三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

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第一章 何処へ?

25.報告

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 左近衛中将様は少し照れたように、箸を取った。
 「いや…後から考えたら、大した話でもないのですが…
 お手紙を差し上げた時には、その話を聞いたばかりで嬉しくて書いてしまったんです」

 「ぜひ伺いたいです」
 あたしは言った。
 ここにいると、他の世界のことって全然判らない。
 勝手に外に出るわけにもいかなそうだし。

 「召し上がりながら聞いてください。
 せっかくの温かい料理が冷めてしまう」
 左近衛中将様は言って、鱒の焼き物を口に運んだ。
 
 あたしは根菜の茹で合わせ(という料理があるかは知らないけど、味なしの茹でた野菜の盛り合わせ)の芋を箸で取った。
 別の小皿に盛ってあった、ひしおを少し取ってつけて食べる。
 うん。美味しい。

 「再来月、賀茂祭の前儀にて行われる流鏑馬神事で、私は射手いてを務めることになりました」
 控えめに、でもどこか誇らしげに左近衛中将様が言う。

 かものまつりのぜんぎのやぶさめしんじ?
 …あたしはまったく意味が判らず、ぽかんとしてしまった。

 「まあ、左近衛中将様!おめでとうございます」
 給仕をしてくれていた式部さんが、慌てたように手をついてお祝いを言う。
 他の女房さんたちや侍女さん達も、次々に現れて寿ぎの言葉を述べる。

 左近衛中将様は、ひとりひとりに丁寧に礼を言って、あたしの方を見て照れたように笑う。
 「誰よりも先に、自分の口から姫に報告したかったのです」
 「あ…おめでとうございます」
 あたしは訳判らないながらも箸を置き、皆の真似をして頭を下げた。
 
 「姫にも観にいらしていただけると良いのですが…女人には場所柄ちとお辛いかな…」
 左近衛中将様は少し残念そうに言う。
 「左様でございますわね…路頭の儀は毎年、姫様もご覧あそばしていますけど…」
 式部さんも残念そうに言う。
 
 「大臣おとど治武太夫じぶたいふ殿はいらっしゃるでしょうし、早馬を仕立てさせますのでぜひお話をお聞きになってください」
 気を取り直したように言って、汁椀を手に取る。

 なんだか全然わからん…つらい。
 後で何とかして式部さんか内侍さんに聞こう。
 スマホがあればなあ…
 あたしはそっとため息をついて、ご飯茶碗一杯に盛り付けられたご飯を口に運ぶ。

 あ…これ、もち米だ。
 塩をちょっとかけてみると、美味しい。
 ん?…最近「餅」って言葉を聞いたな…と思い、あたしは何も考えずに口にした。
 
 「これって、『三日夜の餅』?」

 瞬間、左近衛中将様はブッと吸い物を吹き出し、慌てて懐紙を取り出して口を押えた。
 式部さんが大声で人を呼び、布を持った侍女さんが二人急いでやってきて、左近衛中将様の青くて綺麗な直衣を拭く。

 あたしは驚いてお箸を持ったまま固まる。
 なに…?そんなに変なこと言った?
 「ひ、姫…」
 驚愕したように左近衛中将様は口を押えたままあたしを見る。

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