三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

文字の大きさ
1 / 307
第一章 何処へ?

1.浪人決定!

しおりを挟む
 令和三年。
 国立大学の後期入学試験、合格発表の日。

 あたしは受験票を握りしめ、祈りながら掲示板の前に立った。
 周りからは歓喜の声が聞こえてくる。

 合否なんてネットで判るんだから、わざわざ大学まで足を運んでくるのは合格したのが先に解っている人たちばかりだ。
 ネットで確認せずにとにかく来てしまったのは、あたしくらいのものだろう。

 今までのところ、9戦全敗。
 ここが受かってなかったら浪人決定である。

 怖くてスマホを見ることができないと思ったし、大学に張り出される方がネットより30分早いので、矢も楯もたまらずに来てしまった。
 なのに、大学の門をどうしてもくぐることができずに門前でグズグズしていたら、ネットでの発表の時間を過ぎてしまったというわけ。
 情けない…とは思うものの、足が竦んでしまって、どうしても踏み出せない。

 お父さんもお母さんも、あたしからのLINEを待っているだろうなぁ。
 お母さんは不合格だったらすぐに予備校に申し込みに行くって言ってたし。

 あたしは覚悟を決めて、掲示板を見上げる。
 自分の受験番号を呪文のように唱えながら順に番号を追っていった。


 なかった。


 半ば以上、予想していたこととはいえ、やっぱりショックだった。
 浪人決定だぁ…
 お父さん、お母さんごめんね。

 あたしはあふれる涙を隠すために、必要以上にうつむいてその場を離れた。
 とぼとぼと歩いて門を出て駅に向かう。

 あーあ。
 本当にダメだなあ、あたしって。
 涙が止まらなくて、ハンカチが瞬く間にびしょぬれになっていく。

 彼氏なし、友達なし、得意なことも趣味もなんにもない。
 せめて勉強を頑張って大学生活に賭けようと思っていたのに。
 部活もせず、何のための灰色の高校生活だったのか…

 お父さんとお母さんに連絡しなくちゃ。
 駅の階段を登りながらスマホを取り出し、涙でかすむ画面に苦労しながら入力する。
 
 改札を通り抜けて、電光表示板でもうすぐ電車が来るのを確認して、LINEを送信した。
 ホームへの階段を降りて、黄色いブロックラインを越えてホームのギリギリに立つ。
 
 もう死んじゃいたい。
 どうせ、あたしの人生なんて、これまでもこれからも良いことなんて全然ないんだ。

 『2番線に電車が参ります、黄色い線の内側へ下がってお待ちください』
 アナウンスが流れるのと同時に、手に持ったままのスマホが震えた。
 画面を見ると、ポップアップでお母さんからのメッセージが表示されている。

 長そうな文章だ。
 スマホをスワイプしてメッセージの全文を読もうとしたとき。

 凄い勢いで階段を降りてきた人が、あたしの横でこけそうになりあたしに思い切り寄りかかってきた。
 大柄な男の人に全身でぶつかられて、あたしは声も出せずバランスを崩しよろけて…

 ちょうど電車が入ってきた、線路の上に落ちた。
 
 ホームにいる人たちの悲鳴が響き、電車が急ブレーキをかける耳障りな金属音が辺りに満ちる。
 
 背中を強打して、痛みに気を失いそうになりながら、身体を起こそうとした。
 目の前に迫った電車の巨大な車体の、何故か運転手さんと目が合った。

 運転手さんの、驚愕と恐怖の表情。
 
 
 それが、あたしの見た最後の光景だった。

しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...