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第七章 焦土
10.奥方様との再会
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痩せ細り、歩くこともままならない様子の奥方様の姿と、奥方様の背後でガタガタ震えている地元の女性(手伝いに来ていた人だ)を見て、私を睨みつけているペデルツィーニに向かって詰問する。
「こんな状態でここに奥方様を置いとくなんて、考えられないわ!
お医師にはちゃんと診てもらったの?
他の女性たちは皆、きちんと食べて寝ているの?!」
「女性と子供を解放しろ!
貴様、自分が何をしているか判ってるのか?!
こんなのは大量虐殺、ただの殺戮だ!
お前に大義名分などない!」
エルヴィーノ様は大喝する。
その声には、本気の怒りが込められていてびりっと殺気立つようで、奥方様やヴァネッサ、横にいた私まで震えあがる。
ペデルツィーニも真っ青になったが、ぐっと足を踏ん張り怒鳴り散らす。
「俺の女房と召使だ!
最後まで生き死にを共にするのが当然だろう!」
「本気で言ってるのか?
お前、本当のバカだな、ひとりで死ね!」
…にぃ兄様のこんな言葉を、初めて聞いた。
いつも穏やかで怒った顔さえめったに見せないにぃ兄様が…声を荒らげることだって珍しいのに。
私も、奥方様もヴァネッサも唖然としてにぃ兄様を凝視した。
にぃ兄様は私たちの視線には気づかない様子で、憤怒の表情でペデルツィーニを睨んでいる。
その時、背後の扉が開いて、恐ろしく威圧的な気配の塊(としか表現できない)が入ってきた。
恐る恐る振り向くと、エセルバート様が入ってくるところだった。
動作はゆったりしていて無表情なのに、纏う空気はびりびりと緊張して、凄まじい存在感に圧倒される。
これが、歴戦の勇者の風格というやつか。
そこにいた皆は立っているのがやっとというくらいに気圧されて、ただ黙って見つめていた。
反対側の扉の付近にいたペデルツィーニを突き飛ばすようにして、バルベルデが駆け込んできた。
「この領主館の…ほぼ全部の兵が、その男一人に倒された!
とんでもない、こんな…」
あわあわと口を震わせ、口髭を情けなく垂れさがらせたバルベルデは青白い顔色を更に白っぽくして、私とエセルバート様に向かって言う。
「ちょ、協議をさせてください。
大公妃陛下と、従者の方々は、一旦、申し訳ないが外へ出ていただいて宜しいか」
「女性たちの解放が条件よ」
私がきっぱりと言うと、バルベルデは首が折れんばかりに首肯する。
「も、もちろんです!
だいたい、私は最初から反対だったんだ、こんなやり方」
「おい!バルベルデ!
そんな勝手に…」
慌てるペデルツィーニを無視して「女子供を解放しろ!全員だ!」と大きな声で扉の外に呼ばわる。
バタバタと走り回る音が聞こえ、エルヴィーノ様はほっとしたように、ヴァネッサに話しかけた。
「ヴァネッサ、女性たちに声をかけて、玄関ホールに集めてくれ」
「はい、判りました」
私は歩み寄って奥方様を支える。
ヴァネッサは返事をして、私に「母をお願いします」と囁いて、傍を離れて扉から外へ出て行く。
「奥方様…大丈夫ですか」
私はにぃ兄様と協力して、奥方様を抱えて部屋を出ようとする。
「ブリジッタ!」
背後からペデルツィーニの焦ったような縋るような声が聞こえた。
奥方様はにぃ兄様に支えられて後ろを振り向き弱々しい声で、でもはっきりと答えた。
「あなた…
私、あなたは酷い領主だけれど、娘への愛情だけは本物だと思っていました。
なのに、あんな言い方、私は絶対許せない。
さようならライモンド」
「いや、待ってくれ!ブリジッタ!
お前にまで去られたら、俺は…」
「自業自得だわ。
さっさと白旗をお上げなさい」
私は吐き捨てると、奥方様と一緒に部屋の外へ出た。
哀れなペデルツィーニは何か喚きながら、バルベルデに命じられた兵士に引きずられるようにして私たちとは反対側の館の奥へと続く扉を出て行った。
私たちの出た扉の外には、死屍累々、といった感じで兵士が大勢倒れていた。
痛そうに呻いてる人もいる。
殺しちゃったの…?
私は青くなるが、「いやこれ全部、気絶してるだけだよ」とにぃ兄様が畏怖するような口調で言った。
「血の匂いがしない。
だけど、この兵士たちは、しばらくは使い物にならないだろうな。
すっごい人だ、エセルバート様って」
私は背後をのしのしと歩いてついてくるエセルバート様の厳つい容貌を頼もしく思いながら廊下を玄関に向かって歩く。
前方を警戒しながら歩くドレス姿のエルヴィーノ様の背中に向かって、感謝の思いを込めて小さく頭を下げた。
ありがとう、あなた方のお陰で、とりあえずは女性たちだけでも解放できた。
「こんな状態でここに奥方様を置いとくなんて、考えられないわ!
お医師にはちゃんと診てもらったの?
他の女性たちは皆、きちんと食べて寝ているの?!」
「女性と子供を解放しろ!
貴様、自分が何をしているか判ってるのか?!
こんなのは大量虐殺、ただの殺戮だ!
お前に大義名分などない!」
エルヴィーノ様は大喝する。
その声には、本気の怒りが込められていてびりっと殺気立つようで、奥方様やヴァネッサ、横にいた私まで震えあがる。
ペデルツィーニも真っ青になったが、ぐっと足を踏ん張り怒鳴り散らす。
「俺の女房と召使だ!
最後まで生き死にを共にするのが当然だろう!」
「本気で言ってるのか?
お前、本当のバカだな、ひとりで死ね!」
…にぃ兄様のこんな言葉を、初めて聞いた。
いつも穏やかで怒った顔さえめったに見せないにぃ兄様が…声を荒らげることだって珍しいのに。
私も、奥方様もヴァネッサも唖然としてにぃ兄様を凝視した。
にぃ兄様は私たちの視線には気づかない様子で、憤怒の表情でペデルツィーニを睨んでいる。
その時、背後の扉が開いて、恐ろしく威圧的な気配の塊(としか表現できない)が入ってきた。
恐る恐る振り向くと、エセルバート様が入ってくるところだった。
動作はゆったりしていて無表情なのに、纏う空気はびりびりと緊張して、凄まじい存在感に圧倒される。
これが、歴戦の勇者の風格というやつか。
そこにいた皆は立っているのがやっとというくらいに気圧されて、ただ黙って見つめていた。
反対側の扉の付近にいたペデルツィーニを突き飛ばすようにして、バルベルデが駆け込んできた。
「この領主館の…ほぼ全部の兵が、その男一人に倒された!
とんでもない、こんな…」
あわあわと口を震わせ、口髭を情けなく垂れさがらせたバルベルデは青白い顔色を更に白っぽくして、私とエセルバート様に向かって言う。
「ちょ、協議をさせてください。
大公妃陛下と、従者の方々は、一旦、申し訳ないが外へ出ていただいて宜しいか」
「女性たちの解放が条件よ」
私がきっぱりと言うと、バルベルデは首が折れんばかりに首肯する。
「も、もちろんです!
だいたい、私は最初から反対だったんだ、こんなやり方」
「おい!バルベルデ!
そんな勝手に…」
慌てるペデルツィーニを無視して「女子供を解放しろ!全員だ!」と大きな声で扉の外に呼ばわる。
バタバタと走り回る音が聞こえ、エルヴィーノ様はほっとしたように、ヴァネッサに話しかけた。
「ヴァネッサ、女性たちに声をかけて、玄関ホールに集めてくれ」
「はい、判りました」
私は歩み寄って奥方様を支える。
ヴァネッサは返事をして、私に「母をお願いします」と囁いて、傍を離れて扉から外へ出て行く。
「奥方様…大丈夫ですか」
私はにぃ兄様と協力して、奥方様を抱えて部屋を出ようとする。
「ブリジッタ!」
背後からペデルツィーニの焦ったような縋るような声が聞こえた。
奥方様はにぃ兄様に支えられて後ろを振り向き弱々しい声で、でもはっきりと答えた。
「あなた…
私、あなたは酷い領主だけれど、娘への愛情だけは本物だと思っていました。
なのに、あんな言い方、私は絶対許せない。
さようならライモンド」
「いや、待ってくれ!ブリジッタ!
お前にまで去られたら、俺は…」
「自業自得だわ。
さっさと白旗をお上げなさい」
私は吐き捨てると、奥方様と一緒に部屋の外へ出た。
哀れなペデルツィーニは何か喚きながら、バルベルデに命じられた兵士に引きずられるようにして私たちとは反対側の館の奥へと続く扉を出て行った。
私たちの出た扉の外には、死屍累々、といった感じで兵士が大勢倒れていた。
痛そうに呻いてる人もいる。
殺しちゃったの…?
私は青くなるが、「いやこれ全部、気絶してるだけだよ」とにぃ兄様が畏怖するような口調で言った。
「血の匂いがしない。
だけど、この兵士たちは、しばらくは使い物にならないだろうな。
すっごい人だ、エセルバート様って」
私は背後をのしのしと歩いてついてくるエセルバート様の厳つい容貌を頼もしく思いながら廊下を玄関に向かって歩く。
前方を警戒しながら歩くドレス姿のエルヴィーノ様の背中に向かって、感謝の思いを込めて小さく頭を下げた。
ありがとう、あなた方のお陰で、とりあえずは女性たちだけでも解放できた。
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