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第三章 都での生活
17.エルヴィーノ様の告白
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私を抱きしめたまま、エルヴィーノ様は囁くように言う。
「クレメンティナ…
俺はアレクとの約束通り、地方の小戦を収めて帰還した。
アレクは、俺にクレメンティナを返すと言ってくれた」
そこで一度言葉を切り、ため息をつくように続ける。
「さっきも言った通り、俺はアレクとの約束を果たしてクレメンティナを迎えに来た。
だけどアレクは…返すと言いながら、どうも煮え切らない。
サン=バルロッテ館からクラリッサを出すのは良くないとかなんとか…
俺が約束は守ってくれと言ったら、クラリッサの意思を尊重しろと言い出した」
エルヴィーノ様は私の身体を離して、正面から見つめる。
「考えたくないんだが、クレメンティナとアレクの間には、その、恋愛関係があるのか?
アレクが誰だか、知っているのか?」
私は急いで首を横に振る。
胸に何かモヤモヤとした嫌な感情が渦巻くのを振り払いたかった。
「アレク様はわたくしの庇護者と申しますか、飼い主?的な存在と申しますか…
わたくしに特別な感情をお持ちのようには到底感じられませんし、もちろん、何も仰られたことはございません。
いつも遊ばれているというか、わたくしをおからかいになられるのがお好きなようなだけに感じておりますわ。
アレク様がどなたか…というご質問の趣旨が判らないのですが、館の誰もそれにリーチェも、アレク様がどういう方なのか訊いても教えてはくれませんので…」
私の立場では誰も何も教えてくれないのも仕方ないのかもしれないけど。
アレク様は恐らく、とても偉い方なのかな、とは感じている。
大公様のお傍近くに仕える、大臣とか近衛隊長とか??
国賓待遇(とリーチェが言ってた)のエセルバート様が、アレク様には敬意を払っているように見えるし。
どこの誰か判らないのは、私だって同じだ。
山賊のいる山から拾われてきた、胡散臭すぎる私のような人間に何も教えられないと思うのは当然だろう。
そう思っても、なんだか苦しい。
アレク様というのは、どんな方なんだろう。
私がにぃ兄様を探して城門の外へ出た時に、鬘を脱ぎ捨て自毛を乱し息を切らしながら私を探しに来てくれた。
高貴な方にあるまじき行為で、私は後から不思議に思ったけれど、あの時、アレク様の「クラリッサ!」と大きく呼ぶ声を聴いて本当に嬉しかったし安心した。
他の誰が来てくれるより、私は…
「クレメンティナは、アレクのことをどう思っている?」
手を伸ばして私の髪を優しく撫でながら切なく問う。
「わたくしごとき、卑しいものが…アレク様に対してどうこうという感情を抱いて良いとは思っておりませんし、そのようなことは考えたことがございません。
わたくしの使命は、兄を首都で探して故郷へ連れ帰ること、でござ」
「では俺のことは?
クレメンティナ、俺のことはどう思っているのだ?」
私のしどろもどろな言葉を遮るように、エルヴィーノ様は身を乗り出して訊いてくる。
私は思わず身体を引き、エルヴィーノ様の怖いほどに真剣な瞳を見つめた。
「え…エルヴィーノ様のこと…?」
「そうだ。
俺は、お前を一生の伴侶にしたいと思っている。
そのために、苦手で嫌悪する父親や兄とも対峙する覚悟でいる。
お前の母上や兄上もすんなりとはいかないだろう。
障壁は大きいが…アレクまで出てきちゃうと猶更だが…」
エルヴィーノ様は私の両手を取った。
「クレメンティナ、俺はこの先、お前と共に生きていきたい。
お前の愛くるしい表情や可愛らしい仕草は、最初から俺の心をとらえて離さないんだ。
こんな気持ちは初めてだ。
クレメンティナ、どうか…俺と一緒になってくれ」
「エルヴィーノ様…」
「クレメンティナ…
俺はアレクとの約束通り、地方の小戦を収めて帰還した。
アレクは、俺にクレメンティナを返すと言ってくれた」
そこで一度言葉を切り、ため息をつくように続ける。
「さっきも言った通り、俺はアレクとの約束を果たしてクレメンティナを迎えに来た。
だけどアレクは…返すと言いながら、どうも煮え切らない。
サン=バルロッテ館からクラリッサを出すのは良くないとかなんとか…
俺が約束は守ってくれと言ったら、クラリッサの意思を尊重しろと言い出した」
エルヴィーノ様は私の身体を離して、正面から見つめる。
「考えたくないんだが、クレメンティナとアレクの間には、その、恋愛関係があるのか?
アレクが誰だか、知っているのか?」
私は急いで首を横に振る。
胸に何かモヤモヤとした嫌な感情が渦巻くのを振り払いたかった。
「アレク様はわたくしの庇護者と申しますか、飼い主?的な存在と申しますか…
わたくしに特別な感情をお持ちのようには到底感じられませんし、もちろん、何も仰られたことはございません。
いつも遊ばれているというか、わたくしをおからかいになられるのがお好きなようなだけに感じておりますわ。
アレク様がどなたか…というご質問の趣旨が判らないのですが、館の誰もそれにリーチェも、アレク様がどういう方なのか訊いても教えてはくれませんので…」
私の立場では誰も何も教えてくれないのも仕方ないのかもしれないけど。
アレク様は恐らく、とても偉い方なのかな、とは感じている。
大公様のお傍近くに仕える、大臣とか近衛隊長とか??
国賓待遇(とリーチェが言ってた)のエセルバート様が、アレク様には敬意を払っているように見えるし。
どこの誰か判らないのは、私だって同じだ。
山賊のいる山から拾われてきた、胡散臭すぎる私のような人間に何も教えられないと思うのは当然だろう。
そう思っても、なんだか苦しい。
アレク様というのは、どんな方なんだろう。
私がにぃ兄様を探して城門の外へ出た時に、鬘を脱ぎ捨て自毛を乱し息を切らしながら私を探しに来てくれた。
高貴な方にあるまじき行為で、私は後から不思議に思ったけれど、あの時、アレク様の「クラリッサ!」と大きく呼ぶ声を聴いて本当に嬉しかったし安心した。
他の誰が来てくれるより、私は…
「クレメンティナは、アレクのことをどう思っている?」
手を伸ばして私の髪を優しく撫でながら切なく問う。
「わたくしごとき、卑しいものが…アレク様に対してどうこうという感情を抱いて良いとは思っておりませんし、そのようなことは考えたことがございません。
わたくしの使命は、兄を首都で探して故郷へ連れ帰ること、でござ」
「では俺のことは?
クレメンティナ、俺のことはどう思っているのだ?」
私のしどろもどろな言葉を遮るように、エルヴィーノ様は身を乗り出して訊いてくる。
私は思わず身体を引き、エルヴィーノ様の怖いほどに真剣な瞳を見つめた。
「え…エルヴィーノ様のこと…?」
「そうだ。
俺は、お前を一生の伴侶にしたいと思っている。
そのために、苦手で嫌悪する父親や兄とも対峙する覚悟でいる。
お前の母上や兄上もすんなりとはいかないだろう。
障壁は大きいが…アレクまで出てきちゃうと猶更だが…」
エルヴィーノ様は私の両手を取った。
「クレメンティナ、俺はこの先、お前と共に生きていきたい。
お前の愛くるしい表情や可愛らしい仕草は、最初から俺の心をとらえて離さないんだ。
こんな気持ちは初めてだ。
クレメンティナ、どうか…俺と一緒になってくれ」
「エルヴィーノ様…」
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