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第三章 都での生活
18.提案
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私は突然の告白に戸惑う。
まさか、エルヴィーノ様がそんな気持ちでいらっしゃったなんて、思ってもみなかった。
心臓が胸の中で踊るように跳ね回っている。
息がうまくできなくて、私は胸に手をあてて呼吸を整えようと試みる。
「え、で、でも、都にご婚約者様がいらっしゃるって…」
討伐隊の邸で、執事のアドルナートが言っていたことを思い出して言った。
エルヴィーノ様は大きくかぶりを振った。
「あれは、親が決めた家同士の結婚だ。
俺も、もちろん向こうの娘も、互いに何とも思っちゃいない。
むしろ、破談になったほうがいいと互いに思ってる」
摯実な瞳でエルヴィーノ様は言い切り、もう一度私を抱きしめた。
「返事は急がない。
だけど、気持ちだけ聞かせてくれ。
今は俺のことを好きでなくても良いから、これから俺と生きていっても良いと思うか?
そのためなら俺は何でもする」
私は、触れ合っている身体から心臓の鼓動が伝わってしまうのではないかと思いながら、言葉を絞り出した。
「でも、あの…いきなりなので、今この時点では…なんとも…
考えたこともなかったので」
エルヴィーノ様は大きく息をついて、私を離す。
「…そうか。
俺にとっては、いきなりじゃないんだけどな。
では、今日ここを出て、俺の私邸に来て欲しい。
お前の兄や故郷に連絡を取るのにも何かと便利だから」
え…
私は咄嗟に言葉が出てこずに黙り込む。
ここを、サン=バルロッテ館を出て、エルヴィーノ様のお邸へ…?
アレク様の可笑しそうに笑う、温かい笑顔が浮かぶ。
エセルバート様の豪快な笑い声、リーチェのきゃははっと明るく笑う顔、ジョルジーニの穏やかな微笑みが瞼を過っていき、私は目を閉じて、拳をぎゅっと握りしめた。
すぐに承諾が得られるものと思っていたらしいエルヴィーノ様は立ち上がろうとして、私が座ったままなのを見て「…どうした?具合が悪いのか?」と心配そうに声をかける。
私は「…いいえ」と首を横に振る。
エルヴィーノ様は「じゃあ…何故、」と言いかけて「もしかして、俺と一緒に行くのは嫌だってことか?」と、屈んで私の肩をつかんだ。
エルヴィーノ様の力の強さ、肩の痛みに顔を顰めながら私は「いえ、決して嫌だとかではありません」と声を震わせながら言った。
「…エセルバート様のお稽古もまだ終わってはおりませんし、愛馬のグラディアトラスもここにおりますし…
それと、」
思いついて、私は勢い込んでエルヴィーノ様を見上げる。
「ヴァネッサが…この都にいるかもしれないのでございます。
ラピーノの帽子屋に行きました折に、見かけたような気がいたしまして、このサン=バルロッテ館にお仕えしている少年に、探してもらうように頼んでいるのです。
ですから、あの、ここから移動するのは」
「判った」
エルヴィーノ様は私の髪をくしゃっと撫でた。
「そんなに必死になられると、切なくて悔しいが…
結局俺は今日、お前から何の返事ももらえなかったってことだな。
まあ、急だったし、ゆっくり考えてくれ。
いずれにせよ、アレクは自分の自由に身動きが取れる人間じゃない。
都の、そしてヴァラリオーティ家の恥さらしな不出来の次男坊の俺の方が、よっぽどお前を幸せにしてやれるよ」
そう言って、私の首の後ろに手を回し、引き寄せると額にキスした。
「何なら、俺はお前と一緒にシエーラに住んでも良い。
お前の父親のように」
まさか、エルヴィーノ様がそんな気持ちでいらっしゃったなんて、思ってもみなかった。
心臓が胸の中で踊るように跳ね回っている。
息がうまくできなくて、私は胸に手をあてて呼吸を整えようと試みる。
「え、で、でも、都にご婚約者様がいらっしゃるって…」
討伐隊の邸で、執事のアドルナートが言っていたことを思い出して言った。
エルヴィーノ様は大きくかぶりを振った。
「あれは、親が決めた家同士の結婚だ。
俺も、もちろん向こうの娘も、互いに何とも思っちゃいない。
むしろ、破談になったほうがいいと互いに思ってる」
摯実な瞳でエルヴィーノ様は言い切り、もう一度私を抱きしめた。
「返事は急がない。
だけど、気持ちだけ聞かせてくれ。
今は俺のことを好きでなくても良いから、これから俺と生きていっても良いと思うか?
そのためなら俺は何でもする」
私は、触れ合っている身体から心臓の鼓動が伝わってしまうのではないかと思いながら、言葉を絞り出した。
「でも、あの…いきなりなので、今この時点では…なんとも…
考えたこともなかったので」
エルヴィーノ様は大きく息をついて、私を離す。
「…そうか。
俺にとっては、いきなりじゃないんだけどな。
では、今日ここを出て、俺の私邸に来て欲しい。
お前の兄や故郷に連絡を取るのにも何かと便利だから」
え…
私は咄嗟に言葉が出てこずに黙り込む。
ここを、サン=バルロッテ館を出て、エルヴィーノ様のお邸へ…?
アレク様の可笑しそうに笑う、温かい笑顔が浮かぶ。
エセルバート様の豪快な笑い声、リーチェのきゃははっと明るく笑う顔、ジョルジーニの穏やかな微笑みが瞼を過っていき、私は目を閉じて、拳をぎゅっと握りしめた。
すぐに承諾が得られるものと思っていたらしいエルヴィーノ様は立ち上がろうとして、私が座ったままなのを見て「…どうした?具合が悪いのか?」と心配そうに声をかける。
私は「…いいえ」と首を横に振る。
エルヴィーノ様は「じゃあ…何故、」と言いかけて「もしかして、俺と一緒に行くのは嫌だってことか?」と、屈んで私の肩をつかんだ。
エルヴィーノ様の力の強さ、肩の痛みに顔を顰めながら私は「いえ、決して嫌だとかではありません」と声を震わせながら言った。
「…エセルバート様のお稽古もまだ終わってはおりませんし、愛馬のグラディアトラスもここにおりますし…
それと、」
思いついて、私は勢い込んでエルヴィーノ様を見上げる。
「ヴァネッサが…この都にいるかもしれないのでございます。
ラピーノの帽子屋に行きました折に、見かけたような気がいたしまして、このサン=バルロッテ館にお仕えしている少年に、探してもらうように頼んでいるのです。
ですから、あの、ここから移動するのは」
「判った」
エルヴィーノ様は私の髪をくしゃっと撫でた。
「そんなに必死になられると、切なくて悔しいが…
結局俺は今日、お前から何の返事ももらえなかったってことだな。
まあ、急だったし、ゆっくり考えてくれ。
いずれにせよ、アレクは自分の自由に身動きが取れる人間じゃない。
都の、そしてヴァラリオーティ家の恥さらしな不出来の次男坊の俺の方が、よっぽどお前を幸せにしてやれるよ」
そう言って、私の首の後ろに手を回し、引き寄せると額にキスした。
「何なら、俺はお前と一緒にシエーラに住んでも良い。
お前の父親のように」
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