞いたことがある浄化棒。あれだ。あれ。ケツの中、キレイにしてくれるってやつ」
「そうそう。で、ケツはまんこみてぇに濡れねぇから、ローションは必須らしい」
「ふーん。じゃあ、早速、俺のプリケツを披露してやろう」
「お前のケツのどこがプリケツだ。だらしねぇ尻しやがって」
「そのだらしねぇ尻に勃起しやがったら俺の勝ちだからな。なんかすげぇ酒奢れよ」
「なんかすげぇ酒ってどんな酒だよ。普通にいつも飲んでる酒を奢ってやらぁ」
「まぁ、それでもよし」
「いいのかよ」
「ほれ。プリケツー」
「だはははっ! ケツを振るんじゃねぇよ! 笑うわ!」
ベニグノは体勢を変えて、ヘロニモに尻を向けて四つん這いになり、ふりふりと左右に尻を振った。ベニグノのプリケツにヘロニモが勃起したら、ベニグノの勝ちである。
「色っぺぇだろうがー。おらおらー」
「や・め・ろ。笑い過ぎて勃たねぇわ!」
「マジか」
「マジだ」
ベニグノは、仕方がなく尻を振るのをやめた。ベニグノが首を捻って顔だけで振り返り、背後のヘロニモを見ると、ヘロニモがゆるく笑って、細長い箱から細長い棒を取り出した。噂の浄化棒だろう。
ベニグノはサービスのつもりで、上体を伏せて、両手で自分のむきんむにんの尻肉を掴み、むにぃっと大きく尻肉を広げた。多分、周りに短い縮れたケツ毛が生えたアナルが、ヘロニモに丸見えになっている筈である。アナルに外気が直接触れる感じが、なんだかちょっぴり興奮する。亡くなった嫁にアナルを軽く舐められた事はあるというか、アナルを舐めながら手こきをされた事はあるのだが、アナルの中に何かを入れるのは、記憶にある限り、二回目だ。子供の頃に、一度だけ解熱剤の座薬を入れたことがある。
ヘロニモのかさついた温かい手が、ベニグノの尻に触れたかと思えば、アナルに硬いものが触れ、ゆっくりと硬くて細いものがアナルの中に入ってきた。多少の異物感はあるが、痛みは無い。特に不快でもない。入ってくるなー、とは思うが、それだけだ。
細くて長いものが腹の奥まで入り、頭の中でなんとなく数を数えていると、ちょうど30数えた頃に、ずるーっと浄化棒が抜け出ていった。これで、直腸内はキレイになった筈である。
ヘロニモの手が、ベニグノのむにんむにんの柔らかいデカ尻を、ふにふにと揉んだ。
「ケツでけぇな」
「色っぺぇだろ」
「いや、普通にだらしねぇわ。だるんだるんじゃねぇかー」
「わはははっ! ケツの肉を揺らすな!」
ヘロニモの手が、尻の下の方から、ぼよんぼよんとベニグノの尻肉を揺らした。ベニグノは、ヘロニモと笑いながら、ふりふりと尻を左右に振った。
「おらー。かかってこいやー」
「なんの勝負だ」
「お前が勃起したら、俺の勝ち!」
「勃起する気配がねぇんだよなー。これが」
「マジかよ」
「マジだ。とりあえず、ケツ弄ってみるか」
「優しくな。生娘のまんこを弄るよりも優しくしろよ。痔になったら、かんちょーかまして、お前も痔にしてやっからな」
「それはやめろ。よし。とりあえず指を突っ込む!」
「よっしゃー。どんとこいやー」
ベニグノは、ふりふりと振っていた尻を動かすのをやめ、ちょっぴり緊張しながら、ヘロニモが触れてくるのを待った。
周りにケツ毛が生えたアナルに、たらーっと冷たい液体が垂らされた。ローションとかいうやつだろう。ヘロニモの細い指先が、ベニグノのアナルの表面に触れ、ローションを馴染ませるように、くるくるとベニグノのアナルの表面を撫で回した。腰のあたりがぞわっとする感覚に、ベニグノは小さく笑った。ほんのり気持ちがいい。やはり、ベニグノにはアナルの才能があったようである。
ヘロニモの指が、ゆっくりとアナルの中に入ってきた。やんわりと優しく腸壁を擦られると、背筋がぞわぞわする。ベニグノは、反射的にきゅっとアナルでヘロニモの指を締めつけながら、クックッと笑った。
「やべー。じんわり気持ちいい」
「マジか。お前の中、熱いなー」
「ちんこ挿れたら昇天間違い無しだぜー」
「その前に、俺のちんこが勃てばな」
「勃たせろよ。がんばれがんばれ。応援歌でも歌うか?」
「やめろ。笑い過ぎて萎える自信しかねぇわ」
ヘロニモがクックッと楽しそうに笑いながら、ベニグノのアナルの中を、なにやら探るように指を動かしている。ヘロニモの指がある一点に触れた瞬間、ベニグノは驚いて、思わず声を上げた。そこに触れられると、脳天へと今まで感じたことがない強烈な刺激が突き抜ける。
「あぁっ!?」
「おっ。ここか? 噂の前立腺」
「ちょっ、そこっ、やべぇ! やべぇって! うぉっ! はぁっ! んーーーーっ!」
「へぇー。本当に気持ちいいんだな。前立腺。俺、自分で弄ってみたけど、いまいちだったんだよなー。ベニグノって、マジでケツの才能あるっぽいな」
「やべぇやべぇやべぇ! あーーーーっ! ちんこ! 勃った!」
「お。俺ってば、テクニシャン?」
「ちんこっ! ちんこ擦ってくれっ!」
「ちんこ擦ったら、お前、出すだろ。とりあえず、指が3本入るまでは我慢だ」
「うっそだろおい! あっあっ! ばかっ! そこばっか、いじんなぁ! あーーっ! くっそ! やべぇってば!」
「ここ弄るとめちゃくちゃ締まるな。うりゃうりゃうりゃー」
「ひぃぃぃぃん! あぁぁぁぁ!!」
「ヤバいな。ちょっと楽しくなってきた」
ヘロニモの指が、前立腺とやらを、指の腹でくるくると円を描くように撫で回したり、トントンと優しくノックしたりして、容赦なく刺激してくる。初めての目の裏がチカチカするような強烈な快感に、ベニグノは自分の尻肉から手を離し、縋りつくように強くシーツを握りしめた。
指を増やされても、ベニグノのアナルは切れること無く、柔軟にヘロニモの指を飲み込んだ。アナルの中に入っているヘロニモの指が3本になる頃には、ベニグノはふにゃふにゃに蕩けていた。くっそ気持ちがいい。ヘロニモは、本当にテクニシャンか。アナルを拡げるように指を回されるのも、腸壁を指の腹で擦られながら抜き差しされるのも、くっそ気持ちがいい。己の才能が怖くなるレベルで気持ちがいい。
野太い声であんあん喘ぎまくっていたベニグノのアナルから、ずるぅっとヘロニモの指が抜け出ていった。
顔だけでヘロニモの方を振り返れば、ヘロニモが、自分のゆるい角度で勃起したペニスに、ローションを垂らしていた。ベニグノは、へらっと笑った。
「俺の勝ちだぜ」
「悔しいが負けたわ。なんか、いやらしいなー。お前のケツ」
「はっはっは! 勝った!」
「ちんこ挿れるぞー」
「どんとこいやー!」
ベニグノは、両手でだるんだるんの尻肉を掴み、ぐにぃっと大きく尻肉を開いた。ローションで濡れたアナルが、勝手にひくひくしているのが、なんとなく分かる。
ひくつく自分のアナルに、熱くて硬いものが触れた。ゆっくりと、解して尚狭いベニグノのアナルを抉じ開けるようにして、ヘロニモのペニスが入ってくる。じわっと痛いが、それ以上に、敏感な粘膜同士が擦れ合う快感の方が強い。アナルの才能があり過ぎるだろう。自分。
ベニグノは、ゆっくりとペニスで腹の中を満たされていく感覚に、腰をくねらせて喘いだ。
「おっ、おっ、あ、あーーっ、は、ははっ、すげぇっ、やべぇっ」
「は、あ……うーわ。すげぇ締まる。やべぇな。めちゃくちゃ気持ちいい」
「俺のケツで昇天しやがれー」
「おうともよー。うりゃ」
「ひぃん!? おぅっ! あぁっ! やべぇやべぇやべぇ! あ、あ、あーーっ! くっそ! いいっ!」
弛んだベニグノの尻に、ぺちん、ぺちん、とヘロニモの下腹部が当たる音が響く。前立腺をペニスで擦られながら、アナルの奥の方へとペニスで突き上げられると、脳みそが痺れるような快感に襲われる。気持ちよくて、気持ちよくて、なんだか笑えてきた。ベニグノは、笑いながら喘ぎ、もっと、もっと、と、ヘロニモにねだった。
ベニグノのアナルの感触を味わうように、ゆっくりと動いていたヘロニモが、徐々に速く激しく腰を振り出した。パァン、パァン、と派手に肌同士がぶつかり合う音が響く。
ベニグノは、大きく喘ぎながら、自分の勃起したペニスを掴み、めちゃくちゃに激しく擦り始めた。自分のアナルが、きゅっとヘロニモのペニスを締めつけるのが、なんとなく分かる。身体の中を暴れ回る激しい快感が弾け飛ぶ瞬間が、もうすぐそこまで来ている。
「あっあっあっ! いぐぅっ! いぐいぐいぐいぐぅぅぅぅ!!」
「う、わぁ……そんなっ、締めんなっ! くっそ、出るっ! おっ、お、おぅっ……」
パァンと一際強く、ベニグノの尻にヘロニモが下腹部を叩きつけた。ベニグノは、びゅるびゅると精液をペニスから吐き出しながら、腹の中で、ヘロニモのペニスがほんの微かに震えているのを感じた。ヘロニモが、ベニグノの中で射精した。
ベニグノは、楽しくて、勝負に勝ったことが嬉しくて、思わず、にんまりと口角を上げた。
はぁー、はぁー、とお互い荒い息を吐いている。ヘロニモのふにゃっと柔らかくなったペニスが、ゆっくりとベニグノのアナルから抜け出ていった。こぽぉっと、自分のアナルから、ベニグノの精液が溢れ出る感覚がする。
ベニグノは、荒い息を吐きながら、のろのろと身体を起こし、シーツの上に、胡座をかいて座った。同じように胡座をかいて座っているヘロニモが、汗まみれの顔で、はぁーっと大きく息を吐いた。
「くっそ気持ちよかった」
「俺の勝ちだぜ。俺もくっそ気持ちよかった」
「お前のケツ、やべぇな」
「はっはっは! 自分の才能が怖いぜ」
「ベニグノー」
「んー?」
「とりあえずよ、セフレになろうぜ。セフレ。セックスもする友達」
「いいぜー。ケツ、めちゃくちゃ気持ちよかったし。またヤリてぇ」
ベニグノは、ニッと笑って、へらっと笑うヘロニモと、パァンと手を打ち合わせた。
ーーーーーーー
ヘロニモとセックスをするようになって、半年が経つ。ヘロニモとは、釣りで一緒になった時は、必ず、どちらかの家でセックスをするようになった。
ヘロニモとのセックスは、楽しくて、気持ちよくて、なんだか、心が若返っていくような気がする。
冬の足音が聞こえ始めた頃。
ヘロニモとセックスをして、ベッドの上で、二人でゴロゴロしていると、ヘロニモがゆるく笑いながら、口を開いた。
「なぁ。ベニグノ」
「あー?」
「いっそのことよ、一緒に暮らさねぇか? 俺の家、街中にあるから税金高めだし、1人で住むには、ちと広過ぎる。家の管理も大変だしよ。お前の家で、一緒に暮らしてぇ」
「別に構わねぇよ。……やっぱよ、1人は寂しいしな」
「だよなー。ベニグノ。どっちかが死ぬまで、一緒に生きようぜ」
「おぅともよ。老後の面倒は、お互い一緒に頑張るか」
「おぅ。……ふはっ。そのうちよ、『愛してる』とか言い出したら、どうする?」
「くっそ笑うな。面白過ぎて」
「だよなぁ。ベニグノ。そのうちよ、めちゃくちゃ笑わせてやるぜ」
「ははっ! 楽しみにしとくわ」
ベニグノは、ヘロニモと顔を見合わせて、へらっと笑った。
それから1ヶ月後。ヘロニモが街中の家を処分して、ベニグノの家に引っ越してきた。
2人で毎日わちゃわちゃしながら、穏やかで楽しい日々を過ごしている。
月日は穏やかに流れ、ベニグノ達は60歳になり、仕事を引退して、隠居生活を始めた。毎日、いつもの川辺りに行き、のんびり釣りをしたりして、過ごしている。
隣に座るヘロニモが、釣り竿を握ったまま、ベニグノの方を向いて、へらっと笑って口を開いた。
「今からお前を笑かしてやろう」
「おっ。なんだなんだ? かかってこいや」
「愛してる」
「ぶっは! だはははっ! やべぇな! 俺も愛してんぜ」
「ははははっ! やべぇ! 俺ら相思相愛じゃねぇか」
「やべぇな」
「やべぇわ」
ベニグノは、ヘロニモと一緒に笑い転げた後、ヘロニモの唇に触れるだけのキスをした。
「老い先短い者同士、楽しく生きていこうぜ」
「おぅよ。ベニグノ。死ぬまでよろしくな」
「おぅ。あの世でよ、嫁さん達に2人で説教されようぜ」
ベニグノは、ニッと笑って、ヘロニモにずりずりと近寄り、ヘロニモの肩に頭を預けた。
寄り添う2人を祝福するかのように、柔らかい春の風で花弁がひらひらと舞った。
(おしまい)
応援ありがとうございます!
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