愛されない王妃は王宮生活を謳歌する

Dry_Socket

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第十一章 帰国

3.逡巡と結論

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 その夜はまたよく眠れなかった。
 王太后様の言葉、ジェルヴェのこと。
 フォルクハルトそれからお兄様。
 そして、王のこと。
 お姉様のこと。

 私はどうしたらいいんだろう。
 もう、王の傍に居られないこと。
 確かなのはそれだけ。

 メンデエルとルーマデュカ。
 どちらに居たいか?と問われれば、答えは…
 よくわからない。
 こういうことに関して、自分の気持ちを通すなんて、考えたこともないから。
 
 自分の気持ちを言うなんて、そんなこと許されるの?
 お父様や宰相、そして王は、私のメンデエルへの帰国を命じている。
 命令に逆らうことなんてできるのか?

 王太后様の養女になるってことは王と兄妹になるのか。
 うーむ。
 ジェルヴェと結婚するってことは、王の叔母になるのか。
 うーーーーむ。

 まあ、王族や貴族の血統と相関関係なんて、図にでもしてみないと把握できないほど入り組んで複雑なのは、普通のことだけど。
 メンデエルだってそうだ。
 
 王太后様やジェルヴェの気持ちはとても嬉しいけど。
 でもルーマデュカに残って、ここで暮らすということは。
 王とお姉様の結婚とその後ずーっと、二人の姿や結婚生活を身近に見ていかなきゃいけないってことだ。
 義妹として、あるいは叔母として。

 王の、はにかんだようなあの笑顔が、お姉様だけに向けられる…
 王に愛されているお姉様の姿を、二人の幸せそうな姿を、間近に見なければならないのだ。
 この先ずっと。
 
 嫌だそれは…
 私はベッドの中で一人首を横に振る。

 私、いつの間にか…
 本当にたまにしか見られないけど、王のあの笑顔に惹かれていたんだ。
 横柄に見えてさりげなく細やかな気遣いとか、少しずつだけど王の態度や言葉が優しくなって、嬉しかった。

 だけど王はお姉様を選んだ。
 一度は妃として迎えた私を無理やり離婚してまで、お姉様と結婚したいんだ。
 巷間の批難をかわすために、どうでもいい決闘試合まで催して…
 
 その事実が私を打ちのめす。
 私は最初から最後まで、愛されたことなどなかった。
 王太后様がどう仰ってくださろうとも、その事実は変わらない。

 王妃になったお姉様に向けられる、王の笑顔に嫉妬しない自信がない。
 二人の間に愛らしい王子や王女が生まれたら、それを心から喜べる自信がない。
 ジェルヴェがいかに私を愛してくれても、それは無理なんだ。

 こんな形で自分の気持ちに気づくなんて…
 私らしいといえば、まあそうかな。
 
 メンデエルに帰ろう。
 フォルクハルトを愛せるとも思えないけれど。
 でも努力はできる。
 今までもずっとそうだった。

 お母様に会いたい。
 強くそう思う。

 お母様にお会いして、幼かった頃のように、お母様のお膝で泣いてしまいたい。
 お母様に優しく慰められて、眠りにつきたい。

 そんなことを考えながら、夜明け間近にようやく微睡まどろんだ。

 
 
 
 

 
 
 
 

 
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