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第三章 婚姻の儀
11.騎士たちの帰国
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皆が大騒ぎして手紙を書き終わったころ、メンデエルから荷物や私たちに付き添ってきてくれた騎士や歩兵たちが、帰国の挨拶に来た。
隊長のディートリヒが緊張の面持ちで敬礼して口を開く。
『王太子妃殿下、この度のご婚姻の儀式が無事に済みましたこと、お祝い申し上げます。
我々メンデエル国騎士団歩兵団、これにて帰国いたします。
王太子妃殿下に置かれましては、末永くルーマデュカ国でお幸せにお暮しあそばしますよう、心よりお祈り申し上げます』
私は立ち上がると、ディートリヒに近づいて手を差し出す。
ディートリヒは恭しく私の指の先にキスした。
『皆、わたくしの結婚に際して、護衛をしてくれてありがとう。
お陰で道中何の心配もなく、無事にルーマデュカまで来られました。
気を付けて、メンデエルに帰ってね。
お父様やお母様に宜しく伝えてください。
わたくしは、ルーマデュカで大事にされていると』
私がそう言って微笑むと、ディートリヒは一瞬、切なく悔しそうな表情をして『はっ!』と敬礼した。
私は皆の手紙をディートリヒに託し、そこで気が付く。
『そうだわ…わたくしったら、バタバタしていてすっかり失念していたけれど…
メンデエルの皆や、あなた方に託けるお土産を用意するのを忘れていたわ』
どうしよう…後で送るにしても、とりあえずこの者たちを手ぶらで帰すわけにはいかないし。
困り果てる私をよそに、ディートリヒは少し微笑んで『大丈夫であります!』と大きな声で言う。
『ルーマデュカ国を辞するにあたりまして、先ほど王太子殿下にお目通りいたしました。
本来は、王陛下にご挨拶申し上げるべきところなのですが、陛下のお加減があまり宜しくないとのことで、王太子殿下が対応くださいました。
王太子殿下から労いのお言葉を賜り、たくさんのご下賜を頂戴いたしました。
また、メンデエルの王家に対しましても、この度は王女殿下を輿入れさせてくださったお礼の言葉をお伝えするように仰って、贈り物をお届けするように、とお預かりいたしました』
『えっ、王太子が?』
私は驚いて問う。
本当なら王様が言うべきところを、代理に言わせるなんてどうなんだ、という気がしないでもないけど…
執事とかじゃなくて、ちゃんと王太子が対応してくれたのは、素直に嬉しい。
『しかし…王太子殿下のお隣には、姫様ではない方がいらっしゃって。
そのお方がまるで妃殿下のようにお振る舞いなのが、私どもには業腹で…』
悔しそうに顔を歪めてディートリヒが言うのに、他の騎士や歩兵たちもうなずく。
私は何とも言いようがなくて、少し沈黙が落ちる。
気まずい空気を振り払うように、私は強いて明るい声を出した。
『まあ、それは良いのよ。
わたくしは何も気にしていないわ。
皆、元気で。
またいつか会えると良いわね』
皆は涙ぐみながら、敬礼した。
メンデエルの侍女たちも、皆、泣いて彼らを送り出した。
この時、王陛下の体調について、私自身はまったく問題にしていなかったが(だって、晩餐会も結婚式も元気そうだったし!)、事態は思うよりずっと深刻だったのだ。
隊長のディートリヒが緊張の面持ちで敬礼して口を開く。
『王太子妃殿下、この度のご婚姻の儀式が無事に済みましたこと、お祝い申し上げます。
我々メンデエル国騎士団歩兵団、これにて帰国いたします。
王太子妃殿下に置かれましては、末永くルーマデュカ国でお幸せにお暮しあそばしますよう、心よりお祈り申し上げます』
私は立ち上がると、ディートリヒに近づいて手を差し出す。
ディートリヒは恭しく私の指の先にキスした。
『皆、わたくしの結婚に際して、護衛をしてくれてありがとう。
お陰で道中何の心配もなく、無事にルーマデュカまで来られました。
気を付けて、メンデエルに帰ってね。
お父様やお母様に宜しく伝えてください。
わたくしは、ルーマデュカで大事にされていると』
私がそう言って微笑むと、ディートリヒは一瞬、切なく悔しそうな表情をして『はっ!』と敬礼した。
私は皆の手紙をディートリヒに託し、そこで気が付く。
『そうだわ…わたくしったら、バタバタしていてすっかり失念していたけれど…
メンデエルの皆や、あなた方に託けるお土産を用意するのを忘れていたわ』
どうしよう…後で送るにしても、とりあえずこの者たちを手ぶらで帰すわけにはいかないし。
困り果てる私をよそに、ディートリヒは少し微笑んで『大丈夫であります!』と大きな声で言う。
『ルーマデュカ国を辞するにあたりまして、先ほど王太子殿下にお目通りいたしました。
本来は、王陛下にご挨拶申し上げるべきところなのですが、陛下のお加減があまり宜しくないとのことで、王太子殿下が対応くださいました。
王太子殿下から労いのお言葉を賜り、たくさんのご下賜を頂戴いたしました。
また、メンデエルの王家に対しましても、この度は王女殿下を輿入れさせてくださったお礼の言葉をお伝えするように仰って、贈り物をお届けするように、とお預かりいたしました』
『えっ、王太子が?』
私は驚いて問う。
本当なら王様が言うべきところを、代理に言わせるなんてどうなんだ、という気がしないでもないけど…
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『しかし…王太子殿下のお隣には、姫様ではない方がいらっしゃって。
そのお方がまるで妃殿下のようにお振る舞いなのが、私どもには業腹で…』
悔しそうに顔を歪めてディートリヒが言うのに、他の騎士や歩兵たちもうなずく。
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『まあ、それは良いのよ。
わたくしは何も気にしていないわ。
皆、元気で。
またいつか会えると良いわね』
皆は涙ぐみながら、敬礼した。
メンデエルの侍女たちも、皆、泣いて彼らを送り出した。
この時、王陛下の体調について、私自身はまったく問題にしていなかったが(だって、晩餐会も結婚式も元気そうだったし!)、事態は思うよりずっと深刻だったのだ。
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