三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

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第三章 賀茂祭・露頭の儀

15.ご褒美の希望と告白

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 「そういえば、流鏑馬神事では左近衛中将が一番の射手になったわけだが…
 主上に何を望んだか、ご存知ですか?」
 東宮は気にしている様子の中にも、一生懸命明るく話しかける。
 のが判ったので、あたしも涙を拭いて笑った。

 「あ、何でしょう?
 この頃は素っ気ない文ばかりで。
 全然、そういうことも教えて下さらないんですの」

 本当に気になる!
 ちゃんと、蜂蜜と胡麻油、お願いしてくれたっ?

 「『私のお転婆な許嫁が、こっそり徒歩で観に来たりしてしまうので、糺の森の馬場に車寄せを設けてください』って言ったんですよ。
 もうその場は爆笑でね。
 あの関白まで笑っていたのには驚いたな」

 「主上も苦笑いなさりながら
 『毎年、女人からはその要望があるな。
 桟敷席では気詰まりなこともあるだろうし。判った。
 そなたの人見知りでお転婆な許嫁のためにも、車寄せを作ろう』
 と仰せられたのです」

 なーにーおー!
 ちっがうじゃん!

 っていうか、あたしの知らないところで、皆してあたしをディスりまくってぇ!
 あたしはもう少しで持っていた扇をまっぷたつに折ってしまうところだった。

 「えー車寄せ?!
 そんなものを~?」
 あたしが怒り半分、落胆半分で言うと、東宮はおや、という顔をする。

 「なにか、ご希望のものがあったのですか?」
 「…蜂蜜と、胡麻油」
 ぶすっとして答えると、一瞬、東宮はきょとんとした。
 あ、ちょっと可愛い、その顔。

 それから弾けるように笑いだした。
 「は、蜂蜜と、…胡麻油」
 と息も絶え絶えになりながら笑い続ける。

 そんなに笑わなくても。
 あたしは扇子をパチンと音を立てて閉じる。

 「いや…すみません、あまりにも予想外のお答えだったもので…
 え、どうして蜂蜜と胡麻油なのか、伺ってもよろしいでしょうか?」
 懐紙を取り出し、涙をふきふき、まだ笑いの残る声で訊いてくる。

 「薫物に使うんです!」
 あたしが怒って言うと、合点がいったというように頷く。
 
 「あ、秋の薫物合わせに、宝鏡殿の女御側でいらっしゃるんでしたね。
 しかしわざわざ主上にお願いするほど大量に必要なんですか?」
 「いえ…それは、あの…」
 あたしが思わず言い淀むと、察しの良い東宮はニヤッと笑う。
 
 「何かほかに理由がおありのようですね。
 お聞かせいただければ、事と次第によっては、私の荘園から取り寄せて差し上げますよ」

 え、ホントっ?!
 あたしは、言おうか言うまいか迷った。
 でも…左近衛中将様は主上に、蜂蜜と胡麻油を頼んではくれなかったんだから、もう手に入らないのよね。
 ううう…言っちゃおうか…

 「実は、料理に使おうかと、思っていて」
 ああ、言っちゃった。

 東宮はまたきょとんとする。
 もう、可愛いよその顔。
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