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第二章 都へ
5.輾転反側
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その夜はよく眠れなかった。
にぃ兄様のこと、兄様を助けたという貴婦人のこと、都ゆきのこと、そしてエルヴィーノ様のことを考えてしまって、寝つけなかった。
にぃ兄様は都へ連れていかれたのだろうか。
ご無事なら、都へ行けば会えるのかもしれない…?
だけど、都に何のコネも持たない私のような田舎娘が、どうやって探せるのだろう。
『いずれ名のある貴族だろうから、案外簡単に見つかるかもしれない』
とエルヴィーノ様は言っていた。
名のある貴族なら見つけられて兄様を取り戻せるという意味だろうか。
いったい、エルヴィーノ様とはどのような方なのだろう…
謎と言えば。
エルヴィーノ様は最初のとき以降、私の素性を訊こうとしない。
恐らく私が偽名を言ったのも判っていたのだろう。
本当の名前だって、山賊から聞いたのを私に確かめただけだ。
山の中で偶然拾った、氏姓も判らない女に対する処置としては、寛大すぎるのではないだろうか…
にぃ兄様を私と共に探すために一緒に都へ行こうと提案しながらも、私が家に帰りたがっている気持ちを尊重して、猶予をくれた。
何故…そんなことをしてくれるのかな。
『お前に興味を引かれる』と何度も口にするけれど…どういう意味なのだろう。
迷子になった子供の親を探してやるような庇護者的なものなのか。
女性として…なんてことは、まずないだろう。
アドルナートの勘違いを、思い切り否定してたし。
都にはとても素敵な女性がたくさんいるんだろうな~。
エルヴィーノ様にも『婚約者殿』がいるらしいし、私くらいの年齢の貴族の女性ならもう誰かの奥さんになって、子供の一人や二人、産んでいるのが当然だ。
にぃ兄様どころか、レオ兄様のお嫁さん探しに苦慮しているような貧乏貴族では、女とはいえ第三子の結婚なんてお母様の頭をかすめたこともないだろう。
日々の生活に追われ、またあんな田舎では素敵な出会いなどあるわけもなく。
私はこの年まで恋など知らずに生きてきた。
そんな生活が嫌だったというわけではない。
お母様やお兄様方、それから周囲の人たちとそれなりに楽しい毎日だったと思う。
だけど、田舎のどうしようもない閉塞感、このままここで朽ちていくだけなのかという、諦めを伴った絶望感。
そういう感情が、私の中に確かにあった。
お館様から最初に都ゆきの話があったとき、私は確かに、少し嬉しかった。
戸惑いとか不安とか、そういう感情が大きかったけど、だけどやっぱり都への憧れが自分にもあったことを自覚したんだ。
今は、あの時よりは、不安はない。
エルヴィーノ様がいてくれるから。
厚意に甘えてしまうのは、お返しできるものが何もないだけにとても気が引けるけれど、都に行ってにぃ兄様を探したい。
にぃ兄様と二人で一緒に、シエーラのあの家へ帰るんだ。
お母様とレオ兄様に手紙を送りたい。
きっとご心配なさっているだろう。
だけど、住所がこの邸の人たちに、エルヴィーノ様に知られてしまう。
知られたら…私はどうなってしまうんだろう。
申請とは全く別人の、しかも当人とは姉妹でも従姉妹でもない女が、図々しくご愛妾候補でございと都へ上がろうとしていたことがバレてしまったら…
お館様が罰を受けるのはともかく、お母様やレオ兄様にまで累が及んでしまうのでは…
そう思うと恐ろしくて、手紙を書くことすらできなかった。
ごめんなさい、お母様、レオ兄様。
必ず、にぃ兄様を連れて帰りますから。
もう少しだけ、待っていてくださいね。
しかしこの後。
私は思ってもみなかった方向で、また強引に都へ連れていかれることになるのだった。
にぃ兄様のこと、兄様を助けたという貴婦人のこと、都ゆきのこと、そしてエルヴィーノ様のことを考えてしまって、寝つけなかった。
にぃ兄様は都へ連れていかれたのだろうか。
ご無事なら、都へ行けば会えるのかもしれない…?
だけど、都に何のコネも持たない私のような田舎娘が、どうやって探せるのだろう。
『いずれ名のある貴族だろうから、案外簡単に見つかるかもしれない』
とエルヴィーノ様は言っていた。
名のある貴族なら見つけられて兄様を取り戻せるという意味だろうか。
いったい、エルヴィーノ様とはどのような方なのだろう…
謎と言えば。
エルヴィーノ様は最初のとき以降、私の素性を訊こうとしない。
恐らく私が偽名を言ったのも判っていたのだろう。
本当の名前だって、山賊から聞いたのを私に確かめただけだ。
山の中で偶然拾った、氏姓も判らない女に対する処置としては、寛大すぎるのではないだろうか…
にぃ兄様を私と共に探すために一緒に都へ行こうと提案しながらも、私が家に帰りたがっている気持ちを尊重して、猶予をくれた。
何故…そんなことをしてくれるのかな。
『お前に興味を引かれる』と何度も口にするけれど…どういう意味なのだろう。
迷子になった子供の親を探してやるような庇護者的なものなのか。
女性として…なんてことは、まずないだろう。
アドルナートの勘違いを、思い切り否定してたし。
都にはとても素敵な女性がたくさんいるんだろうな~。
エルヴィーノ様にも『婚約者殿』がいるらしいし、私くらいの年齢の貴族の女性ならもう誰かの奥さんになって、子供の一人や二人、産んでいるのが当然だ。
にぃ兄様どころか、レオ兄様のお嫁さん探しに苦慮しているような貧乏貴族では、女とはいえ第三子の結婚なんてお母様の頭をかすめたこともないだろう。
日々の生活に追われ、またあんな田舎では素敵な出会いなどあるわけもなく。
私はこの年まで恋など知らずに生きてきた。
そんな生活が嫌だったというわけではない。
お母様やお兄様方、それから周囲の人たちとそれなりに楽しい毎日だったと思う。
だけど、田舎のどうしようもない閉塞感、このままここで朽ちていくだけなのかという、諦めを伴った絶望感。
そういう感情が、私の中に確かにあった。
お館様から最初に都ゆきの話があったとき、私は確かに、少し嬉しかった。
戸惑いとか不安とか、そういう感情が大きかったけど、だけどやっぱり都への憧れが自分にもあったことを自覚したんだ。
今は、あの時よりは、不安はない。
エルヴィーノ様がいてくれるから。
厚意に甘えてしまうのは、お返しできるものが何もないだけにとても気が引けるけれど、都に行ってにぃ兄様を探したい。
にぃ兄様と二人で一緒に、シエーラのあの家へ帰るんだ。
お母様とレオ兄様に手紙を送りたい。
きっとご心配なさっているだろう。
だけど、住所がこの邸の人たちに、エルヴィーノ様に知られてしまう。
知られたら…私はどうなってしまうんだろう。
申請とは全く別人の、しかも当人とは姉妹でも従姉妹でもない女が、図々しくご愛妾候補でございと都へ上がろうとしていたことがバレてしまったら…
お館様が罰を受けるのはともかく、お母様やレオ兄様にまで累が及んでしまうのでは…
そう思うと恐ろしくて、手紙を書くことすらできなかった。
ごめんなさい、お母様、レオ兄様。
必ず、にぃ兄様を連れて帰りますから。
もう少しだけ、待っていてくださいね。
しかしこの後。
私は思ってもみなかった方向で、また強引に都へ連れていかれることになるのだった。
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