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黒と白が交われば
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「カミロ。好きだから一緒にいて」
カミロはジャファーの突然の言葉に、ピシッと固まった。
カミロは職場から帰宅し、寒かったのでシャワーを浴びている真っ最中だ。熱めのシャワーのお湯を浴びながら、髪を洗っていた。当然、全裸だ。
「あ、コンディショナーは俺がやるわ。どうせアンタやらないだろ?身体は洗った?」
「……あぁ」
ジャファーが脱衣場と風呂場との間のドアを閉めたかと思えば、すぐに全裸の状態で風呂場に入ってきた。
カミロが中途半端に洗っていた髪をきっちり洗い、1度髪の泡をお湯で流してから、今度はコンディショナーをカミロの髪に馴染ませていく。鼻歌を小さく歌っているくらい、ジャファーはご機嫌だ。
カミロはジャファーに言われたことが理解できなくて、かなり混乱していた。
ジャファーに『好きだから一緒にいて』と言われた。どういう意味だ。カミロはジャファーの『好き』という感情が欲しい。『好きだから一緒にいて』とは、ジャファーはカミロのことが『好き』だという認識でいいのだろうか。
突然やって来て(いつものことだが)、突然そんなことを言い出したジャファーに、頭が疑問符だらけになる。
ジャファーがコンディショナーをつけたカミロの髪をお湯で洗い流し、混乱して固まっているカミロの身体をあちこち撫で回して、舐め回して、自分の『ちんこ』をカミロの『まんこ』に突っ込んで、カミロがはっと硬直から戻る頃には、カミロは思いっきり喘いで『潮』を吹いて『イッた』後だった。
ジャファーに熱めのお湯で全身の汗と、『まんこ』の中から垂れてくるジャファーの『精液』を流され、脱衣場に移動して全身をタオルで拭かれ、服を着せられ、髪を乾かされた。ジャファーは化粧水などでカミロの肌の手入れをし、香油を使って髪の手入れまでやってから、カミロを子供のように抱っこして、部屋のベッドへと移動した。
帰宅した直後に空調を入れたので部屋の中は暖かい。冷えていたベッドの布団の中も、シャワーを浴びて暖まっている身体で2人で潜り込めば、すぐに暖かくなる。
ジャファーが未だに頭の中が疑問符だらけで混乱しているカミロの身体を抱きしめ、カミロの額にキスをした。
「で?」
「え?」
「返事は?」
「……返事?」
「俺、一応アンタにプロポーズしたんだけど」
「ぷろぽーず」
「結婚の申し込みのこと」
「けっこん」
「俺とずっと一緒にいてよ。子供はアンタが欲しくなった時でいいし。つーか、アンタがいればそれでいいし。俺と一緒に暮らして、毎日一緒に俺が作った飯食ってよ。風呂も一緒がいいし、寝るのも一緒がいいし、アンタとセックスしてぇし。俺の残りの人生めちゃくちゃ長いからさ。俺が死ぬまで俺の人生に付き合ってよ」
「…………」
「カミロ」
「……あ、あぁ」
「アンタが好きだよ。アンタの残りの人生を共に歩む権利を俺にちょーだい」
カミロはジャファーの言葉を飲み込めなくて呆然としながらも、何故だか勝手に目から涙が流れ始めた。感情が高ぶり、自分の今の感情を自分で把握できなくて、言葉にも上手くできなくて、カミロははくはくと何度も口を開けたり閉じたりした。
ジャファーと向かい合うような形でベッドの上で布団を被って横になっており、緩くジャファーに抱きしめられている。すぐ目の前にジャファーの顔があり、ジャファーの黒い瞳は怖いくらい真剣な色をしていた。ジャファーと出会った頃は、ジャファーの黒い瞳に浮かぶ感情なんて全然分からなかったが、今ではある程度分かるようになっている。真剣にジャファーはカミロが『好き』で『結婚』したいらしい。
カミロは小さく震える声を絞り出した。
「……わ、わ、私は……」
「うん」
「……私、は……ジャファーが好きだ……」
「うん。じゃあさ、結婚して一緒に生きよう。お互い死ぬまでずっと。カミロ」
「…………」
「アンタを愛してるよ。死ぬまで離れないからさ。あとざっくり450年くらい、俺に付き合ってよ。お互いジジイとババアになっても、抱きしめあって、キスをして、一緒に寝よう。俺が作った飯をしこたま食べてよ。俺、アンタが俺が作った飯食ってるとこをさ、見んの好きなんだわ」
「…………いいのか、私で……」
「アンタがいいの」
「……仕事、辞めたくない」
「何で辞める必要あんのさ。アンタ、仕事大好きだろ」
「……あぁ」
「アンタが俺との子供がほしくなって、子供を産んでも、なんなら俺が子供の世話をするし。アンタは好きに働けよ。俺も好き勝手にアンタとアンタの子供の世話を焼くし」
「……いいのか、それで」
「いいんじゃね?俺はアンタが一緒に生きてくれたら、それでいいもん。あ、勿論セックス込みな。俺、アンタとセックスすんの、マジで好きだし」
「…………私も」
「ん?」
「…………私も、ジャファーが、『好き』だ」
「ははっ!やべぇ。両思いじゃん。俺ら」
ジャファーが弾けるような嬉しそうな笑い声を上げ、カミロの唇に触れるだけの『キス』をした。
お互いの額をピタリと当て、鼻先を擦り合わせて、ジャファーが小さく囁いた。
「カミロ」
「あぁ」
「ずっと一緒にいて、幸せになろう。2人で」
「……あぁ」
あぁ。今の感情を上手く言葉にしてジャファーに伝えられたらいいのに。カミロは高鳴る胸と高ぶっている感情が少しでもジャファーに伝わればいいと、ジャファーの身体にすり寄って、ぴったりくっついた。ジャファーの太い腕が、カミロの細い身体をぎゅっとキツく抱きしめてくれる。
勝手に流れているカミロの涙が止まるまで、ジャファーはずっとカミロの身体を抱きしめていてくれた。
ーーーーーー
カミロは賑やかな話し声で目が覚めた。
寝る前にはすぐ隣にいた筈のジャファーの姿はない。カミロがくわぁっと大きく欠伸をして身体を起こすと、賑やかな話し声がどんどん近くなり、寝室のドアが開いた。
パッと小さな身体がカミロがいるベッドに駆け寄り、ベッドによじ登ってきて、カミロの膝に乗って、カミロの首に細くて頼りない腕を回してむぎゅうと抱きついてきた。
「ママ。おはよー」
「……おはよう」
「聞いてよ!パパが剣やっていいって」
「そうか」
「なーも!なーもやるぅ!」
「ナーディルはまだダメ」
「やぁぁぁ!やるのぉぉぉ!!」
「ダーメ」
結婚して50年目に、カミロは長男・バゼットを、その3年後に次男・ナーディルを産んだ。2人ともジャファー譲りの黒髪黒目だ。バゼットは祖父であるリチャードによく似た顔立ちで、ナーディルはどちらかと言えばカミロに似た顔立ちをしている。
抱きついているバゼットの子供体温な身体を緩く抱きしめていると、また眠くなる。昨夜も子供達が寝た後にジャファーとセックスを楽しみ、寝たのは結局朝方だった。カミロは大きく欠伸をして、抱きしめているバゼットごと再びベッドに横になった。
「ママ。また寝るの?」
「……あぁ」
「なーも!なーも!ままとねんねー!」
「えー。じゃあパパも寝るわ」
「ぱぱ、やっ!」
「はっはっは。嫌でも寝るし」
「やぁぁぁぁぁん!ぱぱ、やぁぁぁぁ!」
ナーディルは絶賛イヤイヤ期である。よく分からないところでイヤイヤする。
イヤイヤしているナーディルを抱っこしているジャファーがベッドに近づき、本当にナーディルごと布団に潜り込んできた。
2人の子供達を挟んだまま、ジャファーがカミロの唇に『キス』をした。
「一眠りして起きたら朝飯な。今朝はふわふわパンケーキだぞ。カリカリベーコンとスクランブルエッグ付き」
「あぁ……ジャファー」
「んー?」
「……いや、楽しみだ」
「ははっ。まぁ期待しててよ」
カミロはジャファーに言おうかと思った言葉を飲み込んで、子供達の額に各々『キス』をしてから目を閉じた。
カミロがジャファーのことを『好き』なことは、ジャファーはもうとっくの昔に知っている。わざわざ言う程のことではない。
子供達の体温を感じながら、カミロは胸がぽかぽか温かいのを堪能しつつ、また眠りに落ちた。
家族全員で朝寝を楽しめる『幸せ』を、カミロは確かに感じていた。
『黒』と『白』が交わったら、新しい『灰色』という色ができる。
新しい色がもたらす幸福は何物にも変えがたい。『黒』も『灰色』も、『白』にとって、本当にかけがえのない色になった。
『黒』と『白』が交わる時間は、もっとずっと長く続いていく。沢山の『灰色』を生み出しながら。
《完》
カミロはジャファーの突然の言葉に、ピシッと固まった。
カミロは職場から帰宅し、寒かったのでシャワーを浴びている真っ最中だ。熱めのシャワーのお湯を浴びながら、髪を洗っていた。当然、全裸だ。
「あ、コンディショナーは俺がやるわ。どうせアンタやらないだろ?身体は洗った?」
「……あぁ」
ジャファーが脱衣場と風呂場との間のドアを閉めたかと思えば、すぐに全裸の状態で風呂場に入ってきた。
カミロが中途半端に洗っていた髪をきっちり洗い、1度髪の泡をお湯で流してから、今度はコンディショナーをカミロの髪に馴染ませていく。鼻歌を小さく歌っているくらい、ジャファーはご機嫌だ。
カミロはジャファーに言われたことが理解できなくて、かなり混乱していた。
ジャファーに『好きだから一緒にいて』と言われた。どういう意味だ。カミロはジャファーの『好き』という感情が欲しい。『好きだから一緒にいて』とは、ジャファーはカミロのことが『好き』だという認識でいいのだろうか。
突然やって来て(いつものことだが)、突然そんなことを言い出したジャファーに、頭が疑問符だらけになる。
ジャファーがコンディショナーをつけたカミロの髪をお湯で洗い流し、混乱して固まっているカミロの身体をあちこち撫で回して、舐め回して、自分の『ちんこ』をカミロの『まんこ』に突っ込んで、カミロがはっと硬直から戻る頃には、カミロは思いっきり喘いで『潮』を吹いて『イッた』後だった。
ジャファーに熱めのお湯で全身の汗と、『まんこ』の中から垂れてくるジャファーの『精液』を流され、脱衣場に移動して全身をタオルで拭かれ、服を着せられ、髪を乾かされた。ジャファーは化粧水などでカミロの肌の手入れをし、香油を使って髪の手入れまでやってから、カミロを子供のように抱っこして、部屋のベッドへと移動した。
帰宅した直後に空調を入れたので部屋の中は暖かい。冷えていたベッドの布団の中も、シャワーを浴びて暖まっている身体で2人で潜り込めば、すぐに暖かくなる。
ジャファーが未だに頭の中が疑問符だらけで混乱しているカミロの身体を抱きしめ、カミロの額にキスをした。
「で?」
「え?」
「返事は?」
「……返事?」
「俺、一応アンタにプロポーズしたんだけど」
「ぷろぽーず」
「結婚の申し込みのこと」
「けっこん」
「俺とずっと一緒にいてよ。子供はアンタが欲しくなった時でいいし。つーか、アンタがいればそれでいいし。俺と一緒に暮らして、毎日一緒に俺が作った飯食ってよ。風呂も一緒がいいし、寝るのも一緒がいいし、アンタとセックスしてぇし。俺の残りの人生めちゃくちゃ長いからさ。俺が死ぬまで俺の人生に付き合ってよ」
「…………」
「カミロ」
「……あ、あぁ」
「アンタが好きだよ。アンタの残りの人生を共に歩む権利を俺にちょーだい」
カミロはジャファーの言葉を飲み込めなくて呆然としながらも、何故だか勝手に目から涙が流れ始めた。感情が高ぶり、自分の今の感情を自分で把握できなくて、言葉にも上手くできなくて、カミロははくはくと何度も口を開けたり閉じたりした。
ジャファーと向かい合うような形でベッドの上で布団を被って横になっており、緩くジャファーに抱きしめられている。すぐ目の前にジャファーの顔があり、ジャファーの黒い瞳は怖いくらい真剣な色をしていた。ジャファーと出会った頃は、ジャファーの黒い瞳に浮かぶ感情なんて全然分からなかったが、今ではある程度分かるようになっている。真剣にジャファーはカミロが『好き』で『結婚』したいらしい。
カミロは小さく震える声を絞り出した。
「……わ、わ、私は……」
「うん」
「……私、は……ジャファーが好きだ……」
「うん。じゃあさ、結婚して一緒に生きよう。お互い死ぬまでずっと。カミロ」
「…………」
「アンタを愛してるよ。死ぬまで離れないからさ。あとざっくり450年くらい、俺に付き合ってよ。お互いジジイとババアになっても、抱きしめあって、キスをして、一緒に寝よう。俺が作った飯をしこたま食べてよ。俺、アンタが俺が作った飯食ってるとこをさ、見んの好きなんだわ」
「…………いいのか、私で……」
「アンタがいいの」
「……仕事、辞めたくない」
「何で辞める必要あんのさ。アンタ、仕事大好きだろ」
「……あぁ」
「アンタが俺との子供がほしくなって、子供を産んでも、なんなら俺が子供の世話をするし。アンタは好きに働けよ。俺も好き勝手にアンタとアンタの子供の世話を焼くし」
「……いいのか、それで」
「いいんじゃね?俺はアンタが一緒に生きてくれたら、それでいいもん。あ、勿論セックス込みな。俺、アンタとセックスすんの、マジで好きだし」
「…………私も」
「ん?」
「…………私も、ジャファーが、『好き』だ」
「ははっ!やべぇ。両思いじゃん。俺ら」
ジャファーが弾けるような嬉しそうな笑い声を上げ、カミロの唇に触れるだけの『キス』をした。
お互いの額をピタリと当て、鼻先を擦り合わせて、ジャファーが小さく囁いた。
「カミロ」
「あぁ」
「ずっと一緒にいて、幸せになろう。2人で」
「……あぁ」
あぁ。今の感情を上手く言葉にしてジャファーに伝えられたらいいのに。カミロは高鳴る胸と高ぶっている感情が少しでもジャファーに伝わればいいと、ジャファーの身体にすり寄って、ぴったりくっついた。ジャファーの太い腕が、カミロの細い身体をぎゅっとキツく抱きしめてくれる。
勝手に流れているカミロの涙が止まるまで、ジャファーはずっとカミロの身体を抱きしめていてくれた。
ーーーーーー
カミロは賑やかな話し声で目が覚めた。
寝る前にはすぐ隣にいた筈のジャファーの姿はない。カミロがくわぁっと大きく欠伸をして身体を起こすと、賑やかな話し声がどんどん近くなり、寝室のドアが開いた。
パッと小さな身体がカミロがいるベッドに駆け寄り、ベッドによじ登ってきて、カミロの膝に乗って、カミロの首に細くて頼りない腕を回してむぎゅうと抱きついてきた。
「ママ。おはよー」
「……おはよう」
「聞いてよ!パパが剣やっていいって」
「そうか」
「なーも!なーもやるぅ!」
「ナーディルはまだダメ」
「やぁぁぁ!やるのぉぉぉ!!」
「ダーメ」
結婚して50年目に、カミロは長男・バゼットを、その3年後に次男・ナーディルを産んだ。2人ともジャファー譲りの黒髪黒目だ。バゼットは祖父であるリチャードによく似た顔立ちで、ナーディルはどちらかと言えばカミロに似た顔立ちをしている。
抱きついているバゼットの子供体温な身体を緩く抱きしめていると、また眠くなる。昨夜も子供達が寝た後にジャファーとセックスを楽しみ、寝たのは結局朝方だった。カミロは大きく欠伸をして、抱きしめているバゼットごと再びベッドに横になった。
「ママ。また寝るの?」
「……あぁ」
「なーも!なーも!ままとねんねー!」
「えー。じゃあパパも寝るわ」
「ぱぱ、やっ!」
「はっはっは。嫌でも寝るし」
「やぁぁぁぁぁん!ぱぱ、やぁぁぁぁ!」
ナーディルは絶賛イヤイヤ期である。よく分からないところでイヤイヤする。
イヤイヤしているナーディルを抱っこしているジャファーがベッドに近づき、本当にナーディルごと布団に潜り込んできた。
2人の子供達を挟んだまま、ジャファーがカミロの唇に『キス』をした。
「一眠りして起きたら朝飯な。今朝はふわふわパンケーキだぞ。カリカリベーコンとスクランブルエッグ付き」
「あぁ……ジャファー」
「んー?」
「……いや、楽しみだ」
「ははっ。まぁ期待しててよ」
カミロはジャファーに言おうかと思った言葉を飲み込んで、子供達の額に各々『キス』をしてから目を閉じた。
カミロがジャファーのことを『好き』なことは、ジャファーはもうとっくの昔に知っている。わざわざ言う程のことではない。
子供達の体温を感じながら、カミロは胸がぽかぽか温かいのを堪能しつつ、また眠りに落ちた。
家族全員で朝寝を楽しめる『幸せ』を、カミロは確かに感じていた。
『黒』と『白』が交わったら、新しい『灰色』という色ができる。
新しい色がもたらす幸福は何物にも変えがたい。『黒』も『灰色』も、『白』にとって、本当にかけがえのない色になった。
『黒』と『白』が交わる時間は、もっとずっと長く続いていく。沢山の『灰色』を生み出しながら。
《完》
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