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第三章 賀茂祭・露頭の儀
22.宴果てて
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東宮がちゃっかり次回の約束をして帰って行ったあと、あたしは自棄になって残っていたお酒を飲んだ。
甘くて美味しい~
女房さんや侍女さん達は片付けに追われ、お殿様と伊靖君と義光君は東宮の車を見送って外へ出て行ってしまっている。
あたしは誰も見ていないのを良いことに、手酌で飲む。
頭がボーっとして、なんだかいろいろどうでも良くなってきた。
あーあ。いろいろ悩むのももうバカみたい。
あたしはどうせこの時代では異人なんだよ…
何のとりえもない、何もまともにやったこともない、令和のただの高卒女子が突然平安時代のお姫様になんてなれるわけないじゃん!
詩歌やお琴なんてやれるわけないんだよ!
左近衛中将様だって来るって言ったのに来ないし。
嘘ばっかり。
あたしもあなたも。
誰も彼も。
ブツブツ言いながら飲んでたら、暑くなってきた。
あたしは十二単の袿から腕を抜いてすっぽりと脱ぎ、小袖と裳だけになって部屋の外へ出た。
少し風があって涼しい。
あたしは端近まで行って、手すりに寄りかかって座った。
遠くで賑やかな声がする。
月の光に照らされた庭は、昼とは違う表情を見せる。
ぼんやりと庭を眺めていると、瞼が重くなってくる。
あー疲れた…
「月子姫!…こんなところで何を…あられもない姿で…」
義光君の声が背後から近づいてくる。
うるさいな~
「十二単の抜け殻が部屋の中に座っていて、後ろから抱きしめたらくしゃっと崩れて、私は度肝を抜かれて危うく声をあげるところでした…ああ、驚いた」
そしてあたしを後ろから抱きしめて
「月に帰ってしまわれたかと…月子姫…貴女は月からいらしたのですか?
不思議な方だ…今までに見たこともないような…」
と耳に口づけしながら囁く。
やめろー暑い。鬱陶しい。
あたしは義光君の腕を振りほどこうともがく。
「ちょっとあんた、どこ触ってんのよっ!」
と言うと、ひるんだように力を緩める。
「あのねー、あたしはあんたの手に負える女じゃないんだから!判った?!」
義光君はくすくす笑いだし、またぎゅうっと抱きしめる。
「良いですね、その蓮っ葉な感じ。
私だけが知る、月子姫の姿だ。
ずっと傍にいて、貴女を見ていたい」
こらー離せぇー!よしあきっ!
と怒って喚くけれど、義光君はますます腕に力を籠め、あたしの頬にキスをする。
その時「民部大輔!」と、叱責というか牽制というか、とにかくすごい厳しい声が聴こえた。
義光君は、はっと顔を上げて声の主を見て「…左近衛中将殿…」と呟き、あたしを離した。
あたしは解放されてほっと息をついて、また手すりに寄りかかる。
「よしあきー、あんた間違ってるよぉ。
左近衛中将様はねえ、もうここには来ないんだよー。
内大臣の姫と結婚するんだからぁー」
義光君が何も答えないので、あたしは「こらーよしあきぃ、聞きなさいよぉー」と呼ばわった。
「姫!私ですよ、元信です!
愛しい姫の許に、参りましたよ」
んん?元信??
顔を上げると・・・
…左近衛中将様…
甘くて美味しい~
女房さんや侍女さん達は片付けに追われ、お殿様と伊靖君と義光君は東宮の車を見送って外へ出て行ってしまっている。
あたしは誰も見ていないのを良いことに、手酌で飲む。
頭がボーっとして、なんだかいろいろどうでも良くなってきた。
あーあ。いろいろ悩むのももうバカみたい。
あたしはどうせこの時代では異人なんだよ…
何のとりえもない、何もまともにやったこともない、令和のただの高卒女子が突然平安時代のお姫様になんてなれるわけないじゃん!
詩歌やお琴なんてやれるわけないんだよ!
左近衛中将様だって来るって言ったのに来ないし。
嘘ばっかり。
あたしもあなたも。
誰も彼も。
ブツブツ言いながら飲んでたら、暑くなってきた。
あたしは十二単の袿から腕を抜いてすっぽりと脱ぎ、小袖と裳だけになって部屋の外へ出た。
少し風があって涼しい。
あたしは端近まで行って、手すりに寄りかかって座った。
遠くで賑やかな声がする。
月の光に照らされた庭は、昼とは違う表情を見せる。
ぼんやりと庭を眺めていると、瞼が重くなってくる。
あー疲れた…
「月子姫!…こんなところで何を…あられもない姿で…」
義光君の声が背後から近づいてくる。
うるさいな~
「十二単の抜け殻が部屋の中に座っていて、後ろから抱きしめたらくしゃっと崩れて、私は度肝を抜かれて危うく声をあげるところでした…ああ、驚いた」
そしてあたしを後ろから抱きしめて
「月に帰ってしまわれたかと…月子姫…貴女は月からいらしたのですか?
不思議な方だ…今までに見たこともないような…」
と耳に口づけしながら囁く。
やめろー暑い。鬱陶しい。
あたしは義光君の腕を振りほどこうともがく。
「ちょっとあんた、どこ触ってんのよっ!」
と言うと、ひるんだように力を緩める。
「あのねー、あたしはあんたの手に負える女じゃないんだから!判った?!」
義光君はくすくす笑いだし、またぎゅうっと抱きしめる。
「良いですね、その蓮っ葉な感じ。
私だけが知る、月子姫の姿だ。
ずっと傍にいて、貴女を見ていたい」
こらー離せぇー!よしあきっ!
と怒って喚くけれど、義光君はますます腕に力を籠め、あたしの頬にキスをする。
その時「民部大輔!」と、叱責というか牽制というか、とにかくすごい厳しい声が聴こえた。
義光君は、はっと顔を上げて声の主を見て「…左近衛中将殿…」と呟き、あたしを離した。
あたしは解放されてほっと息をついて、また手すりに寄りかかる。
「よしあきー、あんた間違ってるよぉ。
左近衛中将様はねえ、もうここには来ないんだよー。
内大臣の姫と結婚するんだからぁー」
義光君が何も答えないので、あたしは「こらーよしあきぃ、聞きなさいよぉー」と呼ばわった。
「姫!私ですよ、元信です!
愛しい姫の許に、参りましたよ」
んん?元信??
顔を上げると・・・
…左近衛中将様…
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