三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

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第六章 運命の歯車

10.数独

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 あたしが考えた例題をやってみると、権中納言様は頬を上気させてあたしを見た。
 「これは良いですねえ…私も問題を作ってみたい。
 いくらでもできそうです」

 あたしは「それは宜しゅうございました。楽しみにしておりますわね」と笑う。
 権中納言様は手を伸ばして、あたしの頬にそっと触れた。

 「貴女と知り合えて本当に良かった。
 色味の無かった私の人生は彩り豊かになりました。
 …最も、自分でも持て余すほど、感情の起伏が激しくなったという負の面もあるのですが…」

 そうだよね、判るよ。
 あたしも元信様のこと考えたり、会った後に、一人で喜んだり不安になったり悲しくなったり、忙しいよ。

 恋をすると、皆そうなんだなあ。

 あたしが思わず頷くと権中納言様は微笑む。
 「貴女が私の傍にいて下されば、私は何でもできる気がする。
 不思議ですね。
 苦手なご政道にも、邁進していけそうだ」

 あたしの頬を撫でる手を離し、自分の膝の上でぎゅっとこぶしを握る。

 「…今まで私は、東宮殿下や右近衛大将と女人をめぐって争ったことなど一度もなかった。
 でも今回は…譲れない」

 えっ?何…どういうこと?
 あたしは権中納言様の顔を凝視する。

 権中納言様はあたしを見て、苦しそうに微笑んだ。
 「殿下は本気ですよ。右近衛大将も恐らく…
 そして主上も、月子姫獲得に動き出すかもしれない」

 ち、ょっと待って!
 あたしは慌てる。
 
 「わたくしは、左近衛中将様の許嫁です!
 妹の二の姫が東宮様の許嫁で、二の姫は東宮様をとてもお慕いしているのです。
 そんな無茶が通ってたまるもんですか!」

 「それに、東宮様には赤ちゃんがお生まれになるんでしょう。
 わたくしが嫁いだところで、父には何の恩恵もございませんわ」

 しっ!と権中納言様はあたしの唇を白く細い指で押さえる。
 「それは…殿下の御前では絶対に口になさってはいけませんよ。
 かなり神経質になっていらっしゃいますから」

 ええ?なんで?
 あたしが訊こうとしたとき、「左近衛中将様のお越しでございます」と先触れの声がした。

 元信様!
 あたしは立ち上がり御帳台を出て、元信様に駆け寄る。
 
 元信様はあたしを抱きしめて「愛しい姫、会いたかった」と囁く。
 唇に軽くキスした。

 「権中納言様は…」と元信様が言いかけたところで「お邪魔しておりますよ」とにこやかに権中納言様が御帳台から出てきた。
 
 「すみませんね、月子姫とお話が弾んでしまいまして長居させていただいております。
 月子姫、もう少し数独のお話をいたしましょうか」
 と言うと、座布団に座り込む。

 え…帰らないの?
 あたしの大事な人が来て、これから二人の時間なんですが…

 元信様とあたしは顔を見合わせた。
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