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第四章 王宮で
11.複雑な心境
その日私は一日機嫌が悪かった。
王太子の失礼極まりない態度、口調、そして妙に真剣な瞳。
私が男性慣れしていないと思って、バカにしているのかしら。
畑の案山子だの、焼き過ぎのゴーフルだの、外見を揶揄するなんて紳士じゃないわ。
そうやって貶すくせに「他の男に心を移すのは許さない」とか言って、私を自分の所有物みたいに扱って。
心を移すも何も、最初からあなたに寄せている心は無いわ!
あんな男が私の夫だなんて…
情けなくて腹立たしくて、涙が出てくるわ。
外見は壮絶に良くて、顔も神様の最高傑作みたいな感じだけど、性格が悪すぎる。
もう少ししたら「白い結婚」を理由に、教皇様に離婚を申し立ててやろうかな。
それに引き換え…
私はジェルヴェの明るく朗らかで華やかな風貌を思い出して、胸の中がじんわりと温かくなる。
ジェルヴェは、私を本当に愛しく思ってくれているのだろうか。
それとも、王太子のようにからかっているだけ?
「リンスター、大丈夫ですか?!」
部屋に慌ただしく駆け込んできたのは、たった今、心に浮かべていた人物で、私は顔が赤くなってくるのを止められない。
「リンスター…どうなさいました?」
ジェルヴェは、顔を背けてしまった私に近づき、床に膝をついて心配そうに私の顔を覗き込む。
「狩猟会が終わった後、ご婦人方やアンヌ=マリー嬢を振り切って、というか撒いて、フィリベールが消えたと大騒ぎになりました。
皆で探しているときにひょっこり現れて、城の庭で迷ったとか言って、それからは普通にパーティに参加していたのですが…
先ほど私の所へ来て、妃と二人で四阿でお茶を飲んだと」
ああん?
何故そういう理解になる?
私を馬鹿にして叔父様を噂にかこつけてディスって、自分勝手なこと言ってさっさと帰ったのよ?!
最後に「メンデエルでは、女性らしい庭というのは畑のことで、女は皆、お前みたいに案山子のようなのか」とかクソみたいな感想をほざいて。
そんなわけないでしょっ!
私は今度は怒りで顔を赤くしながら言い放つ。
「違います!
勝手に押しかけてきて、お茶は飲んだけど一方的なお話ばかりで」
私の剣幕にジェルヴェはビックリしたように綺麗な濃い藍色の瞳を見開いた。
徐々にその瞳に笑いが宿り、くくく、と可笑しそうに笑いだす。
「そうですか…
わざわざ言いに来るから、あなたと何か、そうですね、相互理解のようなものがあったのかと心配になりましたよ。
いよいよヤキモチを抑えられなくなってきたと見える」
「??」
言いながら私の隣に座るジェルヴェの言葉の意味が全然解らず、私は首を傾げてジェルヴェを見る。
ジェルヴェは切なげに瞳を揺らし、私の頬に愛しげに触れて「あなたは…フィリベールを愛しているの?」と問う。
「ええっ?」
私はのけぞり、「そんなことあるわけないでしょ」と心底驚いて言う。
むしろ嫌い、大嫌い。
「そう…?
でも初夜には、受け入れたのでしょう、彼を」
「あ、いえあれは…」
あーそうか。
対外的には初夜にちゃんと営んだことになってるんだった。
うーん。本当のことを言っていいのかどうか…
黙り込む私の頭をジェルヴェは優しく抱き寄せて「…すみません」と呟くように言う。
「王家に生まれて、意に染まない結婚を強いられるのは当然といえば当然のことですよね。
あなたはしきたりに則っただけでありフィリベールを拒むことなどできないのは当たり前のことなのに…
それが判っていてもなお、嫉妬が抑えられないのです。
年も近く可愛い甥っ子なのに、あなたをたとえ一度でも抱いたフィリベールが…妬けて仕方ない」
歯を食いしばるように言い、抱き寄せる腕に力を籠める。
私はジェルヴェの言葉を、嬉しいと感じていた。
そしてそんな自分に驚いていた。
ああでも。
流石の私でも、こんな状況で言えないわ…
初夜をすっぽかして爆睡してましたとは。
王太子の失礼極まりない態度、口調、そして妙に真剣な瞳。
私が男性慣れしていないと思って、バカにしているのかしら。
畑の案山子だの、焼き過ぎのゴーフルだの、外見を揶揄するなんて紳士じゃないわ。
そうやって貶すくせに「他の男に心を移すのは許さない」とか言って、私を自分の所有物みたいに扱って。
心を移すも何も、最初からあなたに寄せている心は無いわ!
あんな男が私の夫だなんて…
情けなくて腹立たしくて、涙が出てくるわ。
外見は壮絶に良くて、顔も神様の最高傑作みたいな感じだけど、性格が悪すぎる。
もう少ししたら「白い結婚」を理由に、教皇様に離婚を申し立ててやろうかな。
それに引き換え…
私はジェルヴェの明るく朗らかで華やかな風貌を思い出して、胸の中がじんわりと温かくなる。
ジェルヴェは、私を本当に愛しく思ってくれているのだろうか。
それとも、王太子のようにからかっているだけ?
「リンスター、大丈夫ですか?!」
部屋に慌ただしく駆け込んできたのは、たった今、心に浮かべていた人物で、私は顔が赤くなってくるのを止められない。
「リンスター…どうなさいました?」
ジェルヴェは、顔を背けてしまった私に近づき、床に膝をついて心配そうに私の顔を覗き込む。
「狩猟会が終わった後、ご婦人方やアンヌ=マリー嬢を振り切って、というか撒いて、フィリベールが消えたと大騒ぎになりました。
皆で探しているときにひょっこり現れて、城の庭で迷ったとか言って、それからは普通にパーティに参加していたのですが…
先ほど私の所へ来て、妃と二人で四阿でお茶を飲んだと」
ああん?
何故そういう理解になる?
私を馬鹿にして叔父様を噂にかこつけてディスって、自分勝手なこと言ってさっさと帰ったのよ?!
最後に「メンデエルでは、女性らしい庭というのは畑のことで、女は皆、お前みたいに案山子のようなのか」とかクソみたいな感想をほざいて。
そんなわけないでしょっ!
私は今度は怒りで顔を赤くしながら言い放つ。
「違います!
勝手に押しかけてきて、お茶は飲んだけど一方的なお話ばかりで」
私の剣幕にジェルヴェはビックリしたように綺麗な濃い藍色の瞳を見開いた。
徐々にその瞳に笑いが宿り、くくく、と可笑しそうに笑いだす。
「そうですか…
わざわざ言いに来るから、あなたと何か、そうですね、相互理解のようなものがあったのかと心配になりましたよ。
いよいよヤキモチを抑えられなくなってきたと見える」
「??」
言いながら私の隣に座るジェルヴェの言葉の意味が全然解らず、私は首を傾げてジェルヴェを見る。
ジェルヴェは切なげに瞳を揺らし、私の頬に愛しげに触れて「あなたは…フィリベールを愛しているの?」と問う。
「ええっ?」
私はのけぞり、「そんなことあるわけないでしょ」と心底驚いて言う。
むしろ嫌い、大嫌い。
「そう…?
でも初夜には、受け入れたのでしょう、彼を」
「あ、いえあれは…」
あーそうか。
対外的には初夜にちゃんと営んだことになってるんだった。
うーん。本当のことを言っていいのかどうか…
黙り込む私の頭をジェルヴェは優しく抱き寄せて「…すみません」と呟くように言う。
「王家に生まれて、意に染まない結婚を強いられるのは当然といえば当然のことですよね。
あなたはしきたりに則っただけでありフィリベールを拒むことなどできないのは当たり前のことなのに…
それが判っていてもなお、嫉妬が抑えられないのです。
年も近く可愛い甥っ子なのに、あなたをたとえ一度でも抱いたフィリベールが…妬けて仕方ない」
歯を食いしばるように言い、抱き寄せる腕に力を籠める。
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そしてそんな自分に驚いていた。
ああでも。
流石の私でも、こんな状況で言えないわ…
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